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どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-  作者: すずめさん
-第一章-スプリングフィールド王国編-
57/602

-第一章五十六節 ニンジンと捕獲テストと勇者リコ-



マサツグとモツがリンの案内の元そのバニーガールキャロットの栽培をしている農家の家にやって来ると、リンがその農家の家を指差し跳ねて見せてここだと言い出す。見た限りでは普通の家に畑と特段変わった様子は無く、リンが言っていた程の儲けも出て居そうに無いのだが、その様子はまるで子供の様でマサツグ達が思わず微笑ましく感じてしまうのだが、次にリンの指差す方を確認すると奇妙な光景を目にする!…


「ッ!…あっ!…見えましたよ!

あそこ!…あそこで~す!!

あそこの農家さんが風変わりな人参を

栽培している農家さんの家です!」


「ははは…そんなに飛ばんでも………え?…

ええええぇぇぇ~~~~~~~~!!!」


リンの指差す方に目を向けるとそこではまず普通の畑作業では見れない光景が見て取れた…畑の中では何かを追い回す農家スタイルの男が一人…本来耕した筈の畑を踏み固めん勢いで全力疾走してはその何かをただ一心に追い駆け、その「何か」も農家の男から必死に逃げるよう畑の中を走り回っている!…それを見たマサツグとモツは最初猫でも紛れ込んだのかな?と思い、その様子を普通と言った様子で見詰めて居たのだが、徐々に近づくに連れ…猫では無い濃いオレンジ色をした「何か」を追い回して居る事に気が付き、二人が目を凝らしその濃いオレンジ色した物が何なのかを良く見ると、それが件のニンジンだと言う事に気が付く!…そう、農家の男はまるで人間の様に膝を曲げて走り逃げるニンジンを追い駆けており、その様子を見たマサツグとモツはまるで某お祭り男の様なリアクションを取ってしまうのだが、柵の中ではそんな事等知らないとばかりに駆け回っては農家の男がニンジンに吠える!


__ダダダダダダダダ!!!…


「待てぇぇぇえ!!!この野郎ぅう!!」


__ダダダダダダダダ!!!…


「え!?…ちょ!?…え?…あれ?…」


逃げ回るニンジンの様な何かの脚は意外に早く、農家のおじさんを振り切る様に畑の中を縦横無尽に走り回る!さながらその逃げる様子はメタルなアイツにそっくりで農家のおじさんも四苦八苦している様子!…その際農家のおじさんも足が遅いのか?と聞かれたらそう言う訳では無く、ただ単純にニンジンの様な何かが健脚過ぎると言う謎の光景がマサツグとモツの目に映るのである。そんな光景にマサツグとモツは戸惑った様子でリンに指を差して確認をし、リンもその二人の様子に気が付くと笑顔で何も言わずに頷いて見せる。そうこうして居る内に農家のおじさんの健闘空しく…そのニンジンの様な物は柵を飛び越えるとそのまま村の中へと逃げて行き、農家のおじさんも疲れたのか膝に手を着き息を切らし出すと、リンがその農家のおじさんの方へ歩き出しては声を掛け始める。


「ぜぇ!…ぜぇ!…クソゥ!…

逃げられちまった!!……ったく!…

誰のおかげでここまで育てて貰えたんだと

思ってんだ!…」


「スゥ!…すいませ~ん!!!

ギルドの者ですがぁ~~!!!」


「あん?…」


「ちょ!…ちょっと待ってくれ!?…リン!!…」


「ングッ!…」


リンが軽く息を吸い大声で農家のおじさんに呼び掛けると、柵の中から農家のおじさんがリンの声に反応してこちらを向く。農家のおじさんは滅茶苦茶ガタイの良い…ラインハルトよりはワンランク下ながらも筋骨隆々の体をしており、それを見て更にニンジンの光景を見たマサツグとモツは慌ててリンの口を塞ぎに掛かり、突如口を塞がれ戸惑うリンにマサツグとモツは改めて確認するよう問い掛け始める。


