-第一章三十三節 閃光弾と店主の忠告と狩人狩りの森-
マサツグが闇落ちして店主が商品の補充を終えるとマサツグとモツは商品棚へと歩き出し、必要な商品を物色し始める。その際普通では見ない様な商品等も棚に置かれて在り、それらを手に取り如何言う物なのかを調べるのだがアイテム名しか表記されず、やはり分からない…そして店主に説明を求めようとマサツグが振り返ると店主は余程マサツグ達がヤバイ客だと思っているのか、一つ一つの行動を取る度にビクビクとする。
__パフゥ……?…
「……なぁ?…おっちゃん?これって?…」
「は…ハイィ!?…
それは痺れ粉の包みですぅ!?
用途と致しましては相手に向かって投げ付け
痺れさせるか!…自身の持っている武器に
塗布して使用するなど色々御座いますぅ!?
…注意点と致しましてはその粉を扱う際自身が
吸引し麻痺に襲われる等有る為…
マスク等を使用しての使用を強く推奨致しますぅ!?」
「……明らかにマサツグに対して恐怖心を
抱いているなぁ…そんなに怖い人なのか?…
そのマルコって人……?…何だこれ?…」
マサツグの問い掛けに店主が完全におっかなびっくりと言った様子で説明し、その説明の仕方にマサツグが逆に戸惑いを覚え始めて居ると、隣ではモツがこの店主の上司に当たるマルコについて疑問を持ち始める。マサツグがマルコの知り合いと分かっただけでこの慌て様…そんなに怯える程の物なのかと考えつつも商品棚を物色して居ると、スプレー缶の様な形の引き抜き栓が有るアイテムを見つけ、モツが手にしてはマサツグ同様店主に質問し始める。
「…すまんがこれは?」
「ッ!…ハ…ハイィ!?…えぇ~っと…ッ!?…
あれ!?…まだ残っていたのか!?…」
「……残っていた?…」
モツが店主に見えるようそのスプレー缶を掲げて見せ、店主が慌てた様子で振り向きモツの持つスプレー缶に注目し始めると、次の瞬間その表情は戸惑った様子の物になり気になる一言を口にし始める。それを聞いてモツが疑問の表情を浮かべて意味を尋ねるよう聞き返すと、店主はモツの問い掛けに戸惑った反応を見せてはそのアイテムの説明を素直に話し始める。
「え!?…あぁ、はい…
それはせ閃光弾と言いまして用途は
勿論相手を牽制する為のアイテムです。
手強いモンスターから逃げる時に使ったり、
相手の不意を突く時に使われたりと
中々に利便性の良いアイテムなのですが…」
「……なのですが?…」
「はい……悪用される事も多々あるアイテムなのです…
ある者は万引きをする為に店内で使って大混乱を招き、
またある者は強盗を働き逃げる為に使用する…
更に酷い物となると馬車を襲う為の必須アイテムと
なって…最終的には全国…いえ、全大陸で販売が
中止されたアイテムとなっております…
…さて、それは何処に置いて有りましたか!?…
もしこの事がオーナーにバレるとかなり不味いので!!…」
店主が話すにはモツが持っている引き金付きのスプレー缶は閃光弾らしく、モツが確かにそう言われれば…と言った様子で手元のスプレー缶を見詰めて何かを考えて居ると、店主は慌てながらも閃光弾の説明を続ける。その際歯切れの悪い様子で言葉を区切り、その一言にマサツグが聞き返すと店主は戸惑った様子を見せるも、誤魔化すと事無く悪用される事が多い為販売中止になったと説明をする。そして一通り閃光弾の説明を終えた所でモツに閃光弾のあった場所と処分を申し出るのだが、モツは徐に顔を上げて店主の方を見るなりこう返す。
「…じゃあ、ここにある閃光弾を俺に全部売ってくれ。」
「……え?…」
「どうせ処分するんだろ?…だったら売ってくれよ。
処分出来る上に売り上げにもなる!…一石二鳥だろ?…」
