-第一章五十二節 鬼のクラリスと抜けた理由とリコの号泣-
クラリスがリンにお仕置きと言う名の寝技をオンパレードし、マサツグがそれを見て戸惑いを隠せぬまま棒立ちして居る事数分…満足げな表情を見せるクラリスが何かを思い出した様子でハッ!と表情を掛けるとマサツグに居る方を振り向き、クラリスが振り向いた事にマサツグが思わずビクッと反応して身構えると、刹那が使えるかどうかの確認をし始め、勿論マサツグが突如身構えた事にクラリスは驚く。
「ふぅ!……ッ!…
あっ!そうだ!マサツグさん!!…」
__ビクッ!!…バッ!!…
「え!?…きゅ…急に如何したんですか!?…」
「え?…あっ…あぁ!…ス、スマン…
気にしないでくれ…」
クラリスが身構えるマサツグに戸惑った表情を見せると困惑した様子で質問をし、マサツグもその問い掛けでハッ!と自身が思わず身構えている事に気が付くと、釣られて戸惑った表情を見せては警戒を解く。そしてクラリスの問い掛けに対して「何でも無い」と答える一方…マサツグの頭の中ではどうにも先程のクラリスの寝技集が繰り返し再生されては動揺を隠せないで居た。
__袈裟固!!…逆十字絞!!…
腕挫十字固!!!…
{…綺麗に決まってたモンなぁ…
…しかも容赦が無い!……
あんなの目の前で見せられた後だと
嫌でも警戒してしまうぞ?…}
目の前でクラリスが生き生きと寝技を繰り出す一方…リンはその間断末魔の悲鳴を上げて何度も許しを請う…瞼を閉じればそんな光景が目に浮かぶマサツグは動揺を隠し切れず…ただただクラリスに対して戸惑いを覚えていると、クラリスは徐に肩掛けカバンから何やら厚めの名簿の様な紙の束を取り出してはパラパラと捲り出し、マサツグにある頼み事をすると同時に聖堂の方へと歩き出し始める。
「…すいませんがそこで寝ている
リンを連れて来てくれませんか?…
これから行方不明者及び誘拐被害者と
思わしき人達をギルドで管理している名簿と
照らし合わせないといけなくて…」
「え?…あっ…あぁ!…分かり…ました…」
{…リンは完全にグロッキー状態なのに連れて来いと…
やはりこの人鬼だな…
…まぁ、種を蒔いたのはリンだけど…}
クラリスの頼み事にマサツグが戸惑いながらも同意するが、そのマサツグの足元では完全に虫の息状態のリンがうつ伏せに大の字で倒れており、この状態だと言うのに容赦無く働かせるのか?と倒れるリンを見詰めてクラリスの鬼畜さに動揺を隠せないでいた。確かに元の原因はリンに有ると考えつつもこの状態でまともに仕事が出来るかどうかが微妙で、疑問を感じつつもマサツグはリンを拾い上げるとまるで丸太を担ぐよう右肩に乗せて運び出す。その様子は何処をどう見ても人攫いの様にしか見えないのだが、クラリス先導の元…聖堂の扉を開けて中に入ると繭の回収作業も大詰めに入ったのかほぼほぼ天井から回収されており、視点を下に戻すと回収された繭は聖堂の床に並べられていた。
__ガタン!…ギイイィィィ~~……
「ッ!…もうほぼほぼ終わってる?…
…ッ!?…床が豪い事になってる!?…」
「おぉ~い!!…
こっちの列は全部解放したぞぉ~!!
次どの列だぁ~~!!!…」
「ッ!…悪い!!こっちを手伝ってくれぇ~~!!!
