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どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-  作者: すずめさん
-第一章-スプリングフィールド王国編-
23/605

-第一章二十二節 熊五郎と妖精の国とタイムリミット-



「…カチュアの嬢ちゃん?……

あそこで青ざめながらこちらを見ている御仁は?…」


「ッ!…マサツグ!!早く来るのね!!

紹介が出来ないのね!!!」


「え?…あ、あぁ…」


熊五郎がマサツグの事に気が付いた様子でカチュアに誰かと尋ね、カチュアがその質問に振り返って青ざめるマサツグを見つけると早くと急かし始める。急かされるマサツグは戸惑いつつも返事をして、その熊五郎が居る方へと歩き出すのだが、それよりもその熊五郎を近くで見たマサツグにはツッコミしか湧いてこない。何故なら…


「紹介するのね!

彼が冒険者のマサツグ!!

私達の依頼を受けてくれた冒険者で

私達が見える人間さんなのね!!」


「ッ!…と言う事はこの人が!!…ゴホン!!…

お初にお目にかかりやす!…

あっしはこの森で主をしておりやす…

熊五郎と申しやす!」


「よ…よろしくどうも…」


{熊五郎の声が渋い!!!…

それに良く見たら…

何処をどう見てもフェルト地のテディベアだし!!…

何よりデカい!!!…

俺の身長より圧倒的にデカい!!!…

そして何で任侠者のポーズで挨拶をする!!!!…}


この熊五郎…近くで見ると大きく身長はゆうに3m位はある。更にその体は遠くから見て居た限りでも大体は分かっていたがフェルト地のぬいぐるみで体はモコモコ、木製の防具が異様な雰囲気を更に掻き立てる中その声は某携帯電話会社のCMに出て来るあの白い犬を彷彿とさせる渋い声!…キャラの個性が完全に飽和している様な熊の人形に足を開いて腰を落とし、前かがみで頭を下げられて更に右手をマサツグに付き出し、左手は左膝に置いて任侠物の映画でよく見る挨拶をされるとマサツグは軽いパニックになる。それでもマサツグは何とか熊五郎に挨拶をし、心の中で思った事をツッコんだ所でその熊五郎の手を握り握手も済ませ、そしてドタバタの挨拶も終わらせた所でカチュアが森の様子について熊五郎に質問をする。


「…ところで熊五郎…森の様子は?…

ティターニア様は!?…」


「……ハッキリ言いますと悪化の一途を辿っていやす!…

あっしも体力の続く限り元凶を探してやすが…

どうにも見つからず!…

何せあの状態で視界も悪ければ匂いも感じない…

そんな状態でやす!…

ティターニア様の魔力もそろそろ限界が来ているのか…」


「ッ!?…」


「魔力層が薄くなってきていやした!!…」


「えぇ!?…」


熊五郎がカチュアの質問に対して振り向くと、伝え辛そうな表情を見せつつも在りのままの情報をカチュアに答えて見せる。瘴気は濃くなって行っているのか熊五郎もキツイと話し、それでも元凶を探して居ると言っては手掛かり一つ見つからないと悔しそうに答える。そしてそのせいでティターニアも危ないと熊五郎が話すと、カチュアがショックを受けた表情を見せる。その表情を見て熊五郎が拳を握り自分の不甲斐なさを悔しがるのだが、マサツグがそんな二人の様子を見ては熊五郎に対しての恐怖心は消えて無くなり、依頼の話を始める。


「…ッ!……じゃあ、急いだ方が良いな!…

早速だがその魔法の花が群生して居る所の

心当たりは?…」


「場所は分かっているのね!…

私達の住む町の更に奥!…

[一坪の日だまり花畑]に咲いているのね!!…」


「よし!…場所が分かっているのなら話は早い!!…

行こう!!」


「では森の案内はあっしが…この森の事なら何でも!!…」


カチュアと熊五郎の話を聞く限り本当にギリギリの状態…それを知ってマサツグがまず花が咲いている場所について質問をすると、カチュアが花の咲いている場所を話し、マサツグが急ごうと声を掛けると熊五郎が道案内を買って出る。そうして熊五郎ガイドの元…マサツグが後を付いて行く様に迷いの森へ足を踏み入れると、マサツグの前にいつもの名所案内が表示されては瘴気の歓迎を受ける。


