-第一章五十四節 朝から波乱と二度目のマスターオーダーとリンのうんちく-
さて……ゲームの世界でカルト教団との戦いにも漸く落ち着きが見え出し、誘拐されたリコを女将さんに返し終え…疲労から来る眠気に耐えられず女将さんに部屋を用意して貰い、ベッドに倒れ込んでログアウトした次の日…何事も無く連休二日目の朝を迎えるとマサツグは居間に移動して家族と軽い会話を交わしていた。居間では既に母親が朝食の準備を整え、その朝食を家族皆で食べているのだが、マサツグの弟が何を思ったのか若干困惑した表情で徐に質問をし始める。
__カチャカチャッ!…コト…ズズズ…
「……兄さん?…
今やってるゲームってそんなに面白いの?…」
「ッ!…え?…何で藪からスティックに?…
まぁ…色々考えて動かないといけないし…
扱いもそこそこ難しいけど…
楽しいのは楽しいぞ?…何でまた?…」
「んん…聞いてみただけ…」
「ッ……?…」
弟の質問にマサツグが何処かのル〇語で返事をすると、弟はそのル〇語に対してツッコミたそうな表情を浮かべるのだが、今は違うと言った様子でマサツグの話に耳を傾ける。マサツグはそんな弟の質問に戸惑いつつも、アルバスクロニクルオンラインのゲームシステムについて素直に感じた感想を口にし、弟に質問をして来た理由について尋ね返すが弟は興味無しと言った様子で朝食を再度食べ始める。そんな弟に何故聞いて来た?…と疑問を感じる中、朝食を食べ終え部屋に戻るとマサツグは早速ゲームを起動させようとする。
__バタンッ!…
「さてさて♪…昨日の続き~♪……って、あれ?…
うわぁ…電源切るの忘れて寝てたのか…ヤッベェ…
これバレたら怒られるな……まぁいいや…
とにかく!…続き続き~♪…」
__スチャッ…フィィィィィン!……
マサツグがゲームの電源を入れようとするのだがゲームの電源は既に入って居り、マサツグがゲームの電源を入れた覚えがないと言った様子で困惑して居ると、昨日ゲームの電源を切ったと言う記憶も無い事を思い出し始める。それを理解したマサツグはゲームに負荷が掛かって居る事と電気代がヤベェと言った二つに慌てた様子を見せ、家族へバレていない事に若干の安心を覚えつつも、反省をしたのかしていないのか良く分からない態度でヘッドギアを装着する。そしてゲームの世界へダイブしログインを済ませると、いつもなら最後にセーブした地点から再開される筈なのだが、今回は様子がおかしい…
__パチッ!…んん~~~!!………?
「……あれ?…何で真っ暗?…何で何も見えない?…
…ッ!…確かに最期余りの眠気に頭から突っ伏したのは
覚えて居るけど…とにかく起きて見る……?…」
__Zzz……へ?…
マサツグがゲームの中で目を覚まし大きく伸びをするも視点は真っ暗…何も見えない事に困惑しては最後どの様にして寝たのかを思い出し、状況を理解しうつ伏せのままベッドから顔を上げて辺りを見渡すと、まず目に付いたのはマサツグが最後に見た光景とは違う…おかしな光景であった。一体何がおかしいのかと言うと、何故かマサツグの直ぐ隣でリンが幸せそうに涎を垂らして眠っており、マサツグの最後の記憶では今泊まっている部屋にリンはいない筈であったからである。本当なら馬車の中に居る筈のリンが、この場に居る事に戸惑いを覚えるとマサツグの先程までの眠気が完全に吹き飛び、マサツグを尻目に幸せそうな寝顔を見せるリンは寝言を口にする。
「ふへへへ…Zzz…
初めて見ました…Zzz…
黒竜の………ふへへへへ…Zzz…」
{……一体何の夢を見てるんだ?…
…とにかく早く起きないと!…}
__グワァ!…ガッシ!!…
「へ?…ッ!?…」
良く分からない…恐らくは滅多に見られないアイテムを目の前にしている夢でも見ているのか…リンは我慢出来ないと言った様子で笑みを浮かべる一方で、マサツグはリンに疑問の表情を向けるのだがそんな事より誤解を受けない様に早く起きようと体を起こし始めると、突如背後から腕が伸びて来ては腕を掴まれ、寝惚けるリンに捕まってしまう。捕まったマサツグは何が起きた?と言った様子で戸惑い、リンに捕まった事を認識すると青ざめ始めるのだが、寝惚けるリンはそんなマサツグを余所に引き込む様に引っ張る!