過剰包装されててキツイ~~!!!!」
並べられた繭は冒険者やギルド職員達が丁寧に手作業で開いて行き、捕まっていた人達を開放するのだが中には強固に包んだのか、硬くて開く事が出来ないと協力を仰ぐ声も聞こえて来る。それでも順調に救助作業は進んで居ると救助された人達はギルド職員案内の元とりあえず一か所に集められ、バリケードと化していたベンチの内…大丈夫だったものに座らされていた。その誘拐された人達はやはり女性の人や子供が大半で、その偏り様にマサツグが疑問を覚える。
「……アイツらの話を聞いてはいたが…
何で女性や子供ばかり?…
見た感じやっぱり男性がいない様な?…」
「ッ!…おぉ~い!!マサツグゥ~!!!」
「ッ!…モツ!…」
「早くこっちに来て手伝ってくれぇ~!!
あの子を見つけないと!!」
リンを抱えたままマサツグが誘拐された人達について疑問を感じていると、モツがマサツグを見つけたのか声を挙げて呼び始める。そのモツの声に反応してマサツグが振り向くとそこには他の冒険者やギルド職員と同じ様に繭を切り開くモツと将軍…ハイドリヒの姿が有り、モツは早く手伝うようマサツグに訴え掛けると作業に戻り始める。そしてそれを聞いたマサツグも作業に加わろうととりあえずモツに手を振るのだが今だマサツグはリンを抱えおり、如何したものかと悩み出し始めるとクラリスがマサツグに声を掛ける。
「…あっ!…もう大丈夫ですよ!…
その子…もう目を覚ましていると思うので…
…ね?リン?…」
__ビクゥ!!…
「は…はい!!大丈夫です!!!…
降ろして貰っても大丈夫です!!!」
クラリスはまるでリンが気絶の演技をしているとばかりに笑顔で話し出し、マサツグが担いでいるリンに「起きているでしょ?…」と何やら殺気に似た冷気を感じる話し掛け方をすると、リンはマサツグの肩の上でビクッと大きく反応しては飛び起きる!そして慌てた様子で返事をしてはマサツグに自分は大丈夫と訴え出し、マサツグがそのリンの反応に戸惑いつつもリンを降ろすと、リンは自力で立ち上る。
__……スッ……トッ……
「い…いやぁ~!…ご迷惑をお掛けしました!!…
あは…あははははは…」
「ここまで有難う御座いました!…
では、私達は確認作業を…
リン、これが貴方の分ね?…」
「あっ!…はぁ~い…って、多くないですか?…」
リンが自立して見せるがやはり何処か慌てた様子見せ、マサツグに苦笑いをしながらお礼の言葉を口にし頭を掻き出し始めると、その後ろではクラリスがマサツグにお礼の言葉を口にする。しかしそのクラリスの目は笑って居らず…先程取り出した紙の束を手にリンを呼ぶと紙の束を手渡し出すのだが、明らかに紙の束の量がクラリスより多く…それを受け取ったリンが思わずクラリスに尋ねると、クラリスは有無を言わさない様子で押し付ける。
「お願い…ね?…」
__ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!…
「ウッ!……ハイ…」
「…よし!…ではこれで…」
リンの問い掛けに対しクラリスが威圧するよう笑顔で声を掛けると、また背後に幽○紋を背負い始める。その様子はリンの目にも入ったのか戸惑った様子の反応と声を挙げてはガックリと肩を落として了承し、リンが了承した事にクラリスが幽○紋を仕舞って本当の笑顔を見せると、マサツグに挨拶をした後リンを連れて職務へと歩き出し始める。そして二人はその誘拐された人達の所まで歩いては名簿を片手に一人一人照らし合わせ出し、リンの様子にマサツグが思わず敬礼をすると、モツの所へと向う。
__コッ…コッ…コッ…コッ…
「…ッ!…やっと来たか!…随分と遅いご帰還で?…
…って、どした?…
何か疲れてる顔をして居るけど?…敵襲?…」
「そっちの方だったらどれ程良かった事か…
それよりヘビーな光景だよ…」
「へ?……」
マサツグがモツの所まで戻ると、漸く戻って来た事にモツが声を掛ける。その際少し茶化した様子で声を掛けマサツグの方に振り向くのだが、そこに居たマサツグは思って居た反応とは違う…ゲッソリとした様子のマサツグで、そんな様子を見たモツが困惑した表情で「何が有った?…」と尋ねると、思い付いた出来事を口にする。しかしマサツグはその問い掛けに対して寧ろ肯定したい様に話しては違うと答え、その返答を聞いたモツが更に困惑しているとマサツグはモツの隣に置いて有った繭に手を掛ける。そして繭を斬るのにナイフを持っていない為…春風刀を抜き始めるのだが、そこでも一悶着が起きる!
