-第一章六十一節 裏路地での再会と思い出話と患者扱い-
マサツグがハーピィの羽で更なるトラウマを覚えた所で一同は漸くクランベルズの町へと足を踏み入れ始める。マサツグは今だ膝が大爆笑している様子でまともに立つ事が出来ず、そんなマサツグにモツが若干呆れた様子を見せつつ肩を貸すと、後ろではリンが戸惑いながらも二人の後ろを見詰めながら付いて来る。その際謎のギャラリーの注目を浴びる事になるのだが、何の注目か分からないマサツグ達は困惑しながらもその視線を通り抜け、町の中へと入って行くとそこには見慣れた光景が広がっていた。
__わいわい!…がやがや!…
「安いよ安いよぉ~!!!
ニイチャン!!買ってかないかい!?」
「ほらほらこっちこっち!!…」
「ぎゃああああぁぁぁぁ!!!…」
モツ達の目の前に広がるはカルト教団に襲われた事が嘘の様に復活した…元の活気を取り戻したクランベルズの姿であった。メインストリートの両端には出店が立ち並び、その出店からは今までの遅れを取り戻そうと活気溢れる客寄せの声が聞こえて来ると同時に、もはや名物とまで言えそうな蟻地獄接客の様子も見て伺える。その接客(被害)にまた誰かが遭って居るのか…何処からともなく悲鳴が聞こえて来てはモツとリンが苦笑いをし、とにかく急いだ様子で出店の接客に捕まらないようメインストリートを歩いていた。
「あはははは…
…これだともう心配する必要は無さそうだな?…
この町もようやく本調子に戻ったみたいだし…
アレだけ強引に店の中に引き摺り込んでるし…」
「あはははは…そうですね~……
私もさすがにあの勢いには圧倒されますね…
…相変わらず何で憲兵さん達に捕まらないのかが
不思議に思えるのですが?…」
「もはや名物なんだろうな?…あれ…」
__チラッ…ガヤガヤッ!…ガヤガヤッ!…
至る所で見かける出店の接客(剛腕物理)を目を合わさない様にモツとリンが見ては戸惑いを覚え、相変わらずの光景にもはや笑うしかないと言った様子でマサツグを担ぎギルドに向かって居ると、チラホラと町の人間の視線を感じ始める。そしてその町の人達の視線の先はと言うと勿論と言った様子でマサツグに向けられており、この時マサツグは町の玄関でモツに保護された後…緊張の糸が切れた様子で気絶してはそのままモツに担がれていたのであった。
__ズルズル…ズルズル…
「……ッ…やっぱ視線を集めている様な?…」
「あははは…まぁ…仕方が無いですよね?…
負傷者の場合はまず病院か診療所に送られますし…
マサツグさん…何処も怪我をして居ないので
担ぐ他無いですし…」
「……はあぁ~~…こう言う時…
あのドラ〇エみたいに棺桶を引き摺るとか
だったら楽なんだろうけどな…」
「ちょ!…モツさん!…
マサツグさんはまだ死んでませんよ!?…
…とにかく声を掛けてみますので
頑張って下さい!!」
大の男が男に肩を貸して歩いており、その担がれている方の男は見るからに重そうな大剣を背負っている…パッと見れば戦場帰りの戦士二人と言った様子で、更に二人の後を付いて来ているギルド職員が居るせいか異色感を強めると余計に周囲の視線を集める。そんな周囲の視線にモツが若干の不快感を覚えつつマサツグを担ぎ歩いて居ると、リンがモツを宥める様に苦笑いしながら仕方が無いと言い…更にモツが例の大作RPGの様にあるシステムを例に挙げて楽したいと言い出すと、 リンが誤解を受けた様子でモツにツッコミを入れる。そんな会話をモツとしたところでリンがマサツグを起こそうと試み始め、マサツグの耳元に顔を近づけては声を掛け出す。
「…失礼して…お~い!!…
マサツグさ~ん!!…元気出してくださ~い!!
クランベルズに着きましたよぉ~!!
