-第三章一節 慣れたヤキモチと土壇場の丸投げとパパさんのマサツグ-
ミスティーやフィアナにレイヴン…それぞれに置いてけぼりにされながらもマサツグがギルドの扉を潜ると、まず出迎えてくれたのは他の冒険者達のドヨメキであった。マサツグの姿を見るなりドヨッ!?…と驚きの声を挙げると、続けて異変に気が付いた様子でルンが反応し…その異変の正体がマサツグである事に驚き!…何か戸惑うようマサツグの事を凝視して居ると、マサツグはただ何も言わずにカウンターへ向かい歩いて行く…では何故そんなマサツグの様子を見て冒険者達やルンは驚いたのか?…その理由は簡単で、原因はマサツグの顔にある出来事が物語って居た。
__カタンッ…キイィィ!!……どよっ!?!?…
「ッ!…え?…何?……って、マサツグさん!?…」
__コッ…コッ…コッ…コッ……スッ…
「…ッ!?…え、えぇ~っと?………あっ!…
さ、先程ミスティアナ様にレフィリアナ様!…
後レイヴンさんが二階のギルドマスターの部屋へ
向かって行きましたが?…取り次ぎましょうか?…」
冒険者達にルンが驚いた原因…マサツグの顔に有る原因とは、シロの事で有り!…シロは今だマサツグの顔に張り付いては頬を膨らませて無言の抗議を続けており、その際シロがどんなに尻尾を振ろうともマサツグも慣れた様子でカウンターまで歩いて見せると、そのシロを顔に張り付けたまま歩いて居る事に皆を驚かせたのであった。そしてカウンターに辿り着くなり無言でルンの前に立って見せ、ルンもそんなマサツグの様子に困惑し…先程の事を思い出した様に案内する事を提案すると、マサツグはその問い掛けに対してただ軽く頷く…
__コクリ……
「ッ!…で、ではこちらへ~…」
__コッ…コッ…コッ…コッ…
…どよどよ!…どよどよ!…
無言で頷くマサツグにルンはホッと安堵する!…何故ならまだ意思疎通が出来ているから!…まぁそんな不安を持つのも当然っちゃ当然で、自身の顔に無言で幼女を張り付けながら歩く男に!…誰も戸惑わない訳が無いからである。恐らくルンもギルドに勤めてからこんな事は初めてで、ただ今だに戸惑った様子でマサツグを案内するよう手を握ると、マサツグの事を配慮した様子で先導する。そうしてマサツグはルンに連れられて二階のギルドマスターの居る部屋へと向かうのだが、その間他の冒険者達からは戸惑いの視線を受け続け!…更にドヨメキも絶えず続き!…ルンに案内されてやっとの思いでロディの待つ部屋に案内されると、この時点でマサツグの疲労は凄い事になっていた!…
{……うぅ~む…如何してこうなった?…}
__…コンコンッ!…
「ギルドマスター!…私、ルンです!…
マサツグさんをお連れしました!!」
「ッ!…入って来てちょうだ~い!!」
只今だにシロを顔から引き剥がそうとはせず…自問自答をする様に心の中で疑問を抱いて居ると、部屋に辿り着いた所でルンが部屋をノックする。そして自分がルンである事を名乗ると、マサツグを連れて来たと簡単に説明をし…その言葉を聞いてか部屋の中からロディの声が聞こえると、入って来るよう指示が聞こえる。恐らく部屋の中には既にミスティーやフィアナ、レイヴンが待って居り!…マサツグが改めて三人と合流する事に若干の躊躇いを持って居ると、ルンが扉を開けるなりマサツグをエスコートする。
__ガチャッ!…きいぃぃ~!……
「…ではマサツグさん!…こちらへ…」
「あ、あぁ……」
「ッ!…遅いぞマサツグ!!…
ただキスをされた位で固まるとは!!…
…そんな事では女子と付き合っては行けんぞ!?…
