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どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-  作者: すずめさん
-第一章-スプリングフィールド王国編-
22/604

-第一章二十一節 カルト教団と林檎とカチュア-



ギルドを後にしたマサツグ達がクランベルズの道具屋に向かい、クランベルズ周辺のマップとカチュアのお菓子を買うと、メインストリートに向かい歩き始める。クランベルズ周辺のマップは購入と同時にマサツグのミニマップに自動で何が有るかを詳細に映し出し始め、それを見てマサツグが一人安心しているとふとマサツグがある事を思い付く。


「…あれ?……

こんな風にマップを手に入れたら表示されるんだし…

何とか迷いの森のマップさえ手に入れれば…」


「それは無理なのね!…むぐむぐ!……

あの建物の中でも説明したと思うけどあの森には

ティターニア様の魔法が掛けられてあるにね?…

ゴックン!……幾らマサツグが条件を満たしていると

言っても魔法の影響は受けるし…

何よりティターニア様の魔法は方向感覚を麻痺させる…

視界に霧が掛かる等々…地図が有ったとしても

役に立たない様になっているのね?…

…それに…今まで誰も足を踏み入れて踏破した事の

無い森の地図を…何処で手に入れるつもりね?…

あぁ~ん!…むぐむぐ!…」


「…ごもっとも……」


マサツグが方向音痴でも行けるのでは?…と楽観的に考えては謎の自信を持ち始めるのだが、カチュアがお菓子を頬張りながら一言無理と話すとその理由をマサツグに説明し始める。それはギルドの中で聞いた内容と大体一緒で、ティターニアが森に掛けた魔法の詳細と地図など存在しないと言う…ちょっと考えれば分かる答えを突き付けると、マサツグは肩を落としてあっさり轟沈する。その際カチュアはお菓子の食べカスをマサツグの肩に撒きながら食べ、その事に気が付いたマサツグが肩を払いながらメインストリートに有る一軒の露天商の前を通り過ぎようとすると、突如呼び止められる。


「ちょっと!そこのアンタ!!

そこに居たら()()()()に絡まれるよ!!

こっちに来な!!匿ってあげるから!!!」


「え?…あいつ等?…」


「良いからこっちおいで!!!…」


「あぁ~!!ちょっと!?…」


露天商のおばちゃんが慌ててマサツグの前に飛び出して来ては隠れるよう指示をし、その指示にマサツグだけでなくカチュアも戸惑った様子を見せて居ると、おばちゃんは玄関口方面に向かって何かを確認しては更に慌てた様子でマサツグの腕を掴む。そしてマサツグを無理やり店の中に引き込み、何かから隠れるようおばちゃんと一緒に商品棚の下に隠れさせられるとマサツグはある事に気が付く。


{……ッ!?…あれ?…

()()()()()?…さっきまで凄い賑わっていたのに…

静かになるまでギルドに居た訳でも無いし…何で?…}


マサツグが気付いた事…それは異様なまでの静けさを感じるメインストリートの様子であった。マサツグがここに来た時…それはまさに商人の町と言わんばかりに賑わっていた声が今は全く聞こず、シ~ンと静まり返ってはまるでゴーストタウンに居る様な気配は感じるのに誰も居ない…そんな不気味な気配を感じる。恐らくは今のマサツグ達同様店の中に隠れて何かから逃れようとしているのだが、それが分からないマサツグ達はただその様子に不気味さを感じていると、何処からともなく声が聞こえ始める。


__バルフィモ~ル…バルフィモア~ル…

バルフィモ~ル…バルフィモア~ル…


「ッ!?…何だこの呪文?…」


「シッ!!…見ちゃいけないよ!!…

見つかったら面倒な事になるからね!?…」


「面倒な事?…」


何処からともなく聞こえて来た声にマサツグが反応して呟き、店の棚から少しだけ視界を確保して様子を見ようとすると、店のおばちゃんがマサツグを制止させようとする。その時のおばちゃんの慌て様は普通では無く、おばちゃんがマサツグを止める際、面倒な事になると言う言葉に引っ掛かりを覚えていると、その声の主達が直ぐ傍を通り始めては何やら叫んでいた。