もう空は飛ばなくても大丈夫ですよぉ~~!!!」
__チ~~~ン……
「……駄目ですね…
まるでこの世の理を悟った様な表情で固まってしまって
眉一つ動いてないです…
この様子だと本当に死んでいるんじゃないかと
間違えられそうですね?…」
「……はあぁぁ~…
とにかくそろそろ起きて欲しいんだがなぁ…
ゲームの中とは言え人の視線が刺さる…」
リンがマサツグの耳元で軽く声を張って呼び掛けるもマサツグはピクリとも動かず、反応が無い事を確認したリンがマサツグの顔を覗き込み様子を確認すると、そこには玄関口から全く変わっていない達観した様子で目のハイライトが消えたマサツグの固まった表情が見て取れる。それを見てリンが苦笑いすると戸惑った様子でモツに今のマサツグの状態について説明し、モツがそれを聞いて思わずマサツグを投げてしまいたくなるが、グッと堪えては視線から逃げるようメインストリートを離れて裏路地へと入って行く。
__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
「……はあぁ~…そろそろ…
段々肩が疲れて来たんだが?…」
「……やっぱり起きそうに無いですね…
あはははは…」
「はあぁ~……やれやれだぜ…」
裏路地の迷路の様な街並みを歩いて行き、暫くしてモツがまだ起きないのかと溜息交じりに肩のダルさを訴えるも、リンがマサツグの様子を見ては全く変わっていない事を確認し、苦笑いして今の事実をモツに伝える。それを聞いたモツはまた溜息を吐くと諦めた様子でマサツグを担ぎ直し、ギルドに向かい再度歩き出し始めるのだが前から小さな女の子が医療カバンを持った様子で歩いて来ては、その女の子は何故かハッとした様子でモツを呼び止める。
__トッ…トッ…トッ…トッ……ッ!!…
「すいません!!ちょっと宜しいでしょうか!?…」
「え!?…な、何!?…」
「……ッ!…やっぱり!…この人!…
マサツグさんですよね!?…」
「え?……」
突如呼び止められた事にモツが戸惑いながらも足を止めると、その女の子は肩に担がれているマサツグの方へと慌てて駆け寄って来てはマサツグの顔を覗き込み始める!そしてマサツグ本人である事を確認したのか戸惑った様子で納得し、その女の子が慌てた様子でモツに担いでいる人間がマサツグである事を再確認し始めると、マサツグを知っているこの女の子にモツが戸惑いを覚える。そうしてモツが如何答えるかで戸惑いながらも若干悩み、女の子がモツの返答を真剣な表情で待っている中、リンはその女の子に覚えがあるのか気付いた様子で話し掛け始める。
「……ッ!…あれ?…ハリットさん?…」
「ッ!…その声は…ッ!…
確かギルドの受付嬢さん?…」
「ッ!!…やっぱりハリットさんだぁ!!…
いやぁ~お久しぶりです!!…
あの護衛任務の依頼時以来ですか?」
「はい!!…ご無沙汰してます!!!……
今は本業(医者)の方が立て込んでまして…
って、そんな事言てる場合じゃないんです!!…
そこの貴方!!…
マサツグさんを降ろしてください!!!」
「うえぇ!?…」
リンがマサツグとモツの後ろから顔を出してその小さな女の子を確認するとハリットと呼び出し、ハリットもリンの声に聞き覚えが有ると言った様子で声の聞こえた方を振り向くとリンの事を話し出す。そして互いに顔を確認した所で互いに笑顔を見せると久しぶりと言っては和気藹々と友人同士の語り合いの様に挨拶をし始め、モツが完全に置いてけぼり状態でマサツグを肩に担いだまま固まって居ると、ハリットがハッ!と気が付いた様子で急変する!まるでマサツグを急患と言った様子で見詰めるとモツを指差しては降ろす様に指示を出し、モツがその突然の指示に戸惑いの色を見せて居ると、ここで漸くリンがハリットの説明をする。
「あっ!…モツさん!大丈夫です!!…
降ろしてください!彼女はハリット!…
ハリット・ポプスタントと言いまして、
医者兼冒険者の方なんです!!」
「え?…医者?…」
リンがモツの戸惑いを払拭させようとハリットの事に付いて軽く説明し始めると、その説明でハリットが医者として紹介された事にモツが驚いた様子を見せる。モツの目から見ても明らかにその容姿は小学校高学年位の小さな女の子にしか見えず、ハリットがホビットである事を知らないままリンの説明を聞き続けて居ると、リンはハリットの医者としての腕についても話し始める。
「はい!…この町で開業医をしている
腕の良いお医者さんなんですよ?