 -----------------------------------------------------------------------------


         「迷いの森」


貿易都市クランベルズより南西にある森で一度ここに迷い込むと一週間は出られないと言う曰く付きの森。その迷う原因に色々な者が仮説を立てているのだが、その中の一説に妖精の悪戯…或いは魔法が掛けられてあるからなど、妖精の噂話に因んだ諸説が多く語られる森として有名。また妖精の痕跡らしき物も多数見られる為、妖精好きや密猟者など…色々な人間が集まって来るそうなのだが、そう言った者は森の主に怒られ強制的に森の外に追いやられる。


 -----------------------------------------------------------------------------


{…悪戯で一週間森の中迷子って……

結構鬼畜だな…

まぁ、いよいよ迷いの森に突入って訳なんだが…

もう瘴気が漂って居るな…

まだそんなに濃度が高いって訳でも無いけど…

少なからずデバフは掛かるみたいだな…

…って、あれ?…}


マサツグが目の前に表示された名所案内に目を通し、この森の中で一週間も迷子と考えると軽い戦慄を覚えると同時にティターニアは案外ドSなのかと疑ってしまう。そして森の主と言うのは恐らく熊五郎の事なのだろうとチラッと確認をするのだが、その容姿からはやはり想像が出来ず困惑してしまう。そして森に漂う瘴気はまだ入り口だからなのか薄っすらと充満しており、マサツグに軽い身体能力低下のデバフが掛けられると戦闘が起きた時に厄介と感じる。しかしそれと同時にある疑問がマサツグの中で浮かんで来るとカチュアに質問をする。


「…なぁカチュア?

今更なんだが何でギルドに依頼を出したんだ?

魔法の花が咲いている場所が分かって居るなら

そのまま妖精達が摘んでティターニアに届ければ

良いんじゃ?…」


「…それは出来ないのね……」


「へ?…何で?…」


マサツグの呼び掛けにカチュアが振り向き如何したと言いたげな表情を見せて居ると、今回の依頼について…ただ花を取って来るだけならそんな自分達に助けを求める程では無いんじゃ?…とマサツグが不思議そうな表情を浮かべてカチュアに質問をする。場所も分かっている…花も咲いている…そこまでわかっているのなら後は熊五郎に協力して貰うなり色々方法が有るとマサツグは考えるのだが、カチュアはその問い掛けに対して苦虫を噛んだ様な表情を見せては出来ないと答える。その表情と返答にマサツグが疑問の表情を浮かべてはその理由を聞き返すと、カチュアは魔法の花についての説明を話し始める。


「マサツグに今から詰んで貰う花…

魔法の花は魔法を扱える者が手に取ると忽ち萎れて

その手に取った人の魔力を回復してしまう花なのね?…

例え魔力満ち足りて居ても魔力を持っている人が持てば

忽ち萎れてしまう…私達妖精は誰もが魔法を扱う事が

出来るから私達では回収出来ないのね…それどころか

魔力過多で倒れてしまう可能性もあるのね?…

だから、マサツグみたいな魔法適性が無い人が

必要だったのね!

…因みに熊五郎も摘み取る事が出来ないのね?」


「何せこの手でやすからねぇ…あっし…不器用なもんで…」


カチュアが自分達で魔法の花を回収出来ない理由を話し、下手すれば命に係わる様な事をマサツグに説明するとその説明にマサツグが戸惑い、更にカチュアがマサツグに魔法適性が無い事をハッキリ断言するとその言葉にマサツグが軽いショックを受ける。そして熊五郎でも花を回収する事は出来ないとカチュアが説明すると、熊五郎は先に進みながらマサツグの方に振り返って、自分の手を見せ不器用とまるで某俳優の名言めいた言葉を口にする。そのカチュアと熊五郎の反応にマサツグが前途多難と思いつつ先を急ぎ進んで行くと、ふと改めてこの森の恐ろしさに気が付く。


{……にしても…さすがは迷いの森と言った所か…

今はこうして熊五郎とカチュアの案内があるから

サクサク進んで居るけど…この森…何の目印も何もない…

本当に俺みたいな方向音痴がここで迷ったら死!…

あるのみって感じだな…}


森の中を進むにつれ迷いの森と呼ばれるその所以をマサツグは知り始める…今は何の迷いも無く熊五郎案内の元サクサクプレイで森の中を歩いているのだが、その道中…一度として目印になりそうなオブジェクトを見ていない事にマサツグが気付いては辺りを見渡す。しかし見つかるのはどれも似た様な光景に同じ生え方…育ち方をして居る木々ばかり…挙句の果てには地面に生えている草まで統一されている徹底ぶりにさすが迷いの森と樹海に迷い込んだ様な感覚になってしまう。大抵の森のダンジョンでは目印になる様なオブジェクトが置いて有る筈なのだが全く見当たらない事にマサツグが軽い恐怖を覚えて居ると、熊五郎がマサツグの様子に気が付いてか忠告をする。


