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どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-  作者: すずめさん
-第一章-スプリングフィールド王国編-
52/602

-第一章五十一節 不安な救助方法と瞬間的刹那と先輩の心配-



__ワイワイ…ガヤガヤ…


「……もう少し右だ!……そうそう!…

そこで止まってぇ~!…」


「おい!…落ちて来るぞぉ~!!…

しっかり受け止めろぉ~!?」


マサツグ達が聖堂内に居る信者及び人キメラ…更に司祭と制圧した後…聖堂一階では信者達を拘束後、連行…冒険者とギルド職員の手による誘拐された人達の救助活動が行われていた。その際…冒険者全員が参加と言う訳では無く、救助に参加する意思の無い冒険者達は他に人キメラが残っていないかの掃討に向かい、大聖堂二階・三階・大鐘楼と散策するも…あの時マサツグ達が遭遇した筈のアラクネ司祭の姿を見つける者は出て来なかった。ただ各階には取り残された…或いは破棄された人キメラ達が巣食って居り、冒険者達が掃討する際ガタガタと揺れる天井の振動を利用したり…魔法や弓で天井に吊り下げられた繭を落とし、下で冒険者達が布を張り受け止めると言う不安が残る救助方法で、天井の繭を回収していた。


「…よ~し!!その位置でストップ!!…

カウント三秒後に頼む~!!」


「…りょうか~い!!」


「……あの方法で何で一人も失敗していないんだ?…」


「……ここまで来るとさすがとしか言えないな?…」


その不安しか残らない救助方法に最初はギルド職員の面々が危険と促し反対をするのだが、何処かの大型クランチームが絶対に失敗しないと…まるで何処かの女医の様に啖呵を切って救助し始めた事からこの救助方法が広がり、ギルド職員が反対する中…いざ始まると意外と効率良く繭を回収…更に奇妙な程に安全に回収出来る事から徐々にギルド内からは反対の声が驚愕に変わると言う…トンデモな救助風景になっていた。その様子をマサツグとモツも戸惑いを覚えた様子で見詰め、それぞれ困惑した様子で呟いて居ると熟練のチームが目立ち始める。


「…東に2!……北に5!…」


「…え?……」


「……よ~し!…そろそろ…」


__グラグラッ!……ブツ!!…


偶々二人の目に付いたのは他の冒険者達同様…救助に当たっている何処かのクランチームなのだが、その動きは幾度とこう言う場面に遭遇して居るのか慣れた様子でキビキビと動いており、指示する者はクランのリーダーなのか天井とメンバーの様子を交互に見ては指示を出して居た。他の冒険者達の邪魔にならないようギリギリまで布を広げずに歩き、メンバーが慣れた様子で指示通りの場所にスタンバイし、天井の揺れで落ちて来そうな繭を見つけたのかリーダーが手振りでメンバーに合図を送り、揺れで落ちて来た繭を確認するとリーダーがメンバーに落ちて来た事を伝える!


「落下!!……今!!…」


__バッ!!…バフゥ!!…ぽい~ん!!…


落ちて来た繭にリーダーがメンバーに合図を送り、メンバーが指示を聞いて布を広げるとその広げた布の中心に丁度繭が落ちて来る!それに合わせてメンバー達も布を持って行かれないよう手と腰に力を入れて踏ん張り、布がピン!と引っ張られた事により繭が布の真ん中で数回跳ねては徐々に落ち着き、無事回収する姿も見たマサツグとモツが目を奪われた様子でその光景を見ていると、思わず賛美の声を漏らす。


