-第一章一節 初めの一歩と初めの戦闘と初めの乱入-
王都を出て直ぐ目の前には舗装された路に見事な緑の絨毯、頬を撫でる様に心地の良い風が吹く大平原がそこにはあり、良く見るとマサツグ同様始めたばかりらしき冒険者達が初のモンスターとの戦闘でてんやわんやと苦戦している様子が伺えた。そんな様子を目にしてマサツグが軽い緊張と好奇心を覚えては草原を見詰めて居るとマサツグの目の前にその大平原のエリアの名前と詳細が表示される。
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「スプリング大平原」
王都を出て直ぐの平原。
清々しい風が常に吹き、初心の気持ちを思い出させる
冒険者の初めの草原。平原には花の他に薬草等もあり、
未だ数多くの冒険者がお世話になっていると同時に
調合師や商人達の素材集めの場として活用される
スプリングフィールド大陸の中心に位置する大平原。
…稀に巨大なトカゲを見たと言う報告が有るとか無いとか…
初心者の最初の修行場。
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RPGらしいファンタジーなフォントで表記され、エリアの名前と簡単な説明文が数秒後に消えるとマサツグは辺りを見渡す。説明文に有った巨大なトカゲと言う言葉に疑問を持つもやはり何処を見渡してもそんな物は居らず、辺りでは説明文通り他にも冒険者が居て薬草を取っていたり、モンスターと戦闘をしていたりと賑わっている様子しか目に入らなかった。そしてそのトカゲが居ない事に少しガッカリしながらも王都前のゲートでただ茫然とその風景にちょっとした感動を覚え、マサツグは立ち尽くす。
「……本当に良く出来ているなぁ~…
さっきの町も凄かったけど…
この草原と言い体感する感じと言い…
何とも言えないな…
まさに冒険が始まるって感じがして良いな!!…」
「……ッ!!…か!」
「…え?」
ゲームに感動した様子でマサツグが王都のゲートの前に立ち尽くし、平原を眺めていると突如として声が聞こえて来る。その声にマサツグが若干の戸惑いを覚えてはその声が聞こえて来た方向を確認すると、マサツグの目の前の方向から誰かが慌てた様子で声を掛けては近づいて来るのが見え、声はハッキリとは聞こえなかったものの妙に切羽詰まった様子で聞こえる。その様子にマサツグが何事かと思い、声の聞こえて来た方を見詰めて居るとボロボロの冒険者が衛兵に肩を借りながらこちらに近付いて来るのが見える。
「おい!!…大丈夫か!?
しっかりしろ!!!…」
「ッ!?…」
「クソ!!!…
これでもう今月十件の被害が出て居るぞ!?…
討伐隊はまだ動かないのか!?…」
「早くあのオオトカゲを何とかしないと
厄介な事になるぞ!!…
…チッ!!…
とにかく今はこの冒険者を治療所に!!…」
明らかに誰かにやられたであろう冒険者は意識を失っているのかダランとした様子で衛兵に王都へ運ばれ、衛兵が必死に声を掛けても冒険者が衛兵に返事をする様子は一切ない。まるで死んだ様に運ばれる冒険者の姿にマサツグが戸惑いを覚えていると、肩を貸している衛兵の一人が前から被害が出ている事を口に出して文句を言い、そのもう一方の衛兵も説明文に出て来たトカゲらしき話をしては苦虫を噛んだ表情を見せて、冒険者を王都の中へと連れて行く。ボロボロの冒険者は恐らくプレイヤーであり、頭の上にHPバーが表示されているのだが勿論の事ながら値は0、運ばれて行った冒険者の様子にトカゲの話とマサツグが更に戸惑いを覚える。
{…もし、さっきの説明文通りにトカゲが出て来る
としてその影は?…大きさは?…てかまず勝てるのか?…
今始めたばかりの俺が勝てる筈も無いだろうけど…
……えぇ~い!!…ウダウダ考えるのも面倒だ!!…
出たとこ勝負!!…それに…何か良く分からない
[超幸運]ってのが付いてんだ!!…どうにかなるだろ!!}
