-第二章二十五節 偽装工作とシロのお勉強と悪魔の質問-
ゲーム時間にして約一日…良く分からない賊に襲われ立ち往生してから一晩経った訳なのだが、マサツグ達の元に一台の馬車が通り掛かる。とその馬車はマサツグ達を見つけるなり、徐々にマサツグ達の方に寄って来る。そんな馬車にマサツグは昨日の件も有った事から警戒を強め、いつでも戦える様に武器を構えるのだが…その馬車から聞き覚えの有る声が聞こえて来ると同時に見覚えの有る顔も見え始め、マサツグは困惑するのであった。
__ガラガラガラガラ!…ぉ~ぃ!!!…
「……ッ?…あれ?…聞き覚えの有る声が?……
いやいや!…そんな訳!…もしかするとだし!!…」
__ガラガラガラガラ!…お~い!!!…
「ッ!?…あれ?…やっぱり聞き覚えの有る…
…てかあの顔…あれは…ルン?…
俺は幻覚でも見ているのか?…」
たった一晩とは言え慣れない気を張り詰め…寝ずの番をしたせいかマサツグの疲労はピークに達しており、そしてマサツグもそれを感じているのか自身が幻聴・幻覚を見ている様な錯覚を感じ始めると徐々に構えが疎かになる。そんな様子を目にしたミスティーはマサツグの心配をするのだが、そんな心配とは裏腹にそのルンの声がする馬車は今だ止まる事無くマサツグ達の方に近付いて来る。
__ガラガラガラガラ!!…バッ!!…
「ッ!?…チィッ!!…
もうちょっと持ってくれよ!?…
俺の!!……体?…」
「マサツグさん無事ですか!?」
「……あれ?…やっぱりルン?…」
若干意識を朦朧とさせながらもマサツグは徐々に近づいて来る馬車に警戒を強めていると、その馬車はマサツグ達の目の前で止まり…中から誰かが一人飛び降りて来る!…それに対してマサツグもその飛び降りて来た者が誰か…一瞬では分からなかったものの瞬時に迎え撃つよう身構えると、その向かって来る者に目を向け剣を抜こうとするのだが…その近付いて来る者がやはりギルドの受付嬢・ルンに見え、更に自分達の身を心配し駆け寄って来る様子に見えるとマサツグは戸惑う。そしてそんな疑問を覚えてマサツグは一人勝手に混乱し出すと、自身の後ろに隠したミスティーに問い掛ける。
「……ミスティー?…ちょっと良いか?…
アレは敵か?…俺は幻覚を見ているのかな?…
ルンが馬車から飛び降りて来た様に見えるんだが?…」
「え?……ッ!…マサツグさん!ルンさんです!!
正真正銘のルンさんです!…幻覚じゃないです!!
だから剣を抜かないで!!…しっかりして下さ~い!!」
__ガッ!!…ブンブンブンブン!!…
マサツグに突如問われた事にミスティーは戸惑うが、マサツグの後ろからその姿を確認し…ルンが手を振りながらこちらに向かい走って来るのを見つけると、慌ててマサツグに武器を仕舞うよう声を掛ける!…何故ならマサツグはその近付いて来るルンに対して既に居合いの構えで刀を握っており、あと少しでも確認が遅れれば斬り掛からんとする気配を見せて居たからである!…その際ミスティーはマサツグの両肩に手をやると揺さぶって攻撃を中断するよう声を掛け、気を確かに持つよう続けて話し掛けてはマサツグを落ち着かせる!そしてルンはマサツグ達の元に辿り着くなりただ目の前の光景に戸惑い、ミスティーの揺さぶりは予想以上に効いたのか…揺さぶられる事でマサツグがフラフラとし始めると、耐え切れなくなってその場にへたり込む。
「あばばばばば……」
__ふらぁ~……ドサァ!!…
「マ!?…マサツグさん!?…」
「だ…大丈夫…だと…思う…」
「全然大丈夫そうに見えませんよ!?…」
恐らく気を張り過ぎたせいでTPを消費していたのであろう…慣れない事をしてTPを消耗しミスティーの揺さぶりが止めとなったのか、マサツグは刀を持ったままその場に崩れると、その様子にミスティーとルンは驚き出す!…まるで糸が切れた人形の様に…その場に崩れるマサツグにルンが声を掛けると、マサツグは何とか返事をするのだが明らかに大丈夫そうには見えず…ルンはマサツグの返事にツッコミを入れると若干呆れながらもマサツグを見詰め、マサツグは立ち上がる事が出来ないのかその場に座りっぱなしで居ると、その様子にルンは戸惑いながらも有る事について謝罪し始める。