「ッ!?…い、いや確かにそうですが……ッ!…
…グゥ~~~ン!……」
モツが店主に閃光弾を売るよう声を掛けると、店主は戸惑いモツを見詰めて戸惑いの言葉を漏らし始める。店主が見詰めるモツの目は冗談とかではなく本気で購入しようとしている様子に見え、更に戸惑いを覚えた様子で反応を見せて居ると、モツが更に畳み掛けるよう処分と売り上げの話を持ち出し始める。その話を聞いて店主もグッ!と言葉に詰まると目の前で売るか売らないかの葛藤をし始め、恐らくはモツが悪用するかしないか?…或いは売った事がバレた時!…責任が来るのを恐れた様子で唸り出すと、マサツグがある事に気が付くとモツに話し掛け始める。
「……ッ!…モツ~?全部は無理かもしれん。」
「え?…」×2
「ほれ?…所持数制限。
見た感じ閃光弾一人に付き十個が限界みたいだな?…
カバンに空きが有ってもスタックも出来ないし…
何より全部買うって事はここにある二十個
全部って事だろ?…」
「あっ!……」
マサツグがモツに無理かもしれないと若干戸惑った様子で話し掛けて、モツと店主の二人が互いに戸惑った様子で言葉を漏らして居ると、マサツグはアイテムの所持数における制限の話をし始める。素材や消費アイテムと言った物はアイテムポーチに空きが有れば99個を1スタックとして無制限に持つ事が出来るのだが、特殊アイテムに関してはそれぞれに上限がありスタック数も一つだけと制限が設けられてある。それは各プレイヤーが平等にそのアイテムを手に入れられる様にと言う配慮で、もう一つは余りにその効果が強力の為バランスブレイカーにならない様にと言う制限の意味を込めて居るらしい。そしてそれに該当するのがまさに今モツが持っている閃光弾で、その事をマサツグが「鑑定」で調べたとばかりに閃光弾を凝視し続け話すと、モツがしまった!と言った様子で言葉を漏らしては戸惑い始める。勿論それは冒険者側の話であり店主にはマサツグ達の話の内容が理解出来ないのだが、販売が出来ないと言う事だけ理解するとモツに諦めるよう声を掛け始める。
「……ふうぅ~…じゃあさすがに販売は出来ま…」
「だからその半分は俺が買うわ。」
「ッ!?…」
危ない橋を渡ろうか…渡らないかで悩んで居た店主が諦めるようモツに言葉を掛けようとした瞬間!…マサツグがその半分を担うようモツに自分も閃光弾を買うと話して進めると、店主は再度慌てた様子でマサツグの方を振り向き慌て始める。そしてその店主の慌てて居る理由にマサツグは気付いて居たのか、マサツグも店主の方を振り向き販売に当たってある条件を店主に提案し始める。
「ただ買うだけだとアレだから
誓約書も書いておくか?…」
「せ!?…誓約書!?……」
「内容は……そうだな…
約束を破れば罰金と以降マルコが仕切る道具屋への
入店を固く禁じるで、更にゴールドカードの剥奪!…
っで、どうだ?…少なからず悪事を働けばバレるし、
多分おっちゃんが閃光弾を売るのを渋っているのは
悪用されないかって事と何処で手に入れたかの二つ…
だったらその二つを破らないよう誓約書を書いて
買えば問題はないだろ?…」
「ッ!?……」
急に人が変わった様にマサツグが店主に商談を持ち掛けモツが驚いて居ると、店主もマサツグの突然の商談に驚いてか誓約書を口にし、戸惑いを露わにしていると更にマサツグはその内容もその場ですぐに考えては話し始める。条件は閃光弾を使っての悪事を働いた場合…罰金及びマルコが経営する系列の道具屋への入店拒否、そしてゴールドカードの剥奪…それらを躊躇う事無く笑顔でマサツグが口にすると店主が酷く驚き戸惑い、モツはモツでマサツグを見詰めては驚いた様子で言葉を掛ける。