恐らくは…この町で一番の腕の持ち主かと…」
「ッ!?…マジかよ!?…」
「そんな事は如何でも良いので
降ろして下さぁ~い!!!
マサツグさんの容態を見たくても
高くて見れません!!!」
「ッ!?…え?…あぁ!…ス、スマン…」
リンはハリットを町一番の名医と自慢する様に紹介しては、更に自分の診療所を持って居る事も説明し、モツがその話を聞いて信じられないと言った様子で今だにマサツグを肩に担いだまま驚きを見せていると、ハリットが子供の様に跳ねては若干怒った様子で再度モツに下ろすよう指示を出す。その際ハリットは背の事を気にしているのか続けてモツの背が高いと言った様子で文句を言い、その言葉にモツが戸惑いの表情を見せては指示に従いマサツグを降ろすと、ハリットの診断が始まる。
「はい失礼しますよ~!…」
__バッ!!……ッ!?…
ハリットは慣れた様子で聴診器を付けては何の躊躇いも無くマサツグの服を脱がし、聴診器をマサツグの胸に当てて心音を確かめ始めると、遠慮の無い脱がしっぷりを見せられたモツは戸惑いの表情を見せる。その様子は隣に居たリンも見ており、顔を赤くしては両手で自身の目を隠す様な素振りを見せるのだが、やはり気になるのか指の隙間からマサツグの診断様子を覗き見る。そして無言でマサツグの心音が正常である事をハリットが確認し、一緒に怪我や傷が無い事…病による奇妙な痣等が無い事を確認すると、スッと聴診器を外して名医と呼ばれる実力を見せるよう迷う事無く診断結果を下すのだが、それでも不可解とばかりに悩み出す。
「…ッ……一体何が有ったのですか!?…
マサツグさんはサイクロプスを倒してしまう
程強い人の筈!!…見た所外傷も病気と
言った様子も無い…
恐らくは気絶して居るだけの様ですが…
そんな人を気絶させるなんて!?…」
「え…えぇ~っと……」
「あははははは……」
ハリットはマサツグが気絶して居るだけと見事に言い当てると二人にその理由について尋ねるのだが、その問い掛けに対して二人はただはぐらかす様子を見せては苦笑いをするしかなかった。何故ならこれはマサツグにとって不名誉な気絶…ただ空を飛んだだけで着地後その場から動けなくなり気絶…その後町の玄関口で劇が行われて居た様な注目を浴びた等…気絶から復帰するだろうマサツグにとって違う意味でトラウマになりかねない内容を暴露する事に二人が戸惑いを覚えて居ると、ハリットはそんな二人の様子に困惑する。
「……?…まぁ…患者さんの容態について
話したくない人は居ますから深くは聞きませんけど…
…えぇ~っと…」
__ガサゴソッ!…ガサゴソッ!…
「ッ!…あっ!…あったあった!…」
__キュゥ~…ポンッ!……?…
ハリットはマサツグの事を完全に患者として見ているのか、モツとリンの様子を理解は出来なくとも察した様子で納得し、徐に自身のカバンを手元に持って来るとカバンの中を漁り始める。そして一分と掛からない内に探していた物を探し出すとそれを手にカバンから取り出し、モツ達の目の前で封を切って見せると、マサツグにその取り出したアイテムを使おうとする。その際ハリットの手には茶色い極小サイズの小瓶が握られており、その小瓶が何なのかと言った疑問の表情でモツとリンが様子を見守って居ると、ハリットはその小瓶をマサツグの鼻元へと持って行く…
__……スッ…クルクル…クルクル……ッ!?…
「どわあぁぁぁ!?…」
「うおああぁぁ!?…(きゃああああぁぁぁ!?…)」
ハリットがマサツグの鼻元に小瓶を持って行き軽く小瓶の中の物を混ぜる様に揺すると、次の瞬間マサツグが驚いた表情で飛び起きては慌てた様子で辺りを見渡し始め、その飛び起きたマサツグにモツとリンも驚いた反応を見せるとマサツグを凝視する。互いに驚いた様子で奇声を上げては何が有ったと戸惑い、そんな驚いた様子を見せる三人の中ハリットだけは落ち着いた様子でマサツグに笑顔を見せると、一仕事終えた様子で挨拶し始める。
「…ふぅ……おはよう御座います!