「んへへへへぇ~♪……」
__グイッ!…ッ!?…ガッシ!!…
「ングッ!!……ッ~~~!!!!…」
「うぇへっへっへっへ♪…逃がしませんよぉ?…
レアマテリアル♪……Zzz…」
マサツグは態勢を整える暇も無いままリンに引っ張られると顔からリンの胸に飛び込み、リンも完全に寝ぼけているのかマサツグを逃がさないようガッチリホールドすると、もはや知らない人間からすれば言い訳の出来ない状況が出来上がる。マサツグの顔は完全にリンに胸に押し潰され、呼吸が出来ない事より自分の顔に柔っこい物が当たって居る事に動揺しまくっていると、リンはのん気に夢を見る。そうしてマサツグが拘束されたまま迂闊に動く事が出来ず、とにかく顔を動かし抵抗するもリンは動じない!…
{うおおおおいい!!……如何してこうなる!?…
確かに男としては悪くは無い気が…
それに良い匂いがする様な…
…ッ!?…じゃなくて!!HA・NA・SE!!…}
__ウゴウゴ!…ウゴウゴ!…
「やん♥…逃がしませんよ!…Zzz…」
__ぎゅうぅぅぅ!!…
{ッ!?…クソッ!…如何にもならなねぇ!!…
…まずは冷静に!…良く考えるんだ!…
打開策はまだ!!…}
マサツグが動くとリンが拘束を強め、そのリンの寝相にマサツグがヤバいと感じつつも女性との接触にドギマギする。彼女がいない歴=年齢のマサツグには少々刺激的すぎるのか、思わず抵抗する事を止めようかと考えてしまうのだが、ここで更にトンデモナイ事出来事が起き始める!それはマサツグが如何やってこの窮地を脱するか!…と冷静さを取り戻し考え始めていた時の事!…部屋の外から誰かが近づいて来る足音が聞こえる!…
__……ギィ…ギィ…ギィ…ギィ……コンコン!…
「……朝早くにすいません…起きていますか?…」
{ッ!?…うおおおおおおいぃ!?…マジか!?…
この声は聞き間違いが無ければクラリス!?…
何でここに!?…
てか、ドアのカギ掛かってるよな!?…}
部屋の外から近づいて来る足音は見事にマサツグとモツの泊まる部屋の前に止まり、ノックの音が聞こえて来ると外からクラリスの声が聞こえて来る。そのクラリスの声にマサツグの落ち着いた思考がまた動揺し出すと表情は青ざめ、部屋の鍵が掛かって居るかどうかと…とにかく現場を見られないよう願い始めるのだが、クラリスは部屋のノブを回すなりトンデモナイ事口にする!
「…先に起きていたモツさんからは
勝手に入って良いと聞いていますので入りますよ?…」
__ガチャッ!!…ギイィィィィ~~……
{ッ!?…モツゥゥゥゥゥゥ!!!!…おま!?…
何て事をぉぉぉぉぉぉ!!!…}
__バクバクバクバクバク!!!…
クラリスが口にしたのはモツは既に起きていると言う事と、今居る部屋の鍵が掛かって居ないと言う事!…更に都合が悪い事は続けて起き、モツから許可を貰ったと断りを入れてからクラリスが中に入り始めると、そのモツの許可にマサツグは酷くショックを受ける!この時…マサツグの心音はバクバクと慌て出し落ち着かないず、最後の最後まで如何したものかと悩み続けるのだが、マサツグの考え抵抗空しく…その現場を遂にクラリスに見られる…
「失礼しま~……ッ!………」
__ふわぁ~お♥……
{………終わった!…
今この時を持ちましてマサツグさんの人生は
終わりました!!…音を立てる所か…
完膚なきまでに粉々に!……}
クラリスが入って来て早々部屋を見渡し出し、マサツグが居るかどうかを確認し始めると、リンに抱き抱えられているマサツグを発見する。その際リンの服はマサツグの抵抗か?はたまた自然なのか?…とにかく開けた様子を見せてはマサツグの顔を自身の胸元に押し付け、マサツグも何とかクラリスの姿を確認出来る位の視界を確保すると、クラリスの呆れた様な軽蔑する様な表情を見つける。そんなクラリスの様子にマサツグが一人ショックを受けては終わった!…と心の中で嘆き、クラリスは二人を見下ろす様にジト…とした目をし、腕を組んで眼鏡を上げると軽く溜息を吐く。
__……はぁ……クイッ…
「…この子ったらまた人を巻き込んで寝て!……
本当に困った子ね?…全く!…」
「……へ?…」
「…ちょっと待ってくださいねぇ?…
…直ぐお助けしますので…」