「ッ!!…おおぉぉ!!!…」


__……ッ!…ペコッ!…


「…いやぁ~…

あれは慣れてないと出来ない芸当だと思うんだけど…

何処でそれを身に着けたのだろうか?…」


「……俺は一瞬リアルなゲーム&○ォッチかと

思ったが…」


マサツグとモツがその見事な回収を見せるクランチームに賛美の声と同時に拍手を送っていると、その二人の様子に気が付いたのか繭を回収をしていたメンバーの一人がマサツグ達の方に振り向き、頭を軽く下げる。そして無事回収した繭は回収班の手によって運ばれ、モツが何処であの技術を身に着けたのか?と疑問を持つ一方…マサツグはとあるレトロゲームを連想する。そしてこの時マサツグとモツは何をしていたのかと言うとギルドの職員達から事情聴取を受けていた。今の所カルト教団の司祭と戦闘…討伐をしたのはマサツグとモツだけで、今回倒したオルトロス司祭・昨日倒したマンティコア司祭…そして聖堂二階で逃がしたアラクネ司祭と色々な事を聞かれていた。


「あのぉ~…すいません…まだお伺いしたい事が…」


「ッ!…あぁ!…すいません!…何でしょうか?…」


「その二階から奇襲を掛ける際…

逃がしてしまったアラクネ?…

のモンスターについてですが…もう少し特徴を…」


ギルド職員から事情聴取を受ける際…一番に聞かれたのはアラクネ司祭について…やはり取り逃がしてしまった事が大きく、その見た目と攻撃方法についてと根掘り葉掘り尋ねられ、その対策法について考えさせられる。恐らくはまだ教祖が控えていると考える一方、もし逃げ延びたアラクネ司祭が反旗を翻しまた事件を起こした場合…大混乱が起きると考え、動き出す前に捕まえようと指名手配にし捕縛する考えでの事情聴取をするのだが、マサツグとモツも少しの間しか相手にして居らず情報が少ない…それでもマサツグとモツはアラクネ司祭の容姿と唯一見た攻撃の蜘蛛の糸について答え、他の司祭についてギルド職員から聴取を受けてそろそろ終わろうかとしていると、突如後ろからハイドリヒに声を掛けられる。


「ッ!…マサツグ!…モツ!…

まだ事情聴取を受けているのか?…」


「ッ!…あっ!…王女!…じゃなくて!!…

ハイドリヒ様!…い!…いえ!今終わった次第です!…」


{…さすが国一番の人気者…

…ちょっとムカつくんだぜぇ~…}


ハイドリヒがマサツグとモツの名を呼び、兜を脱ぎ少し戸惑った様子で質問をすると、その綺麗な御尊顔を見てギルド職員が顔を赤くする。まるで憧れの人を見る様な眼差しでハイドリヒを見詰め、マサツグとモツの代わりに大丈夫と答えるのだが、答える際ハイドリヒの事を王女と呼んでしまい…自身でもハッ!と気が付くと慌てて訂正をする。そんなギルド職員の様子にマサツグとモツはさすがハイドリヒ!…とそのイケメンぶりに思わず戸惑って居ると、そのギルド職員の様子に戸惑いながらもハイドリヒは二人に話し掛ける。


「……?…そうか…それよりも…」


「ッ!?…な!!…何だこの状況は!?…」


__ッ!?……チラッ……


「あの様な救助方法では中に居る者の

命が危ないではないか!?…

繭がまるでホッピングバッターの様に

跳ねているぞ!?…」


ハイドリヒがマサツグとモツに何かを尋ねようと声を掛け始めようとした途端!…更に後方からデカい声が聞こえて来る!その声に三人が驚き慌てて振り返ると、そこには黒くゴツイ鎧を身に纏う戦士がノッシノッシとマサツグ達の方に向かいながら歩き、一階で行われている人命救助の様子に驚き戸惑ってはモンスターの名前だろうか…聞き慣れない名前を例に挙げてその光景に困惑する。その際その黒い鎧の持ち主は徐に兜を脱ぎ出し、その素顔を見せると将軍である事をマサツグとモツに理解させるのだが、将軍の戸惑い様は至極当然でマサツグとモツも思わず将軍の言葉に同意してしまう…


{将軍……それはごもっとも!!……}×2


「あぁ!!…危ないぞ!?…危ないぞ!?…

他に方法が無いからこういう方法を

取っているのだろうが…頼むから慎重にな!?…

慎重に!!…」


「……あっ!…居た居た!!…おぉ~~い!!!」


心の中で賛同し戸惑った様子を見せる将軍の様子を見ていると、ハイドリヒも話を途中で切られたせいか困惑した様子で後方に居る将軍に視線を向け、一人ワタワタとしている珍しい将軍の様子に三人が目を奪われていると、またもや更に後方から聞き覚えの有る声が聞こえて来てはマサツグ達の視線はそちらに移る。そして確認した先には聖堂の扉から入って来たばかりだろうか、ブルーベルズの農村で別れた筈のリンが笑顔で立っており、こちらに向かい手を振ってはマサツグ達の方へと駆け出して来る!