マサツグさん?…」
「うえぇ!?…お、おはよう…って!?…
何で俺服脱がされてるの!?…それにここ何処!?…」
ハリットの挨拶にマサツグは戸惑いながらも返事をし、ハッ!と自身の服が脱がされている事に気が付くと思わず自身の体を隠す様に腕を回しては困惑し始める。まるで乙女の様な反応を見せるマサツグにモツは引いた様な視線で見詰め、その視線にマサツグが気付くと慌てた様子で脱がされた服を着直し、その一方でリンが驚いた表情を見せてはハリットに小瓶の正体を尋ねていた。
「ハ…ハリットさん?…今のは?…」
「ただの気付け薬ですよ?…
何もおかしなものではございません!…
天然由来の…えぇ~っと…ジェネリックです!!…」
「いやそれは関係ないと思うぞ?…」×2
マサツグが飛び起きる程の効力を持つ小瓶にリンが興味を持った様子で尋ね、その問い掛けに対してハリットは自身の顔の近くに小瓶を持って来ては自慢げな笑顔でただの気付け薬と答える。そしてその小瓶の中身についても何なのかを話し出そうとするのだが、小瓶の中身が秘密と言う事を思い出した様子でハッとしては慌てて言い留まり悩み出し、リンに何故か誤魔化し始める。その言葉を聞いたマサツグとモツがすかさずどこで覚えた?と言った様子でツッコミを入れる中、マサツグが服を着直して落ち着きを取り戻すと、話はあの時の護衛メンバーのその後の話に変わり始める。
「…ふぅ……いやぁ~…にしても久しぶりだな?…
と言ってもあれから…一週間ぶり?…まぁいいや…
マトックにデクスターは?…」
「はい!…皆さん順調に回復してますよ!!
今だと…多分リハビリをしてるんじゃないでしょうか?…
何でも体を動かさないと鈍ってしまうって言って…
ちゃんと休養してくれない人達ですから!…」
マサツグが服を着直しその場から自力で立ち上がると、ハリットとの再会を喜び、一番重症だった二人について質問をする。あの時マトックとデクスターは暴れるサイクロプスの拳や踏み付けを諸に受けて酷い状態で戦闘不能になり、今こうして生きて居る事だけでも奇跡と呼べるレベルに負傷していたのだが、ハリットはその事を聞かれると徐に笑顔で怒った様子を見せては二人の容態は良好と話し、人の言う事を聞かない…安静にしないとマサツグに文句を言い出してはハリットの額にバッテンマークの様な物が付いている幻覚を覚え、その文句と幻覚にマサツグは苦笑いをするしか無かった。
「お、おう…相変わらずなのか…
…じゃあ、アヤは?…」
「ッ!…あっ…アヤさんは……」
「……?…何か有ったのか?…」
「……い、いえ!…
さすがエルフの方で直ぐに回復して退院を…
その後の行方については…何も…」
ハリットの様子にマサツグが苦笑いしながらも次に質問したのはアヤの事…アヤは最後までマサツグの事を気遣ってくれた冒険者の先輩であり、当然マサツグにとっても一番印象深いエルフの女性冒険者なのだが、いざその事についてハリットに質問をすると、ハリットは途端に戸惑った表情を見せてはその質問の答えに悩み始める。そんなハリットの様子にマサツグが嫌な予感を覚え、釣られて若干戸惑った様子で再度尋ね直し、その戸惑い交じりに尋ね直された言葉にハリットがハッとした様子で反応しては、誤解を受けないよう慌てて退院後消息不明とだけ答える。その言葉を聞いたマサツグは少なくともアヤは死んでいないとだけ悟り、ホッと息を零すとハリットにお礼の言葉を口にする。
「……ふぅ…そうか…とにかくありがと…」
「ッ!…い、いえ!!…
僕は医者として当然の事を!!…
こちらの方こそ有難う御座いました!…
あの時マサツグさんがサイクロプスを
