-第一章三十四節 奇妙な死骸と人キメラと特殊武器-
瘴気に侵された狩人狩りの森を進むマサツグ達の前には、噂を信じ森の中へ入って来たであろう冒険者らしき人の遺体が所々に見つかっては転がり、その危険度を示す様に無残な姿を晒す。ある者はあらぬ方向に首が回り…またある者は片腕や片足が無い等…更には上半身と下半身が切り離されスプラッター等…その様相は様々、猟奇的な姿で地面に横たわり皆恐怖に染まった表情で息絶えていた。
__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
「…兵どもが夢の跡……って、さすが全年齢対象…
断面図は見事なまでに影が仕事してるなぁ…
まぁ、こちとら見たくも無いから助かるけど…」
「…言ってる場合じゃないかもしれないぞ?…
最悪俺達も同じ末路を辿るかもしれないんだからな?…
常に警戒を…」
マサツグとモツが横たわる遺体の横を通り過ぎる様に歩き、噂を信じたばかりに亡くなった冒険者達をマサツグは某有名俳句をもじりながらマジマジ見詰めると、その遺体の断面図が黒い影で塗り潰されているのが見て取れた。全年齢対象ゲームの為、グロテスクな描写を隠す為の影だと言う事は分かるのだがその数が多く、マサツグが影の仕事ぶりに感心しながら歩いて居ると、モツが警戒を怠らないようマサツグに注意を呼び掛ける。そしてそんな道中を歩いて居ると更にその遺体や死骸の数が増え始め、一体何人が犠牲になったのか?と考えさせられていると、奇妙な遺体を見つけてしまう。
__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
「……ん?…あれ?…」
「あ?…如何したんだ?…」
「いや…あれ…」
モツが何かに気が付いた様子である方向を見詰めては疑問の声を挙げ、それに反応してマサツグが尋ねる様に話し掛けると、モツはその気になる物を指差してマサツグにある物を見せる。そこにはもはや感覚がマヒしてしまいそうな狼の死骸が転がって居るのだが、今までの遺体や死骸とは違って黒い影が掛かっておらず、その事を疑問に思ったモツが遺体に近付き状態を調べると、驚きの声を挙げる。
__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ……チラッ…
「え!?…」
「何?…如何した?…って、え?…」
「な…中身が…無い?…」
モツの反応にマサツグも気になったのか近付き、その影の無い死骸を調べるとそこには喉元から下腹部まで縦に切り裂かれ、まるで中身が繰り抜かれたが如く何も無い狼の死骸に驚きを隠せない様子で戸惑ってしまう。まるで剥製の様に残っているのは皮と骨の状態に近く、他の動物が食べたのだろうか腹の中身が綺麗に残っておらず、グロテスク成分が無いと判断されたのか影が無い。影が掛かっていなかった理由について二人は理解するのだが、次に何をやったらこんな事になるのだ?…と困惑し始めて居ると更にある事をマサツグが見つけてはモツに指摘する。
「…ッ!?…モツ!これ?…」
「え?…如何し…ッ!?…」
「この傷跡……あの冒険者の奴と一緒だ!…
それもこっちは何度も何度も噛み付いて
食い破った感じの!…
…本当にヤバいかもしれないぞ?…これ?…」
マサツグは狼の腹を開いた傷跡に指を差し、あの森の入口に近い最初の方で見つけた冒険者の遺体同様の噛み傷が有る事をモツに見せると、モツもマサツグの指摘で漸く気付いた反応を示して驚く。その際その傷跡からは余程飢えていたのか幾度と無く噛み付いた様子が見て取れ、傷口はボロボロで見るも無残な状態である事を確認すると、何が居るのかと戸惑い始める。そしてモツもその傷跡を見て気付いたのかマサツグにある事を確認するよう質問をし始める。
「……ッ!…なぁ、マサツグ?…
これ…人間の噛み跡に似てないか?…」
「え?…」
「最初の人の方は良く見てなかったからアレなんだが…
この傷跡良く見たら人が噛んだ様な歯形に似てるだろ?…
ほら…この顎のラインに歯の刺さり具合…
多分人間なんじゃ?…」