「マ~サツ~グさ~ん!!…モ~ツさッ!!」


__ガッ!!!…


「うわあぁ!!…」


__ズサアァァァ!!!…………


リンは二人の名前を呼びながら走って来ては手を振り続け、そのリンの様子に二人はまるで子供の様と思わず苦笑いをしていると聖堂中程辺りで躓き、そのままヘッドスライディング!…見事なまでのまるでお手本の様なズッコケ様に思わずマサツグとモツが目を見開き戸惑って居ると、リンはその場で倒れたまま起き上がろうとはせず、その様子にマサツグとモツが困惑したままその一部始終を見詰めていると、やっと起き上がり出す。


__………ムクッ…


「あっ…起きた…」


「ッ~~~~!!!…

酷いじゃないですか!!!

ここは駆け寄って来て!…

助けてくれる所じゃないですか!!」


「えぇ~~!?…何で俺に飛び火すんの!?…」


リンが起き上がった事にマサツグが呟いてその様子を見詰めていると、何かを期待していたのかリンは涙目のままマサツグに文句を言い出す!そのリンの言葉にマサツグが戸惑い文句を口にしていると、リンは今だその場にへたり込んでは涙目でマサツグに訴え掛けるよう見詰め続け、マサツグが戸惑いっ放しのまま溜息を吐くと迎えに行く。のだが…その時モツはある物を目にする…


「……はああぁぁぁ~~~…分かったよ!…

何でこうなるんだ?…」


「はははは……?……ッ!?…」


__ジィ~~~~~~……


{……え?…ハイドリヒさん?……

何でそんな眼差しを?……てかその感じ……

もしかして…ほ…}


マサツグが文句を口にしながらへたり込むリンの所へと歩き出し、モツがその様子を見て苦笑いをしていると、ふとハイドリヒの表情に目が行く。その時のハイドリヒは妙に憂いを持った様な…寂しそうな眼差しでマサツグの背中を見詰め続け、その様子にモツが思わず「へ?…」と言った感じで疑問を持ってしまうと、ハイドリヒの様子が気になってしまう。特段今まで何も無かった様に思うのだが、その時のハイドリヒの眼差しは印象に残り、モツが思わずひょっとして?…みたいな感じで考え事をしていると、事件が起きる!


「…第一に何でそんな何も無い所で

そんな盛大にスっ転べるんだ!?……

危ないから早く一人で!…」


「ッ!?…何にも無くは無いですよ!!!

確かにここで何かに足を!!!…」


__ザッ…ザッ…


「ッ!?…危ない!!!…」


マサツグがリンの所まで歩いて行く際…何も無い所で何故転べる!…と呆れた様子で文句を言っては立ち上がるよう声を掛けていると、そのマサツグの言葉にリンが反論する。その際自身の脚を指差し足を掛けられたと訴え掛け始めるのだが、この時後ろを確認しないまま後ろへ下がって来る冒険者が一人…選りに選ってその冒険者の装備はまるで何処の世紀末宜しくと言わんばかりの刺々しい装備に身を固め、その場に座り込むリンの方へと歩いて来る。このままでは世紀末冒険者とリンがぶつかり、リンがその刺々しい装備に押し潰されて悲惨な事に!…そう感じたマサツグが慌てて声を掛けるもリンは何の事か分からずその場にへたり込んだまま動こうとしない。


「……へ?…」


__ザッ…ザッ……ガッ!…


「うおぉっ!?…」


「え?…ッ!?……」


そうしてマサツグが慌てて駆け寄るのだがリンとの距離はまだ4~5mは在る状態で、世紀末冒険者も最後までリンの事に気付かず遂にリンとぶつかる!世紀末冒険者は驚いた様子で若干藻掻くもそのまま後ろへと倒れ始め、リンも世紀末冒険者がぶつかって来た事に漸く気付くも、既に世紀末冒険者はリンに向かい倒れ掛かって居た。リンは如何する事も出来ないままただ青褪めた表情でその世紀末冒険者の刺々しい装備を見詰め、世紀末冒険者も受け身を取ると言った様子も無く倒れて来る!