「ッ!?……ヤブ!…
…ヤブって時々急に賢くなるよな?…」
「……いまサラッと酷い事言った?…」
「グッ!…ウ!…ウゥ!!……分かりました!!…
そこまでの覚悟が有るのでしたら
お売りいたします!!!…
私とて商人でありますゆえここまで言われて
引き下がっては名折れです!!!…」
「ッ!……商談成立!…」
モツがサラッとマサツグに対してトンデモナイ事を言うとマサツグが振り返って文句を言い、店主もそこまで言われたらと覚悟を決めた様子で返事をすると、レジカウンターの下から紙とペンを取り出しマサツグ達に誓約書を書くよう差し出す。その様子を見てマサツグが笑みを浮かべると一言呟き、他の必要アイテム等を抱えてレジカウンターに行くと誓約書を書いてお会計を済ませる……そしてこの時マサツグとモツは知らなかった…この閃光弾にとってもお世話になる事を!!…
__ガチャガチャ…チ~~ン!…サラサラサラサラ…
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「誓約書」
我々はこの道具屋で閃光弾20個を購入し悪用しない事を
ここに誓う。もし破った場合は罰金1000万Gとマルコが
経営する道具屋全店舗の入店を禁じ、ゴールドカードの
返却をここに書き示す。
○×/△□ マサツグ モツ
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「……よし!…これで商談成立!…
ところで旦那達は何処に?…こんなに買い込んで…
まるで森にでも籠ろうって言う様な量なんだが?…」
二人揃って閃光弾二十個とその他ポーション類に常備薬…更に水や携帯食料を買い終え、店主がマサツグとモツが書いた誓約書に目を通し…ちゃんと記入されてある事を確認すると、納得した表情で頷き一息吐き始める。そして次にマサツグ達の買い物の量を見て何処かへ行くのだろうと察したのか、行き先についてマサツグ達に尋ねるとマサツグ達は戸惑う事無く狩人狩りの森と行き先を告げる。
「ん?…んん~…当たらずも遠からずだな。
狩人狩りの森にちょっとばかし用があってな?…」
__ピタッ……
「何でもそこに光り輝く木の実が…」
「おい、お客さん達!?…
悪い事は言わねぇ!!!止めときな!!!」
その行先を聞いた店主がピタッと動きを止めると徐々に青ざめ始め、マサツグがその森へ行く理由を話しながら買ったアイテムをポーチ内に仕舞い込んで居ると、突如店主が慌てた様子でカウンターから乗り出してはマサツグ達に森へ行く事を諦めるよう止め始める。その突然の店主の慌て様にマサツグ達が戸惑い目をパチパチとさせて居ると、店主はその森がどれほどまでに危ないかを説明するよう説得し始める。
「…今あの森は化け物の巣窟となってやがる!!……
あの森に入っていた連中は幾ら待とうが
帰って来ねぇし!…森自体からは嫌に不気味さを感じる
紫色の煙まで漂わせてやがる!!…それに!!…」
「……それに?…」
「……ッ!!……森の外を軽く見て回った連中からは
化け物を見たって奴が居た!!…
何でも森の中で人影が見えたから引き返すよう声を
掛けようとした瞬間!…その人影が姿形を変えて
化け物みたいになったって!!…上半身は人間!…
でも下半身は牛の体!!!…頭は人間で体は狼なんて奴も
居るらしい!!…今じゃあの森に近付こうとする奴は
余程酒に酔った大馬鹿野郎で無い限り近付こうとも
考えねぇ!!…そんなヤベェ森なんだ!?…
あの森は呪われてんだよ!?…」