「救世主さまが誕生される日は近いぞぉ~~!!」


「みな悔い改めろぉ~~~~!!」


「バルフィモ~ル!!…バルフィモア~ル!!…」


__バルフィモ~ル…バルフィモア~ル…

バルフィモ~ル…バルフィモア~ル…


マサツグが制止を聞きつつもバレないようチラッとだけ確認すると、そこにはおばちゃんの言う面倒な事…恐らくは宗教絡みであろう信者の隊列がマサツグ達の隠れる店の前を通過している光景が目に映る。全員が頭から白い布を被ったり白いローブを身に纏ったりとそれっぽい格好をし、異様な呪文を唱え周りに訴え掛けるよう叫び、何処に向かって歩いているのかすら分からない様子で通り過ぎて行く隊列にマサツグがえ?…と戸惑った様子を見せて居ると、その集団は徐々に町の奥へ消えて行く…そうして声が聞こえなくなった所で他の露天商の人達も商品棚の陰に隠れていたのか姿を現し始め、危機は去ったと言った様子で溜息を吐いていた。そんな様子にマサツグが先ほどの集団についておばちゃんに尋ねようとすると、おばちゃんはマサツグの考えを読んでか先に話し始める。


「お、おばちゃん…あれって?…」


「良く分からないけど…

他の連中はカルト集団って呼んでるよ!!…

あぁやって訳の分からない事を言いながら町を練り歩く!

オマケにさっきみたいに不気味な呪文を唱えては

強引な勧誘までする!!!

そのせいでこの時間は一気に客足が遠退く!!…

質が悪いったらありゃしない!!!」


匿ってくれたおばちゃんが言うにはあの白づくめ集団はカルト教団らしく、その目的も聞いている限りではまるで某預言書の終末の日がやって来る!!…と言った感じで叫んでいる様にしか聞こえず、信仰対象等も大まかにしか分からない様子でマサツグは困惑する。その異様ないで立ちにカチュアも不気味さを覚えたのかマサツグの背中に隠れ、その様子にマサツグが戸惑いながらもあの集団が現れ始めた時期について質問をする。


「…いつから?…」


「まだ最近だよ!?…

あいつ等が現れたせいで外からの客も逃げちまうし!…

踏んだり蹴ったりだよ!!!…

何が悲しくてそんな眉唾物に頼らにゃならんのか!…

もう、いい加減にして欲しいね!!!…」


「そ…そうなのか……

…とにかく匿ってくれてありがとう!…

もう行くよ!…」


いつからあの行進が行われ始めたのかおばちゃんに質問をすると、おばちゃんもあの集団には迷惑しか掛けられていないと文句を言う様に腕を組み、マサツグの質問に答え始める。そしておばちゃん自身もあの集団の事を胡散臭いと感じているのか、怒った様子で罵ると先ほどの行進で露店の商品に異常が無いかの確認をし始める。そのおばちゃんのご立腹具合にマサツグは戸惑いつつもお礼を言い、その場を後にしようとするのだが突如またおばちゃんに呼び止められる。


「ちょいと待ちな!!」


「ッ!…えぇ…まだ何か…」


「リンゴ二つで100Gだよ!…匿ってやった分!…

買って行ってくれても罰は当たらないと思うけど?…」


「ッ!……してやられた!…」


おばちゃんに呼び止められマサツグが戸惑いながらも振り返ると、そこには林檎二つを手に笑みを浮かべマサツグに買うよう勧めて来るおばちゃんが姿があった。そして匿った分の料金と言った様子で更に勧めて来るとマサツグはそのおばちゃんの言葉に苦笑いをして、やられたと零してはおばちゃんからリンゴ二つを購入する。その際この町の人間はタダでは起きない…本当に商魂逞しいなとマサツグが一人感じていると、おばちゃんはサービスと言った様子でマサツグにある事を話し始める。


「へへ!…悪いね!まいどあり!