「あああぁぁっと!!!!…」


__ズシィィィン!!!…


「ッ!?……」


「あいったたた……え?…何だ?…」


世紀末冒険者がリンへ覆い被さる様に倒れ、次の瞬間その巨体が倒れる音が辺りに響き渡る!…その音を聞いてモツもビクッとした様子でその音が聞こえた方に目を向けると、そこにはただ世紀末冒険者が一人倒れている様子しか無く、ハイドリヒは困惑した様子でその転ける冒険者を見詰めて居た。そして転けた当本人も困惑した様子で起き上がっては自分が何で転けたのかを確認するも、()()()()()()()()…周りの冒険者達も一体如何したんだ?…と言った様子でその現場を見詰め続ける。モツはただ何が起きたのか分からない様子でその世紀末冒険者を見詰めて居るのだが、その事件の一部始終を見ていたハイドリヒだけはただただ困惑した様子で起き上がる世紀末冒険者を見続け、この事件のきっかけであるリンの誰かに足を掛けられたと言う証言…実は本当に足を掛けられて転けたものであり、その当事者である者は大聖堂の凝った装飾のされた柱に腰掛け、コロコロと笑っていた。


「くふふふ!…

わっちの獲物に気易く話し掛けたり…

抱き着き眠りに就く等!…

言語道断と思うて仕掛けて見たが…

これはこれで面白い物が見れた!……

順調に育っている様で良き事かな♪……

……くふふふ!!…もっとじゃ!…

もっともっと強くなるのじゃ!!…

そうでなければわっちの玩具は務まらぬ!!…

くっふふふふふ♪………

…ちっとばかし羨ましいがの?…」


__……トッ…ふわぁ……


「……あれ?…そう言えばマサツグは?…

さっきまでそこに……?…

ハイドリヒさん?…」


「…マサツグは一体何者なんだ?……」


そうして何者かは一人…誰にも悟られる事無く笑ってその場から消えては冒険者達の疑問だけが残り、モツがマサツグとリンが居ない事に気が付いてはハイドリヒに尋ね始めるのだが、ハイドリヒはただただマサツグが見せた一瞬の出来事に戸惑い間隠せない様子でポツリと呟く。ハイドリヒの目の前でマサツグが急に消えて居なくなったと思えばリンの姿も消え…次には世紀末冒険者が倒れて聖堂の扉が突如独りでに開く…そんな奇妙な光景を見てとにかくこの状態を作り出したのは間違いなくマサツグとハイドリヒは理解する一方…改めて如何言う人物なのかと悩み出すのであった。そしてリンを救ったマサツグはと言うと聖堂の扉の前…エントランスにてリンを抱えたまま転がっており、恐る恐るリンの様子を確認しながら話し掛けると、リンは気が付いた様子で目を開ける。


「…痛つつつつ……リン!?…大丈夫か!?…」


「ッ~~~~!!………ッ?…

…あれ?…マサツグさん?…」


「ッ!…良かったぁ!!…無事だったか!…

すぅ…はあぁ~~……ったく!…

心配させやがって!…だから早く立てって…」


__ガバァ!!…


マサツグの呼ぶ声にリンが恐る恐る目を開け出し、自身が無事である事とマサツグに抱えられている事から、マサツグに助けて貰ったと自覚すると呆けた様子でマサツグの名前を呼び出す。その時のリンの表情はまだ混乱している様子を見せて居り、その様子にマサツグはとにかくリンが無事である事とリンの反応に呆れた様子を見せて大きく溜息を吐くと、軽い嫌みの様に文句を口にし始める。これで少しは懲りるだろう…そんな事を考えつつマサツグは文句を口にするのだが、リンはと言うとマサツグに思いっきり抱き着き目をウルウルさせると、泣きながら訴え始める。


「うわああぁぁぁぁん!!!