クラリスが呆れた様子で話し出したのは意外!…マサツグの破廉恥光景についてでは無く、まさかのリンの寝相について!…クラリスはリンの事を知っていると言った様子で困ったと口にし、マサツグがクラリスの予想外の反応に戸惑った反応を見せて居ると、捕まっているマサツグの方へと四つん這いでベッドに上がって来る。その光景にマサツグがまたドギマギし始めると、クラリスはマサツグに申し訳なさそうな表情を見せては我慢するよう声を掛け、そのままリンの耳元まで移動すると大声で怒鳴るでは無く囁く様に一言呟く。
__ギィ…ギィ…ギィ…ギィ……スッ…
「……早く起きないと…お仕置きよ?…」
__ッ!?!?!?…ガバァ!!!!…
…ダアァァン!!!!…
「はい!!!起きてます!!!…
私起きてます!!!!…寝てません!!!…
寝てませんよ!!!!!……って、あれ?…」
クラリスはリンの耳元に手を添えただ一言…お仕置きすると呟くと、次の瞬間リンは電源が入った様に飛び起きて部屋の壁に張り付くようへたり込み、クラリスに起きているとアピールし始める!その勢いは凄まじく!…何をしても放さなかったマサツグの頭を投げ出し、マサツグがその勢いでクラリスの太腿に受け止められるとクラリスは若干驚いた反応を見せる。
「ッ!…おっと!…
だ、大丈夫ですか?マサツグさん?…」
「……もう色々と駄目かもしんない…」
「え?……」
「あれ?…先輩?…何でここに?…
と言うよりこの状況は?…」
クラリスが吹き飛んで来たマサツグを心配し声を掛けるが、マサツグは両手で顔を隠すと赤面しその場で丸まると、プルプルと小刻みに震えてクラリスに答える。何とも居た堪れない気持ちになりつつもマサツグが転がって居ると、何の事か分からないクラリスは困惑した様子でマサツグを見詰め、リンはリンで状況が飲み込めないと言った様子で戸惑い始める。そのリンの言葉にマサツグは酷くツッコミを入れたくなるのだが、そんな事よりと言った様子でクラリスがマサツグを心配すると、リンの寝相について謝罪しながら説明をし始める。
「……本当にごめんなさい!…マサツグさん!…
痛くなかったですか?…
…この子熟睡するといつもこうで…
ただでさえ抱き枕が無いと眠れないとかで
困った子なのに…一緒に眠ると誰だろうと
あんな風に抱き抱えて動けなくするんです…
本人も悪気が有ってやっている訳では無く…」
「い、いや…別に問題は無いですよ?…
分かってます!…寧ろ悲しいのは己の愚直さで…」
「え?…」
「……お~い!起きたか?…ッ!…
起きたのか、おはよう。」
クラリスがリンの代わりに頭を下げて謝り、リンは未だ状況が分からないと言った様子で困惑する。クラリスの話を聞く限りリンはギルドでも良く寝ているのか、クラリスがほとほと困り果てた様子で謝罪し、その謝罪にマサツグが丸まり状態を解除すると座り直して大丈夫と答え、改めて自分の未熟さにショックを受けた様子を見せては顔を赤くしプルプルと震えていると、様子が気になったのかモツが自分達の泊まっている部屋を覗きにやって来る。そしてマサツグとリンが起きている事に気が付き挨拶をし出すのだが、のん気に挨拶をするモツに対してマサツグは顔を赤くして文句を言いたそうにすると挨拶を返す!…
「ッ!!……おはようモツ!!…
今日も良い天気だね?……」
__ゴゴゴゴゴゴゴ!!…
「お、おう…何でそんな顔をする?…
俺なんかやったっけ?…」
「……いや?…別に?…」
マサツグの挨拶にモツは何が有ったと若干戸惑った表情を見せては訳を聞くが、マサツグは何でもないと表情そのままモツに返事をし、そのマサツグの表情にモツが困惑を覚えているとマサツグはベッドから降りて身支度を手早く整え始め、その間クラリスはリンに何が有ったのかを呆れた様子で話し、リンは開けた制服を着直し戸惑った表情を見せて居た。その間にマサツグが準備を整え終え、一同はとりあえず宿屋一階ダイニングに向かうと、女将さんがマサツグ達人数分の朝食を用意しては机の上に並べていた。
__コトッ…コトッ…
「……ッ!…あっ!…おはよう御座います!!…」
「おはよう御座います!…リコちゃんは?…」
「まだ眠っています…送り届けて下さってからずっと…
でも何か病気や怪我で眠り続けていると言った様子では
無いので…もう直ぐ起きて来るかと…」
「…ふぅ!…そうですか!…それは良かった!…」