モツが噛み跡を人間の物と断定しマサツグが戸惑って居ると、モツは傷口に指を差しては形状を確認させるよう所々を指し示し、自分の思う理由について説明する。そしてマサツグもその話を聞いてハッ!と驚いた表情を見せては納得出来たのか黙って説明を聞き続け、道具屋の店主の話を思い出してはモツに話し掛けようとする。
「…じゃあ…それってあの店主の話が…」
__…ガサガサッ!……ッ!?…バッ!!…
「……今のは!?…」
「…さっきみたくキツネじゃないってのは
確かっぽい!……音が違ったし!…
寧ろサイズ的にはこっちの方が大きく聞こえた!!…」
マサツグがモツに店主の話をしようとした瞬間、背後の草むらから突如音が聞こえ始めてマサツグ達の警戒心は一気にMAXへ上昇させられる!狼の死骸から離れる様に飛び跳ねて剣に手をやり、その音が聞こえた草むらを注視しつつマサツグに確認を取ると、マサツグも聞こえたと言った様子でモツに返事をする。先程みたく勘違いじゃない嫌な予感をビシビシと感じつつ、二人が剣を構えて居ると徐に風が森の中を吹き始めたかと思えば、瘴気がマサツグ達の体に纏わり付くようネットリと流れる。
「……ただでさえ視界が悪いわ!気味が悪いわ!
面倒臭いわ!って、言ってんのにぃ~~!!!…
今度は何だ!?…」
「落ち着けマサツグ!!…
冷静さを欠いたら終わりだと思え!!…
…でもまぁ…確かにかなり面倒だな!……
如何やら向こうはこっちが気付いた事に
警戒してか出て来る気配を見せないし…
こっちも相手が一体だけとは限らない限り
迂闊に動けないし…四面楚歌に変わりわないか…
…せめて敵の位置と数だけでも分かれば!!…」
「…?…敵の位置が分かれば?……ッ!!…そうか!!…」
マサツグが纏わり付く瘴気に苛立ち、辺りを見渡し無暗に攻撃を繰り出そうかと剣を抜き始めると、モツがマサツグを落ち着かせるよう檄を飛ばし始める!しかしモツもマサツグの気持ちが分からなくも無いのか、現状を冷静に見ては敵に囲まれて居る事を想定し、如何動くかで頭を悩ませて動かない敵に若干の焦りを感じると、愚痴を零し始める。しかしそのモツが何気に言った愚痴がきっかけでマサツグがハッ!と何かに気が付いた様子で反応すると、何故か徐に目を閉じては集中し始める。
__スゥ…………ッ!!…
「モツさん!!…モツさん!!!…」
マサツグが目を閉じ周囲の気配を感じる様に精神を研ぎ澄ませていると、マサツグの五感に敵性反応の感じられる。マサツグの前に1…モツの前に1…モツの右の草むらに1…マサツグの左の草むらに2…全部で五体居ると暗闇の中で赤い光源が見えると言った反応を感じては目を閉じたまま、敵に聞こえないようモツに小声で呼び掛け始めると、モツが辺りを警戒しながらも振り返っては返事をする。
「…ッ!!…ん?…如何したんだ?…
って、マサツグさん?…」
「モツさん…俺の前に一体。
モツさんの前と右に一体ずつ、
そして俺の左に二体…」
「え?…」
モツがマサツグの方に振り返り返事をする際…マサツグが目を閉じながら話し掛けて来た事に戸惑いを覚えて居ると、マサツグはモツに敵の位置と数を教える。そして勿論急にそんな事を言い出すものだからモツは困惑し、マサツグの言う方を一応と言った様子で確認すると嫌な気配は確かに感じられ、そんなマサツグの様子にモツが戸惑いながらも如何言う事かを尋ね始める。
「…確かに気配は感じるけど…何で分かった?……」
「モツが敵の位置と数が分かればって言った時にさ?…
時代劇でよく見る目を閉じて気配を探るアレを
やって見たら…案外出来た。」
「案外出来た。…
…って、そんな簡単に出来れば苦労は……ッ!?…
見える!!…私にも見えるぞ!!!」
モツの問い掛けに対しマサツグが目を閉じたまま気配を探り、敵の動きが無い事を確認しては正直に話し始める。何の苦労も無くやってみたら出来たと言った様子でマサツグが話し、その話を聞いてモツが試しに目を閉じて同じ事をやり始めると、マサツグ同様気配を探る事に成功する。その際某ニ○ータイプに目覚めた赤い大佐の様なセリフを口にし、そのモツの言葉に反応するよう草むらの中に潜んでいた者達が飛び出すとマサツグ達に襲い掛かる!