その代わりに良い事を教えてあげよう!…

ここだけの話だよ?…

ここから西の農村の近くに「狩人狩りの森」ってのが

在るそうなんだけどね?…何でもその森には何でも

青く光る樹が生えているらしいよ!…

ただ今の所その木を探しに行った人間は誰一人として

見つけてない上に、帰って来ないとか!…

まぁ無理にとは言わないけど…

もし興味があるなら探してごらん?…

案外、お宝が眠ってるかもしれないよ!!」


「狩人狩りの森…

…今に任務が終わったら考えてみるか…

ちょっと興味あるし!…

ありがとう!それじゃおばちゃん!!」


「あぁ!!…気を付けて行くんだよぉ~!!!」


おばちゃんはマサツグが冒険者だと言う事を理解した様子で、良く有る噂話レベルのお宝の話をマサツグにすると嬉々として話し始め、それと同時にどれだけ信憑性があるのかと言った様子で危険度の話をするとマサツグは若干興味を持った様子でおばちゃんの話を頭に入れる。妖精からの依頼が終わった後…行ってみるのも面白いかもと一人考えてはおばちゃんに話のお礼を言うと同時に、別れの言葉も口にするとおばちゃんはマサツグに手を振りながら見送ってくれる。その様子をマサツグの体の陰に隠れながら見ていたカチュアがジッと見てはマサツグに話し掛ける。


「……あのおばちゃん案外いい人なのね?…」


「ははは!…そうなのかもな?…

とにかく町の玄関口に移動して馬車に乗るぞ?…

ギルドが手配してくれている筈だからな?…」


「ッ!…了解なのね!!」


少し警戒していた様子のカチュアだったが、おばちゃんが手を振ってくれて居る姿を見ては良い人なのでは?…と少し信用した様子でマサツグに話し掛け、その質問にマサツグは笑いながら返事をすると町の玄関口に向けて歩き始める。早く馬車に乗ろうと先を急ぐ様にカチュアへ声を掛け、その言葉にカチュアがいよいよ!…と意気込みグッ!と拳を握って表情を改めるとマサツグの肩にしがみ付く。そうして奇妙な宗教集団…露天商のおばちゃんにリンゴを買わされたりと色々な事が有ったもののマサツグ達は無事クランベルズの玄関口にある馬車乗り場まで辿り着くと、まずは馬車乗り場の案内所に入って行く。


__ガチャッ!…カランカラン!…


「あの~…すいませ~ん!」


案内所の扉を開けて中に入るとベルが鳴り、その音に反応してカウンターの奥に居るオジサンがこちらを振り向き、まるで何かを確認する様に眼鏡を弄ってはマジマジとマサツグの事を見詰め始める。その事にカチュアが戸惑った様子でマサツグの肩に乗って居るとマサツグはそのおじさんに声を掛け、おじさんがその声に対して返事をするのかと口を開いた瞬間、次に出て来た言葉は挨拶では無く…マサツグの特徴についてであった。


「ん?…黒髪青年に青いTシャツとブカブカズボン…

そして…」


__ッ!!…ヒュン!!…


「…あれが妖精だとするのなら…ひょっとして?…

あんた達があの迷いの森に行くって言う…」


「…え?…えぇ…はいそうです。」


オジサンがマサツグの見た目を口にした後、マサツグの肩に居るカチュアに目を向けるとカチュアはビクッと反応しては慌ててマサツグの後ろに隠れ、その様子を見て馬車案内のおじさんがギルドからの連絡内容を確認したのか、頷きながら疑問形でマサツグに行先について質問をする。その質問に対してマサツグが頷き返事をすると、おじさんはカウンター横の開閉扉を開けてはマサツグに近付き挨拶をし始める。


__ガタッ!…ギイィィィ…


「いやいや…申し訳ない…人をマジマジ見たりして…

報告上色々と確認をする為とは言え…」


「あぁ…いえいえ……何て言われたんです?」


「え?…えぇ…ギルドからは一応…

重要任務を受けた冒険者が一人と

一匹向かうから迷いの森に案内してくれと…」


{い…一匹!…カチュア完全に動物扱い…}


馬車案内のおじさんがマサツグに先ほどマジマジ見詰めた事について謝罪の言葉を口にするとその訳をマサツグに話し始め、その訳を聞いたマサツグがギルドから何と言われたのかについて質問をすると、おじさんは如何ギルドに言われたのかをマサツグに話し出す。その話を聞いてマサツグが心の中でカチュアの扱いに対してツッコミを入れて居ると、カチュアもその話を聞いてかマサツグの後ろに隠れては不服そうにブツクサと呟き、頬を膨らませる。