「はあぁ~~…やれやれだぜ…っと…」
__チャキッ!…スラァ…フワァ…
横に寝かせる様に置かれた繭に対してマサツグは腰を落とし何も考えずに春風刀を抜くと、若干の風が鞘から噴き出る。如何やら持ち主の思う様に風の噴出…on・offをする事が出来る上に強弱の指定も出来るらしいのだが、それよりもその風を感じたハイドリヒがふと風の吹いて来た方を振り向くとそこにはマサツグが有り、作業に没頭していたらしくマサツグの存在に今更気が付くと慌て出す!
「ッ!……ッ!?…え?…ちょっと待て!?…
マサツグ!!…いつ戻って来た!?…じゃなくて!!…
今その剣を!…」
「え?…」
「ッ!…えぇ~い!…何を騒いでおるのだ!…
ハイド!……ッ!?…ぼ…冒険者殿!?…
まさか!!…」
「え?…」
マサツグが隣に居た事で驚くハイドリヒなのだが、マサツグが刀を手にして居る事に驚くと更に慌て始める。その時のマサツグはまるで刀を包丁の様に握っては今まさに繭を斬る体勢で止まっており、ハイドリヒの慌て様に何かしたのか?とマサツグが困惑して居ると、将軍が騒ぎに気付き苦言を言おうとする。しかしマサツグが刀を握っている事に気が付くとハイドリヒ同様…戸惑った様子でマサツグと刀を見詰め出し、その様子にマサツグが更に困惑して居ると、ハイドリヒが戸惑っている理由について話し出す。
「そ!…その剣は今まで誰にも抜かれた事の無い
宝剣の筈!?…一体如何やって!?…」
「え?…ど、如何やってって言われても…普通に…」
__スゥ…チャキッ!…スゥ…チャキッ!…
「ッ!?…バ!…バカな!?…
その剣はスプリング大森林の奥深く!…
大樹の園で見つかった宝剣!…
今まで誰にも抜けなかった上に誰にもまともに
握れなかったのに!?…誰も扱えない事から
我が王国の宝物庫で眠っていた幻の剣を!?…」
__ズイズイ!…ズイズイ!…
如何やらこの春風刀は今までにも何度か何者かの手によって抜けるかどうかの確認?…が行われていた様だが誰にも抜けず仕舞いだった様で、マサツグがスッと抜いているのを見てハイドリヒと将軍は戸惑って居るらしい…その際マサツグは何度目となるか分からないハイドリヒの詰め寄りを受けて、如何やって抜いたのか!?と鬼気迫る様子で尋ねられると、目の前で仕舞い…抜いて見せると言う実演をして見せるのだが、二人は信じられない様子で…ハイドリヒが春風刀を手に入れた経緯と誰も抜く事が出来なかった事について話し出し、そして徐々に詰め寄って来るハイドリヒに対して将軍が止めに入るとマサツグに更に詳しい経緯について質問をする。
「ッ!…まぁ落ち着かんか!…
確かにお前の気持ちは分からなくもないが…
…して、どの様にして抜ける様に?…
確かワシの知っている限りでは冒険者殿も最初?…」
「ッ!…あれ?…知ってたんですか?……
…まぁ…抜ける様になったきっかけは正直…
理由は俺にも分からないですけど…
ある強敵の騎士と戦っている最中に剣を吹き飛ばされて…
止めを刺されそうになった時に咄嗟に手に取ったのが
この春風刀なんです…あの時確かに自分のカバンの中に
仕舞ってあった筈なのに…気が付けば握っていて…
ふと剣が数ミリ鞘から出て居る事に気が付いて
そのまま…」
「…抜いたと言うのか……ふむ…
その吹き飛ばされた際に衝撃を受けて抜けたにしては
おかしい…それで良いのなら当に抜けて居る筈…
なのに何故?…」
「それにいつの間にか握られていたと言うのもなぁ?…
いや!…疑う訳では無いのだが……マサツグ?…
マサツグは戦う度に奇妙な偶然に助けられている事が