…ッ!?…」
ルンがマサツグをエスコートする際、マサツグに声を掛けてからロディの部屋に入って行くと、マサツグは戸惑った様子でルンに返事をし…そして部屋に入るなり開口一番!…フィアナが文句を言うよう待った!…と言い出すと、先程の事を掘り返し!…その際マサツグの顔に気が付いた様子で視線を移すと、ブン膨れのシロの表情を目にする。そんなシロの表情を見てフィアナも思わず驚くと、口にしようとしていた言葉を飲み込み!…何とかそのままマサツグは席に案内され、漸く一息吐けると言った様子で腰を下ろすと、ロディは待って居たとばかりに駆け寄り出す!…
「…聞いたわよぉ!!♥…マサツグちゃんさすがね!!♥」
__ピクッ!!…ギュッ!…ッ!?…
「一国のお姫様に女王様を落とすなんて!!…
何てニクイ男なのかしら!!…このこのぉ!♥」
__ぎゅうぅぅぅ!!!…
「ッ!?…あぁばばばばばばばば!!!!…」
マサツグが席に座った事で本題が話されると思った矢先、ロディはまるで今から恋バナ!…と言ったテンションでマサツグに声を掛けると、改めて今現在進行形で噂になっているマサツグの事について弄り出す!…その際ミスティーにシロが耳をピクっと反応させると、ミスティーは改めてやり過ぎたと感じて居るのか赤面し!…シロはシロでヤキモチを焼くと、マサツグにしがみ付き!…ロディが更に弄るようキャッキャと乙女の様に喋り続けていると、それに比例してミスティーは俯き赤くなり!…シロはシロでやはり嫉妬する!…この時マサツグにしがみ付く腕をギュッと絞ると、まるで緊箍児の様にマサツグの頭を圧迫し!…別にシロに締め付けられた所で痛くはないのだが、呼吸が更に厳しくなり!…もはや言葉もままならない様子で必死にシロにギブを訴えるが、解放されたのは数十分後の話であった。
__数十分後…
「ぜぇ!!…ぜぇ!!…し、死ぬかと思った!?…」
「ご主人様はシロのご主人様なのです!!!…
…ミスティーお姉ちゃんは!!…
シロのライバルなのです!!」
「ッ!?…え?…ええぇぇぇ!?…」
「ッ!…ふむ!…相手は子持ち!…
中々に苦戦しそうだな!!…
あっはっはっはっはっは!!!…
って!?…余は!?…」
その数十分の間ロディに弄られ倒してはシロ緊箍児が締まって呼吸が乱れ!…解放された時には息切れを起こし!…一瞬三途の川が見えて居た事を口にすると、シロは今だヤキモチを焼いた様子で今度はマサツグの腹にしがみ付く!…その際シロはマサツグの腹に顔を埋めたままミスティーの事をライバル宣言するのだが、ミスティーはそのシロの言葉に戸惑い!…フィアナはその様子に大笑いし、ミスティーに苦戦必至と言った様子で言葉を口にしていると、自分がハブられて居る事に気が付いては慌ててシロにツッコミを入れる。そうしてレイヴンはマサツグ達の慌しい様子を見てこのまま本件が忘れ去られる事を願うのだが、そうは行かず!…ロディがハッと思い出した様子で咳払いをし、全員の注目を集めた所で本題に入る!…
「あっはっはっはっは!!!…ッ!……ン゛ン゛!!…
いやこんな話をしたいんじゃなくて…」
「アンタが振ったんだろ!?」
「いやまぁそうなんだけど!…
ここは気を取り直して!…本題に入るわ!…
今日マサツグちゃんとレイヴンちゃんと
シロちゃんはユグドラドへ!…
この書簡を持ってハーフリングスからの使者!…
まぁ代理なんだけど…
女王様に謁見を願って欲しいの!…
その際色々と問題が出て来るだろうけど…
そこは頑張って突破して貰って…」