マサツグが先ほどの冒険者の様子と衛兵が話していたトカゲの話を聞いて、臆した様子を見せては色々と考え始める。出会った時のシルエットに大きさ、逃げる事が出来ずに戦闘になった場合勝てるかどうか?…それはもう出会う前提で考え始めては一人王都のゲート前でモヤモヤと考え続けるのだが、次第にマサツグの面倒臭がりが発動してか考える事を放棄しては出たとこ勝負と意気込み、改めて大平原に向けてマサツグは歩き始める。マサツグが道なりに歩いて行っては自分でも戦えそうなモンスターは居ないかと辺りを見渡して居ると、近くの草むらから角の生えたウサギが飛び出して来る。
__ガサガサ!…ぴょん!…
「…ッ!…最初の相手には丁度良いかな?」
最初の戦闘とだけあってマサツグが自分でも戦えそうなモンスターを見つけると、ギルドで受け取った剣を鞘から抜いて構え、そのウサギのシンボルと接触すると自分とウサギを中心に円形の戦闘エリアが出現。…さて、ここからこのゲームの戦闘システムについて説明するとまずこのゲームでの戦闘はリアルタイムアクションで繰り広げられる。プレイヤーも敵も常に動き回れる様になっており、戦闘自体も簡単でまず自分と敵の間を中心に半径50mの円が生成されその円の中が戦闘エリアになる。基本的に移動・攻撃・ガードの3つは何事も普通に出来るのだがここからが少し変わっており、回避・特技・走る・ガードをした際の衝撃吸収時にTPと呼ばれる物が消費される。このTPはアイテムもしくは攻撃・特殊魔法を当てる事…その他に時間経過で回復出来るのだが、TPが尽きると色々とデメリットを背負う事になり、勿論このTPが切れれば上記に書かれた行動は取る事が出来ずかなり制限された戦いになり、あっと言う間に全滅なんて事も多々ある重要なポイントなのである。更に細かい点を挙げるとするなら…TPはプレイヤーが取った行動が大きければ大きいほどで大きく消費されると言う点が有り、もし普通に全力疾走・某一狩り行こうぜのゲームみたく横っ飛び回避等をすれば大きく消費され、それでTPが尽きて次の反撃・行動等が取れなくなる場合がある。だが逆に…最小限の動きで紙一重の回避・ジョギング程度の走りだと然程気にならない程度でTPが消費される程度で済むのである。勿論に戦闘だけで無く日常生活でも必要とされる時が有るので管理には十分気を付けないといけない数値なのである。
因みにもし戦闘から逃げたい場合は生成されたフィールドバリアに向かって逃げ、フィールドバリアに一定時間触れて居るとバリアが崩壊して逃げる事が可能となるらしい。ただし中には逃げる事が許されない強制戦闘エリアも有るらしいので気を付ける様にと…事前に読んでおいた取扱説明書(電子版)に表記されて有るのであった。そしてマサツグとその接触したウサギとの戦闘が始まり、武器を構えた状態でウサギを調べようとマサツグが鑑定のスキルを試す。
「鑑定!!」
__ピピピ!…ヴウン!…
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「つのウサギ」
Lv.3
HP 300 ATK 10 DEF 10
MATK 0 MDEF 0
NO SKILL
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「最初の敵には持って来いだな!」
マサツグがスキルの名前を口にし、対象物であるウサギを見詰めると鑑定結果がマサツグの目の前に表示される。その際分かったのはHP(体力)・ATK(攻撃力)・DEF(守備力)・MATK(魔法攻撃力)・MDEF(魔法防御力)の4つと何かスキルを持っていれば下に表記されるらしい…幸い最初に相手したウサギは魔法攻撃力も無ければ耐性も無く、スキルも持っていないと初歩の初歩と言わんばかりの某大作RPGに出て来るスライムに匹敵する弱さであった。腕試し程度に戦うなら持って来いと言わんばかりにマサツグが意気込むとウサギに向かい剣を振るう!