「ほ!…本当にここなのか!?…

確かにニンジンらしき物は走っていたが!?…」


「その前に何だあのニンジンらしき物は!?…

陸上選手のボ〇トも真っ青のナイスランだったぞ!?…」


「んん!…ぱぁ!…だから言ったじゃないですか!…

早くて捕まえられないって!…」


「……?…何だ?あれは?…」


マサツグが畑の方を指差してはリンに詳しい説明を求め、モツはリンの口を押えては某世界記録保持者の名前を出して、ニンジンの脚力に戸惑いの声を漏らす。そんな二人からの質問にリンはまずモツの拘束から逃れると、怪訝そうな表情を見せて先程まで話して居た内容を思い出させるよう話し、呼ばれた農家のおじさんはただそのマサツグ達の様子を畑の中から見ては誰なんだ?と言った様子で困惑の視線を送る。そんな農家のおじさんの視線を浴びつつ、マサツグとモツの質問攻めはまだまだリンに襲い掛かる!


「第一!…バニーガールキャロットの話を聞いた限りでは

マンドラゴラみたいな事を言ってたじゃねぇか!?…

何だよアレ!?…めっちゃ動くじゃねぇか!?…

確かに動き回るとは聞いたが!…

あそこまで機敏だって!?…」


「ッ!…だから言ったじゃないですか!!…

早くて捕まえられないって!!…

私も挑戦して!!……ッ!!…」


「お前も挑戦してたんかい!!!」


「ち、違います!!…今のは言葉の綾で!!…」


マサツグがちゃんとした情報を求めるようリンに慌てた様子で問い掛け、リンがその問い掛けに頬を膨らませ不機嫌そうな表情を見せると、ちゃんと話したと文句を言い出す!その痴話喧嘩に巻き込まれる様にモツが困惑した様子でリンを抱えていると、リンは既にここでニンジンの捕獲を試みた事を暴露してしまい、慌てて自身の口を押えて見せるもしっかりマサツグに聞かれてしまってはツッコミを受けてしまう。そのツッコミを受けてリンが慌てて違うと言い出し始めるのだが、後ろからその農家のおじさんが畑から出て来てはマサツグ達に声を掛け始める。


__カッポ!…カッポ!…カッポ!…カッポ!…


「あぁん?…ッ!…あんた達何を騒い…

ん?…おぉ?…ギルドの嬢ちゃんじゃねぇか!…

何だ嬢ちゃん!…また挑戦しに来たのかい?」


「……言い逃れは?…」


農家のおじさんに後ろから不機嫌そうな様子で声を掛けられマサツグ達が振り返るのだが、直ぐに揉めているのがリンだと分かると、農家のおじさんは態度が変わって何が有ったと尋ねて来る。その際リンがここにやって来たと言う事はまた挑戦しに来たのか?と何かをやっていた事を農家のおじさんに暴露され、それを聞いたマサツグとモツが農家のおじさんからリンに視線を移すと、リンは両手で自身の顔を隠していた。その様子を二人はジト~…っとした目で見詰め続け…リンに申し開きが有るかを問い掛けると、リンは観念したのか顔を隠したまま返事をする。


「……ありません…」


「……はぁ…所ですいません…

ここで場にガールキャロットの栽培は?…」


「え?…あぁ…やっているが…

あんた達も挑戦するのか?…」


「やっぱり挑戦形式なんだ……」


リンの様子に二人が呆れた様子を見せ、モツが今だリンを抱えたまま農家のおじさんに件のニンジンを栽培しているかについて質問をすると、農家のおじさんは突然の問い掛けに戸惑いながらもやっていると答える。ただやはり先程の話を聞いていた通り…挑戦形式なのか農家のおじさんはマサツグとモツにやるか如何かの覚悟を尋ね、その言葉を聞いて二人が困惑して居ると観念したリンが自分の戦歴を話し始める。