急に改まった様子でロディが咳払いをすると、その場の空気を落ち着かせ…自分がこの状況を作り出したにも関わらず!…なかった事にしようとすると、マサツグがすかさずツッコミを入れる!…するとさすがのロディも逃げれないと悟ったのか、自分に非がある事を認めた様子で再度マサツグを落ち着かせ…本題の話を切り出すと、改めてマサツグとレイヴンとシロにクエストの詳細を話し!…同時に自身が書いたそのユグドラドへの書簡を手渡すと、後の事を丸投げする!…当然肝心な所が丸投げされて居る事に!…マサツグとレイヴンが慌てた様子で反応をするのだが!…
「ッ!?…ちょっと待て!!…投げやり!…」
「ミスティーと女王様はここでミーティング!…
鎖国をしていた間の世界情勢について
少し勉強をして貰うわ!!」
「いや流すんかい!!!」×2
「ッ!…おぉ~!…まるで熟練の様なツッコミ!…」
ロディは聞こえないとばかりに今度はミスティーとフィアナに話を振り!…今の情勢についてお勉強をするようマサツグ達のツッコミを回避すると、更にマサツグ達は激しいツッコミを入れる!この時息の有った様子で二人のツッコミに炸裂すると、フィアナは思わず感心し!…だが話は変わらず!…その投げやりのままロディはNPCにでもなったかの様に同じ事を口にすると、マサツグ達にゴリ押しをする!…
「ミスティーと女王様はここでミーティング!…
鎖国をしていた間の世界情勢について
少し勉強をして貰うわ!!」
「ッ!?…駄目だ!…このギルマス!…
ゴリ押すつもりだ!…」
「……仕方が無い!…
とにかく一度ルンに話してみるか…」
「ッ!…頑張ってねぇ~!!…あっ!…
後向こうの女王様の要望で密命って事に
なってるからぁ~!!…
もしかすると命を狙われちゃうかも
知れないから気を付けてねぇ~!!!」
__ドンッ!!!…バアァン!!!…ガチャッ!!…
もはやこうなると何を言っても無駄!…それを理解しているマサツグとレイヴンは呆れながらも諦め!…一度ルンに相談する事を二人で決めていると、ロディは突如人間に戻る!…その際ハッと思い出した様子で一番重要な事を口にすると、マサツグとレイヴンを追い出す様に部屋から押し出し!…ご丁寧に部屋の鍵まで掛けると、締め出した上に文句を受け付けない様にする!…当然それをギリギリになって言われた事で、二人はツッコミを入れるのだが!…
「ッ!?…ちょおおぉぉい!!!」×2
__シィ~ン……
「クッソ!!…何て事最後に言いやがる!!!…
今トンデモナイ事を言ったぞ!?…」
「てか女王様の密命って!…
この書簡にそんなヤバい事でも書いて有るのか!?…」
二人がロディに対してツッコミを入れた所で返答は無く!…レイヴンが最後の言葉に対して文句を漏らして居ると、マサツグは手渡された書簡に目を向ける。この時一体何が書いて有るのか?と悩んだ様子を見せると同時に、変な事に巻き込まれたのでは!?と疑い!…シロは今だマサツグのお腹に張り付いて居り!…そのまま二人で悩んで居ても仕方が無いと言った様子でまた諦めると、ギルドの一階へと降りて行く。その際また冒険者達から視線を集める事になると、さっきは顔に張り付いて居たのが今度はお腹と!…位置が変わっている事でまた冒険者達はドヨメキ!…そのドヨメキにレイヴンも驚いた様子で反応すると、マサツグに訳を聞く。
__コッ…コッ…コッ…コッ……ッ!?…どよどよ!?…
「ッ!?…え!?…な、何!?…何で視線を!?…」
「…あぁ…
俺の腹巻に注目が言ってるんじゃないかね?…」
「え?…腹巻?…え?…」