二階から降りて来たマサツグ達に女将さんが気付くと挨拶をし、その挨拶にマサツグが答えるとリコの様子について質問をし出す。一応見た限りでは何とも無かったのだがあの繭に包まれていたのだ…帰って来てから異常は無いかと言った様子で心配し女将さんの返事を待っていると、女将さんは安心した表情で特に何も無い、大丈夫と答える。時間を確認するよう時計をチラッと見て、もう直ぐ起きて来るかもと予測を立ててマサツグに笑顔を見せ答えると、その返事を聞いたマサツグとモツがホッと一安心する。そして女将さんが用意してくれた朝食を食べようと四人が席に座ると、クラリスがハッと本来の目的を思い出した様子でマサツグとモツに話し掛け始める。
「ッ!…そうでした!…思わず座っちゃいましたけど…」
「ん?…如何した?…」
「いえ、お食事前で申し訳ないのですが…これを…
昨日の今日なのですがギルドマスターより
マスターオーダークエストをお持ちしました!…」
「え?…マスターオーダー?…二回も?…」
四人が席に座っていざ朝食を食べようとしたタイミングで突如クラリスが思い立った様子を見せると、徐にウエストポーチから巻物を取り出し始め、その様子にマサツグが不思議そうな表情を浮かべてクラリスに質問をすると、クラリスはマサツグとモツに取り出した巻物を手渡してはマスターオーダーと説明する。二日続けてのマスターオーダーにモツが戸惑いの表情を見せるも、二人はクラリスから手渡された巻物を開いて内容を確認し、その内容に疑問を感じると二人は困惑の表情を浮かべてはクラリスに説明を求め始める。
__パラッ………?…
「…クラリスさん?…これって如何言う事?……」
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「マスターオーダークエスト」
依頼レベル 65 パーティでの活動推奨
今回、カルト教団に襲われ有耶無耶になっていた春王祭を
開こうとスプリングフィールド王が我々ギルドに依頼を
提出された。依頼内容はどれも食材を集めてくる事。
しかし要求されている食材はどれも聞いた事が無い食材、
見た事無い食材。故にこの依頼はギルドに登録している
冒険者全員に手渡される依頼書だ。受ける受けないの
選択は自由。
追伸、これは私の考えだが王は今回の事件に対しての
慰安の意を込めて盛大に開こうとお考えになっていると
思われる!…出来れば全冒険者がこの依頼に参加して
くれる事を切に願う!…尚、食材の方はこの四種だ。
魚:時季知らず
キノコ:土もどきトリュフ
野菜:バニーガールキャロット
調味料:妖精のバジル
ギルドマスター・フリード
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「…えぇ~っと、簡単に説明しますと…
今回のカルト教団の騒動で一時お預けになっていた
春王祭を慰安の意を込めて盛大に行おう!…
と、カルト教団の恐怖を拭い去るようスプリング
フィールド王が企画した一大企画のお祭りと
なっています!…このお祭りは一週間続けて
行われる予定で、各町や村を巡って…
最後に王都に戻って来ると言う…
国の団結を図る為に模様されたお祭りなのですが…
皆さん…やはりあのカルト教団の一件以来
ピリピリしている様子なので…
それを緩和しようと考えてのお祭りを!……」
「い、いや…それは良いんだけど…
この食材ってのは?…
何でお祭りで集める物が食材?…」
マサツグがクエスト巻物の内容を見えるようクラリスに開いて見せ、如何言う事かと説明を求め始めるとその問い掛けにクラリスは説明を始める。しかしクラリスが話し始めたのはクエスト巻物に書かれてある追伸の内容と似ており、祭りの詳細を話してはクエスト内容とは関係無い内容で、マサツグがその事に困惑するも改めて説明を求めようとしていると、リンが朝食を食べながら覗き込んでは一言口にする。
「…これ……見る限りでは献立はホイル焼きですね?…」
「…え?……」
突然リンがクエスト巻物を見るなりホイル焼きと口をもぐもぐと動かしながら言い出し、マサツグとモツ…クラリスがその一言に戸惑って居ると、リンは先程の説明の捕捉…マサツグの質問に答えるよう食材を集める理由について語り出すと、ついでに食材の説明も話し始める。その際マサツグが全員に見えるよう机の上にクエスト巻物を広げて見せ、モツは一旦クエスト巻物を巻いてしまうと朝食を食べ始め、リンは久々の特技が披露出来るとばかりに饒舌になる!