「お気を付けなすってぇ!…

この森で迷ったらまず一週間は彷徨い続ける

破目になりやす。…前にある冒険者が何やら

意地になってこの森を踏破しようと頑張って

居た様子ででやすが、最終的に彷徨っていたら

出て来れなくなった…何て話もありやすから…」


「ッ!!…因みにそいつは?…」


「ミイラみたいに乾涸び掛けていたのを

あっしが見つけて外に捨てておきやした。」


「………。」


熊五郎が名所案内にあった説明と同じ様な事をマサツグに話し、更に無謀な冒険者の話をマサツグにするとその顛末も話す。その顛末を聞いたマサツグが冒険者の最後について尋ねると熊五郎がその話の情報源(ソース)らしく、冒険者の在り様と処理方法を本人から聞かされてはマサツグが黙り込んでしまい、無言で熊五郎の隣を離れない様に歩き始める。そうして似た様な風景を何回も見ていると完全に自分が何処にいるのか分からなくなり、更にこの森自体がかなり大きく本当にその魔法の花の咲いている場所に向かい歩いているのかと疑問を感じ始めて居ると、微かではあるが水の流れる音が聞こえて来る。


__サアアァァァァ……


「ッ!…水の音?…」


「…ここまでは何もないでやすね?……

こうして案内している時でも元凶が

見つかるかもと思ったですが…」


「…それにしてもさすがだな!……

こんな何もない森の中を悩む事無く

スイスイ移動するんだからな?…」


マサツグがその水の流れる音に気が付き、熊五郎は案内している間も索敵をしていたのか異常は無いと残念そうに声を漏らす。その様子にマサツグが気を使う様さすがの道案内と熊五郎を鼓舞し始めるのだが、それを聞いて反応したのは熊五郎では無くまさかのカチュアであった。カチュアは何故か自分の事の様に胸を張ってはマサツグの前に飛来し、熊五郎の話をし始める。


「ッ!…当然なのね!!

熊五郎はこの森の主でめちゃめちゃ強いのね!!

…昔はちょっとヤンチャ者だったみたいだったけど……

それでも今は私達妖精にとっては大事な家族なのね!!」


「いやぁ~!…あははははは!…

お恥ずかしい限りで…」


「…へぇ~……って、何でお前が自慢げなんだ?…」


カチュアが無い胸を張って熊五郎を家族と言うと、その言葉に熊五郎は照れながら後頭部を掻く真似をしては恥ずかしいと話す。その際カチュアが熊五郎は昔ヤンチャ者だったと言う事を話し、その時の熊五郎は一体何をやっていたんだ?と言う疑問が出て来てはマサツグが適当に返事をするのだが、その話を何故カチュアがとツッコミを入れると更にその水の流れる音が聞こえる方へと歩いて行く。


__サアアァァァァ!……


「もう少しで川に辿り着きそうでやすね?……

もしもう一度ここに来る事が有ればこの川の音を

聞いて川に向かい、川に沿って昇って行けば

誰かが助けてくれると思いやす。

迷った場合は参考に…逆に下って行けば

この森からも出られやす。」


「ッ!…なるほど…」


「でも大抵この川に辿り着けない事が大半なのね。

それに、森の外からだと川は見えないのね。」


川の音が聞こえる方に向かい歩き、熊五郎がマサツグに森で迷った時の対処法を教えるとマサツグは分かった様子でその話を胸に刻むのだが、その補足説明をする様にカチュアが余計な一言を付け添える。そんなカチュアの言葉に二人が無言で戸惑ってしまうのだが、木々を掻き分ける様にして熊五郎の案内に付いて行き…徐々に水の流れる音が聞こえて来る中…漸く開けた場所に出たと感じれマサツグ達の目の前にその熊五郎が話していた川が現れる。