__ガサガサ!!…バッ!!!…
「うわっぶな!!!…って、え?…」
「何だ?…これ!?…」
マサツグとモツが草むらから飛び出して来た物に反応して回避を試みると目を開き正体を確認する。敵の位置が分かっていた為回避は難なく成功し剣を抜いて構えて見せるのだが、そのマサツグ達の目の前に居たのはあの道具屋の店主が話していた通りの化け物で、頭が人間の頭部の狼達の群れであった。その容姿は人面犬等と言う生易しい物ではなく、ちゃんと人間の頭に狼の体と…まるで無理やりくっ付けたかの様な、自然さが何処にも感じられないバイオでハザードなクリーチャーであった。更に気味が悪い事に接合がちゃんと出来ていないのか頭はグラグラと下を向いて揺れては接合部をマサツグ達に見せ、生気の無い死人の顔を見せては舌をダランと出し、死んだ魚の目でマサツグ達を見詰めて来る。中には頭が取れ掛かってはブラブラと…何故生きて居られるのか不思議に思わせる様な恐ろしい姿の者もおり、その化け物犬全部が所々腐れ落ちてはマサツグ達に敵意を向けていた。
__ア゛…ア゛ァ゛…ア゛ア゛ァ゛……
「…明らかにヤバい奴ですよね?…
…これ完全に作られてますよね!?…」
「…そうにしか見えないんだが!?……」
「ほんの出来心でバイオでハザードなんて言ってたけど…
まさかこんな事になるなんて!?…」
今までにゾンビ犬と言うのは画面の向こうで嫌と言う程見て来たマサツグとモツなのだが、間近で触れ合えるVR空間での接敵はさすがに初めてで戸惑いを隠せない。ましてやその化け物がジリジリと詰め寄って来るのだからその焦りは尋常では無く、樹を背にして剣を構えて如何したら良いかで悩み始めるが、当然すぐに答えは出て来ない。完全にゾンビ犬に包囲されて逃走が困難な状態で、とにかく戦えるかどうかを調べる為に慌てるマサツグを尻目にモツが動き出し始める!
「ッ!!…とりあえず鑑定!…鑑定!!…」
__ピピピ!…ヴウン!…
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「人キメラ A-10型」
Lv.14
HP 2750 ATK 160 DEF 50
MATK 0 MDEF 0
NO SKILL
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「…勝てない事は無いか!!…
幸いスキルも持っていない!!…
やるしかないか!!!…」
__ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァ!!!……
モツが人キメラの情報を慌てながらも得る事に成功し、その情報から戦えない事も無いと判断をして居ると、人キメラの群れは呻き声を上げながらマサツグ達に向かい襲い掛かり始める!それに反応して二人も剣を握り直し襲い来る人キメラに立ち向かって行くのだが、やはり容姿に抵抗を覚えるのか嫌な顔をしつつも剣を構える!