討伐して下さらなかったら…今頃私も……」
マサツグがマトックとデクスター…アヤの治療を請け負ってくれていた事に対してハリットにお礼の言葉を口にすると、そのマサツグの感謝の言葉にハリットは謙遜し始める。頬を軽く赤く染めては照れる様に両手を突き出し左右に振って見せ、当然の事と言った後改めてマサツグがサイクロプスを倒した事に対してお礼の言葉を言うと、どうにも気まずさからかその二人の周りが暗い雰囲気に変わる。しかしここでマサツグが過去の事で今更落ち込んで居ても仕方が無いと言った様子で話を切り返すと、話題をハリットの話へと変え始める。
「……まぁ…この話もこれ位にして…
ハリットはこれから何処に?…」
「ッ!…あっ!…えっとですね…
今担当している患者さんの診察が終わって
診療所に帰ろうとして居たところだったんです。
ここのおばあさんが足を悪くして…
……って、今思い出したんですが
マサツグさんは何故気絶してたんですか?…」
「ッ!?…」
「その診療所に帰ろうとしていた矢先で
マサツグさんが抱えられている姿を見つけて…
貴方ほどの人が如何して?…」
暗い雰囲気を脱する為にマサツグが話題をハリットの方へ向けるが、それが間違いだったと言った様子でハリットがマサツグに気絶していた原因について質問され始める。ハリットも最初はマサツグの話に乗った様子で自身の出来事を話し始めるのだが、その結果…と言った様子で思い出すとマサツグに質問し始め、その質問に付いてマサツグだけでなくモツとリンまでもがビクッと反応しては動揺した様子で汗を掻き出す!…
{……言える訳が無い!…
切っ掛けはモツ(俺)の挑発に乗って
ハーピィの羽を使って!…
高所恐怖症って事を分かって居ながら
ムキになって空飛んだら気絶した何て!!…
更にそれが騒ぎになってついさっきまで
注目を浴びて居ましたなんて!!!…
口が裂けても言えねぇ!!!…}
…等とマサツグとモツとリンが考えてながら汗を掻き、ハリットの質問に対して如何言い訳をしようか?と悩んで居ると、ハリットの表情は不思議そうと言った表情から徐々に疑問を感じる表情へと変わって行く。その表情はもはや相手を心配すると言った物では無く完全に相手を疑う物に変わっており、その表情を向けられる三人は更に慌てて戸惑い出してはハリットの表情に追い詰められる!…
__……ジト~~……
「え…えぇ~っと……」
「…如何してなんですか?……」
「……も…黙秘権を…」
無言でジト目を向けて来るハリットにマサツグが誤魔化そうと口を開くが、先手を打つ様にハリットが理由を尋ねて来るとマサツグに詰め寄り出す。それに動揺したマサツグが誤魔化そうとしていた言葉を飲み込んでしまい、ワタワタし始めると慌てて黙秘権を行使しようとするが、ハリットはジト目のままマサツグに詰め寄り謎の圧力を見せては却下する。
「却下します!!!…
医者は患者の事を理解しないといけないので
包み隠さず話してください!!」
「え?…俺もう患者決定なの?…」
ハリットの中で完全にマサツグは患者として見られる様になっているのか、隠し事は許さないと言った様子で詰め寄っては更に圧を掛け始め、そのハリットの言葉と圧力にマサツグがペースを奪われるともう隠し事は出来ず、ただ患者として見られている事に戸惑いを覚えるだけ…そうしてハリットの小さな体から放たれるプレッシャーに負けたマサツグは気絶して居た理由について話し始めるのだが、それを聞いたハリットはまるでマサツグのお母さんと言わんばかりに説教し始める。
「…はあぁ~~…全く!…
何なのですか?…それ…」
「はい…」
「貴方は確かに強いですが
もう少し人の迷惑を考えてください!