__ザアアアァァァァァ!!!…


「おぉ!…川だ!…

良い感じに流れているな!!…って、湖?…

…瘴気が充満しているな…」


「ここがこの川の源泉…

通称[妖精の湖]と呼ばれる場所でやす。

…通称と言ってもそう呼んでいるのは

あっしだけですが…」


「え?…じゃあ何でそんな名前を?…」


「それは私が教えるのね!!」


流れる川を見てマサツグが謎に新鮮さを覚えた様子で眺めて居ると、既に上流の方まで歩いて来ていたのかその川の源泉であろう湖が見えていた。瘴気が充満していなければ今頃綺麗な湖が見れていたのではとマサツグが悔いる中、熊五郎がその湖の名前を命名したとマサツグに教えると、その名前の由来についてマサツグが尋ねるのだが、何故かその質問に熊五郎では無くカチュアが答えるとばかりにマサツグへ声を掛けると川の方に飛んで行く。


__ヒュウウゥゥン!!!…


「あっ!…おい!!…って、あれ?…

何だアレは?…」


カチュアが川の方へと飛んで行ってマサツグが声を掛けて如何言う事なのかと尋ねようとするのだが、カチュアの飛んで行った方を確認すると川の真ん中に中洲が出来ており、その中洲の更に真ん中に不自然に切り株が一つ残されて在ってはその切り株にキノコが円形状に生えている。その際そのキノコのサークルからはキノコが発しているのか淡い光を放っており、カチュアがそのキノコのサークルの中心に着地しては突如名乗りを上げ始める。


「すぅ…妖精魔法弓師 カチュア・ピリア!!

戻ったのね!!」


「……合言葉は?…」


「ッ!?…」


「妖精の羽は自由の羽!!」


カチュアが切り株の中心で名乗りを上げ、森にカチュアの声が響いたと思えば今度は何処からともなく合言葉を求める声が聞こえて来る。その声はまるでアニメでよく聞く巨人が喋っている様に重く反響して聞こえ、その声にマサツグが驚いた反応を見せて居るとカチュアが合言葉らしい台詞を口にする。すると切り株のキノコが更に光りを強くしたと思えば目の前に見えていた湖が突如靄が掛かった様に見えづらくなり、そして一度完全に見え舞くなってしまった後徐々にその靄が晴れ始めると湖のど真ん中に巨大なツリーハウスが一本現れる。それだけではない…湖の周りには先ほどまで見えなかった花畑が突如現れ、その花畑の要所…八か所から湖を囲む様にして樹齢何百年という位の太い樹が湖に向かい生えては中心に生えている木に巻き付くよう…まるで足場を作る様に生えていた。そしてその足場の様に生えている木や中心の樹にはかなり大きめのシル○ニア○ァミリーの様なドールハウスが幾つも建てられており、パッと見でも分かる位に誰かが住んで居る事が伺えた。その様子にマサツグが驚き絶句しその場に立ち尽くして居ると、カチュアがマサツグの方に戻って来てはその湖の中心に生えている樹に向かうよう声を掛ける。


「さぁ!マサツグ!!あの広場まで移動するのね!!」


「ッ!?…ッ!?!?…」


「…言いたい事は良く分かりやすが…

これが妖精達の住む国……

だからあっしはこの湖に[妖精の湖]と

名前を付けたんでやす…」


カチュアがその目の前に見えているとんでもなくデカい樹の中心部にある広場を指差し、あそこに一度立ち寄る様に声を掛けるがマサツグは絶句したまま熊五郎の方に振り返ると、妖精達が居住している樹を指差して無言で訴え掛ける。その様子に熊五郎も気持ちは分かると言った様子で軽く苦笑いをしては何故自分がこの湖にそう名前を付けたのかと改めてマサツグに答え、その答えを聞いているんじゃないとマサツグが開いた口が塞がらないと言った様子で首を横に振って居るとカチュアがマサツグを急かす。


「さぁ!さぁ!!早く!!…早く行くのね!!!」


「あっ!…ちょ!…ちょっと待て!?…

俺が足を踏み入れても大丈夫なのか!?…

その広場の近くにも家があるし!?…

潰れるかもだし!!…

それにどうやって登れって言うんだ!?…」


__メキッ!…メキメキメキメキ!…


「ッ!?…うおッ!?…何か生えて来たし!…」


カチュアがマサツグの背中に回り込んでは後ろからマサツグを押し、押されているマサツグは戸惑いながらもカチュアに如何やってあの広場まで移動するのだ!?と困惑した様子で訴え掛けては不安要素を口にする。しかしカチュアは構わずマサツグを後ろから押し続け、湖の手前までマサツグを移動させると傍の支える様にして生えている樹の枝が不自然に動き出し、階段状になる。その光景を目にしたマサツグが思わずツッコミを入れては恐る恐る足を踏み出し、途中で折れない事を確認しながらそのカチュアの示す広場へと歩き始める。その際他の妖精達もマサツグが来た事に興味を持ってかそれとも警戒してか…家から出て来ては物凄い勢いでマサツグを注視し始める。