店主が青ざめた状態でマサツグの腕を掴んだまま狩人狩りの森の状態について話しだし、その話の内容からダンジョン化した形跡と迷いの森リターン!…と言った様子で瘴気の話まで飛び出して来ると、マサツグとモツが落胆した様子で遅かったかと項垂れる。その際まだ店主の話は終わって居ないのか「それに」と言う言葉で詰まり、それを聞いたマサツグとモツが確認するよう尋ね返すと店主は化け物を見たと言う第三者の情報を青ざめた表情で二人に話し始める!その時の店主の表情は心から青ざめているのか冷や汗を掻いており、その様子を見た二人の目からも「あ…これ本気の奴や…」と理解させられてしまうと、更に面倒臭さを感じだすのだがここである疑問が湧いて来る…
「……なぁ?…おっちゃん?…
その見て帰って来たって奴は森の外から
その化け物見たんだよな?…
何でそんな化け物の姿が見えたんだ?…」
「え?…」
「森の外から見えたって事は森の中に
光源が無いと見えない筈だろ?…
だって森なんだから!…
樹が多くて日が差さない影が多い筈!…
更にさっきの話だと瘴気が出て来てる事も
分かってんだから尚の事暗い筈じゃ?…
なのに見えるって事はやっぱ何かしらの
光源が有るって事だよな?…」
マサツグがその噂話を聞いて疑問に感じた点と言うのは、暗い森なのに何故その化け物が見えたのか?と言う…一見如何でも良い内容なのだがマサツグにとっては重要で、その問い掛けを聞いた店主が青ざめたまま戸惑って返事をして居ると、マサツグはその疑問を感じた理由を話し続けては首を傾げて見せ、何かを確認するよう店主に改めて質問をし答えを聞こうとすると、店主はその問い掛けに戸惑いながらも答え始める。
「……森の事は知らないですが確かに
光源になりそうな物の噂話は有って…
何でも森の奥深くに青白く光る樹が
一本生えているんだとか!…
その樹なら確かに暗い森でも明るく
照らせるだろうが!…あくまでも噂だ!!…
本当に有るかどうかも分からねぇ樹を
見つける為に何人が犠牲に!!!…
とにかくあの森は人食いの森になってんだ!!!
悪い事は言わねぇ!!…だから!!!…」
「悪いけど行くよ。」
「な!?…」
マサツグの問い掛けに対し店主はクランベルズでマサツグが聞いた噂話同様、森の中に生えている光り輝く樹の話をしてはその樹が光源になりそうと話すのだが、店主はあくまでも噂と信じていない様子で青ざめては改めてマサツグとモツを止めるよう説得する。しかしその店主の説得を聞いても二人は森に挑む様子の真剣な表情を見せ、モツが謝るよう店主に話し掛けると事情説明をし始める。
「俺達がここに来たのはその件の
森を調査する事が目的なんだ。」
__コクッ!コクッ!……ッ!?…
モツが逆に説得をするよう店主に事情説明をするのだが、その内容は何処かおかしい…マサツグ達はその森で光り輝く木の実を見つけるのが本来の目的なのだが、モツが店主に話した事情説明は森の調査と違う内容なのである。マサツグもモツが事情説明をする際、正直に話すのかと頷きながら話を聞くのだが、違う内容が出て来ては驚き思わずモツに疑問の表情を浮かべてしまう。しかし店主はモツの話やマサツグの疑問の表情を見て居ないのか、疑う様子を見せる事無くただ戸惑いを露わにしては再度マサツグ達を止めに入る。
「だ…だが!!…あの森は危険なんだぞ!?…
それにお客人達はマルコさんのご友人!!…
何か有っては申し訳が!?…」
「大丈夫ですよ!…
危なくなったらさっきの閃光弾でも
投げ付けてやりますよ…」
「ッ!?…ッ!!…はあぁ~…分かりました!!!…
これ以上は何を言っても無駄そうなので
もう言いません!…私は忠告をしましたからね!?…
危なくなったら引き返すんですよ!!