「うおりゃ!!」
__ザシュッ!!…ッ!?…
「ピキィ!!…」
マサツグが振るった剣は真っ直ぐウサギに向かい振り下ろされ、ウサギの体を斬った瞬間その手応えがマサツグに伝わって来る。その感覚にマサツグが若干驚くもウサギは悲鳴を上げてその場に倒れ、ウサギの体が謎の光に包まれ消えるとどんなゲームでも良く見かける毛皮等のアイテムに変わる。そして不自然にその革袋が浮いたと思えば自動でマサツグの手元まで飛んで来ては戦利品として獲得したとリザルト画面が出て来る。最初の戦闘だけあって余裕の勝利であるのだが、斬った感覚が諸に伝わって来た事に驚いては自身の手を見詰める。
「……驚いたぁ~…
まさか斬った感覚まで伝わって来るのか!……
……ちょっと驚いたけど…よし!…
この調子でレベルをあげるか!」
__ぴょん!…ぴょん!…
「…はあぁ~……
襲って来た訳でも無いのに斬り掛かるのは
やっぱり止めておこう……何か……心が…」
まさか自分が斬ったと言う感覚が直に伝わって来るとは思っても居なかった様子で驚き、若干の抵抗を覚えるもこれはゲームと割り切るとマサツグはやる気を再度漲らせてはバッ!と顔を上げて周りを見渡すのだが、辺りには先ほどと同じウサギがピョコピョコと元気に跳ねているだけ。その様子にマサツグの心の中で罪悪感が生まれると、もうウサギを斬るのは止めようと言った様子で溜息を吐き、一度俯いては気を取り直し別の得物を探そうと顔を上げると次の瞬間突如背中に衝撃を受ける!
__トットットットットット!…ドゴスッ!!…
「んご!!…あたたたた…
な…なんだ?…ってウサギ?…」
__ザッザッ!!…ヒョン!!…
「うあっぶな!?…」
マサツグが突然の出来事で弓なりに仰け反り、背中の痛みに耐えて振り返るとそこには周りに居るウサギとは色も違えば大きさも違うウサギが鎮座しており、そのウサギにマサツグが困惑の眼差しを送って居ると、ウサギはマサツグと戦う気満々なのか地面を蹴ってはマサツグに飛び掛かる!勿論それを見ていたマサツグは慌ててブリッジをする様に回避をするのだが、その際マサツグが目にしたものは最初にその色違いのウサギにタックルを貰った事が原因なのかいつのまにか戦闘エリアが形成される様子であった。
「え!?…これって…バックアタック!?…」
バックアタックとは…好戦的なモンスターに先制攻撃をされる事で有り、このゲームに置いては特段大した事は無いのだが場合によっては一撃即死も有り得る危険な状態なのである。尚、一撃即死と言ってもそれは即死攻撃のスキルを持っている者がスキルを使用して攻撃して来た場合であり、100%
成功する保証は何処にも無い。但しそれなりに補正は付くので厄介極まり無い事には違いなく、更にクリティカルヒットの可能性も増大するのである。そしてウサギにバックアタックを決められた事にマサツグが驚き、慌てて体勢を立て直して剣を構えるも何かがおかしい…その色違いウサギはフィールドに一匹しかいない筈なのにやたらと周りから足音が多く聞こえる…それも一匹や二匹じゃない…群れで向かって来る様な……そんな足音にマサツグが戸惑いながらも剣を構えては辺りを見渡して居ると、突如としてその色違いのつのウサギとの戦闘エリアに、次々同じ様な色違いのつのウサギが乱入して来る!
__ダダダダダダダダダ!!!…
「ちょっ!まっ!…な!?…何だこれ!?…」
次々に色違いのつのウサギが戦闘エリアへ乱入して来ては瞬く間に戦闘エリアの半分を色違いのつのウサギが占拠し、そのつのウサギ達はマサツグに敵意を向けるよう見詰めては戦闘態勢を整える様に先程同様地面を蹴って、マサツグを威嚇する。そして徐々に色違いのつのウサギの増援の足が止んだ所でざっと数を数えて見ると約20匹は居る事を確認し、色違いのつのウサギ約20匹VSマサツグの…初めて二回目の戦闘にしていきなり大規模集団バトルになると、マサツグが戸惑った様子で逃げ腰になる。
「な!?…何だこれ!?…聞いてないっての!!!…」
__ザッザッザッザッ!!!…ヒョン!!
…ヒョンヒョンヒョン!!!…
「ッ!!…うわあああぁぁぁぁぁ!?…」
ただ集まったウサギを前にしてマサツグが慌てているとウサギ達は地面を蹴ってマサツグに向かい飛び、頭の角を突き出す様にしてマサツグに飛び掛かり始める!明らかに殺意の高いウサギ達にマサツグがバックステップを挟んで一回退いては回避をするのだが、直ぐに次弾が飛んで来るとマサツグはウサギ達に背を向けて戦闘エリアをグルグルと回りながら逃げ回り始める。
__ヒョン!!…ヒョンヒョンヒョン!!!…
「うわああぁぁぁああぁぁぁあああぁ!?…
さっきウサギを斬った事に対してお怒り!?…
だとしたら謝るから待ってくれないかぁ~!?!?」
__ヒョン!!…ヒョンヒョンヒョン!!!…
「待ってくれないんですね!?分かりました!!!