__ざわざわ…ざわざわ…


「な、なぁ…カチュア?…

これって歓迎されてる?…

それともかなり警戒されてる?…」


「うぅ~ん…多分警戒なのね?…

今まで人間さんがここまで来た事が無いのね?…

だから皆初めて見る人間さんに興味津々半分…

警戒半分と言った所なのね…」


「ッ!…さようで…」


注視を受けるマサツグが戸惑った様子でカチュアに二つの質問をし、その質問にカチュアが後者の方を答えると周りの妖精達の様子をマサツグに耳打ちで伝える。その反応と様子を聞いたマサツグが若干戸惑った様子のまま広場に向かい歩き、広場に辿り着いた所で一際大きなドールハウスが建って居るのがマサツグの目に映ると、そのドールハウスの中から白い衣を身に纏い金髪ロングヘアーの女性…ならぬ綺麗な妖精が出てくる。身長はカチュアより数センチ大きい25cm位だろうか、とにかくその女王らしき妖精が緑のローブに眼鏡を掛けて本を大事そうに抱える三つ編みの妖精を付き添いに連れて、マサツグの前に降りて来る。そしてマサツグがその妖精に関心を向けて居ると、ティターニアらしき妖精はマサツグに挨拶を始める。


「ようこそ…人間様…

我ら妖精達の国「リトルガーデン」へ…

…私がこの妖精達の長をして居る…

ティターニアで御座います…」


__スッ…


 ------------------------------------------------------------------------


      「妖精の国・リトルガーデン」


迷いの森にある湖…妖精の湖の真ん中に位置する妖精達の隠里。余程妖精に好かれた者しかその国の姿を見る事が出来ず、まず普通に見つける事は出来ない。女王ティターニアの魔法によりその姿は隠されており、もし見つける事が出来たのならその者に幸運が訪れるとさえ言われている。妖精達の住む木々には意思が宿って居ると言われており、招かれざる者に対しては牙を剥く。尚、妖精達の居住区としている樹はスプリング大森林にある巨樹・スプリングスアダムと同じ苗木と言われている。


 ------------------------------------------------------------------------


「あっ!…えぇ~っと!…

ど、どうも!…マサツグです!…

依頼を受けて来ました!!!…」


__スッ…


ティターニアがマサツグに微笑み掛け、歓迎した様子で妖精の国の名前と自己紹介をするとここで名所案内が表示され、マサツグに頭を下げて会釈をする。その様子にマサツグが慌てた様子を見せながらも自己紹介をし、カチュアの依頼でここまで来た事を伝えては傅いて見せると、いつの間にか広場に他の妖精達が集まり出す。その様子にマサツグが若干戸惑いを覚えて居るとカチュアがマサツグの肩の上に乗り、自分の受けた命令についての報告をし始める。


「女王ティターニア様!!

ご命令通り我々の事が見える人間さんを

連れて参りましたなのね!!…

後はこのマサツグにお願いをして魔法の花を回収!…

これで女王様を救う事が出来るのね!!」


__ワアアァァ!!!……クラッ…


「ッ!……」


「ティターニア様!?…」


カチュアは見事仕事を成し遂げたと言わんばかりにマサツグを見つけたとティターニアへ自信満々に報告をし、そのカチュアの言葉を聞いて集まって来た妖精達がティターニアが助かると言った様子で歓声を上げのだが、その肝心のティターニアが具合の悪そうな表情をチラッとだけ見せるとその隣のお付き妖精がティターニアを気遣いつつ暗い表情を見せる。その様子は勿論カチュアの目にも映り、歓喜の様子から一転直ぐに心配の様相に変わり始めるとその様子にマサツグが嫌な予感を感じ始める。そしてその予感は的中とばかりに眼鏡の妖精は暗い表情を見せたままマサツグ達に話し掛け始める。