「一匹って如何言う意味なのね!?…

私は匹じゃなくて人なのね!?…」


「あははは…」


__ガチャッ!…カランカラン!…


「ギルドからのご依頼通り…

馬車を用意して在りますのでどうぞこちらへ…」


マサツグの後ろに隠れてはまるでハムスターの頬袋の様に顔を膨らませ、表立って怒らない事にマサツグが苦笑いをして居ると、馬車案内のおじさんはマサツグ達を用意した馬車へと案内し始める。カチュアの様子に何となく気付いている様だが触れないでおこうと考えたのか、大人の対応でスッとマサツグ達を案内所の外に連れ出すと馬車が並んでいる方に向かい手を振り、そのおじさんの合図に反応してか一台の馬車がマサツグ達の居る方に向かってゆっくり走って来てはマサツグ達の前にピタッと止まって見せる。


__ガラガラガラガラ……ピタッ…


「…なんというかそのぅ…赤いな?…」


「な…なのね!…」


__ガチャッ!…


「…こちらがその用意させて貰った馬車に御座います…」


その用意された馬車は何処と無しかその馬車は他の馬車とは違い赤く塗装されており、何ならその馬車を引く馬も赤いと圧倒的に他の馬車より目立って見える事にマサツグとカチュアが戸惑って居ると、おじさんがその馬車の扉を開けてはマサツグ達をエスコートする。その様子と馬車の在り様にマサツグとカチュアはただ互いに戸惑った様子で顔を見合わせては恐る恐る馬車に乗り込み、おじさんが馬車の扉を閉じると同時に挨拶をしては御者に合図を出し、馬車は動き出す。


「では…ごゆっくり…」


__バタンッ!……パアァ~~ン!!…

ヒヒィィン!!…ガラガラガラガラ…


「…内装は普通だな?……」


「…私…この馬車って言う物に乗るの初めてだから…

良く分からないのね?…」


急いで乗せられた感じのマサツグ達はギルドが用意したと言うこの馬車に今だ戸惑いを隠せない様子で、馬車の中を見回しては内装は普通だと感じるとその事をカチュアに尋ねるのだが、カチュアは馬車自体に乗るのが初めてだと答えてはマサツグの向かいの席に座って妙に畏まった様子で椅子に腰掛ける。初めての馬車…更に今にも三倍速で走り出しそうなこの赤い馬車にカチュアはまるで人攫いに遭って居る様な動揺を隠せない表情で座って居り、そんな様子にマサツグが気が付くと徐々に落ち着きを取り戻し始める。


「ッ!……ふぅ~……」


「ッ!…マサツグ?…」


「…とにかく森に着くまで何も出来ない……

後は森に着くのを待つだけだし…リンゴでも食うか?…

ほれ?…」


他人が慌てているのを見てマサツグが徐々に落ち着きを取り戻し始めると大きく溜息を吐き、その様子にカチュアがマサツグの方を見ては不安そうに声を掛けるのだが、マサツグは森に着くまで何もないと先ほどの動揺も消えた様子でカチュアに話し掛け始めては露天商で買った林檎を取り出し、一つをカチュアに手渡す。その際マサツグに手渡された林檎をカチュアは全身を使う様に抱き抱え、受け取ったは良いもののこれは何?…と言った表情を見せてはマサツグに質問をする。


「あっ!……?……ねぇ、マサツグ?…

あのおばちゃんから買った物なのね?これ?…」


「え?…あぁ…そうだけど…」


「これは一体何なのね?」


「え?…」


「え?…」


カチュアは林檎を抱えてまずマサツグに露天商で買ったものかと不思議そうな表情で質問をし、その答えにマサツグは若干戸惑いながらもそうだと答える。その質問にマサツグは何を言って居るんだ?と疑問を覚えてしまうのだが、その疑問を理解させるようカチュアの口から次の質問が飛んで来る…それは林檎そのものに対する疑問の言葉であった。一部を除き人間誰しもが林檎を手渡されたら食べ物と理解する筈なのだが、カチュアは林檎が何かを分かっていないのかマサツグに尋ね、その問い掛けにマサツグが困惑した様子で返事をすると、カチュアも釣られて返事をする。


「え?…」


「え?…」


{……あっ!…これ本当に分かってない目だ…

妖精の中にもリンゴ食った事が無い奴が居るのか?…}


__…あぁ~ん…ガブシュッ!!…


それはマサツグにとって人生初の質問であった…林檎を手にこれは何?と尋ねられた事に…カチュアは何かおかしい事を聞いた?と不思議そうな表情を浮かべてマサツグを見詰め、それを見てマサツグが本気(マジ)だと理解すると、マサツグは林檎を片手に口を開け、林檎を齧って見せる。マサツグが林檎を齧った瞬間カチュアは驚いた表情を見せてはマサツグを凝視し、マサツグは齧った林檎をカチュアに見せては飲み込み、林檎の説明をし始める。