視線を向けられる事に慣れていないレイヴンは慌て出し!…その原因についてマサツグに尋ねると、マサツグはもはや慣れたと言った様子でシロに視線を向け…レイヴンはその言葉を聞いても尚理解出来ていない様子で…もはや普通と言う言葉も麻痺したのか、マサツグの顔にシロが張り付いて居た事に対しても平常と言った様子で流せる様になると、その原因についても分かり得る事は無いのであった…さてそんな視線を浴びつつ一階に降りると、二人は受付カウンターに向かい…そこでルンと再会し、二階であった事情について説明をすると、ルンは直ぐに理解した様子で手続きをする。
「……なるほど、分かりました!…
一応ギルドマスターが既に馬車の手配を
しているみたいなので二番乗り場に向かって下さい!…
そこでユグドラド行きの馬車が停車して
あると思います!」
「ッ!…話が早い!…さすがルン!…
因みに馬車でどれ位掛かる?…」
「え?…えぇ~っとですね?…
マサツグさんにレイヴンさんにシロちゃんが
ハーフリングスなので……
普通の馬車で約五日と行った所でしょうか?…
ハーフリングスからだとユグドラドは
そこそこ離れて居るので…」
「ッ!…い、五日!?…そこそこ遠いのな?…」
ルンは慣れた様子でテキパキと手元に有る書類等に目を通すと、そのユグドラド行きの馬車は既に二番乗り場に有ると説明し!…その話を聞いてルンは有能とばかりにマサツグが褒めていると、ふとある疑問を持ち出す。その疑問と言うのは単純に行路の日数についてで、その事を尋ねようルンに再び声を掛けると、ルンはその質問を聞くなりマサツグ達のバッジを確認する。そしてマサツグ達がハーフリングスから来て居る事を確認すると、何故か普通の馬車で五日と答え…更にその理由を簡単に説明し、マサツグがその答えを聞いてガックリ肩を落とすよう項垂れていると、レイヴンが更に疑問を持つ。
「……ん?…今普通の馬車でって言わなかった?…
まるで俺達が乗る馬車が普通じゃない様な?…」
「え?…」
「ッ!…あれ?…
ギルドマスターから聞いていないんですか?…
マサツグさん達が乗る馬車は高速馬車で…ほら!…
ギルドマスターと乗ったあの馬車です!」
「ッ!…あぁ!…あのシャ〇馬車!!…」
「シャ…シ〇ア馬車?…
な、何だその赤くて三倍速そうな名前は?…」
レイヴンが疑問を感じた事とはやはりルンの一言で普通の馬車と言う…まるで普通じゃ無い馬車の様に言うとそのまま疑問を感じた様子で質問し、その質問に対しても札具も今気が付いた様子で戸惑いの言葉を漏らすと、ルンはその質問に答えるようマサツグ達の乗る馬車について答える。その際出て来た馬車の名前が高速馬車で、ルンは続けてマサツグは乗った事が有ると言った様子で説明をすると、マサツグも思い出した様子でとある名前を捩った馬車の名を口にする。当然その馬車の名前を聞くとレイヴンは困惑し…ルンも困惑した様子で苦笑いをすると、大体の日数を改めてマサツグ達に教える。
「そうですそうです!…
ですが残念ながら今回乗られるのは
ギルドマスター専用では無くて普通の高速馬車なので…
大体二日と半日…位ですかね?…
ギルドマスター専用の物に比べて少し遅めの
二倍なので…」
「それでも二倍は有るのか!?…」
「はい!…で、如何しますか?…
もう直ぐにでも乗れますが…」
「……悩んで居ても仕方が無いし…乗るか…」