「…カチュア…貴方に話し難い事が有ります…」


「え?…」


「……ッ!…今回の任務大変ご苦労様でした!…

ですが!…その魔法の花も!…ッ!!…

全滅しました!!…」


「ッ!?!?!?…」


カチュアがお付き妖精に呼び掛けられ、そのティターニアとお付き妖精の様子に戸惑いながらも返事をすると、お付き妖精は悲しさと悔しさの入り混じった表情を見せてはその取って来ないといけない魔法の花について最悪の展開を話し始める。その言葉にカチュアは当然、集まって来た妖精達も血の気が引いた…酷く驚いた表情を見せては耳を疑い、そのお付きの妖精を凝視し始めるのだが、次に出て来た言葉はその魔法の花が全滅した経緯についてであった。



「……カチュアが女王様の命で人間さんに

助けを求めに出掛けて約一か月!…

突如何処からともなく様子がおかしい狼達が

現れたと思えば…魔法の花が群生する

[一坪の日だまり花畑]に巣食い始めました!…

その狼達を刺激しない様に偵察をして居る

のですが…その偵察部隊より…

花が残っていないとの連絡が!…

恐らく魔法の花は全部蹴散らされてしまったかと…」


「ッ!!…そんな!?…如何して!?…

じゃあ今は!?…」



「今も偵察の者から連絡を貰って居るのですが…

…ッ!!……現時点でもやはり残ってはいないと…

連絡を受けています!…更に悪い事にその日だまり

花畑の瘴気も濃くなり始めたとの事!…

狼達を退治したとして瘴気を如何にかしない事には!…

もう!!!…」


悔しさを噛み締めながらもお付きの妖精がカチュアが外に出て行った後の事を話し始め、それを聞いて尚信じられないと言った様子でカチュアが動揺を露わにして居ると、周りの妖精達もこの世の終わりの様な表情でジッとお付きの妖精に視線を向け続ける。今も諦めない切れない様子でその一坪の日だまり花畑に送った偵察の者から連絡を受けている様だがその甲斐も無く、マサツグが来ても手遅れと言った様子で悲観的になって居ると、それは突然起きる!


「……ッ!!…ゴホッ!…ゴホゴホ!!…」


__クラァ…ガッ!…バサァ!!…


「ッ!!!…ティターニア様!?!?!?」


__ワアアァァ!?!?…


出会った当初から具合が優れていないティターニアであったが、その容態が一気に悪化したのか突如その場で咳き込み始めては力無く倒れ始め、そして遂に足を踏み外すとそのまま体勢を整える事叶わず落下し始める。その事に気が付き慌ててお付きの妖精が手を伸ばして助けようとするのだが間に合わず、その落下するティターニアに妖精達が酷く動揺した声を挙げて慌て始めるのだが、マサツグがその様子に気が付いてか慌てた様子で受け止めに入る。


「ッ!?…うわっぶな!!!…」


__ズサァ!!…ガシッ!!…


「ッ!?…ティターニア様は!?…

ティターニア様は大丈夫大丈夫なのね!?…」


「……ふぅ~…何とかな?…」


マサツグの反応があと一秒でも遅れて居れば地面と激突していたと言う間一髪の所でマサツグが滑り込んで受け止め、落ちて来たティターニアの心配をカチュアが若干発狂状態で心配して居ると、マサツグが恐る恐る自身の手の中に居るティターニアの様子を確かめる。するとティターニアは具合が悪そうにしながらも無事な様子で咳き込み、その際何処か打ったと言った様子も無く手の中に納まっており、それを確認した所でカチュアに無事だと言う事を伝えると周りの妖精共々安堵の声を漏らし始める。


「……ほっ!…よかったのねぇ~…」


__はあぁ~~…


「…でも、安心するのはまだ早いだろ?……

如何する?…魔法の花の他に回復方法は?…」


「ッ!!…そ、そうなのね!!…

…でも…他にこの森でそんな物を見た事なんて…」



ティターニアが無事だと言う事に熊五郎もホッと胸を撫で下ろした様子を見せるのだが結局の処解決策は見つからず、マサツグが如何するのかと尋ねるもカチュアやお付きの妖精は何も言わずに悩み始める。有ると思われた魔法の花も全滅したと言われ、現状どうしようもない…実質詰みの状態にカチュアやお付き・他の妖精達が項垂れてお通夜の様な悲しさと静かさをマサツグが感じ始め、そして徐々にカチュアも早く連れて来る事が出来ればと自責の念に囚われ始めたのか泣き出し始める。