「…因みになんですが……

私はマサツグさん達にマスターオーダーの依頼書を

渡し終えた後…村の皆さんの復興のお手伝いを

していた時に、たまたまこのニンジンの事を

知って何回か挑戦をしたのですが……

一回も捕まえる事が出来ない所か…

そのニンジン達に馬鹿にされてしまう始末でして…」


「あぁ……それはそのぅ……ご愁傷様……」


「で、でもでも!…

この村のこの村で一番多く取引されている食材の上に

この村の収入の2割がこのニンジンなんですよ!!…

凄くないですか!?…

私はただそのお手伝いをしようとしただけで……」


「………。」


マサツグ達が大聖堂を解放する為に向かった話まで遡って、遅れて登場した理由の言い訳をしつつ…このニンジンとの戦歴について真剣な表情を見せて語り始めるが捕まえた事が無いと口にし、次に悲しい表情を見せるとニンジン達に煽られたと嘆き悲しみ始める。そのリンの様子にマサツグとモツは如何返事したものかと困惑の表情を浮かべ、ただ慰めの言葉?を一言だけ掛けると、リンの言い訳は更に続く。その言い訳にもはや何も言うまいと言った様子で流し始めるのだが、農家のおじさんは二人の返事を待っている様子で、マサツグとモツがそれに気づくと農家のおじさんに返事をする。


「…分かりました!…やらせて頂きましょう!!…」


「…俺も!…ここまで来て諦めるのは嫌なんで!…」


「……よし!…分かった!…

だがその前に軽いテストをさせて貰う!…

それから本番だ!…いいな?…

じゃあ付いて来てくれ!…」


マサツグとモツが農家のおじさんに覚悟は決めたと言った様子でやる!と返事し、農家のおじさんが二人の顔を交互に見ては許可を出す。しかしその前に試す事が有るのかリンを含めて畑の中へと案内し始め、畑の中に三人が入ると農家のおじさんはそのバニーガールキャロットへの挑戦テストの内容と、バニーガールキャロットの恐ろしさについて語り始める。


__ギイィィ…カタンッ!…


「……良いか!?…テストの内容は簡単!…

さっきの俺みたいにニンジンを捕まえる!…以上だ!!…

でないとあのニンジンに挑戦はさせられない!……

あのニンジンは…俺達の手には追えない代物だ!…

育てるのは特段難しくはないが、今までに何人もの

同業者(ライバル)があのニンジンに挑戦しては誰も勝つ事が

出来なかった!…ある者はプライドを砕かれ!…

またある者は追い駆ける際に無理をして腰を痛め!…

一週間はまともに動けない状態が続いた!…

…そんな恐ろしいニンジンなんだ!!…」


{……じゃあ何でそれを栽培しようと思った?…}


「バニーガールキャロットと戦う前にまずは

普通のニンジンと戦って経験を積むんだ!…

でなきゃまずあのニンジンと対等に戦う事は

出来ん!!…」


{…いつの間にバトル漫画みたいなノリになってんだ?…}


農家のおじさんによる熱血指導及び何故か壮大に語り始めるニンジンとの戦いに、マサツグとモツは疑問を持ちながらも話を聞く事数十分…色々ツッコミどころが多い話が終わると実践に入り始める!…畑の土はフカフカで一歩進む毎に足がめり込み、思う様に動けない上に足を取られる!…ライモンドと戦っていた時の泥濘よりは十倍もマシなのだが如何にも足回りが気になり、モツも気になった様子で脚を動かしていると、一足先にリンがリベンジと意気込んではニンジンの植わっている畝へと歩き出す!