多いな?…私の時然り…その強敵の騎士然り…
まるでお伽話の様な…」
将軍はマサツグが初めて刀を手にした時の事を話し出し、その時抜けなかった筈と口にするとマサツグが少し戸惑った表情を見せて、肯定すると質問に答え出す。その説明をする際…あえてライモンドの名前を上げずにただ強敵と答え、そのライモンド戦での出来事を踏まえて刀が抜けた経緯を経緯を説明すると、将軍はやはり原因が分からないと言った様子で腕を組んでは悩み出す。そうして救助の様子から一転…春風刀が抜けた経緯について悩み出す将軍とハイドリヒにマサツグが困惑して居ると、モツがある提案を口にする。
「……ッ!…だったらいっそ調べて見れば如何だ?…」
「え?…」
「確か…
特殊条件武器ってのは一つ一つ解除条件を
達成したらその条件が何だったのかが
書かれてある筈だぞ?…アイテム画面から選択…
詳細で分かると思う!…」
「…ア、アイテム画面?…詳細?…」
モツの提案は冒険者側でしか分からない方法だが確実に解放条件が分かる方法で、その提案に将軍とハイドリヒが困惑した様子を見せる、マサツグは理解した様子でアイテム画面を開き始める。その際モツは念の為と言った様子で確認方法を口にし、その確認方法に将軍とハイドリヒが更に困惑した表情を見せるのだが、マサツグが詳細を出すとそこにはしっかりと春風刀の解放条件が表記されていた。
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春風刀 壱式
レア度C
ATK+75 MDEF+10 SPD+30
[春風の加護]
一定時間ごとにHPを2%ずつ回復する。
特殊武器条件達成
開放条件:覚醒スキル習得 or F.S風神演武の発動
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「風神…演武?…って何?…」
__どよ!?…
「……ッ!?…え?…えぇ?…
何その反応!?…俺なんか変な事言った?…」
解放条件…覚醒スキルの習得もしくはF.S風神演武の発動と表記されてある事を確認すると、マサツグがその聞いた事の無いスキル…風神演武に疑問を持っては言葉にする。そしてその風神演武と言う言葉はマサツグの近くに居たモツやハイドリヒ達だけでなく、他の冒険者達の耳にも入ったのか突如その言葉を発したマサツグに対して動揺の声が辺りから聞こえ出し、その動揺の声にマサツグも釣られて動揺する。そして何か悪い事でも言ったのか?と戸惑った様子でモツに尋ね出し、その問い掛けに対してモツは若干戸惑いながらも咳払いを一つしてから風神演武について説明し始める。
「ッ!?……ッ!…ン゛ン゛!!……あぁ~っとだな…
風神演武ってのは簡単に言うと突発的な覚醒スキルだ!…
勿論突発と言うだけあって好きなタイミングで
発動出来る訳じゃ無くて本当にランダムでいつ発動
出来るか分からない…そんなフィールドスキルだ。」
「え?…突発なんだから好きなタイミングもクソも…」
「いやそう言う意味じゃなくて…
突如使用可能のアイコンが出て任意のタイミングで発動…
って、意味じゃないって事の方!…
本当に突如自身の身が軽く感じたなぁ…
と思えば全ステータスが向上しているみたいな…
とにかく本人の意思とは完全に無関係に…
本当に何から何まで突発的に覚醒するスキルを
「演武」って言うんだ。
そんでもってここで出来る演武は「風神演武」…
…つまり風属性の演武で…
俺も実際にやった事が有る訳じゃ無いから詳しくは
分からないけど…ただやった事の有る人の言い分だと……