怖がっだよぉ~~!!!!…」


「ッ!?…え?…えぇ!?…」


「マザヅグざん!!ありがと!…

有難う御座いまずぅぅ!!!!」


「うわああぁぁぁ!!!分かったから!!…

分かったからまずは離れてくれ!!!…

人の胸で鼻水を拭うんじゃないぃぃぃ!!!!」


余程怖かったのか大粒の涙をボロボロ零しながらマサツグにしがみ付き大号泣、そんなリンの様子にマサツグが予想外と言った表情で見詰めてはオロオロと戸惑って居ると、リンはマサツグに縋り付き感謝の言葉を口にする!その際…涙でボロボロの顔をマサツグの胸に押し当てグシグシと拭い出し、そのリンの行動にマサツグがショックを受けて止める様に訴え掛けるもリンは落ち着きを見せないで居た。そしてリンが落ち着いたのは数分後の事であり…マサツグの胸元はリンの涙と鼻水でグズグズ…何とも湿っぽい…今すぐにでも着替えたい!と感じさせる程にとにかく濡れていた…


「……落ち着いたか?…」


「はい…すみません……」


「…はあぁ~…

…まぁ、とにかく無事だったから良かったものの…

…てか本当に大丈夫なのか?…何処か痛い所とか?…」


リンが漸く落ち着きを取り戻しマサツグから離れた所で戸惑いながらも声を掛けると、リンは申し訳なさそうに俯いては恥ずかしそうに顔を赤らめ、今にも消えそうな声でマサツグに謝罪する。その様子にマサツグももはや怒る気力も無い様子で溜息を吐いては改めてリンの無事に安堵し、念の為他に怪我をした所は無いか?と尋ねるのだが、リンは顔を赤くしたまま慌ててマサツグに返事をする。その際助けて貰った事が気まずいのかそれとも別の理由か…妙にモジモジとした様子を見せる。


「ッ!?…い、いえ!?…本当に大丈夫です!!!…」


「……?…本当に大丈夫なのか?……

何かモジモジしている様に見えるけど?…」


__ザッ…ッ!…ササッ!…


「……?…本当に…」


モジモジしてはただ顔を俯き赤らめ…直視出来ないと言った様子を見せるリンに、マサツグが一応心配と言った表情で近付き心配の声を掛けると、リンはマサツグが近づいて来た事に反応するよう後ろへ逃げるよう下がり出す。そのリンの初めての反応にマサツグが戸惑いを覚えると動きを一時停止し、それに合わせてリンも一時停止すると辺りに奇妙な空気が漂い始める…しかしマサツグが再度リンに近付き声を掛けようとするとまたもや逃げられる。


__ッ!…ササッ!…


「……何故逃げる?…」


__ッ!…ササッ!…


「い…いえ別に!…何でも有りません!…

何でも有りませんから!!…」


「…何でも無いのに逃げられるのか?……」


逃げるリンにマサツグが疑問の表情で問い掛けるも、リンは顔を赤らめたまま詳しい理由を話そうとはしない。逃げるリンに納得が行かないマサツグが一歩動くとリンも逃げる…マサツグが追う…リンが逃げる…またマサツグが追う…またリンが逃げる…そうしてエントランスで鼬ごっこが始まり…それはそれは奇妙な光景が見られるようになるのだが、その鬼ごっこはすぐさま強制終了させられる…それもただ一人のギルド職員の手によって…