「よ~し!…今日こそは一本捕まえる!!」


「…何でリンまで参加しているのやら?…

…まぁ良いけど…」


__ガッ!…グググググ…


「…とにかく一度どんな感じか見てみよう…

…リンには悪いが…」


腕を巻くってやる気を漲らせてはいつものパンプスでは動き難いと裸足になる程の気合の入れよう!…そんなリンの様子にマサツグは困惑した様子でツッコミを入れては脱力してしまい、モツは苦笑いしてしまうとそのリンの様子に目を向ける。そうしてリンがニンジンの植わっている畝へと移動し、植わっているニンジンの内の一株の茎を握ると力を入れて抜き始める。徐々に畝から抜けるニンジンに何がそんなに逃げられるのかと疑問を感じつつ、リンがニンジンを抜く姿に注目していると、その光景は突如見られる!…


__グググ!…スポン!…


「ッ!…なぁんだ!…何の抵抗も無くスッポリ…」


__プルプルプルプル!…ピ~ン!!…

ギュンッ!!…ブチッ!!…


「ッ!?…う…嘘ぉぉぉ!?!?…」


リンが畝からニンジンを抜いて見せ逃がさない様に茎をしっかり握っていると、何事も無く抜けた事に拍子抜けと言った様子でマサツグとモツが安堵する。そして何も無い事に軽口を叩き始める始末なのだが、次の瞬間抜いたニンジンが小刻みに震えたと思えば全身に力が入った様にピ~ンと伸びをし始め、横に捻りを入れるとそのまま勢い良く回転しては自身の葉と茎を切断してしまう!そしてリンの手から逃れ地面に落下したニンジンが華麗に着地を決めて見せ、更にすぐさまリンから距離を取り始めて見せるとその光景にマサツグとモツは驚愕してしまう!その際ニンジンは説明に聞いていた通り二股のニンジンで、開発スタッフのフェチか見事な美尻まで付いている気合の入れよう!…そんなニンジンにとにかく二人が戸惑いの表情を隠せないままニンジンとリンの様子を見詰めて居ると、リンがニンジンを逃がすまいと動き出す!


「ッ!?…逃がしません!!…」


__バッ!!…ビュン!!…


「ッ!?…はっや!?…」


__シュババババババ!!!…


リンが慌てた様子で自身の抜いたニンジンに手を伸ばすのだが、ニンジンはそのリンの動きに合わせて反応するとこの動き難い畑の中をダッシュで駆け抜ける!…体感的には本気で走る平原オオカミの二倍は有るだろうか…とにかく素早く動いてはリンに警戒した様子で距離を離し、また近づいて来る様だとすぐさま距離を取る!…まるで相手の力量を量る様なニンジンの動きにマサツグとモツが唖然とした様子で見詰めて居ると、リンはそのニンジンに遊ばれる。


__ドザァッ!!……


「ッ!……クゥ!!…まだまだ!!…」


「……アレ本当にニンジンなのか?…」


「マンドラゴラ系とは聞いていたが…

あれは違う様な?………鑑定(アプレェィザァル)


__ピピピ!…ヴウン!…


 -----------------------------------------------------------------------


「レッグキャロット」  


 Lv.25


 HP 300 ATK 50   DEF 10


     MATK 0  MDEF 0



 SKILL


 健脚 Lv.9


 -----------------------------------------------------------------------


リンがニンジンを諦めずに追い駆けて飛び付いて見せるが、ニンジンはヒョイっと身軽に躱すと瞬く間に距離を取ってリンの様子を伺う。その際ニンジンはリンの事を馬鹿にしているのかラインダンスの様に足を上げて踊り出し、その様子を目にしたマサツグとモツがただ戸惑いの表情を浮かべると、本当にこれは農作業なのか?と思い思いに呟き始める。そしてモツが戸惑いつつも興味本位でニンジンを鑑定すると、案の定一応のモンスター判定は有るのかニンジンのステータスが表示され、ステータスが表示された事にマサツグとモツは更に戸惑う。


「ッ!?…出るのかよ!?」


「まぁ~てぇ~~!!!!」


__ダダダダダダダダダ!!!…


これでも一応リンはそこそこ体力と脚力を持っている方で、一人で村に向かう時はモンスターから逃げるだけの実力は有ると豪語しており、その様子は普段の彼女の様子を見て居れば何と無く察する事が出来る。しかしそんな彼女の脚力を持ってしてもニンジンとの距離を詰める事が出来ず、ただただ耕した畑が逃げるニンジンと追い掛けるリンによって踏み固められ、徐々にリンの体力だけが消費されると言う…最初の農家のおじさんの様に追い掛けるだけの光景が間近で行われていた。