まるで全身に風を感じたと思えばトンデモナイ勢いで
技が強力になって、更に力が殆ど要らない位に
武器が軽く感じた…って言ってのは聞いた事が有る!…」
モツが風神演武を突発的な物と説明しタイミングの話をし出すと、マサツグが疑問を持った表情でツッコミを入れ、モツがマサツグのツッコミに対して訂正を入れては説明を続ける。体験者の話を交えて説明するモツの話を聞く限りでは、発動条件等が分かっていない様子でほぼ乱数によって発動される物だと言う事が考えられ、マサツグはその風神演武をいつ発動したんだ?と考え始めると、今自身が握っている刀に目を向ける。だがどんなに見つめた所で刀が答える筈が無く、将軍とハイドリヒもモツの話を聞いて理解出来ないのか悩んだ様子でマサツグの刀を見詰めると、ただ周りが奇妙な雰囲気になり始める。
__………。
「……あぁ~…まぁ!…
とにかく抜ける様になった切っ掛けは
分かったんだから良いじゃないか!…
とにかく繭を切り開いて行かないと!…」
「ん?…あっ…あぁ…そうだな!…よし!…」
{…そんなに動揺が起きる事だったのかね?…
風神演武って?……
…別に無理に聞き返さなくても良いか……}
辺りが何故か奇妙な雰囲気に変わって耐えかねてか、一新するようモツがとにかく救助活動を薦めると、マサツグが慌てて同意する。そしてマサツグが作業に入ろうとすると釣られて周りの面々も徐々に作業に戻り始め、改めて何故注目を集めたのか…風神演武について疑問を持つのだが、蒸し返すのも如何だろうと考えると黙って繭に対して腰を落とす。依然としてハイドリヒと将軍は理解出来ない様子のままマサツグの刀に目を向け続け、そんな視線を感じつつマサツグが改めて刀を握り直し、繭に向かって刃を当てる。
__チャキッ!…スッ…
「ッ!?…お、おい!?マサツグ!?…」
「ぼ…冒険者殿何を!?…」
「ッ!?…え?…」
マサツグがナイフを使わず刀で繭を切り開こうとした際、その様子を見たハイドリヒと将軍が慌て始めてはマサツグを止めるよう声を掛けると、マサツグは思わず刀を繭から離して戸惑いを露にする。一向に進まない作業に隣で作業を始めようとして居たモツも困惑した様子で振り向くと、文句を言う様に話し出すのだが、マサツグの様子を見て直ぐに理解すると同じ様にツッコミを入れ始める。
「…ッ!!…えぇ~い!!
黙って作業が出来んのか!!…って!?…
ヤブ!?…何をしようとしてるんだ!?…」
「え?…いやだから繭を斬ろうと…」
「ッ!…あぁ~~!……」
「え?…えぇ?…」
モツがマサツグの行動に戸惑った様子でツッコミを入れては、その近年稀に見るモツのツッコミぶりにマサツグが戸惑い…恐る恐る自分が今やろうとして居た事を話すと、モツは顔に手を当て呆れ始める。そのモツの反応で更にマサツグが困惑をする中、呆れた様子から復帰したモツがマサツグにツッコミを入れるよう更にある事を尋ね出す!
「刀抜かなくても繭は斬れるだろ!?…
ナイフは!?…」
「え?…持ってませんが?…」
「ッ!?……」
「ま、まぁ!…見ててくれって!…
絶対に失敗しないからさ!…」
「ッ!?ま…待て!!!…」
モツのツッコミ問い掛けに対してマサツグは無いと戸惑いながら答え、その返答にモツはまるでナイフは冒険者の必需品だろ!?…と沈黙したままショックを受けた表情を見せる。その表情を初めて見たマサツグは戸惑いを露にするも、ナイフが無くても出来るとばかりに答えて再度繭に刃を当て出し、ハイドリヒと将軍が慌てた様子で手を伸ばしマサツグのの手を止めようとすると、マサツグは躊躇う事無く刀を引いて見せる!