ルンは改めてあの時乗っていた高速馬車はギルドマスター専用の物だと説明し、今回乗る高速馬車は一般向けの物だと説明すると、その上でマサツグ達がユグドラドへ辿り着くまでの時間を約二日半と口にする。それでも五日間の旅路を二日半短縮出来る事と言う事で、レイヴンが驚くとその高速馬車の性能に戸惑い!…ルンはそんなレイヴンに肯定するよう返事をすると、今直ぐにでも出発出来るとマサツグ達に話す。そうして本当ならレイヴン共々行きたくは無いのだが、書簡を預かっている以上行くしか無く…渋々同意した様子でマサツグが直ぐに乗る事を決めると、レイヴンは嘆く!…
「…はあああああぁぁぁぁぁぁ~~!!!!…
行きたくねぇよぉ~~!!!!…
何であの鬼畜メガネから逃げて来たってのに
また戻らにゃならんのだ!!!」
「……レイヴン」
__ポンッ…ッ!…
「これも定めだ…」
「……救いはねぇのかよオオオォォォォ!!!!…」
もはや逃れられない決定事項なのだが…やはり改めてユグドラドに行く事へ激しい拒否反応をレイヴンが見せて居ると、ルンはその様子を見て戸惑う!…そしてマサツグもまるで悟りを開いた様な表情を見せると、徐にレイヴンの肩を叩き…レイヴンもそれに気が付いた様子で振り返ると、マサツグから最後の止めの言葉を告げられる!…そうしてその言葉を告げられた事でレイヴンは更に嘆くのだが、結局ドナドナされ!…二番乗り場に辿り着き、そこで用意された高速馬車に対面すると、レイヴンも初めて見たと言った様子でマジマジ観察する。
「……ほほぅ?…ルーン文字…
それもエルフの物だな?…
効力は疲労軽減に速度上昇…
後、魔物に対する感知低下…」
「さっきまでの落ち込み様は何処に?…」
__……すやぁ~…すやぁ~…
レイヴン自身興味はあった様子でその馬車に掛かって有る効力や仕掛け等をマジマジ観察すると、一目で分かったのかエルフ産のルーン文字と口にし…その他にも効力などを解明し、先程の落ち込み様も何処へやら…とにかく好奇心に突き動かされた様子で色々と見ていると、そのレイヴンの様子を見たマサツグがツッコミを入れる。その際シロもそろそろ腕が限界なのかマサツグが抱える様にしてフォローを入れると、シロも安堵した様子で今だ抱き着いて居り…そうしていつしか静かに寝息を立てて居ると、マサツグと同じ様にルンがレイヴンの様子を見るなり戸惑い…苦笑いをしつつも馬車に案内するようその馬車の扉を開けると、マサツグ達をエスコートする。
「あはははは……どうぞ、こちらに!」
「ッ!…あぁ!…すまない!…
ほらレイヴン行くぞ!?」
「ッ!!…あぁ!…悪い悪い!!…」
__バタンッ…パタパタッ……ッ!…パァン!!…
ルンにエスコートをして貰いつつ、マサツグはシロを抱えたまま馬車に乗り込もうとする。この時同時にレイヴンへ速く乗るよう声を掛けると、レイヴンもハッと興奮が冷めた様子で意識を取り戻し…軽く謝りながら駆け足でその馬車に乗り込んで行くと、ルンは三人が乗った事を確認する。そして馬車の扉を閉じて御者に出発の合図を送るよう手を振って見せると、御者もその合図を確認するなり馬に鞭を入れ、こうして漸くマサツグ達はユグドラドに向けて旅立ち…その馬車の中でマサツグ達が一息を入れていると、マサツグはハッと気付いた様子でシロを降ろすなり膝枕をする。
__カタンカタン!…カタンカタン!…
…ッ!…スッ…コロン…
「すぅ~…すぅ~…」
「……これで良いかな?…
ッ!…念の為コートを掛けておくか…」
「……目の前で友人がパパさんしてる…」