「……ッ!!…ごめんなさい!!」
「ッ!?…え!?…」
「…実はマサツグさん達を乗せた馬車はギルドで
正式に採用された業者ではなく!…
如何やら何者かによって偽造工作された
馬車だったみたいなんです!!…それが分かった後!…
慌ててマサツグさん達の後を追おうとしたのですが…
誰かにまた馬車の車輪を全台破壊されていて!…
幸いにも修理したばかりの物が残っていて…
更にその馬車を壊した犯人も捕まえたのですが…
来るのに手間取ってしまいました!!…
私達が来るまでに何かありませんでしたか!?…
…って聞くまでも…」
「………zzz……全…然…大…丈夫…だたよ?…」
突如ルンが謝り始めた事にミスティーはマサツグの代わりに驚き戸惑い…次に如何言う事か?と言った困惑の表情でルンに視線を向け出すと、ルンは何が有ったのかをミスティーとマサツグに話し始める。ルンが言うにはまず昨日の御者はやはり賊の一味と言う事で、ギルドの方でも偽装工作されたと言うのが分かった所で慌てて追い駆けようとしたらしいのだが、また馬車を破壊されたらしく!…追い駆けるのに時間が掛かった事を話してはルンは申し訳なさそうに表情を暗くし、何か危険な事は無かったかと尋ねるのだが…マサツグやミスティーの様子から何かが有った事を察すると更に表情を暗くする。そしてそんなルンの様子を知ってか知らずかマサツグはマサツグで意識が混濁した調子で、ルンの話が耳に入っていない様子で返事をすると、そのマサツグの返事にルンはツッコミを入れる。
「いやいや!…大丈夫そうに見えませんって!…
…はあぁ~……とにかく今回我々の不手際で
ご迷惑を掛けてしまい申し訳ございません!!…
ですが今度は大丈夫です!!…
今度はちゃんと信頼出来る御者を連れて来ましたので…
今度こそ安全に!…と、なるかどうかはマサツグさん
次第ですが…この様な失態は二度と無い事を
保証します!!!…この度は本当に!!…
申し訳ありませんでした!!!…」
微睡むマサツグにツッコみを入れて呆れつつも…改めてミスティーの方に振り向くと、真剣な表情を見せる!…そして深く頭を下げて改まった態度で謝り出し、ギルドの全面的なミスであるとまるで会社のクレーム対応の様な…見事なまでの謝罪を見せると、代わりの御者を用意した事を付け加えて説明する。そしてその御者もちゃんと信用出来る所から呼んだと説明すると、その御者はルンが乗って来た馬車から降りて来てミスティー達に一礼し、マサツグ達が襲われた馬車に向かうとまずは馬の様子を確かめ出す。
__ガタッ!……ペコッ…
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ヒヒィィン!!…
「……ッ!!…い、いえいえ!…
ギルドの方々も騙されたのですよ?…
これは仕掛けた側に問題が有って…
ギルドの方々には…」
「ッ!?…いえいえ!!…
あの様な偽装工作を見破れない
我々がいけないのです!!…
常日頃からよく見る物だからと慢心していて…」
__こっくりこ~…こっくりこ~…
そんな御者の様子を見てミスティーは戸惑うのだが、スッとルンの方に視線を戻すとそこには今だ頭を下げたままのルンの姿が有った。まだ反省しているのかその誠意を見せるよう!…深々と頭を下げ続け、そんな様子にミスティーが恐縮するとルンに頭を上げるよう仕方ないと慌てながら言葉にするのだが、ルンは決して頭を上げようとはせずただミスティーに謝り続ける。こんな時マサツグもしっかりして居れば間違いなく頭を上げるよう止めに入るのだが…マサツグはマサツグで限界なのか座りながら舟を漕いでいた…そうして何とも言えない気まずい空気が流れ始めるのだが、ここで空気を読んだ様に!…空気清浄機張りの雰囲気ブレイカーが目を覚ますと、初っ端から仕事をし始める!