__スパァ!!……ッ!?!?…
「ッ!!!……な、何と!!…」
「ッ~~~~!!!……?…なッ!?…」
マサツグが勢い良く刀を引くと刃は滑る様に繭を斬って見せ、その刀の鋭さに中身まで斬ってしまったのでは!?…とハイドリヒが顔に手を当て目を逸らし、将軍が驚きの表情のまま固まって居ると…何も起きない。繭から血が吹き出す等の様子は無く、寧ろ無事中の人が救助出来る位まで切り込む事に成功しており、将軍がその様子に驚き更に固まって居ると、ハイドリヒも徐々にこちらをチラッと見ては何とも無い事に戸惑いを覚える。そして上手く斬って見せた事にマサツグが二人に対してドヤ顔を見せると一言…
「……な?…大丈夫だろ?…」
「ッ!?…だ!…大丈夫だろじゃないわ!!!…
危ないでは無いか!!!…」
「えぇ~!!!…俺結構自信が有ったんだぞ!?…
これでもトライアルソードで修行を!!…
…って、あれ?…」
マサツグのドヤ顔一言にハイドリヒが一瞬戸惑うも直ぐに気を取り直すと、マサツグに詰め寄り説教を始める!人の命を最優先に動け!とハイドリヒがツッコむ様に説教する中、マサツグは自信が有ったとハイドリヒの説教に戸惑いながらも若干反抗し、その中に居た人を改めて確認しようと覗き込むと、そこには見覚えの有る女の子がスヤスヤと繭の中で眠っていた。当然その女の子にマサツグは見覚えが…と言った疑問の表情を見せ、先程からの一連のやり取りを見ているモツもマサツグの表情に疑問を持つと繭の中を覗き込む。
「え?…今度は何?…
何か珍しい物でも?…って、おや?…」
__チラッ…チラッ?…チラッ…
「zzzz……ッ!…ふあぁ~…
…あれ?…冒険者しゃん?…
あれ?…ここは…お母さんは?…」
「………。」×2
モツもその繭の中に居る女の子に覚えがある様子で疑問の表情を浮かべ、マサツグと顔を見合わせては再度繭の中の女の子を確認…またマサツグと顔を見合わせると言った、二人揃って反応に困った様なリアクションを見せる。そして繭の中に光りが届いたのか…その繭の中の女の子が眩しそうに瞼を痙攣させると目を覚まし出し、繭を見下ろすよう目の前にマサツグとモツのキョトンとした顔が有ると言う事を確認すると、二人の事を冒険者さんと呼び出す。その一言を聞いてマサツグとモツが固まり、小刻みに震え始めると静かにガッツポーズを取り出し、そして遅れてやって来たとばかりに歓喜の声を挙げ始める!
「ッ~~~!!!!…ッ!?…
居たぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!…」
__どよ!?…ザワザワ!……ガッ!!…ズボォ!!…
その繭の中で寝ていた女の子は間違い無くあのブルーベルズの宿屋の女将さんの娘ちゃんで、見た限り何もされていない怪我もしていないと無傷の保護が出来た事に二人が喜ぶと、また周りから何事!?と言った様子で視線を集め始める!しかしそんな事如何でも良いとばかりに二人は娘さんが無事である事を喜ぶと、繭の中から出して上げるよう両腕で抱え上げ、無事救助して見せるとまずは娘さんに声を掛け始める!