コンチクショォォ!!!!…」
次々飛んで来るウサギ達にマサツグが逃げながら待つよう訴え掛けるが当然聞いて貰える訳が無く、まるでウサギ達はテメェの命で償って貰うぞ?…と言わんばかりの殺意マシマシの眼光でマサツグに飛んで来ては波の様に襲い掛かる!そんな様子にマサツグが一人文句を言っては嘆き、逃げ回って居ると徐々にマサツグ自身もウサギ達に対して苛立ちを覚え始める。そしてそろそろTPが尽きそうになって来た所でマサツグがある考えに至るとバッ!と振り返っては剣を構えて見せる!
__ダダダダダダダダダダ!!!…
…ッ!!!!…ザッ!!!…
「だあああぁぁぁぁぁ!!!!…
こうなりゃとことん相手してやらぁぁぁ!!!!…
テメェら全員まとめて精肉してやるから
覚悟しやがれ!!!!」
マサツグ…怒りのあまり、死を覚悟しての突貫敢行!…
「おおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」
__バシュッ!!…ザシュッ!!…ドシュッ!!…
……ブシュッ!!…
「グッ!!…まだまだぁ!!!…」
ウサギから逃げている事にマサツグの怒りが限界まで達したのか、それもともTPが切れる事を考えての苦肉の策に出たのか…どちらとも取れる様子で逃げの一手から一転、色違いのつのウサギに向かい剣で思いっきり斬り掛かる!その際斬った手応えでビビった様子は無く、ただ向かって来るウサギを片っ端から斬り落とす様にひたすら剣を振り続け、それでも勿論完全には斬り落とし切れず何度も被弾するが、怯まず我武者羅に戦い続けた。ただそんな中幸いな事にマサツグの攻撃の大半がクリティカルヒットを叩き出し、面白い様にウサギが斬られては地面に落ちて倒れる。
__ドサッ!…ドサドサッ!…
「ッ!…つつつ!…戦えない訳じゃ無い!…
何とか一撃で仕留められてる!!…これなら!!!…」
徐々に色違いつのウサギの数を減らし、それに伴ってマサツグも戦闘に慣れて来たのか回避しながら戦える様になる。立ち止まっての判断では無く動きながら判断出来る様になったので被弾も少なくなり、つのウサギの動きもワンパターンなのでカウンターも織り交ぜて戦い始めると更に数を減らし、遂に約二十匹居たつのウサギを残り五匹にまで追い詰める事に成功する。しかしその分の消耗も激しく、マサツグがその場で固まり息を切らし始める。
「ぜぇ!…ッ!…ぜぇ!…ッ!…
な…何とかここまでやってやったぞ?…
ざまぁみやがれ!……ぜぇ!…ぜぇ!…
後…五匹!…」
__チャキッ!…ザッ…ザッ…
ザッザッザザザザザザ!!!…
「うおおおおああぁぁぁぁぁぁ!!!!…」
マサツグがその場で膝に手を着き息を切らし、呼吸を整えようと肩で息をしては残りのウサギを見詰め、後ちょっとで終わると意気込み勢い良く体を起こす。しかしまだ完全には息を整える事が出来ず、未だ肩で息をする様に呼吸をするよう
体を動かしては武器を握り直し、最後の突貫をする構えをして見せる。漸く見えた終わりにマサツグの闘志は更に燃え、残りのウサギに向かい歩く様に動き出し、徐々に走り始めると長く感じたこの戦いを終わらせようと声を上げて自分を奮い立たせる!これで一休み出来る!!…あとちょっと!!…そんな事を考えつつ剣を構えて走り出すのだが次の瞬間、残りの五匹のウサギはクルっと突如マサツグに背を向け、逃げ出し始める。
__ッ!!…クルッ!!…ダッ!!…
「ああぁぁぁぁぁ!!…って、あれ?…」
__ザザザァ!!…
「……逃げた?…さっきまでやる気だったのに?…
何で?…」
ウサギが逃げ出しバリアの向こうへと姿を消して行くと、それを見たマサツグが走るのを止めてブレーキを掛け、バリアの向こうに消えたウサギ達を不思議そうな表情で見詰めてはウサギが逃げ出した理由について考え始める。先ほどまでは五匹になろうがまだ戦うと言った様子で闘志を見せていたウサギ達が、突如として戦意を喪失し逃げ出した事…マサツグに恐れて逃げ出したにしては遅すぎる上に先ほどのウサギの闘志が矛盾していると考えると更にマサツグを悩ませる。そうしてマサツグが一人戦闘エリアで考え事をして居ると何やら地面が揺れている様な感覚を覚え始める。
__…~~……~~…
「う~ん…ん?…地震?…
ゲームの中なのに地震が有るのか?…」
__ズン……ズン……
「ッ!…あれ?…地震が強くな……」
マサツグが地面の微かな揺れに気が付いて地震か?と疑問を持つ。ゲームの中で地震と言うのはあまり聞かないなと思いつつも先ほどのウサギについて悩み直そうとすると、更に揺れが強くなったのか先ほどより足元が揺れている様に感じる。その様子にマサツグが再度気が付き、地面に目を向けるとまた振動が強くなっては徐々に揺れを大きく感じ、そして次にマサツグがハッとした様子で戦闘エリアが解除されていない事に気が付くと更に揺れが大きくなると同時に足音まで聞こえ始める!