最初見た時本当に心配したんですからね!!…
それと医師の私に隠し事は無しです!!!
大した事の無い持病一つでも大病に
繋がるのですからね!!!」
「はい…後もう患者決定事項なんですね?…」
マサツグが気絶から復帰した事により一行は裏路地から出る事になるのだが、メインストリートに出た所で歩きながらのハリットのお説教は続く。呆れた様子で懇々とマサツグを諭し、そのお説教に何も言えない様子で項垂れては返事をすると言う…お父さんが娘に怒られている様な構図に周りからの視線を集めるのだが、ハリットは気にしない様子で歩きながら続ける!その際マサツグの事をやはり患者として認めたのか医者と患者の関係と言った様子で隠し事に対して文句を口にし、その文句を聞いたマサツグが思わずハリットにツッコミを入れると、ハリットはプツンと来たのか更にマサツグへ説教する!
「ッ!!!…
本当ならあの時アヤさん同様
入院させたかったですよ!!!
マサツグさんも無傷で勝てた
訳では無さそうでしたし!…
ポーションで回復しているとは言え
心配で心配で仕方が無かったんですからね!?」
__ブンブン!!…ポカポカ!!…
「ッ!?…ハ…ハイ!!…
生意気言ってすんませんでしたぁぁぁ!!!…」
「……ブッ!!…ククククッ!!!…」
あの時の話を持ち出してはアヤ同様入院させたかったと興奮した様子で怒り出し、両腕を振り上げマサツグに向かって子供の様にポカポカと振り回しながら叩くと、その意外と痛い攻撃に溜まらずマサツグが降参するようハリットに謝り始める。そんな光景をずっと後方でモツとリンが面白がった様子で見詰めては笑い、マサツグとハリットから距離を取って無関係と言った様子を見せては二人の後を追っていた。暫くそんな光景を目にしつつ…やっとの思いでギルドに辿り着くと時刻は既に夕方を迎えており、マサツグが今日は色々疲れたと言った様子でハリットに連れられながらギルドに入って行くと、そこにはいつもより賑やかなギルドの様子が目に映るのであった。
__ガタンッ!!…ギイィィィ…
…ワイワイガヤガヤ!!…
「おぉ~い!!!
誰か時季知らずが何処で取れるか知らねぇか!?」
「今なら余分な土もどきトリュフを買うぞぉ!!」
「な…何だこのありさまは?…」
ギルド内では今まさにマスターオーダークエストの攻略に必死と言わんばかりの冒険者が多数…情報を求める者や物を売ってくれるよう願う者で賑わっていた。その冒険者達もそれぞれで駆け出しから中堅…はたまた廃人クラスと多種多様に集まっており、情報の交換をし合う中には情報一つに付き10000Gを払うと豪語する冒険者も居た。そしてそんな件のマスターオーダーはと言うと今だ完了者ゼロなのか…食材が集まっている様子が見られず、ギルドの方でも慌しい様子が見て取れる。そんな様子にマサツグ達は戸惑いながらも受付カウンターの方へと歩いて行くと、クラリスが気付いた様子でマサツグ達を出迎える。
__コッ…コッ…コッ…コッ…ッ!…
「あっ!…お帰りなさい!!…ッ!…リン!…」
「ヒッ!!…」
「た…ただいま…っで、用件なんだけど…」
クラリスがマサツグ達に忙しそうにしながらも笑顔で挨拶するとすかさずチラッとリンが居る事を確認し、帰って来るのが遅い!とばかりに一言…リンの名前を呼んでは一睨みする。そのクラリスの眼光と様子にリンは恐怖した様子で近くに居たモツの後ろに隠れる素振りを見せ、マサツグがその様子に気が付いた表情で苦笑いしつつクラリスに用件を言おうとするのだが、クラリスは用件を読んでいたとばかりに笑顔でマサツグの方を向き直すと先に話し出す。
「どうですか?食材は集まりましたか?