「どうにも抵抗覚えるが仕方がねぇ!!!…
悪く思うなよ!?…」
__スッ!……フォン!!…バシュウゥゥ!!…
「ッ!?…ヤッベェ!?……」
__ボタボタボタボタ!…ドシャ!!…
マサツグの方に飛び掛かる様にして襲って来た人キメラを、マサツグは腹下を潜る様にして回避すると続け様に人キメラの胴体を輪切りにするよう、剣を横に振り抜く!その際レベルの割にあまり高くない防御力のせいか、勢い余って一刀両断してしまうと人キメラは横薙ぎに耐えれずバランスを崩しては空中でバラバラと崩れ始め、マサツグがそれを被らないよう慌ててドッジロールをすると、人キメラは地面に落ちて痙攣し息絶える。それを見ていたモツが一人、細心の注意を払わないとヤバい!!…とマサツグを反面教師に剣を構えていると、モツの方にも人キメラが襲い掛かる!
__ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァ!!!……
「ッ!?…やっぱりこっちにも来たか!!!…」
__バッ!!…スッ…ズバァン!!…ドシャァ!…
「これで!!…終わり!!!……ッ!?…」
モツにもマサツグ同様飛び掛かる様にして襲い掛かる人キメラなのだが、モツはそれを半歩横に移動し足捌きだけで流すよう回避して見せると、剣を上段に構えては人キメラの背中から剣を振り下ろす!その際両断しない様に斬って落とし、人キメラが地面に叩き付けられる様にして斬られると、ジタバタと藻掻き出し始めるのだが、モツが最後の止めとばかりに剣を人キメラに突き立てると絶命する。しかしその人キメラに止めを刺した後…モツがある物を見てしまうと、途端にやり切ったと言うよりは気分がとんでもなく最悪の物に落ちてしまう…
__ポロ!…ポロポロ!…
「クッ!!!…生半可に攻撃すると泣き出すとか!…
趣味悪すぎだろ運営!!!…」
モツが見た物とは人キメラが泣きながら絶命をする所で、例え化け物にされたとしてもその化け物は自分がなりたくてなった訳では無いと泣いて居るのか、はたまたモツに斬られた痛みで泣いて居るのか、何方かは分からないもののその様子は人間さながらで見ていて明らかに気分の良い物ではない。ただでさえ人の頭で追って来る事に抵抗を覚えると言うのに、この仕様は普通じゃないとモツが戸惑い交じりのツッコミを入れて居ると、更に人キメラがモツに対して襲い掛かる!
__ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァ!!!……
「ッ!?…クソが!!…」
__ブォン!!…バシュウゥゥゥ!!!…
「……とにかく今はこいつらを倒す事を
先決するしか方法は無いか!!…」
三体目の人キメラがモツに襲い掛かり、モツが先ほど同様半歩ズレて回避して飛び掛かって来た人キメラの腹部に剣の先を突き立て、薙ぎ払う様に斬って見せると斬られた人キメラの腹部から大量の腐敗した血液が飛び出し、辺りにばら撒かれる。モツは踏み込む様にしてその剣を振るった為その腐敗した血液を浴びる事は無かったのだが、自分の後ろに名状しがたい状態の人キメラが居ると考えると不気味さを感じられずにはいられなかった。そうしてマサツグが一匹、モツが二匹倒して残り二頭となった時…残りの人キメラは自分達の分が悪い事を理解したのか、若干こちらを見つつも草むらの中へと逃げて行くと、戦闘が解除される。
__……バッ!!…
「ッ!……逃げて行ったな…」
__ピロリロリン!…
[マサツグは「感知 Lv.1」を獲得しました。]
[モツは「感知 Lv.1」を獲得しました。]