__シャクシャクシャクシャク…ごっくん!…


「…んはぁ!……木の実だよ。

こんな風に中は蜜が詰まってて一口齧れば

爽やかな酸味に口一杯に甘いジューシーな

果汁が広がる…てか、森に棲んで居れば

一回位は見た事あるんじゃないのか?…」


__ブンブンブンブン!…


「無い!…無いのね!?…ほぁ~!…

世界にはこんなものも有るのねぇ~!…

…ッ!…あっ!…あぐッ!…あぐあぐッ!…」



マサツグが齧った林檎の断面からは蜜が滴り瑞々しさを感じさせ、そしてマサツグが軽い食レポ風の語りで林檎が食べ物である事を説明すると、カチュアに自分達の住む森で林檎を見かけた事は無いのかと質問する。その質問にカチュアは首を横に振って無いと断言し、興味を持った様子で抱えている林檎を見詰めてはマサツグの真似をする様に口を開いて齧り付こうとする。しかし体格的な理由も有ってか思う様に齧り付けず、マサツグの目の前で四苦八苦して見せて居るとマサツグはそれが可笑しかったのか、静かに笑い始めてはカチュアから林檎を取る。


「ッ!……プッ!…クククク!…はあぁ~…

カチュア?ちょっと貸してみ?」


「ッ!…あぁ!…返すのね!!…私も林檎!!…」


「慌てるなって!…ちょっと待ってろ?…」


__チャキッ!…スゥ…サクッ!…サクッ!…

サクッパキ!…サクサク…


マサツグに林檎を取られてカチュアが食べたい!と怒った様子で両腕を振り上げ抗議をするのだが、マサツグは落ち着くよう声を掛けカチュアを宥めると徐に自身の剣を鞘から抜いて見せる。そしてカチュアの同意も聞かぬままマサツグは林檎をその剣で斬り始め、カチュアの食べれるサイズに林檎を切り分けて見せるとその切った林檎をカチュアに差し出す。


「ほれ、これなら無理なく食えるだろ?」


「ッ!…むぅ~!!…

マサツグみたいに噛り付いてみたかったのね!!…」


「あのままだとお前顎外しそうだったが?…」


「ッ!?…むぅ~!!!いただきますなのね!!!」


__シャクッ!!…ッ!!!……


切った林檎を差し出されカチュアが膨れっ面になると腕を組み、マサツグに軽くそっぽを向くと文句を言い始める。まるで大人の真似をしたがる子供の様に拗ねてはマサツグに文句を言い、その文句を聞いたマサツグが呆れて笑いながらツッコミを入れると、カチュアはショックを受けた様子を見せて更に膨れっ面になり、怒りながらマサツグの切った林檎を手に取り噛り付く。すると漸く食べる事が出来た林檎の味に感動したのか、先ほどまで不機嫌だった顔が一気に笑顔になると、カチュアは目をキラキラさせた様子で林檎を食べ始める。


「~~♪…ッんは!…

これおいしいのね!!」


「ははは!…そいつは良かったな!……あれ?…」


初めて食べた林檎の感想を口にしてはマサツグの切った林檎を食べて行き、その様子をマサツグが微笑ましく見て居るとふとある疑問がマサツグの中で湧き出て来る…あの時の露店のおばちゃんは何故マサツグ達に林檎を()()売ったのだろう?…と、確かにカチュアはギルドで姿を皆に見えるよう魔法を解いて見せたがその後は?……馬車案内所のおじさんもカチュアの事に気が付いていた…と言う事は?……そんな疑問がマサツグの中で生まれるとマサツグはカチュアに尋ねずには居られないのであった。


「…なぁ?…カチュア?…」


ひゃんはほね(何なのね)?」


「…今お前って誰にでも見られる様になっているのか?…

ギルドを出た時…おばちゃんが林檎を二つくれ…

いや、売って来たし…」


「んっん!!……多分見えているのね?