__きいぃぃぃ~…
「ふあぁ~…おはようございます…
…んにゃんにゃ……ッ!…
あっ!…ごっ主人っ様ぁ~♪」
__ンバッ!!…ドタァァン!!…
「ゲドラフゥッ!?…」
馬車から目を覚まして出て来たのは言うまでも無くシロ!…眠い目を擦りながら今起きて来たと言った様子で欠伸をしつつ辺りを見渡すと、断片的ながらもマサツグとミスティーの姿を見つけ…マサツグの姿を見つけるなり上機嫌で名前を呼んでは、今どんな状態かも分かって居ない様子で飛び付きマサツグを押し倒す!その際マサツグは当然一杯一杯なので抵抗する事無くシロに抱き着かれると、そのままあえ無く押し倒され!…奇妙な…またもや何処かで聞き覚えの有るモビ〇スーツの様な悲鳴を上げると、ピクリとも動く事なくそのまま気絶する。TP枯渇状態で攻撃を受けると気絶状態に陥り易いのだが、シロのタックルは必中なのか…マサツグはまるでヤ○チャされた様に地面へ転がると、白目を剥いてはピクピクと痙攣し泡を吹く。
「あばばばばばば…」
「ごっ主人っ様ぁ~♪ごっ主人っ様ぁ~♪…
…あれ?…ご主人様?…」
「ッ!?!?……シ、シロちゃぁ~~ん!?!?」
「降りて!?…
今はマサツグさんから降りて上げてぇ~!?…」
「……へ?…」
マサツグが気絶するもシロの情熱的な甘えた攻撃は止まない!…マサツグの上に圧し掛かってまるで猫の様にゴロゴロと甘え、尻尾をブンブンと振り回す!…その間マサツグはやはり気絶しているのでシロに対して何のアクションもせず、押し倒して数分後…漸くマサツグからの応答が無い事にシロが気付き出すと、その様子にルンとミスティーが慌てて止めに入る!…道のど真ん中でミスティーとルンの叫び声が木霊する!…二人に止められた事にシロは若干困惑の様子を見せるのだが、改めて二人に言われた事を聞いてマサツグから退くと、戸惑い気味にマサツグへ視線を向け…そこで漸くマサツグが気絶している事に気が付くと、シロは途端に慌て出す!
「……よいしょ……ご主人様が如何したn……ッ!?…
ご、ご主人様!?…何で!?…如何して!?…
一体誰が!?…」
{シロちゃんがやったんでしょ!?…}×2
「うわあぁぁぁ~~ん!!…
ご主人様!!…ご主人様ぁ~!!!…」
圧倒的無邪気かつ殺意の無い犯行と言うべきか?…シロは完全に自分が止めを刺したと言う事には気付いては居らず、マサツグに縋り付くと大慌てで犯人を捜し始める!…しかし幾ら辺りを見渡した所でその犯人が居る訳も無く…ルンとミスティーはただ慌てるシロを見詰めては酷く困惑した様子でツッコミの言葉を心の中で呟き、シロはシロでマサツグが死んだと誤解した様子で泣き出してはマサツグに縋り続ける。完全に先程までの謝罪ムードから一転…シロのファインプレー?…で一気にコミカルに…そんな状況に悩みつつルンは考えた様子で徐に自身の乗って来た馬車の御者を呼ぶと、その連れて来た御者と共にマサツグを元の馬車へと運ばせる。そうしてマサツグを馬車に乗せてからその馬車にシロとミスティーが乗り込むと、改めて馬車はハーフリングスに向かい出発し始めるのだが…そのマサツグを馬車に乗せる際、シロはマサツグにぶら下がるよう引っ付くと御者の二人を戸惑わせるのであった。
…さて、ここからはミスティーによるネゴシエーションにより、シロはマサツグが死んでいない事を理解するのだが…その際ミスティーはシロの事に興味を持ったのか?…それともマサツグを不憫に思ったのか?…シロを隣に座らせては軽い教育をし始める。この時シロも満更ではない様子でミスティーの話に興味を持つと、対面の席で倒れるマサツグが起きるのを今か今かとチラチラと確認しつつ…ミスティーの話に耳を傾けると、色々質問をするのであった。
「……で、あの海を渡るのに船って
言う乗り物が作られたの!…
この大陸や他の大陸を繋ぐ為に
出来た凄い物なのよ?…
この世界には色々な生き物が居て…」
「ッ!…じゃあ!…他に色んな乗り物が有るのですか?」
「えぇ!…飛行船や列車…
その他にも探せばあるかもしれないわ!