……死んでしまったら意味無いんですから!!…」
「…えぇ、分かってますよ…では…」
店主が必死にマサツグ達を止めようとするのだが、モツは閃光弾の話を持ち出して大丈夫と答えて見せ、その閃光弾の効力を知っているのか店主が言葉に詰まると、徐々に力が抜けて行く。そして大きく諦めた様子で溜息を吐き、まるで冒険者は全員そうだと言った様子で話し始めると、改めて危なくなったら逃げるよう二人に話し掛ける。その言葉を聞いてモツが苦笑いすると軽く返事をして道具屋を後にしようと歩き出し、マサツグも慌ててモツを追い掛けるよう走り出すと道具屋を後にし外に出る。そして二人がいざ森へと歩き出して行く際、マサツグは店の中であったモツと店主の会話で疑問を感じた事について質問をし始める。
__カラン!…カラァン!…バタン!…
「…なぁモツさんや?…
何時…俺達のクエストは森の調査になったんだ?…
別に隠す様な事でも無かったような?…」
「ん?…別に嘘は着いていないと思うぞ?…
厳密には光る樹になる木の実の採取!…
でも否応無しにその森の事を調べるから
実質森の調査!…な?」
「…な?って言われても…」
村の外れにある狩人狩りの森に行く道すがら、マサツグが何故嘘を言ったのか?と疑問を浮かべた表情で質問をすると、モツは軽く笑みを浮かべてはマサツグの質問に嘘は行っていないと返して見せる。その返事にマサツグが戸惑った表情を見せて居ると、モツは続け様に屁理屈っぽい言い訳をしてはマサツグに同意を求め、そのモツの問い掛けにマサツグが戸惑いを隠せない様子で返事をして居ると、そのヤバいと言われている件の森が徐々に見えて来る。ブルーベルズからの距離にして大体十数kmと言った所か…店主が言っていた通り森に近付けば近づく程その森の異様さに驚きを禁じ得ない。
__シュン…シュン…シュン…シュン…
「……これは!…かなりヤバそうだな!……」
「…あの迷いの森がイージーモードに見える位に
瘴気が出てるんだが?………てか何だ?…これ?…
森にしては雰囲気が!?…」
森の入口に立たずとも分かるその遠目からの森の様子はまるで茹で上がったブロッコリーが如く、立ち昇る瘴気がまるで湯気の様にユラユラと噴出しているのが分かるのだが、日の光を浴びてか直ぐに霧散し消えて無くなるを繰り返す。それだけではない、森の木々の間から瘴気が漏れ出し日の光を浴びては霧散して居るのだが、それが目の前で見れると言う事は…いかに森の中が瘴気で充満しているかと言う事であり、それが徐々に近づけば近づく程にマサツグ達の警戒心を強め、森の中になるともはや瘴気で視界不良と言った具合に中の様子が全く見えない。この状態で本当に化け物を見たのか?…と疑問を持って疑う反面、絶対に何か居る!!…と言う確信がぶつかり合うと二人は不気味さを感じ、森を見詰めては戸惑いを隠せないで居た。そしてそんな不気味な森の前に今マサツグとモツが立つと、その森の入口からはまるで人を引きずり込む様な…そんな奇妙な風の流れを感じては二人の心は動かされる。
「……今すぐにでも立ち去りたい気分なんだが?…」
「……それには同意してしまいそうだ…」
「………悩んで居ても仕方ないしなぁ…」
「……覚悟決めますか…」
イメージしていた物より更に上を行く禍々しさを放つ狩人狩りの森に、クラスアップの試験を諦めようかと考えてしまう二人…森の入口は今だ息を吸うが如く風を吸い込んではマサツグ達の背中を押し、二人は稲〇淳二みたく嫌だなぁ~…行きなくないなぁ~等と考えてしまうのだが、踏ん切りが付かない事にいつまでもこうしては居られないと自分自身に言い聞かせると、覚悟を決めて森の中へと足を進める。迷いの森とは違い嫌な予感が森全体からビシビシと感じながら入り口付近を歩いて居ると、狩人狩りの森の紹介が入る。
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「狩人狩りの森」
ブルーベルズより東に10kmの所にある、熟練の狩人ですら
警戒をする鬱蒼とした森。普通の森とは違いこの森では