「ッ!!…ハァ!…ハァ!…

くっそぉぉ!!!…全然駄目!!……

本当にすばしっこい!!……」


__ぴょい~ん!…ぴょい~ん!…ダッ!!…


「あっ!…ニンジンが外に!?…」


「ッ!?…

そう言えばさっきもニンジンが外に逃げていた様な!?…

おじさん大丈夫なんですか!?…」


数十分の追いかけっこの後…リンがその場で膝に両手を突いて息を切らし出し動かなくなると、ニンジンは十分に遊んで貰ったとばかりに飛び跳ねては畑の柵を飛び越えて村の中へと姿を消して行く。そして脱走したニンジンにマサツグとモツは大丈夫なのか!?と心配になると農家のおじさんに追い掛けなくて良いか如何かの質問をするのだが、農家のおじさんは特段慌てる様子を見せる事無くモツの質問に不思議そうな表情を見せる。


「ん?…如何してだ?…」


「え?…

だって、あのニンジン一応モンスターなんじゃ!?…

紛いなりにも村の中で暴れられたら!?…」


「え?…あぁ!…そうかそう言う事か!!…

あっはっはっはっはっは!!!…」


「……え?…」


全く慌てた様子を見せない農家のおじさんに、モツがニンジンをモンスターと言っては危険性について話し出すが、農家のおじさんはモツがモンスターと言った事に若干の疑問を持った表情を見せる。しかし改めて指摘された事で自分が栽培している物がモンスターだと言う事を再認識したのか、今まで忘れていたとばかりに大笑いし出しては戸惑うモツに対して突如…確認するよう謝り始める。


「あっはっはっはっはっは!!…

いや…すまねぇ!…ククク!…そうだよな?…

俺っちが育てて居たのはモンスターだもんな?…

あっはっはっは!!…」


「え?…何がそんなにおかしい?…」


「いや…アンタは悪くねぇんだ!!…

ただ改めてこのニンジンがモンスターだって事を

認識させられたら!…

俺達も情けないもんだなって思っちまってよ?…

…まぁ…あれだ…とにかく大丈夫だ!…

この村には何てったって…勇者様が居るからな?…」


「え?…勇者?…」


農家のおじさんは自身の育てていた物はモンスター!…と壺に入った様子で笑い続け、笑い続ける農家のおじさんにモツが完全困惑してしまうと、ニンジンの脱走の話は何処かへ消えてしまう…そして次第にただ笑い続ける農家のおじさんの方が気になり出し、如何言う事かと困惑状態のままモツが話し掛けるのだが、農家のおじさんはただおかしそうに悪意が有る訳では無い!とモツに釈明し、その笑っている理由についてまたもや理解し辛い事を言い出すと、大丈夫と勇者の名前を口にし出す。その突然出て来た勇者の名前にモツはもはや何が何だかと言った様子で困惑し、マサツグもその勇者の名前に困惑して居ると、突如畑の外から聞き覚えの有る声が聞こえて来る。


「……おじさ~~ん!!!」


「おっ!…噂をすればだな?…」


「え?……ッ!?…リコちゃん!?」


「っ!?…ちょ!?…それ!?…」


突如畑の外から聞こえて来た声に三人が反応すると、農家のおじさんは来たな!…と言った様子で振り返り、マサツグとモツはその声の主を確かめる為に振り向き確認をする。するとそこには宿屋に居る筈のリコが何故か逃げた筈のニンジン二本を手に立っており、農家のおじさんに返すよう差し出してはいつもの事と言った様子で話し始める。


「ほらこれ!!…また逃がしてたよ!!!