…特に…バニーガールキャロットは?…」
「ヒィ!!…」
「あはははは…まあ一応は…とにかくこれを…」
__ドサッ!!…コロッ…パサッ…ビチィ!!!…
…どよ!?…
クラリスは既にマサツグがマスターオーダーの食材の内…三つを集めて居る事を知って居る為、バニーガールキャロットを手に入れたかどうかについて尋ねるのだが、その際リンの事を許して居ないのか再度威嚇するようリンの方を向いてはリンを委縮させる。リンはリンでモツの後ろに隠れてはモツを盾に怯えた様子でビクビクと体を震わせ、陰に隠れながらクラリスの事を確認するリンの様子にモツが呆れた表情を見せる。そんな二人の様子にマサツグは苦笑いをするしか無いと言った様子でアイテムポーチを開くと、中から指定された食材を取り出しカウンターの上に置き始め、その置かれ始めた食材にギルドに集まっている冒険者達が驚いて居ると、その冒険者達の中から妙な連中の声が聞こえて来る。
__……フン!…どうせ紛いモンだろ?……
「…え?……」
「ッ!…あぁ!…ごめんなさいね?…
その子が居ない間に色々遭ったんですよ…」
「え?…」
マサツグがカウンターの上に食材を並べて納品の確認をして貰う際、冒険者達の中から明らかに違うと言った否定的な言葉が聞こえて来る。その言葉が聞こえて来た事にマサツグが戸惑いその声が聞こえて来た方を振り返ると、そこには数人の冒険者がラウンドテーブルを挟む様に座ってはこちらの事を馬鹿にするよう捻くれた様子で見詰めており、その様子にモツがカチンと来ているとクラリスが何故か謝り出し、その理由をリンが居ない事と括り付けるよう話し始める。
「……実はですね?…
今回唯一食材を見分けられるリンが居ない事を
理由に王国から料理人二人を派遣して貰ったんですけど…
…如何にも難しい人達でして…」
「…ほう?……」
「冒険者の人達がどれ程それらしい食材を持って来ても
無言で首を左右に振るだけで何が違うのか?…
何処で取れるとかそう言った情報を一つも提供して
くれないんですよ…女の子と男性の方なんですが…
女の子が食材を見たと思えば首を左右に振って…
それで違うと判断されると隣の男性が合否を出す…
何だか試験みたいなやり取りで……
それに今だ誰一人としてクエストクリアしている人が
居ない事から皆さん滅入ってしまっている様でして…
その結果が今のギルドの状態で意地からでも達成しようと
する冒険者と臍を曲げちゃった冒険者でギルド内が
ギスギスしているのですよ…」
「あぁ~……」
クラリスが話し始めたのはリンの代わりを用意した話で、その話にマサツグが相槌を打って返事をして居ると、クラリスは悩んだ表情でそのやって来た料理人達が気難しいのか何なのか…返事をしないと困った様子で説明する。更に細かな説明も無いのかただ違うと言っては食材を突き返されると不満が出ており、そのせいでギルド内の冒険者達が如何にもやる気を無くして行き、ギスギスとした空間が出来たとクラリスが言っては腕を組み頬杖を突いて、困った表情を見せる。そしてその説明を聞いたマサツグが納得した様子で声を漏らしては如何しようも無いとクラリスに同情して居ると、クラリスはチラッととある席に視線を向けては疲れた様子で人を呼び始めるのであった。