その環境下を利用して生活をする動植物に加え、
モンスターも出て来る事からこの名前が付けられた何気に
恐ろしい森。生半可な気持ちで入ると生きては帰る事が
出来ず、冒険者の間でも修行場としてそこそこ人気の高い
森であると同時に怖い森と言われている。
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「……物騒な紹介文だな……
まぁ、今の状況を指しての紹介で無いのは
間違いないだろうけど…」
「…とにかく警戒を怠らないようにな?…
何が襲って来るか分からない!…」
狩人狩りの紹介文は明らかにこの瘴気まみれになる前の物で、その紹介文だけでもいかにこの森が危ないかを暗示しているのだが、今は瘴気や謎の気配と更に難易度が上がった様子の森に、否応無しに警戒を強めさせられる。そして瘴気の方はと言うとやはり迷いの森の時より濃く漂って視界が悪く、辺りが紫色に見えると同時にお約束とばかりに負荷が付いて来る。辺りを注意深く見回し…何が来ても大丈夫な様に聞き手を常に剣に持って行きながら歩いて居ると、ふと二人の視界にある物が見えて来る。それは木の陰に隠れるようもたれ掛かり、ピクリとも動かずその場に立ち尽くした様子の人影で、視界が悪いながらも気が付いた二人がその人影の方に向かい歩いて行くと、声を掛け始める。
「……ちょっと!…すいません!!…
ここで何をしてるんですか?…」
「………。」
「……ヤブ…無駄だと思うぞ?…
明らかに…死んでるから…」
「…やっぱ駄目?……」
マサツグが生きて居るかどうかの確認をする為に声を掛けるのだがその人影は返事をせず、モツがその人影の前に回り込み状態を確認すると無駄だと答える。その人影は言わずもがな遺体で既に何日か時間が経過した様子が伺え、マサツグもその人影の様子を確認するよう回り込むとある事に気が付く。
「…ッ!…この格好って?…」
「…そうだな…恐らくは狩人…
それもそこそこ腕の良い狩人っぽいぞ?…
弦が切れて使い物にならないけど
弓はアイアンウッド製…
身なりも俺と同じラメラレザーで
エンチャントがされてある…
…名前に偽り無しの森みたいだぞ?…ここは…」
マサツグが遺体を見るなり驚きモツが同意すると、その遺体の状態・装備品から恐らくのJOBを言い当てる。遺体の装備品から力量等を分析しレベルの分かった所で森の恐ろしさについて、認識させられているとその状態を改めて確認する。着ていたであろう軽装の鎧は何者かに噛み千切られブラブラとぶら下がっており、最後まで抵抗したであろう右手には弦が切れた弓が握られていた。そしてその遺体の表情は恐怖に染まり絶望の中死んで行った事が分かると、モツが何とも言えない感情になってしまうのだが、マサツグは死因を突き止める様にその遺体の傷口を見て考え込み始めていた。
「傷跡からして獣系かねぇ?…
複数の傷跡が重なり合う様に有るから判断し難いけど…
多分狼だと思う…この爪痕に牙の跡…うん…
でも何だこれ?…狼の牙にしては浅い様な?…」
「……マサツグさん?…
何処でそんな知識を身に着けたんだ?…
まるで検視官みたいなんだが?…」
「え?…あぁ…いや…
ちょっとでもどんなモンスターが居るか分からないかを
調べていたんだがな?…どうにもおかしいんだ?…
俺が護衛任務をして居た時狼の群れに突貫して行く奴が
居てさ?…案の定狼に噛まれたり引っ掻かれたりして
居た訳なんだけど…どうにもその傷跡が似てるようで
似てなくてさ?…」
「え?…それって如何言う…」
マサツグが遺体に怯む事無くマジマジと傷跡を観察しては悩み出し、その淡々と検視する様子にモツが戸惑いを覚えた様子でマサツグに問い掛けると、マサツグはモツの問い掛けに答え始める。自分が護衛任務をして居た時…一緒に居た仲間の傷と照らし合わせるよう見ていたと話してはその傷跡に如何にも気になると話し、その話を聞いたモツがマサツグに詳しい説明を聞こうと問い掛けた瞬間!…近くの草むらから揺れた様な音が聞こえては二人の警戒心は一気にMAXへ跳ね上がる!