「大丈夫!?…何とも無い!?…」
「………うん……ッ!?…そうだ!!…
早くしないとあのお化けが!?……」
__ガクン!!…ガクン!!…
「あばばばばばば……」
「ッ~~~~!!!……?…あれ?…」
マサツグの問い掛けに娘さんは眠い目を擦りながら返事をし、徐々に意識が戻って来るとハッ!と目を見開き慌て始める!その際娘さんからは何かに恐怖している様子が感じられ、マサツグの頭を両手で掴むと激しく揺さぶって逃げる様に訴え始める!揺さぶられるマサツグはこの時気を抜いていたのかカクンカクンと前後ろに頭を揺さぶられ、娘さんが周りの様子に気が付くまで落ち着く様に声を掛ける事が出来ない。そして徐々に落ち着きも取り戻して来たのか娘さんが漸く周りの様子がおかしい事に気が付き、マサツグが揺さぶりから解放されると、モツが横から声を掛け始める。
「もう大丈夫!!…
お化けはここに居る皆で倒したからもう安全だよ!…
助けるのが遅くなってゴメンな!…」
「ッ!…じゃあ皆は!?…村の皆!!…」
__……ギュッ!…
「ひッ!?……おねえさん?…」
モツが安心させるよう声を掛けるが娘さんのパニックはまだ続く!…娘さんは自分が助かった事は理解するも今度は村の人達が心配なのか、モツに詰め寄るよう顔を近づけると慌てた様子で声を掛け出し、その娘さんの慌て様とドアップと圧力にモツが驚き戸惑って居ると、何処からともなくリンがやって来てはマサツグごと娘さんを抱き締める。その突然のリンの行動に娘さんは一瞬怯えた反応を見せるも、直ぐにカルト教団では無い事を確認すると声を漏らし、リンはリンで娘さんを落ち着かせようと優しい笑みを浮かべると、娘さんに話し掛ける。
「…大丈夫よ!…リコちゃん!!…」
「ッ!…おねえさん如何して?…」
「貴方のお母さんから聞きました!…私はリン!…
ここに居る皆と一緒に悪い人をやっつけた人です!!…
村の皆さんはここに居るマサツグさんとモツさん!…
その他にも色んな人が頑張って戦ってくれたおかげで
無事に済みました!…
後はここに捕まって居る人達を救助するだけで…
全員!…皆揃って!…お家に帰れると思いますよ!!…」
「ッ!!!……」
リンが娘ちゃんの事を名前で呼ぶとリコは若干警戒した様子を見せるが、リンが女将さんの事を話すと自分の自己紹介をし始める。そして続け様にここを制圧した事・村が無事である事・皆で無事に帰れる事等…リコが不安を感じて居る事を片っ端から思い付いては笑顔のまま話し、その功労者が冒険者達で有ると話すと、リコは漸く落ち着き理解したのかマサツグとモツを交互に見る。その際モツはリコに笑顔でサムズアップしては頷くのだが、マサツグはリコに揺さぶられたのが効いているのか目を回した様子で、項垂れていた。それでもリコにサムズアップして見せては倒れないよう腹筋に力を入れてプルプルと痙攣し、その様子を見たリコが辺りの冒険者達に目を向けると、他の冒険者達もそのやり取りを見てかリコにサムズアップして笑顔を見せる!
__……グッ!…
「ッ!!!……う!…本当に?……
本当に倒したの?…皆で一緒にお家に帰れるの?…」
「えぇ!…もう大丈夫です!!…
また出て来ても冒険者さん達が助けてくれます!!…
だって!!…彼らは!…
一人一人が英雄なんですから!!…」
「う!…うぅ!!…
うわああああぁぁぁぁぁぁぁん!!!…
ああああぁぁぁぁぁぁん!!!!…」
最期の確認とばかりにリコがリンに質問をする際…緊張の糸が切れた様子でボロボロと崩れ出し、マサツグを揺さぶり倒す程の気丈さも失うと、徐々に涙を目に溜めて声を震わせる。そんな様子にリンは再度優しく抱き留め大丈夫と言うと続けて安心させる言葉を掛け、その理由にその場の人間が思わず恥ずかしくなる一言を放つと、リコは堪っていた物を吐き出すよう…リンに抱き着き、泣き出すのであった。