二人が逃げる人キメラを確認し剣の構えを解き始めると戦闘エリアが解除され始め、倒した人キメラがアイテムをドロップし始める。その取得物は狼の毛皮だったり骨だったりするのだが、やはり狼の部分だけでは無いのか人の部分のアイテムも零れ始める。アイテム名はそれらしく亡者と枕詞が付き、骨だったり歯だったり…挙句の果てには金歯等、用途に困るそのアイテムに戸惑いを隠せないで居ると二人の元にシステムからの通知が送られて来る。通知音と共にログが表示されるとそこには先程身に着けたスキル…感知 Lv.1の事が表記されており、それを目にしたマサツグが不思議な表情を浮かべると、徐にモツへ質問をする。
「……なぁ、モツ?…
今までこんな通知あったっけ?…」
「え?…」
「いや、だから…ログには…感知?…
って書いて有って…スキル手に入れる度に
こんなログ流れてたっけ?って思って…」
「えぇ…」
マサツグがモツに質問した内容は単純…スキルを手に入れる度にこんな通知出たっけか?と言うログに全然目を向けていないマサツグのガバガバ視野の話であった。先ほど習得した感知を例に挙げてマサツグが不思議そうな表情で質問をすると、その問い掛けにモツが戸惑った様子で見詰めては困惑の声を漏らす。何故ならマサツグは恐らく今までに何度もその通知を見て居る筈なのに初めてと言った様子で話し掛けて来たからである。そんなマサツグの問い掛けに対してモツが如何答えたものかと悩まされて居ると、人キメラが逃げ出してから数分と経たない内にまた草むらから音が聞こえ始める。
__…ガサガサッ!…ガサガサッ!……ッ!?…
「え!?…また!?…」
「さっきの騒ぎかそれとも
俺達には分からない異臭か!…
どちらにせよ面倒な事に
なっているのは確か見たいだ!…」
__ガサガサッ!…バッ!!…
…ア゛…ア゛ァ゛…ア゛ア゛ァ゛……
草むらから聞こえて来る音に反応してマサツグ達が戸惑って居ると、その音が鳴る草むらから人キメラが飛び出して来ては、またマサツグ達を逃がさないよう取り囲み始める。更に今度こそとばかりに仲間を呼んで来たのか最初の五頭より多い、十数頭を引き連れ現れては先ほど同様ジリジリと詰め寄り、追い込む様にしてその距離を縮め始める。
「ッ!?…今度は団体さんてか!?…
チッ!!…面倒な!…」
「マサツグ!!目を瞑れ!!!」
「え?…」
__バシュ!!…カッ!!
ッ~~~~~~~~~………
徐々に距離を縮めて来る人キメラの群れにマサツグが面倒臭いと言った様子で剣に手を構え始め、後ろの樹に向かい後退しながらマサツグが機会を伺って居ると、モツが突如マサツグに目を閉じるよう命令をする!その突然の命令にマサツグが戸惑ってモツの方を振り向き、一体如何言う事かを尋ねようとした次の瞬間!…マサツグの視界はホワイトアウトして何も見えなくなる。ただ覚えているのはホワイトアウトする直前に何かが破裂し、突然強烈な光に襲われたと言う事で、マサツグが迂闊に動けず硬直して居ると誰かに手を取られ引っ張られる感覚を覚える。
「こっちだ!!マサツグ!!!」
__パッ!……タッタッタッタッタッタ!…
その声掛けた主はモツだろう…マサツグの手を取り人キメラから逃げる為に安全そうな方向に向かって走って行くのだが、マサツグはまだ目が見えないのか真っ直ぐに走る事が出来ず、足が縺れそうになりながらもシパシパと瞬きさせてはモツの手に引かれ走って行く。そして人キメラも突然の強烈な光で目をやられたのかその場で悶えてはクルクルと彷徨い出し、頭が人間なだけあってか狼みたく匂いを辿って追って来ようともしない。その様子にモツがしてやった!と言った様子でチラッとだけ確認してはマサツグを連れてその場を離れ、少し進んだ先の草むらの中に隠れるようマサツグを引き込むと、人キメラから逃げ切れた事に一安心する。
「……追って来てないな?…
…ふぅ~…閃光弾買っといて良かったぁ~!…
上手く撒けたみたいだ!…もう大丈…」
__モジモジ…モジモジ…
「……夫!?…」