逃がした数はこれで全部…

って、居たぁ~~~!!!」


「え!?…な、何!?…」


「丁度良いタイミングで来てくれたな!…リコちゃん!

…紹介しよう!!…この子は宿屋の看板娘リコ!…

そして!…この村の勇者で救世主のリコ!……

またの名を…ニンジンハンターのリコって、

この村の農家全員が敬意を払ってそう呼んでいる!!!…

それはそうと体は大丈夫なのかい?…」


「え?…ニンジン?…」


「ハンター?……」


ニンジンを農家のおじさんに返し、畑の中にマサツグとモツが居る事を確認すると、探した様子で二人を指差しては大声を上げる!そんなリコの反応にマサツグとモツが戸惑った様子を見せては何事かと!?リコに視線を向け出し、農家のおじさんが待っていたと言った様子で話し出してはリコの事を勇者と言い出す!その際農家のおじさんはふざけて言っていると言った様子を見せる事無く大真面目で紹介し始め、その紹介を聞いてマサツグとモツが固まってしまうとリコが農家のおじさんに文句を言う。


「ッ!!…もう!!…おじさん!!!…

その名前で呼ばないで!!…恥ずかしいから!!!」


「で…でもよぉ~…

俺達農家にとってリコちゃんは本当に救世主で…」


「………ッ!?…」


{…もしあのおじさんが言う通りだとするなら

リコは一体何者なんだ!?…

見た感じまだ小学校一年生位の筈なのに!!…

…汗も掻いている様子は無いし…

あのニンジンを如何やって捕まえた!?…}


農家のおじさんに紹介をされた際、自身に付けられている二つ名が恥ずかしいと言っては顔を赤くして腕を振り上げ怒り始めると、農家のおじさんは落ち着かせるよう両手を前へ盾にしながら言い訳を口にする。そんなやり取りを目の前で見せられているマサツグとモツは困惑した表情を見せる一方で、モツはあのニンジンを相手にしていたにも関わらずリコの服が汚れていない事に気が付き、更に額に汗を掻いていない事にも気が付くと、その捕まえ方に疑問を持ち始める。そんなリコの登場にマサツグとモツは困惑した様子を見せる中、リンはスタミナが復活したのか黙々とニンジンに再挑戦しようと畝に向かう。


「…よぉ~し!!…今度こそ!!…」


__ギュッ…ギュッ…ギュッ…ギュッ…


「…ッ!…リン!?…

…とにかく悩んで居ての仕方が無い!…

やってみるだけやってみるか!……」


「ッ!?…ヤブ?…」


リンが再度ニンジンの捕獲に挑み出し、それにマサツグが気付きリンの姿を見ていると、困惑した様子から一転…突発的触発された様子で畝の方へ向き直す。困惑するのも悩むのも後!…と吹っ切れた表情で畝へと歩き出し、リンと共にニンジンを眼下に置いてはスタンバイし始めると、その様子にモツとおじさん…リコが気付いては視線を向け出す。そして謎の緊張感が辺りに漂い始め、二人がそれぞれ選んだニンジンの茎を握り始めると、力を入れて抜き始める!


__ギュッ…ギュッ……ガッ!…ググググググ!…


「ふぅ~~~ん!!!…」


{……さぁてと…要はだ…

このニンジンが逃げて地面に着地する前に

捕まえれば良いんだ…

ここ一番で集中すれば!……}


__ググググググ!!…


マサツグとリンが畝からニンジンを抜き出し、リンが力を入れている声を隣で漏らしている一方で、マサツグはニンジンを逃がさず捕まえる方法を自身の解釈で理解しては、ニンジンの様子に目を凝らし集中する。その眼差しは真剣そのものでマサツグ自身ここまで集中するのは星のカー〇ィの刹那の見切り以来と言った様子で、とにかく徐々に抜いてはニンジンの動きに注意をする!そして互いにニンジンがそろそろ畝から抜けようとしている瞬間!…リンがイケると感じてか勢い良くニンジンを引き抜き例の如く暴れ出すと、リンはニンジンを逃がしてしまう!