「春王祭では毎回王室料理人達が民衆に対して
料理を振舞うんですよ!その料理が毎回美味しくて!…
何でも旬の食材を使って作るそうで毎回みんなが
楽しみにして居るんですよ!!…
…で、この食材の名前を見た限りではホイル焼きかと…
まずはこの時季知らずって言う魚ですが、簡単に言うと
鮭です。その名の通り…時季が違うこの大陸の川に
登って来てタマゴを産んでそして絶命するんです。
で、絶命すると一瞬で鮮度がどんどん落ちて腐ります。
ですが、ある手順で捕まえると鮮度が落ちずに
保存出来るとかで、味も格別で脂がのっていながらも
身は意外としっかりしていて美味しいとか!…
まぁ、まずこの時季知らずを見つけるのが難しいんです
けどね?……因みに余談ですがこの魚は通称・馬鹿鮭って
呼ばれてたりします!
っで、次が土もどきトリュフなんですが…まぁ、これと
言った特徴の無いまんまのトリュフです。強いて特徴を
上げるとするなら見た目でしょうか?…何処をどう見ても
見た目が子供の作った泥団子や土塊にしか見えなくて…
大抵の人はそれがトリュフって気付かないまま捨てちゃう
そうです。あっ!…でもちゃんと水とかで洗い流して
綺麗にするとちゃんとトリュフなんですよ?…
それに水で洗うと妙に香ばしい匂いがして…その手の
マニアには堪らない貴重な一品に化けるとか?…
それに元々香りが良くて料理の味や風味のランクを上げる
のに欠かせられない逸品らしいですよ?これは良く老木の
下を掘り返したり、イノコロムを倒すとドロップする
らしいですよ?…
お次がバニーガールキャロット!…これがまた変わった
ニンジンでして…何と自立して動き回る事の出来る
ニンジンなのです!!…その様子から一番最初は
モンスターとして扱われていたのですが、最近ではこの
ニンジンを栽培している農家が居るらしく、
その農家さんがこのブルーベルズの村に居るとか!?…
味もニンジン独特の青臭さが無くて寧ろほんのりと
優しく甘い!…まるでバターグラッセの様に甘いので
夢中で食べてしまえるとの事で、子供にとって
夢のニンジンとして扱われているそうです!…
因みにその姿形は名前の通りで必ず二又に生えて
人間の足の様に育つみたいです!まるで網タイツを
穿いたかの様な模様が出て来て、そのニンジンの脚も
美脚と…まるでバニーガールの脚の様に見えた事から
その名前が付いたそうです!