あの魔法は一度解いちゃうとまたティターニア様に

掛け直して貰わないと駄目な魔法なのね!」


カチュアが口一杯に林檎を頬張りながらマサツグに返事をすると、マサツグはその様子に戸惑いながらも今疑問に感じた事についてカチュアに質問をする。その際露店のおばちゃんの話を持って来てはそれを踏まえて質問をし、その質問を受けてカチュアが口の中の林檎を飲み込むと、アッサリ見えるとマサツグに答えてはその理由も話し出し、その話を聞いてマサツグが心配した様子でカチュアに再度質問をする


「駄目なのね!…って、大丈夫なのかよ!?…」


「問題無いのね!…今はマサツグも居るし~♪…

私こう見えて妖精の国では魔法弓士を

やっていたのね!!…」


「…弓を持っている様に見えないが?……」


「それはぁ……置いてきちゃったのね…

あっ!…でもでも魔法は使えるのね!?…

例えばだけど……ッ!…丁度良いのね!」



マサツグの心配する態度にカチュアは余裕とばかりに答えてはマサツグが居ると豪語し、更に自分は戦えると無い胸を張ってはマサツグに威張って見せ、その際魔法と弓が使えると自信満々に口にする。その言葉を聞いてマサツグはカチュアの身なりを目を凝らし確認するも弓らしき物は見当たらず、そしてその事について尋ねるとカチュアはばつが悪そうな表情を見せては誤魔化したくて仕方が無いと言った様子で正直に答える。しかし魔法だけでも相当自信が有るらしくマサツグにその証拠を見せようと馬車の中を見回して居ると、カチュアはある物を見つけては丁度良いと口にする。その言葉の意味にマサツグが悩んでしまうのだが、その意味も馬車を操舵する御者の声により理解する。


「ッ!…旦那!!…ちょっと揺れやすぜ!!」


「え?…」


「コボルトの群れでさぁ!!

あいつ等に捕まると色々面倒なんで…

一気に駆け抜けてしまいやす!!!」


__ドドドドドドド!!…アオォ~~ン!!…


突然の揺れると言う言葉にマサツグが戸惑った様子で声を漏らすと、御者はマサツグに見えるようある方向を指差し始める。マサツグもその御者の指さす方を見て何が居るのかと確認をすると、そこには御者の説明する通り武装したコボルトの群れがこちらに向かい走って来ては棍棒を振り上げ、それを見てマサツグが逃げる為の忠告かと理解するのだが、カチュアの丁度良いと言う言葉の意味には繋がらない…しかしカチュアは自信満々に御者に大丈夫と答える。


「その心配は無いのね!!」


「え!?…いやいや、旦那達は大丈夫でしょうが…

こっちは!…」


「あいつ等には私達を()()()()()()()()()()()()!!…行くのね!!…

《…光りよ!…屈曲して我らを隠せ!!…

ノーモンスターチェック!!》」


カチュアの大丈夫と言う言葉に御者が慌てて見せ、マサツグ達は大丈夫だろうと話して自分達は大丈夫では無いと馬車の心配をし始める。しかしその御者の言葉をカチュアは聞く耳を持たず、ただ自信満々に胸を張っては意味有り気にコボルト達は見つける事が出来ないと豪語し、そして何かをやる様子で意気込んでは目を閉じて詠唱し始める。そして直ぐに詠唱を終え魔法を発動するとカチュアの唱えた魔法はマサツグ達の乗る馬車を囲む様に障壁を張り出す!


__シュウゥゥゥン…パシィィン!!…


「カチュア!?…一体何を!?……え?…」


__……アオン?…


「な…何で?…」


カチュアの唱えた魔法はただ障壁を張っただけにしか見えず、その障壁も厚みが薄く心許無い…その様子にマサツグが慌ててカチュアに何をやったのかと尋ねようとするのだが、カチュアはドヤ顔を決めてはマサツグにコボルトの群れを見るよう指差し、その様子にマサツグが戸惑いながらもコボルドの群れが有った方を確認すると、そこには敵を見失ったと言った様子で辺りを見渡すコボルド達の様子が目に映る。その様子にマサツグが戸惑いコボルド達の様子をジッと見て居ると御者も戸惑った様子で声を漏らし、二人の反応を見てカチュアが更にドヤっと言いたげな表情で腰に手を当て胸を張る。