人キメラから逃げ切る事が出来て一安心し、マサツグにもう大丈夫と声を掛けて振り返るとそこには妙にモジモジとしているマサツグの姿が有り、モツがそのマサツグの様子に困惑と気味の悪さを感じて全身に鳥肌を立たせていると、慌ててマサツグの手を振り払う。モツが酷く困惑した様子でマサツグを見詰めて居ると、マサツグはまだモジモジとした様子でモツを見詰め、何を思ったのか頬を染めてモツに対して悪ふざけとしか思えない言葉を言い出し始める。
「あ…あんなに強く引っ張られたの…私…初めて…」
「おい馬鹿止めろ気色悪い!!!…」
「えぇ!!…でも私…」
明らかにマサツグは何かを演じるようふざけているとモツが感じ、鳥肌を立てながらもマサツグに気色の悪い事を言うな!と文句を言うのだが、マサツグはまだ続ける気かモジモジとしながらモツに話し掛ける。そんなマサツグの様子にモツも更に鳥肌を立てて武者震いをし、止めないマサツグに対して怒りを覚え始めると演技を無理やり中断させるようマサツグに剣を抜いて見せ、スッと何の迷いも無く突きつけると修羅にでもなったかの様な形相でマサツグを睨み始める。
「それ以上やるならこっちにも考えが有るぞ?…」
__……フッ……スッ…スッ…ズシャアァァ!!…
「本気ですんませんでしたぁぁーーー!!!!
調子に乗ってましたぁぁぁーーーーーーー!!!!」
この時のモツの目は本気になったハイドリヒより鋭く冷徹な眼光で、マサツグもそれを見てフッ…と笑みを浮かべると何も言わずにその場で正座し、両手を地面に着いて見せるとモツに対して綺麗な土下座をし始める。やはりふざけていたと認めるようマサツグがモツに謝り、モツがマサツグを見下すような視線を向けつつ剣を直し始めると最終忠告をマサツグに話し出す。
「今度やったらケジメな?…問答無用で?…」
「はいいぃぃ!!
すんませんでしたぁぁぁーーーーー!!!!」
「……はああぁ~~~……っで?…
何で急にあんなとち狂った事を?…」
「いやぁ…目が見えない状態で手を引かれての逃避行…
って、ある種乙女ゲーみたいだなって?……ほら?…
追ってから逃げる為の主人公とヒロイン…みたいな?…」
恐らくマサツグ自身…先程の場面は乙女ゲー等で言う、一つのイベントでは!?と思い…面白半分でやってみたのだろうがこれが大不評とその代価に自分の命を払いそうになると、慌てて何度もモツに頭を下げては謝罪をする。そんなマサツグにモツは一際大きく溜息を吐いてその行動を取った理由について質問をするのだが、帰って来た言葉がまさにその通りだったと呆れて見せて例え話をし始める。
「…じゃあさっきやって見せた事を立ち位置を
変えて想像してみ?……俺の気持ちが分かるから…」
「え?…立ち位置を?…えぇ~っと…
モツが俺で俺がモツだから……ッ!!!…」
モツが先ほどの出来事を立ち位置を入れ替えて想像するようマサツグに言って聞かせると、マサツグは困惑しながらもそのモツの言う通りに立場を入れ替えて想像してみる。マサツグがモツの手を引っぱり物陰に隠れて敵からやり過ごす…そして安全である事伝えようとモツの方に振り返るとモジモジした様子でこちらを見詰めるイケメンが立っており、頬を染めてマサツグを見詰めて居ると考えると、モツの気持ちが分かったのかマサツグは一気に鳥肌を立てて戸惑い始める。そしてその様子を見たモツがフッと軽く笑って見せると、マサツグに近付いて肩を叩きこう尋ねる。
__……ポン…
「…な?…如何だった?…」
「……とりあえず……ゴメン…
あんなザッ〇スの姿…見たくなかったよ…」
「…俺の気持ちが分かって貰えたみたいで良かったよ……
…本当に……」