__コッ…コッ…コッ…コッ…


「何でも無いんだったら何故逃げる!?…

何かあるから逃げるんだろ!?…

怪我してるんだった見てやるぞ?…」


「い!…いえ!!…本当に!!…

本当に大丈夫なんで!!!…」


__ガスッ!!……


その人物は大聖堂の玄関から入って来たのだろう…足音が通路に鳴り響き、その事に気が付いていないマサツグとリンは鬼ごっこを続けては止まる止まらないの言い合いを続ける。そうしてマサツグがリンを追い続け、通路までリンを逃がしてしまうと、その通路を歩いていた人と衝突してしまう。後ろから来ていた人にぶつかってさすがのリンも動きを止め振り返り、誰とぶつかったのかを確認するのだが、そのぶつかった人物の表情を確認すると、リンは途端に青ざめ始める!…何故なら…


「……リン?…

…貴方今まで何処に行っていたの?…」


「せ!…先輩!……」


そこに居たのは紛れも無く養豚場の豚を見る様な冷徹な視線を送るクラリスの姿!…明らかに怒っていると言った様子の落ち着いたトーンでリンに質問をし始め、そのクラリスの様子と言葉に先程まで顔を赤くして居たリンもクラリスの姿を見た途端に表情は青く絶望へと染まり始める!…勿論その様子はリンを追い駆けていたマサツグの目にも止まり、マサツグもヤバい!…と感じてかリンを追い駆ける事を止めその様子を見ていると、クラリスは再度リンに話し掛け始める。


「…確かに遅くなるとは聞いていたわ?…

大まかにしか理由は聞いて居ないけど…

でも貴女が今まで居なかったせいで

ギルドの受付が大変だったのよ?…

…更に言うとギルドマスターのクエストを

渡しに行くだけの事にどれだけ時間を掛けていたの?…

それに確か…私の記憶が正しければ?…

聞いた理由通りの予定は貴方に無かった筈よね?…

…私……詳しく知りたいわ…」


「ヒッ!!……」


__クルッ!!…ウルウルウルウル!…

…ッ!…はあぁ~~…


クラリスが話し始めたのはマサツグがギルドに戻って来てからのリンの行動について、あの時マサツグからは予定が有ると聞いた事を話し出してはへたり込むリンを見下ろし、更にそんな予定はなかったと口にするとリンはマサツグの居る方を振り向き始める。そのリンの目を見ると先程まで逃げて居たのが嘘の様に助けを求めており、マサツグがリンの視線に戸惑いながらも乗り掛かった舟とばかりに考えると、クラリスの方へと歩き出し勇気を出して話し掛ける!


「…あ。あのぅ~……クラリスさん?…少しぶり…」


「ッ!…あら…マサツグさん…」


__ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!…ッ!?!?…


「な…なん…でも…ないです…

ただ…名前を呼んで見たくなった…だけです…」


恐る恐ると言った様子でマサツグがクラリスに手を伸ばし笑顔で声を掛けると、クラリスはマサツグに笑みを浮かべて返事をする。しかしその後ろから見えて居る物は隠し切れない程の怒りで、まるで幽○紋(スタ○ド)を出している様に鬼の形相の仁王像がハッキリと見える位のオーラを背負っていた。そしてそれを見てしまったマサツグは完全に掛けようとして居た言葉を失ってしまい、そのまま固まってしまい、次に出て来た言葉はただの言い訳で、それを聞いたクラリスはただ笑顔でマサツグに返答するも背中には幽○紋(スタ○ド)を背負ったまま…


「もう…マサツグさん…

そう言うのは後でお願いしますね…」


「あっ…はい…」


怒りのクラリスにマサツグは完全に気圧された様子で素直に下がり…もはや何も言えぬと言った面持ちでその光景を見詰めて居ると、この時マサツグの心の中では…


{これ、何か言ったら俺が戦闘不能(リタイア)させられる奴や…}


と考え、リンはリンでマサツグからの援護が無い事を悟ると心ここに在らずと言った様子で目のハイライトを失う…宛らその様子は刑が執行される前の罪人の様で、クラリスがゆっくりリンに動き出して行ってはリンの顔が恐怖と絶望に染まる。