シロは完全に安心し切って居るのか、マサツグに体勢を変えられたにも関わらず安らかな寝息を立てており…マサツグもそんなシロの寝顔を見て微笑み…更にハッと思い付いた様子で自身のアイテムポーチからあの隠密コートを取り出すと、冷やさない様に寝ているシロへコートを掛ける。その際寝苦しくならないよう布団を掛ける様にコートを上から掛けると、そのやり取りを見ていたレイヴンは生暖かい視線を送っており…マサツグに対して言葉を口にし、マサツグもその言葉でハッと我に返ると、改めて指摘された事に照れ始める。
「ッ!?…な、何だよ急に!!…
そんな可笑しな事か!?…」
「いや別にそう言う意味で言ったんじゃないんだが…
…ただやっぱり目の前でパパさんしている友人を
見ると如何にも…なぁ?…」
「含みの有る様な言い方をしやがって!!…
その生暖かい視線を止めろ!!…」
改めて指摘されたのは今回が初めてで…マサツグはその言葉を口にされた事で珍しく照れながらレイヴンに文句を言うと、レイヴンはその生暖かい視線を止める事無く返事をする。この時レイヴンはその光景をジッと見詰めると同時に感慨深いと言った様子で言葉を漏らし!…同意を求める様にマサツグへ言葉を掛けるのだが…マサツグは同意するどころか更に反抗をし、再度生暖かい視線を止める様に若干声を張ると、そのマサツグの声でシロが起きそうになる。
「うぅ~ん……」
__ッ!?…バッ!!………すやぁ~…
「……ほらほらそんな大声を上げたら
シロちゃんが起きるぞ?…
…それに別に良いじゃねぇか?…
一々ワザワザ捕まえて…
ネグレクト起こしてるって
文句言われてる訳じゃ有るまいに!…」
「喧しい!!…
俺ぁこう言う事言われるの慣れてねぇんだ!!!…」
そんなシロの反応を見てマサツグが慌てて口に手を当てると、シロはそのまま眠り続けるのだが…レイヴンは更に調子に乗った様子で!…マサツグを茶化す様に言葉を掛けると、マサツグはそんなレイヴンに更なる文句の言葉を続ける!…その際やはり照れた表情でマサツグがレイヴンに文句の言葉を言う際、今度は声のボリュームを落とした様子で…シロを起こさないよう文句を言い!…その言葉でレイヴンも面白かったとばかりに静かに笑うと、話題はシロの話へと変わり出す。
「ククク!……にしても大したモンだよな?…
幾らフェンリルとは言えまだ子供だってのに…
あのデケェデーモン相手に物怖じ一つ見せないとか…
それ所か立ち向かって行くし!…」
「ッ!…ほぅ?…」
「子供だからって馬鹿にしている痛い目を見る!…
まさにそんな子だな?…シロちゃんは…
お陰でこっちもやり易かった……って、マサツグさん?…
口角上がってるの気が付いてる?…」
「ッ!?…」
レイヴンは改めてシロに視線を向けると、思い返す様にシロの事を話し出し…その話に反応するようマサツグもピクっと反応すると、レイヴンの話に耳を傾ける。この時レイヴンが話し出した内容はあのゲスデウスの反乱時の事であり、レイヴンと共に行動していた時のシロの堂々たる様子について話すと、何故かマサツグの口角が若干上がる!…そんなマサツグの様子にレイヴンも気が付いた様子を見せるのだが、今はスルーし…続けてシロは凄い子と!…自分も動き易かったとばかりにシロの事を褒め続けていると、更にマサツグの口角が上がって行く!…まるで自分の事の様に!…シロが褒められている事に喜びを感じているよう!…ただ無自覚に笑みを浮かべており、レイヴンもそろそろと言った様子でマサツグに指摘をすると、マサツグもハッと気が付いた様子で元の表情に戻る。そうしてマサツグが照れた様子を再度見せて居ると、レイヴンは更に追い打ちを掛ける!…
「……やっぱパパさんしてるじゃん!…」
「ッ!?…こ、この野郎ぅ!……」
「ブッ!!…ククククク!!!……わぁったよ!!…