モツの問い掛けに対してマサツグがショックを受けた様子で三度謝罪をし、モツがマサツグから距離を取り顔に手を当て天を仰ぎ始めては苦笑する。こんな話をして居ると赤いランドセルを背負った四足歩行の白い化け物が出て来そうな気分になるのだが、二人がそんな話をしている間にマサツグ達を追って来ていた人キメラ達は、完全に撒いた様子で散り散りに散らばって行く。その様子を草むらから音を立てずに、落ち着いた様子で見ていたモツとマサツグがふぅ…と一息吐いて改めて安心して居ると、話はマサツグの武器に切り替わる。
「そう言えばマサツグは他に武器を
持っていないのか?…」
「え?…」
「いや…さっきから見ていたんだけど
今だにトライアルソードだし…
まぁ、確かに最初で会って話を聞いた時
ずっとソレだってのは聞いてるけどさぁ?…
単純に装備出来ないとかで
実は持ってるとか無いのか?…」
モツはマサツグがずっとトライアルソードを使って居る事に限界を見たのか、マサツグに他の武器について質問をし始めると、その質問にマサツグが戸惑いながら返事をする。その返事にモツは今までのマサツグの話を思い出し、使える武器は無くとも普通に武器を持っていないかを再度尋ね直し、それを聞いてマサツグが納得すると自身のポーチからあの武器を取り出し始める。
「あぁ!…えぇ~っと…
まぁある事にはあるんだけどさ?…
実は……」
__ジィ~~…ガサゴソガサゴソ…チャキッ!…
「ッ!…刀?…珍しい…」
「何だけどな?…如何にも俺じゃあ抜けなくて…
今の俺じゃ装備出来ないんだ…」
マサツグが取り出したのはあの授賞式で貰った一本の刀、それを見たモツが物珍しい物を見る興味を持った様子で見詰めてはマサツグから刀を受け取り、その刀がどのような物かを確認するようマジマジと見詰め始める。そんなモツにマサツグは刀が抜けないと残念そうに話し始めると、それを試す様にモツが刀の柄に力を入れては鞘から抜こうとし始めるのだが…
「…ッ!…ほぅ!…どれどれ…」
__グッ!…ググッ!!…
「フン!!……ヌン!!!…オリャ!!!!…
ググググ!……ダアァ!!!…
駄目だ本当に抜けねぇ!?…」
「な?…駄目だろ?…」
「はぁ!…はぁ!…何だこれ!?…バグ!?…
…いや、でもそんな事聞いた事無いしなぁ…
それに俺にはアレが付いてるし…
俺で抜けないって事は…もしかしてこの刀は……」
モツが力を入れて刀を抜こうとするがビクともせず、それでもモツは諦めずに何度か力を入れ直し刀を抜こうと試みるが、1mmも鞘から出て居る気配は見られない。マサツグの言う通り抜けない刀でモツも困惑してはマサツグに刀を返しては疑問の表情を浮かべ、マジマジと再度刀を見詰めては首を傾げる。そして自分のスキル等を鑑みてモツが知っている知識をフル回転させ、ある結論に行き着くとマサツグにこう答え始める。
「特殊武器って奴なのか?…」
「え?…特殊武器?…」
「ある意味レア武器でゴミ武器…
武器毎に違う開放条件があって開放出来たら
強武器だけど…大抵が開放条件が分からないまま
倉庫の肥やしになるって言うトンでも武器だな!…
俺自身もこれが初めてで解放条件とかは分からないけど…
まぁ、何の気無しに持っていたら開放したとか
有るらしいし持って置いて損は無いと思うぞ。」
「…そう言うモンなのか~…」
モツが刀を特殊武器と判断しその事をマサツグに教えると、マサツグは知らないと言った様子でキョトンとしては自身の刀に目を向ける。そんなマサツグの様子にモツは自身が知っている特殊武器についての説明をし始め、一応強力な武器である事を説明するのだが現状その解放条件等も分からないと話し、マサツグと同じ様に刀を見詰めると悩み始める。その話を聞いてマサツグは刀が抜ける様になる日は来るのかと考え始めるのだが、今はクラスアップ試験の事を思い出すと、モツと共に草むらから出てその光る樹を目指して歩き出し始めるのであった。