「……で?…まだ本当の理由…

…返答を聞いていないのだけど?…

釈明は無いのかしら?…」


「ッ!?!?…」


{…もはやサボりと決めつけて居るんだが?……}


一応と言った様子でクラリスがリンに理由を尋ねるのだがその尋ね方も遺言を聞いている様で、ゆっくりと動く姿からはまるで超一流の暗殺者の様な風格を感じる。オマケに顔は丁度影で見えなくなり、メガネだけは松明の影響で光を反射して不気味さを醸し出し、更に今だ消えない幽○紋(スタ○ド)からはもはやオラオラが飛んで来そうな雰囲気を出して居た!…そんなクラリスにリンは小声で許しを請う言葉を口にするのだが、その言葉はあまりにも小さく念仏を唱えている様にしか聞こえない…


「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ

ゴメンナサイゴメンナサイ…」


「……釈明無し…

…と言う事は…覚悟出来ているわね?…リン?…」


__ビクゥ!!!…スゥ…ッ!?…バッ!!…


クラリスはリンの謝罪が耳に入っていないのか…言い訳が無い事から有罪(ギルティ)と判断し、意志を決めるよう眼鏡をクイっと動かしながら声を掛けると、その言葉にリンが体を震わせ反応する。そしてクラリスがリンに対して両手を広げ、何かをしようとするとリンが必死に両腕で頭を抱えるようしゃがみ込んでガードの体勢を取る。今から何が起こるのかと言った様子でマサツグがその成り行きを見守っていると、クラリスが取った行動はただリンを抱きしめるだけであった。


__ギュッ!……


「ッ!!……へ?…」


「この馬鹿!!…

あれ程経過報告を疎かにしちゃ駄目って言ったのに!!…

心配したじゃない!!」


「せん…ぱい?…」


クラリスに抱きしめられリンがビクッと反応するもそこから何も無い事に戸惑い、恐る恐る目を向け状況を確認するとそこには目を閉じリンを優しく抱き留める…まるで子供をあやす様に優しく頭を撫でるクラリスの姿が有った。当然思っていたのと違うと言った様子でただリンが戸惑い、困惑した様子でクラリスの事を呼び始めると、クラリスはリンを抱き抱えたまま説教をし始める。


「貴女からの連絡が三日間も無かったのよ!!

予定では本日中もしくは二日!!

だから私…貴女も誘拐されたんじゃと思って

心配していたんだから!!…」


「ッ!!……」


「まったく…手の掛かる後輩ね!…」


「ッ!!!……ッ~~~…

…ごめん!…なさい!!…せんぱぁい!!…」


クラリスに心配を掛けていた事を改めてこの説教で知ったリンは、抱き抱えられたまま目を見開き驚きの表情を見せる。そして何が何だかと言った様子で混乱し続けていると、クラリスがリンと目を合わせ優しく笑い掛けては先程までの様子が嘘だった様に優しい言葉を掛け、その言葉にリンが更に目を見開くと涙を流し始める。そして心配掛けた事に対してか…それとも今までの事に対してか…何方とも取れると言った様子で謝り出しては和やかな…優しい感じの雰囲気になるのだが…クラリスはここで終わらなかった!…


「……よしよし!…ちゃんと反省はしてるみたいね?……

()()()()…」


__ガッシ!!……ッ!?…


「それはそれ…

これはこれでやっぱりお仕置きが必要だと思うの?…

分かるわよね?…」


「あ…あぁ…

…ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!…」



優しいムードから一転…クラリスがこれで良しと言った様子で突如切り替えると再度あの怒りに満ちた笑顔を見せ、リンを逃がさないよう抱きしめるとその様子にリンがビクッと反応する。しかし時既にお寿司…クラリスはしっかりケジメは必要と言った様子で怒りを露わにするとリンにお仕置きをし始め、大聖堂通路内にリンの悲鳴を轟かせると、何処で覚えたか分からないプロレスの寝技をマサツグの前でオンパレードする!そうして散々リンが悲鳴を上げてタップをしまくった所でリンが解放され、クラリスも額に汗を掻き…やり切った!と言う満足げな表情を見せると、何故か一人ツヤツヤと充実した様子で汗を拭うのであった。



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