「……ッ~~!……グスッ!!……ゴメン!…

ゴメンなの!…みんな!…

私が!…グスッ!…私がもっと早く!!…

マサツグを!…グスッ!…見つけて居れば!!…

もっと早く!!…グスッ!…

他の人間さん達に!…お願いをしていればぁ~!!…」


「カチュア…」


「……申し訳ありません…カチュア…

私が不甲斐ないばかりに辛い思いを…

そして人間様…

カチュアに頼んで呼ばれて来たのに…

無駄足をさせてしまって…

花が蹴散らされてはもう…

意味がありません…私達の事は構いませんので…

如何か…如何かここからお離れになってください!…

最後に貴方の様な人間様に会えて…

本当に…良かった…」


やっとの思いで救ってくれる人間を連れて来たと言うのに時間切れと言われ、カチュアは他の妖精達に謝りながら泣きじゃくって居ると、ティターニアがカチュアを労わる様に謝罪の言葉を口にし、同時にマサツグにも謝り始めると辞世の句の様な言葉をマサツグに言う。そうなると完全にこの国はもう駄目だと言った様子で他の妖精達も泣き出し始め、世界の終りの様に妖精達が嘆き悲しみ始めるとその様子に熊五郎も動揺を隠せない様子でオロオロとし始める。そんな様子にマサツグも戸惑った様子を見せるのだが、ハッ!と自分のあるスキルを思い出し信じる様に目を見開くとお付きの妖精にある提案をし始める。


「……ッ!!…そうだ!!…

今からでも残っているかもしれない

魔法の花の蜜を集めて飲ませたら!…

…いっその事ティターニアを連れて!!…」


「それは無理です……先程も話した通り…

魔法の花はもう完全に瘴気の海に飲み込まれ…

オオカミが闊歩しています…

…それに例え魔法の花を見つけても女王様を

連れ出す事が出来ません!…

もし今の状態の女王様をこの国の外に連れ出したら

迷いの森に掛けられてある魔法全てが消え!…

外敵に狙われる可能性が大きく跳ね上がります!…

確かに我々妖精達はこの森の主、熊五郎と

盟友の誓いを立てていますが多勢に無勢!…

我々に出来るのは精々熊五郎の傷を癒す程度…

とてもじゃありませんが、自衛が出来る程の

戦力はありません…

出来たとして防衛が精一杯です…」


「…そうか……じゃあ無理だな…」


マサツグは自信が有る様子でティターニアを現地で魔力供給をすれば!…と提案をするのだが、お付きの妖精が無理と項垂れた様子で話してはそのティターニアを連れて行った場合のデメリットもマサツグに説明する。その際意外とこの妖精の国を狙って居る者が居るのか、防衛出来るかどうかも怪しいと言った様子で詳しい説明もマサツグに話し、それを聞いてさすがに連れて行くのは無理かとマサツグも納得した様子を見せるのだが、それでも何か考えが有るのかある事を頼み始める。


「…じゃあ、とりあえずその魔法の花が

生えている所まで案内出来る者を一人頼む!!…」


「え?…ですからもう花は!…」


「可能性は0じゃない!…」


「ッ!?…え?…」


マサツグが全く話を聞いていない様子で魔法の花が咲いている一坪の日だまり花畑への道案内が出来る者を要求すると、その言葉にお付きの妖精が戸惑った様子で意味が無いと話し掛ける。しかしマサツグはスッとそのお付きの妖精の方に振り返り諦めるにはまだ早いと真剣な表情で答えてみせ、その言葉にお付きの妖精が戸惑った反応を見せて居ると他の妖精達もマサツグを見詰め始める。一体如何言う事なのか?と妖精達に戸惑いの表情を向けられている中、マサツグは不敵にニヤッと笑うと自分のポリシーを話し出す。