__ドヤァ!!…


「えぇ~…」


「…こりゃすげぇ!!…

ここのコボルドはそこいらの盗賊共より

質が悪いって有名なんでさぁ!!…

だからここを抜ける際は馬を走らせたり…

護衛を数人雇うのですが…

この魔法!…便利ですなぁ!!…」


__ドドヤァ!!…


ドヤ顔を決めるカチュアにマサツグが戸惑った表情を見せて居ると、御者が素直にカチュアの魔法を褒め始め、そして先ほどのコボルドについて軽く説明をし始めると改めてカチュアの魔法を称賛する。その御者の言葉を聞いてカチュアが更にドヤ顔を決めてマサツグに視線を向けると、マサツグは戸惑いながらもそのカチュアの期待に答えるよう呟き、カチュアの頭を撫でようと手を置いて見せる。


「…分かったよ!…お前はスゲェよ!…」


__ポンッ!!…ッ!!!!…


「はにゃ!?…」


「ど…如何したんだ!?…」


「え?…え!?…な、何でも無いのね…」


マサツグがカチュアの頭の上に手を置いた瞬間、カチュアは跳ねる様に動揺してはマサツグから一気に距離を取って顔を赤くする。その突然の反応にマサツグが驚きカチュアに何か悪い事をしたのかと尋ねるのだが、カチュアはただ顔を赤くしては戸惑い、動揺したままマサツグに返事をする。その様子からはカチュア自身も初めて…と言った様子で顔を赤らめ、マサツグもそんなカチュアの様子に戸惑って居ると馬車は何事も無くコボルト達の群れを通り過ぎて行くのであった。


__三十分後……


「…見えてきやしたぜ!!旦那!!!」


「ッ!…どれどれ……?…」


本来ならその森に辿り着くまでに二日は掛かると聞いていたのだが、何故か異様なまでにその日の内に迷いの森までやって来る事が出来たマサツグ達…御者の森が見えて来たと言う言葉に反応してマサツグが馬車の窓から顔を出すと、御者の言う通りにその異様な雰囲気を放つ森が見えて来るのだが、何かが可笑しい…そんなマサツグに遅れて御者も迷いの森について軽く説明をしようとするのだがマサツグ同様その森の異変に気が付く。


「あの森がかの有名な迷いの森…

…って、え?…ッ!?…

な…何であいつが!?…」


「着いたのね!?何なのね~!?…ッ!?…」


御者が驚いた反応を見せてはマサツグがその反応に戸惑いを隠せない様子で窓から顔を出し、カチュアも漸く帰って来れたと言った様子でマサツグが覗く窓から一緒に森を確認するのだが、マサツグと御者同様ある物を目にすると少し驚いた様子でその異変を凝視し黙ってしまう。その際カチュアの動揺も馬車に揺られていつの間にか消えて無くなり、またいつもの様子でマサツグと一緒にその森の異変に目を向けるのだが…そのマサツグ達の視線の先には今まで見た事の無いモンスターが森の入口に鎮座していた。


「な…何だ?…あの熊は?…ぬいぐるみ?…

いや…でもこんな巨大なぬいぐるみ…

森の前に置いて有るのか?…」


マサツグ達の目に映ったのはモンスター?…とにかくその場の雰囲気には不似合いな程のファンシーな熊の人形、更にその熊は武装をしているのか木製の兜やら鎧やら色々着込んでおり、その辺に居る冒険者より余程しっかりした装備をしていた。その様子にマサツグが何だアレは?…と言った様子でジッとその熊の事を見詰めて居ると、御者が慌てた様子で馬車を止める。


__ガガガガガ!!…ヒヒイィィン!!!…


「うおあ!?…ッ!!…っと!…な、何だ!?…」


「あぁ!…大変だぁ!!…旦那!!

すまねぇが乗せられるのは如何やらここまでの様だ!…」


「え?…」


馬車が急ブレーキを掛けると中に乗っていたマサツグ達は転がりそうになり、それでも何とか踏ん張って見せると何事だとマサツグが戸惑って見せる。そんなマサツグに御者は乗せられるのはここまでだと慌てた様子でマサツグ達に話し、その突然の馬車ストップにマサツグが困惑した様子で戸惑って居ると、御者は不味いと口にしては止まった理由についてマサツグに話し始める。