最期はこの妖精のバジルですね!…恐らくこの依頼に
おいて最大の難易度を誇ると予想される滅多に
見つからない香草です!…これは名前の通り妖精が
住んで居る所でしか育たないバジルと言われてまして、
一説だと妖精が大切な人に贈り物をする際にその香草を
使って贈り物をするのだとか!…そんな逸話の有る
本当に貴重な香草なんです!!…見た目も普通のバジル
より大きくて、余りの大きさに調味料として使えない
んじゃ?…と思われるんですがこれが意外と新芽だったり
して普通に使えると…場合によっては胡椒より高価で
取引される事も有るそうですよ!?……あっ!…
後このバジルは何故かキノコ類と一緒に調理をすると
不思議な事が起きるそうで、ある意味料理人にとっては
一度は使ってみたい食材らしいです!…
ここまでがクエスト巻物に書かれていた食材の
説明ですね!…いやぁ~!!…どれも生で見た事が無い
素材なので見てみたいです!!……もしかするとこれが
切っ掛けで見る事が出来るのかな?!…なんて!……
って、如何しました?…」
「………。」
リンがマテリアルマニア(食材)を全開に!…クエスト巻物に書いてあった食材の説明・うんちくを片っ端から笑顔で説明し、その様子にさすがのクラリスも圧倒された様子で聞いていると、マサツグ達は呆然とする。リンの好奇心に興味と…素材であれば何でも良いのか?と言わんばかりの情熱を見せるリンにクラリスが呆然とする一方で、ふとマサツグがある事を思い出すと色々と疑問が出て来る。それはリンが説明の中で話した各食材の見た目についてであった。
{……あれ?…そう言えば何か引っ掛かりを
感じる様な?…確か一つ目は馬鹿鮭…
じゃなくて時季知らず…だっけか?…
熊五郎に丸々一本デカい鮭を貰った様な?…
それにトリュフも…クランベルズに戻る道中で
商人が襲われてて、それを助けたら泥団子を
貰ったんだっけ?…商人は貴重みたいな事を
言ってた様な?…
…んでもってニンジンはともかくバジル……
丁度ティターニア様から小包みたいなの貰ったっけ?…
何処と無くジ〇リ臭のする…これって偶然か?……}
「先輩!!…マサツグさん!!…
如何したんですか!?…何でそんな固まって…」
マサツグは今までにあった事を思い出す様にその各場所で貰ったアイテムの事を思い出し、その特徴がリンから今まさに聞いた物と合致すると感じると、奇妙な違和感を覚え始める。そうしてマサツグが疑問を感じ固まって居ると、同じ様に隣でリンの情熱に圧されたクラリスが戸惑いの表情のまま固まり、リンが二人の様子に気が付いた所で手を振ったり声を掛けたりと固まる二人にアピールをし始め、そのアピールでクラリスの意識がハッと戻ると苦言を一つ零す。
「ッ!……はあぁ~……
貴方のその途方も無い知識とうんちくに
戸惑って居るのよ!…
何でその情熱をもう少し業務に
活かせられないのかしらって?…」
「ッ!?…せ、先輩酷いですよ!?…」
__バタバタバタバタ!!……パンッ!…
「…頂きます!……」
クラリスの苦言にリンがショックを受け、パタパタと腕を振って抗議するとクラリスは呆れた様子で手を合わせ、リンを無視し食事を口にする。それはまるで慣れた様子でスッと食べ出し、リンもこれ以上は無駄だと感じたのかムスッとした表情で席に座ると、食事を再開する。そうしてマサツグも悩んだ表情を見せては徐に食事を取り始め、ずっと悩んだ表情を見せて居ると心配されていたリコが起きて来たのか自室の扉を開けて姿を見せる。
__バァンッ!!…ッ!?…
「…ッ!?…ッ!?…
…あれ!?…ここは…お家!?…」
「ッ!?…リコ!!…」
「ッ!!…お母さん!!!…」
自分は馬車で寝て居た筈と言った慌てた表情でリコが飛び出し、その飛び出して来たリコにマサツグ達が驚いた反応を見せて居ると、リコは辺りを見渡して家に帰って来た事を確認する。慌てた様子ながらも無事にリコが起きて来た事に女将さんが改めて感動した表情を見せ、リコの名前を呼んで腰を下ろし迎え入れる様に両手を広げて見せると、その女将さんの様子を見たリコもハッと気が付いた表情を見せては涙ぐみ、母親に向かって駆け出し抱き着く。そんな光景を見たマサツグ達は改めて助ける事が出来て良かったと思いつつも食事を済ませると、話は先程のクエスト巻物に戻って、マサツグは一段落した所でアイテムポーチから思い当たるアイテムを手にし始める。
「……ふぅ!…さて、落ち着いた所で…」
__ゴソゴソ!…
「……?…何如何したんだ?…」
「いや…思い当たる物が約三つ…
リンに確認して貰おうと思ってな?…」
__ガタッ!!!…ガシッ!!……
マサツグが自身のアイテムポーチを弄り出してモツが気付いた様子で声を掛けると、マサツグはリンに今まで手に入れたアイテムの鑑定を口にする。その言葉を聞いたリンが席から急に立ち上り、興味を持った表情を見せるとクラリスに腕を掴まれ制止させられるのだが、マサツグが大丈夫と言った様子で手で合図を送ると、今現在で疑わしい…恐らくクエスト巻物に書かれてあったアイテム三品と+αを机の上に広げ始めるのであった。