……まぁ、残念ながら私は見た事が無いのだけど…」
「ッ!…そうなんですか?」
ミスティーはシロにお話をする際…この世界についてであったり…生き物についてであったり…色々な自分が教えられる範囲での事をシロに教えると、シロはそれを嬉々として聞き続ける。まるで自分に妹が出来た様な…そんなシロの様子が楽しくて!…ミスティーも自然と笑みを零し色々とシロに聞かせるのだが、ふとシロが思い立った様に自身の母親について話し出すと、その質問にミスティーは困惑する。
「ほえぇ~!……ッ!…じゃあ!…
シロのお母さんも居るのですか!?」
「ッ!?……」
シロの口から出て来たいきなりの母親の話……マサツグは一体どの様に教えているのか?…迂闊な事は言えない!…けどシロを悲しませるのも良くない!…無責任な答えは許されない!…ミスティーの頭の中で色々な考えが駆け巡っては思わず青褪めそうになる!…しかし目の前ではシロが期待した表情を見せては答えをずっと待って居り、ミスティーもいよいよ追い詰められて答えなくてはならなくなると、ハッ!と思い付いた様子で苦し紛れの言葉を口にする。
「……え、えぇ!!…きっと居る!…
マサツグさんと一緒に旅をすれば
会えるかもしれないわ!…」
「ッ!!…ふおぉぉぉぉ!!…」
{………しまったぁ~~~!!!}
シロからの期待の目にミスティーは耐え切れず…遂に誤魔化すよう笑顔で居ると答えるとその責任をマサツグに丸投げしてしまう!…居るかどうかも分からない…ただ恐らく居るだろうと言う淡い期待に縋るよう答えては、その答えを聞いたシロは期待に満ちた反応で喜び!…その反応を見るミスティーは表情では笑うものの心の中ではただ自分の言った言葉にショックを受けるのであった。そして次にミスティーは一人マサツグが起きた時に如何伝えたものかと悩み出すと、シロに対する罪悪感に襲われるのだが…更にシロの放銃は続く!
「えへへへ♪……ッ!…そう言えば…」
「ッ!…こ…今度は何かしら?…」
「昨日…宿屋にお泊りした時、
ご主人様のお腹の上に乗っていたアレ…
アレは何をしていたのですか?」
「ぶッ!?…ッ!?…ッ~~~~!!!…」
ミスティーの言葉に期待を持ったシロは喜び、ミスティーに笑顔を向けるとその笑顔がミスティーの心を強く抉る!…その苦痛に耐えるようミスティーは若干辛そうにシロに笑って見せるのだが、シロはハッ!と思い出した様子で目を見開くと昨日の宿屋での出来事についてふと尋ね始める。昨日の宿屋での出来事…それは言うまでも無くあの未遂事件の事であり、その事を問われた途端ミスティーは奥歯で自分の舌を噛み、痛みでその場に蹲ると悶絶し始める!そしてその返答について悩み出す!…シロにまだそう言った事を教えるのは早い!…それはミスティーも分かって居る事であり、幾ら祖国に帰る為とは言え!…子連れのパパさん相手にやる行動では無かったと心の中で反省していると更にシロの追撃は飛んで来る!