悪かったって!!…もう言わねぇよ!…」
「ッ~~!!!……でも…
本当に良い子だよなぁ…シロは…」
止めのパパさん…その言葉をやはり生暖かい視線を送りながらレイヴンが口にすると、マサツグはまたもや顔を赤くし!…今度は殴る!…と言った様子で拳を握り出し!…息を荒げるよう眉間にしわを寄せていると、レイヴンは笑いながらマサツグに謝る。一応ちゃんと引き際を弁えてマサツグに謝ったのだが、マサツグは葛藤しており!…だが徐々に落ち着きを取り戻し…シロの寝ている方に視線を落とすと、最期にはレイヴンの言葉に同意するよう言葉を漏らす。そうして馬車はハーフリングスを離れて獣神の森を抜けると、あの暑い暑い平原へと出て行き…そこでマサツグ達の他にゲームをプレイをする冒険者達の姿を見つけ、額に汗を掻きモンスターと対峙している姿に何故か目を奪われていると、ふとある事をマサツグは考え出す…
{……もし…もしもだ…
シロの生みの親を見つけたとして…
もしシロがその親達に見放される…
いや…寧ろ襲られる様な事が有ったら…
俺はシロを守る為に戦わないといけないのだろう…
…でもそれって如何だ?…
シロの目の前で実の親を殺すって事になるよな?…
もしそうなったとして…
それでもシロは俺に付いて来てくれるのだろうか?…
幾ら見放された…或いは襲られたにしても親は親…
…ショックは相当大きい筈だ…
……もしかするとシロが襲って来るなんて事も!…}
マサツグが思わず考えてしまった事とはシロと冒険をする上でのある事…親についてであった。恐らくシロは何らかの拍子にあの春野原に置いてかれ…本来居るべき場所から遠く離れたあの場所に運ばれたのだと考えると、当然親も探していると考えるべきで…もしその親と再会した際、人間に育てられた事でその親から受け入れて貰えない…或いは襲られる事になる考えると、当然戦わなくてはならなくなり!…もしそれで自分が勝ってシロを護り切れたとしても!…シロはそれでも付いて来てくれるのか?と考え出すと、如何にも不安になるのであった。そこから更に悪い方向に思考が働くと、マサツグの表情はドンドン暗くなり…レイヴンは外の冒険者達の様子に夢中になっており、マサツグに話を振るよう声を掛けると、そこでマサツグの様子に気が付く。
「ッ!…おっ!…あの冒険者パリィが上手い!!…
今の見たかマサツグ!!…ッ!…」
「ッ!…え?…あ、あぁ!…スマン見てなかった…」
「……ッ?…おいおい…何て顔してんだ?…
まるで悪夢でも見て居た様な!…
真っ青な顔をしてるぞ?…
…今日だけで赤くなったり青くなったり…
…まるで七面鳥だな?…」
「ッ!…誰が七面鳥だこの野郎!…」
レイヴンはマサツグに話し掛ける際外で戦っている冒険者達の動きを見る様に声を掛けるのだが、いざ振り返って見るとマサツグは一人で青褪めており!…マサツグも話し掛けられた事でレイヴンに反応すると、テンションそのままに見て居ないと返事をする…当然突如隣で青ざめているマサツグに…レイヴンは戸惑いを覚えると先程の事を掘り返す様に、マサツグの事を七面鳥と例え出すのだが…それを聞いた所でマサツグはと言うと、少し元気を取り戻した程度でレイヴンにツッコミを入れるだけ…やはり暗い事には変わらず、レイヴンはそんなマサツグに困惑しつつ…ただ何も話さずに外で戦っている冒険者達に再度目を向けると、何とも居た堪れない空気に耐えるのであった…
因みにシロはと言うとこの時そんな事など露知らず…夢の中でもマサツグに甘えては一人笑みを零すのであった。