「可能性が完全に0じゃない限りは

俺は諦めない性質でね…

やらないで後悔するよりやって

後悔した方がずっと俺の中では楽なんだ!…

それにここまで来て何もしないで帰るってのは

それはそれで何か嫌だし…

それに案外それで何とかなったら

ラッキー!ってもんだろ?」


「…しかし……」


「信じてくれ!!…

ハッキリ言って今の俺はお前達より花を見つける

自信が有るぜ?…なぁに!!もう少しの辛抱だ!…

必ず俺がこの国を助けてやる!!!…」


「ッ!?…」


マサツグが自分のポリシーを口にしては妖精達を説得し始め、そのハッキリとしないマサツグの説得にお付きの妖精が更に戸惑った反応を見せるのだが、マサツグは諦める様子を見せない。まるで自分の目で確かめるまで諦めないと言った様子で説得を続け、必ず助ける!とやる気に満ちた笑顔でマサツグが答えて見せると、その言葉に感涙したのか眼鏡の向こうでお付きの妖精の涙が弾ける様に見えた。そしてお付きの妖精が俯き、数分間黙った後マサツグを信じた様子で顔を上げると眼鏡を外して涙を拭い、マサツグに頷いて見せる。


「……スンッ!…分かりました!…

場所は熊五郎が知ってますので

引き続き案内をお願いします!…

冒険者さんはその案内にしたがって頂ければ

大丈夫です!…

…私の予想では恐らく明日の朝がこの結界の

タイムリミット!…それまでに如何か!!…

花の蜜を見つけて来て下さい!!…

熊五郎!!…お願いします!!!…」


「承知!!!」


お付きの妖精はマサツグの意思を信じた様子で熊五郎に道案内を任せ、そして結界のタイムリミットを予測しマサツグに伝えると、その予想を聞いてマサツグが時刻を確かめる。今現在ゲーム時間内にて午後六時頃…急がないと簡単に日を跨いでしまいそうと考えつつ、自身の手の上に載っているティターニアをそっと近くのドールハウスのベランダに寝かせる。それを見てお付きの妖精とそのドールハウスの妖精がティターニアの元まで駆け寄り、介抱をし始めるとマサツグは熊五郎に頷いて見せる。その反応に熊五郎も無言で頷いては広場を後にしようと歩き出し、その後を追う様にマサツグも歩き出すのだが突如カチュアに涙声で呼び止められる。


「グスッ!…マザヅグ~…」


「ッ!…ん?…ッ!?…」


「あ゛り゛がどな゛の゛ね゛ぇ~!!…

マザヅグ~!…」


「おまッ!…何つぅ~顔を!…まぁいい!…」



カチュアに呼び止められマサツグが振り返るとそこには涙でボロボロ…鼻水ダラダラの酷い有様のカチュアがマサツグの後ろでホバリングしており、カチュアはその表情のまま涙声でマサツグにお礼を言っては大粒の涙を零し続ける。それを見てマサツグが苦笑いをしてはツッコミを入れそうになるのだが、それを我慢するとカチュアを励ます様に言葉を掛ける。


「…もしかすると他にまだ手が有る筈かもしれない……

カチュア達の方でもまだやれる事は幾らでもある!!…

まだ諦めるには早いぞ!!…それに良く言うだろ?…」


__ポンッ!…なでなで…


「ッ!…」


「諦めたらそこで試合(ゲーム)終了ですよ?…ってな!!」


「ッ!!…」


マサツグがカチュアにもまだ出来る事が有ると励ましてはカチュアの頭を撫で、それに反応してカチュアがビクッと軽く反応しては頬を赤らめる。しかしマサツグは全く気付かない様子でカチュアの頭を撫で続けては某スポーツ漫画に出て来る名言を口にし、勿論何の事か分からないカチュアは若干困惑した表情を見せるも、マサツグの言葉に何かを感じ取ったのかハッとした表情を見せてはマサツグを見詰める。そうしてカチュアが少し元気を取り戻した所で熊五郎の後を追ってマサツグが広場を後にすると、熊五郎はマサツグを待って居た様子で待機しており、他の妖精達はマサツグの後を追って来たのかお願いをする様に声援を送り始める。


__冒険者さ~~ん!!!…

よろしくお願いしま~す!!!…


「……準備はいいでやすかい?」


「…あぁ!…急ごう!!」


マサツグが後ろから聞こえる声援を浴びつつ簡単に準備運動をすると後ろに向かい手を振り、それを見て熊五郎が準備は大丈夫か?と若干心配した様子でマサツグに質問をする。その質問を受けてマサツグは頷いて返事をし、熊五郎もマサツグの同意を聞いて先へと急ぐよう走り出すとマサツグがその後を追う。しかしこの時既に事態は悪化していくように日は沈み、月が昇り始めるとモンスターが活発に動き出すのであった。



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