__ズシン……ズシン……
「ッ!?…違う!!…何かが近づいて!?…」
__ズシン!…ズシン!…ズシン!…ズシン!……
ゴアアアアァァァァァァ!!!…
「なっ!?…」
得体の知れない何かが近付いて来る足音にマサツグが気付き、慌ててその足音の聞こえる方を振り向き確認をすると、バリアの向こうから妙にデカい影がマサツグの居る戦闘エリアに向かい歩いて来るのが見える。その様子にマサツグが呆気に取られて立ち尽くし、デカい影はマサツグの居る戦闘エリアに侵入して来て、その姿を現し始めると同時に、先ほどまでウサギと戦っていた戦闘エリアが更に拡大された様子で範囲が広がりそのデカい影が完全に戦闘エリア内に入ると、影が消えて本当の正体を現す。そこにはボロボロの冒険者がやられた元凶であろう巨大なトカゲがギョロギョロと目を動かし、マサツグを見つけるや否や口を大きく開けて一吠えし始める!体感・見た目と某三角形の伝説RPGに出て来る様なキングサイズのオオトカゲに何処と無く似ており、それを見たマサツグが驚きながらも手元に爆弾が有ればと考えてしまう。
「デッカ!?……ッ!…まさか…これ?…
さっきのボロボロの冒険者がやられたって言っていた
トカゲってのは!?…何処と無くアレに似ている様な?…
でも爆弾も無いしそれ以上にこの状況は不味い!!!」
__ゴアアアアァァァァァァ!!!…
…ドッド!!…ドッド!!…
「ッ!?…突っ込んで来た!?…
ちょちょちょちょ!!!…」
マサツグがただそのオオトカゲの風貌と状況に困惑し色々と考えていると、オオトカゲは更に一つ吠えてはマサツグ目掛けて突進をし始める!地面を大きく揺らしそこそこ速いスピードでマサツグとの距離を詰め始めると、まるで目の前に何が有ろうとも止まる気無し!と言わんばかりの勢いで突っ込んで行き、徐々にスピードも上げ始める!その様子にマサツグが気付いては横っ飛び回避で難を逃れようとするのだがトカゲのヒットボックスは大きく、回避するのも困難であった。
「うおおおおぉぉ!?…」
__ンバッ!!…ドッド!!…ドッド!!…
ドッド!!…ドッド!!…ズサァ!…
「ぜぇ!…ぜぇ!…な!…
何なんだよアレ!?…まるでダンプカーじゃねぇか!?…
そらあんなのと戦えばボロボロに!…
…いや、あれはまだ運が良かった方なのでは?…」
__ゴアアアアァァァァァァ!!!…
…ドッド!!…ドッド!!…
マサツグが叫びながらもトカゲの突進をギリギリで回避するとトカゲはマサツグのすぐ後ろを通り過ぎ、そして距離を取っては旋回し始める。その迫力と光景にマサツグは驚愕し、少し前の冒険者の姿を思い出しては原型が残って居たのは幸運なのでは?と、考えて居ると旋回したトカゲが再度マサツグに向かい突進を仕掛ける!その様子にマサツグが再度慌てては如何するかと考えるのだが、マサツグの今居る場所は戦闘エリアの中心で今からバリアに向かって走り出してもトカゲの方が足が速い為逃げる事が出来ず、実質強制戦闘状態である事に気付く。
「ッ!?…また来るのか!?…
初心者マップに何てモンをスポーンさせてんだよ!?…
…とは言え如何する!?…
ここからだとまずバリアの外側に行き着く前に
あのドド〇ゴモドキに轢かれてお釈迦!…
ってのは目に見えている!!…」
__チラッ……ッ!……
「…勿論の事ながら外からの援軍は期待出来ない!…
となると…はあぁ~…」
__ンバッ!!…ドッド!!…ドッド!!…
ドッド!!…ドッド!!…ズサァ!…
「やる事はただ一つ!!!…」