「これ以上あいつに近付いたらヤバイ!!…

こっちがやられちまう!!!…」


「ッ!?…そんなにヤバい奴なのか!?…」


「ヤバイなんてもんじゃねぇ!?…

あれは…バケモンだ!!…」


「バケモン!?…」


御者はこれ以上近付けば殺されると言った恐怖観念に襲われては決して馬車を動かそうとはせず、ただマサツグが馬車から降りるのを待ち始める。距離にして後数m…その熊のモンスターは眠りこけて居るのかその場に体育座りをしては舟を漕いでいた。そんな狂暴そうには見えない外見にマサツグが困惑し御者に危険度について尋ねようとするが、御者はただ怯えた様子で首を横に振っては化け物と答えるだけ。そんな御者の言葉にマサツグは戸惑いつつもその熊をジッと見詰め、如何したものかと悩み考えて居るとカチュアがその熊に向かって一直線に飛んで行き始める。


__バッ!…ヒュウウゥゥゥン!…


「ッ!?あっ!…おい、カチュア!?…」


「大~丈~夫!…なのね!!

ほら早くマサツグも!!…」


「えぇ……」



カチュアが熊に向かい飛んで行くのを見てはマサツグが慌てて呼び戻そうとする。しかしカチュアは笑顔で振り返り大丈夫と言ってはマサツグに早く来るよう呼び掛け、そのカチュアの言葉にマサツグが戸惑った表情を見せては声を漏らす!…御者が言うにはとんでもない化け物!…カチュアが言うには大丈夫!…どっちが正しいのか全く分からないマサツグではあるのだが、ここで悩んで居ても仕方が無いと考えるとカチュアの言葉を信じて馬車から降りる。


__ガチャッ!…コッ…コッ…コッ…コッ…


「ッ!?…ちょ!ちょっと旦那!?…

あんた本気で行く気かい!?…」


「…一応依頼人なんでね?…あの子…

ありがとう!…ここまでで十分だよ。」


「ちょ!…幾らギルドの重要任務とは言え!…

命を掛けるってのかい!?…

今ならまだ引き返せるぞ!?旦那!!!…

…行っちゃったよ…」


マサツグが馬車から降りてカチュアの後を追おうとすると御者が慌てた様子でマサツグを呼び留め、マサツグはカチュアを信じた様子で後を追いながらもここまで運んでくれた事に対して御者にお礼を言う。そんなマサツグに御者は今なら引き返せると心配した様子で声を掛けるのだが、マサツグは聞く耳を持たないでそのまま歩いて行ってしまう。御者が如何しようかと慌てた様子でマサツグ達の様子を見詰めて居ると、カチュアは一直線にその熊に向かって飛んで行っては、遠慮無しに熊へ抱き着く。


__ヒュウウゥゥゥン!…


「く~ま~ご~ろ~う~!!!」


__ピクッ!…ドゴスッ!!…


「んごはぁ!?…」


カチュアが恐らくその熊の名であろう名前を上機嫌で呼び、その呼び掛けに反応してか熊が耳をピクっと動かした瞬間、真っ直ぐに飛んで行ったカチュアは熊の首を狙う様に激突する。その際熊からダメージボイスが聞こえてカチュアに抱き着かれたまま横に倒れると、その光景にマサツグと御者が呆気に取られては同時に絶句する。そして冷や汗を掻き始め何やってくれてんだ!?…とカチュアにツッコミを入れたい所なのだが、そのカチュアはと言うと熊の首にくっ付いたまま。そうしてマサツグと御者は目の前で起きた光景にショックを受け動けないで居ると、その熊五郎とやらがゆっくり起き上がる。


「あ~…たたたたた……ん?…

おお~!カチュアの嬢ちゃん!…

無事に戻って来たんですかい?…」


「く~ま~ご~ろ~う~!!

お久しぶりなのね!!!」


__く~るくる!…く~るくる!…


「はははは!…無事に帰って来て何よりです!

…ところで…」


__チラッ…


中々の衝撃を受けたのかその熊五郎は自身の首を動かし、カチュアに気が付いた様子で声を掛ける。その熊五郎の言葉にカチュアが笑みを浮かべて返事をすると熊五郎とカチュアが互いに手を取り合い、踊る様に回り始める。余程再会が嬉しかったのか互いに笑いながら五分間は回り続け、漸く落ち着いたのかカチュアが戻って来た事を喜びつつも、熊五郎はマサツグ達の存在に気が付くのであった。



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