__ググググ!…スポン!…ピ~ン!!…

ギュンッ!!…ブチッ!!…


「ッ!?…逃がさん!!!…」


「ッ!…捕まえた方が良い?…」


「いや…あの兄ちゃんのが逃げた時で大丈…」


本日二度目の逃走を許したリンが慌てて自身の抜いたニンジンを追い駆け出し、それを見た三人があ~ぁ…と言った様子で見詰めて居ると、リコが戸惑いながらもリンのニンジンの捕獲を買って出る。そのリコの買って出におじさんはマサツグが逃がした時で構わないと、マサツグも逃がす前提で話を進めるのだが…いざマサツグがニンジンを抜いて見せると三人の目の前でその集中力の凄さを見せる!


__…はぁ~…ググググ!…スポン!…ピ~ン!!…

ギュンッ!!…ブチッ!!…


「ッ!!…」


__ブォン!…ガシィィ!!!……


「ッ!?!?……」×2


マサツグがゆっくり息を吐いて一気にニンジンを抜いた瞬間!…例に零れずニンジンは畝から抜かれたと同時に暴れ出し、自身の茎と葉をぶち切って逃走を図ると、地面に向かって落下し始める。しかしそのタイミングをマサツグは見切ったとばかりに、瞬時に葉と茎を投げ捨て右手をまるで鮭を取る熊の様に薙いで、落下するニンジンが地面へ着地する前に捕まえると、その光景を見た農家のおじさんとリコは酷く驚いた表情を見せる。マサツグの薙いだ右手にはしっかりとニンジンが握られており、その出で立ち・取り方からモツはマサツグが熊になった…と誤解をしそうになるのだが、モツはそっと心の中に仕舞うとマサツグに質問をし始める。


「……マサツグさん…もしかして今刹那使った?…」


「……いや、使ってないよ?…

ただ今まで以上に集中しただけ…

とにかく地面に着地させなければ

問題無いと思ってたから、着地狩りを…」


「着地云々の前に宙を舞うニンジンを捕獲してたが?…」


マサツグが瞬時にニンジンを捕まえて見せた際、スキルを使った様子が見られなかった事からモツは不思議そうな表情でスキルの有無について尋ねると、マサツグはスキルを使ってないと首を横に振って返事をする。ただ自分がニンジンの動きに集中し、地面に足が付く前に!…と捕まえる直前まで考えていた事をモツに話し、モツがそれを聞いて腕を組むと若干悩んだ様子を見せるも、理解したのか何も言わなくなる。


「……なるほど…やっぱりマサツグは熊だったと…」


「ちょ!?…それ如何言う事だよ!?…」


「ば!…バカな!?…一発でニンジンを捕まえた!?…

それも地面に着地する前に!?…」


「……やっぱりあのお兄ちゃん達…凄いのね!!…」


モツはマサツグが獣と言う事を改めて理解した様子で話し、マサツグがそれに対してツッコミを入れるとニンジンを手に地団太を踏む。そうしてマサツグは無事に普通?…のニンジンを捕まえる事に成功し、バニーガールキャロットへの挑戦権を得る事に成功したのだが、農家のおじさんとリコは未だにマサツグの動きが理解出来ないのかジッとマサツグの事を見詰め続け、リンはリンで自身の抜いたニンジンを追い掛け回していた。


__ダダダダダダダダダ!!!…


「まぁ~てぇ~~!!!!」


「……所であれは如何すれば?…」


「……もう少し頑張らせてみてくれ…」


先程と同じ光景になり出し、リコが農家のおじさんに助けるかどうかの有無について尋ねると、農家のおじさんは暫くリンの様子を見詰めた後…もう少し様子を見る様にリコに伝える。しかし結果はリンの奮闘空しく…逃がす事になってしまい、後で村の方へ逃げたニンジンをリコが回収しに行く羽目になるのであった。



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