更に悪い事は周りに助けてくれそうな他の冒険者は居らず、居たとしてもマサツグ同様の初心者…はたまた死にたくないと言う生存第一の冒険者だけでわざわざこんな化け物に挑もうと考える冒険者が居る筈が無いと言う事…マサツグの様子を見ては大変だと慌てた表情を見せるもマサツグが辺りを確認し、その見ていた冒険者と目が合うと、不味いと感じてかその場を後にする様にして離れて行く。それらを確認してマサツグが溜息を吐きながらオオトカゲの二度目の突進を今度は余裕を持って回避し、体勢を立て直すと色々文句を言いたくなる…このオオトカゲを相手に…まだ始めて間もないプレイヤーに…トラウマでも植え付けに来たのかと文句を言いたくなるが、マサツグ自身もこのままやられる訳には行かない!と感じると、逃げると言った考えを放棄して相手を見据えては剣を握り直し、まず相手のステータスを鑑定し始める!
「鑑定!!」
__ピピピ!…ヴウン!…
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「スプリングキングリザード」
Lv.30 「レアモンスター」
HP 6600 ATK 270 DEF 290
MATK 0 MDEF 0
NO SKILL
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「ッ!?…おいおいマジかよ!…
いきなり中級ボスモンスターでしかもレアて!…
これの何処がレアなのか教えて欲しいもんだぞ!?…」
__ズザザザザァァァ!!!……ギョロッ!…
「ッ!…あぁ~あぁ~!そうかいそうかい!!…
やっぱりやる気なんだなこのドド〇ゴモドキ!!!
だったらお望み通り相手してやるよ!!!」
マサツグがオオトカゲの鑑定をするとそこにはマサツグより明らかに高いステータスが表示されると同時に、レアモンスターと言うまるでこのトカゲが希少と言いたげなアイコンを目にする。それを目にしたマサツグが更にトカゲに対して驚いた反応を見せて居ると、オオトカゲは突如急ブレーキを掛けては突進を止め、止まって見せるとマサツグを確認する様に目玉を動かし、マサツグの存在を確認する。その時のトカゲの目はまるでまだ生きているのか…と言いたげな様子に見え、そう感じたマサツグが少し苛立ちを覚えた様子で聞こえる筈の無いオオトカゲに対して文句を言い始める。そしてオオトカゲがゆっくりと旋回し、マサツグの方に向き直すと改めてに睨み合いになり、互いに動かない状態になると先に動き出したのはオオトカゲの方であった。
__ゴアアアアァァァァァァ!!!…
…ドッド!!…ドッド!!…
「ッ!!…こいつもワンパなのか?…
だとしてもアレに轢かれたらお終いなのは間違いない!…
だとすれば!!…」
__ドッド!!…ドッド!!…ドッド!!…ドッド!!…
「…ッ!!…ここだ!!」
オオトカゲが仕切り直しと言った様子で吠えてはまたマサツグに向かい走り出し、その様子にマサツグが突進しか無いのかとオオトカゲの行動パターンを覚え始める。しかしそれでもあの巨体に攻撃力と、マサツグが轢かれたらほぼ一撃だと言う事には変わらず、マサツグが緊張しつつも慎重に相手の動きを見ては剣を真っ直ぐに構え、動きを観察する。徐々に近づいて来る巨体が真っ直ぐマサツグに向かい走って来ては相手が追尾して来ると言った様子を見せない事にマサツグが確認をし、オオトカゲが真っ直ぐぶつかって来る寸前でマサツグが横に受け身を取るよう転がり回避しては、走って来るオオトカゲの足に向けて思いっきり剣を振るうのであった。