__ガサガサガサガサ!!……ッ!?…バッ!!!…
「…今のは!?……」
「分からない!…
けど、嫌な予感が強くなったのには間違いない!……
…ちなみにさっきの質問の続きだけど…
爪痕は狼なんだけど…牙の跡が全然似てないんだ…」
「え!?…」
「何だろう…
牙が食い込んだ後が明らかに浅いんだよな?……
あれは狼の物じゃない!!…
それに狼は引っ掻くより噛み付いて攻撃する方が
得意の筈なんだよな?…
だから余計に違和感を覚えてさ?…」
近くの草むらから物音が聞こえ、瞬時に二人が背中合わせて武器に手を掛けると辺りを警戒する。モツがマサツグにも聞こえたかどうかを確認するよう言葉を漏らすと、マサツグが返事をして警戒を強める中先ほどのモツの問い掛けに対して答え始める。自身が感じた疑問と違和感…その二つをモツに話し、モツが戸惑った様子で返事をすると、マサツグは狼じゃない何かが居る事を示唆する言い方をしては辺りを警戒する!そうして二人が警戒を強めている中、また草むらから音が聞こえ始めるとその音の正体が飛び出して来る!
__ガサガサ!!…ガサガサ!!…バッ!!!…
「ッ!?…」×2
__コォ~~~ン!……
「……キツネ?…」
二人が警戒する中草むらから飛び出して来たのはまさかのキツネ…二人が戸惑った様子でキツネを見詰めては一応警戒をするのだが、そのキツネは直ぐにマサツグ達の前から姿を消しようまた草むらの中へと戻って居ってしまう。拍子抜けした様子で二人が徐々に警戒を解き、だが武器に手を掛けたままと気を抜いては居ない状態で元に戻るとある事に気が付く…それは周りから感じる嫌な気配についてであった。
「…キツネか…
…でも、やっぱり嫌な気配は消えちゃいないな?…」
「……翌々視線を感じる方を見るとアレだな?…
如何やらさっきのキツネみたいに動物っぽいが
様子がおかしい…まるで監視されている様な…」
周りから感じる嫌な気配は動物達の視線…勿論それだけで無いのは確かなのだがそれ以上にその動物達からは異様な視線を感じるのであった。そして視線の感じる方に目を向けると、動物のまるでこちらを品定めする様な真っ赤な目の視線を感じ、先程のキツネも何処か目付きがおかしかった事に気が付くと嫌な予感を更に感じ始める。まるで某・ゾンビゲームの中に入ったのではないかと疑う位の奇妙さにマサツグが戸惑うとモツに話し掛ける。
「……何かこの雰囲気…バイオでハザードみたいだな…」
「ッ!…
…だとしたらここに居る奴全員感染しているのか?…」
「…笑えねぇな……」
この奇妙な雰囲気だけでもぶち壊せないかとマサツグが冗談を口にすると、モツが乗っかりマサツグに返事をする。しかしその返しがまさにそれっぽい様に見え、言い出しっぺのマサツグが天を仰ぐ様に見上げると若干絶望した様子で嘆き悲しむ。そしてその場を後にするよう森の奥へと歩き出すのだが、その際先程の狩人の遺体だけでなく恐らく道具屋の店主が言っていた行方不明者達であろう遺体を見つけ、先ほどの様に状態を確認すると同じ様に違和感のある傷が残されていた。恐らくは同じ物にやられたのだろうとマサツグ達が警戒しつつも、森の奥に進んで行くとその道中更に奇妙な物を見つけて、マサツグ達を混乱させるのであった。