「だ!!…大丈夫ですミスティーお姉ちゃん!?……」
「ひ…ひはひ!………ッ!!…ッ!!ッ!?」
__……クルッ!…
「ッ!…ミスティーお姉ちゃん!!…」
__クルッ!……クルッ!……クルッ!…クルッ!…
シロはミスティーが思いっきり舌を噛む瞬間を見ては驚き、ミスティーが悶絶した様子で蹲ると慌てた表情で心配の声を掛け始める。この時ミスティーは喋りたくとも舌を思いっきり噛んでは思う様に喋られない上に、宿屋での一件を思い出し…更にシロから純粋な心配の表情を向けられる事で居た堪れなくなると、顔を真っ赤にしては両手で顔を隠し、身を丸めてシロの顔をまともに見る事が出来なくなってしまう!…そしてそんなミスティーの様子をシロは必死に舌を噛んだ痛みを耐えているのかと誤解した様子で、今だミスティーを心配して顔を覗き込もうとするのだが…ミスティーはシロから逃げるよう顔を背け出すと、ミスティーの様子にシロは戸惑いつつ追い掛けるを繰り返し始める。そうして何度も繰り返す内にミスティーの舌の痛みも徐々に治まり…また普段通りに喋れる様になり始めるのだが、ミスティーの頭の中では今だあの宿屋での一件がフラッシュバックされると思わず顔を赤くし…その度にシロの顔を見る事が出来なくなってしまうのであった。
__ハーフリングスまでの道中…二日目・夕方…
「……うっ!…うぅ~ん……ッ!…」
「ですからお買い物をする際には……」
「……ミスティーお姉ちゃん?
何でさっきからお顔をあっちこっちに向けるのですか?…
シロ…何かしました?…」
「ッ!?…ご、ごめんねシロちゃん!…
でも大丈夫!…何でも無いの!…
…で…でも今はこれで我慢して欲しい…かな?……」
馬車の旅二日目…もう直ぐ日が沈もうと言うタイミングでマサツグが漸く気絶から復帰すると、目の前では再びミスティーがシロに色々な事について教えていた。当然復帰したてのマサツグは自分が起きるまでの間の事を知らないのでその光景を見るのは初めてなのだが、二人は二度目と言った様子で会話をしており…その際ミスティーはシロに視線を合わせる事無く物事を教えるのだがその様子にシロは不服とし、自分が何かやったのかと尋ねるようミスティーに反省の色を見せると、その問い掛けにミスティーは慌てて返事をする。この時ミスティーは顔を赤くするとモジモジとしては気不味そうな表情を見せ、何やら誤魔化したい様な様子を見せるとやはりシロの顔を見ようとはしない…そんな様子にマサツグも何が有った?…言った疑問の表情を浮かべ出すのだが、シロはハッ!とマサツグが起きた事に突如気が付くと、マサツグに向かって飛び付く。
「むぅ~!……ッ!!…あっ!!…ご主人様ぁ~!!」
__ンバッ!!!…
「ッ!?…おっとぉ!!…」
「ご主人様!!…ご主人様ぁ~!!」
シロが一目散にマサツグへ向かい飛び付くと、マサツグも慌ててシロを受け止め…シロを無事受け止めた事でマサツグがホッと安堵していると、シロはマサツグの腹部に縋り付いてグリグリと顔を押し付ける!…余程起きないマサツグに不安を抱いていたのか何度もマサツグの事を呼び、マサツグもそんなシロの様子を見て思わず笑みを零すと、シロの頭に手を置いてはゆっくり撫で始める。そしてミスティーの方に振り向いてはシロの世話をしてくれた事に対しお礼の言葉を口にしようとするのだが、マサツグがミスティーの方に視線を向けた途端に奇妙な光景を目にする。
「……ミスティー…世話を掛け……ッ?…」
「い…いえ!…別にそんな大した事は!!…
…寧ろご迷惑を掛けたと言いますか…」
「いや…そんな事は無いと思うんだが…
…何で壁に張り付いて居るんだ?…」
「へ!?…べ!…
べべべべ別に張り付いてはいませんよ!?…
ただ先の道が気になって!?…」
マサツグがミスティーの方に視線を向けるとそこには座席の上に立つよう膝を立て、馬車の壁に張り付き外の様子を確かめようとする…マサツグに背を向けたミスティーの姿が有った。そしてマサツグのお礼の言葉に対して明らかなまでに戸惑いの様子を滲ませ、ミスティーの性格上そんな無邪気な行動をする筈が無いとマサツグが戸惑った様子で質問をすると、その問い掛けにミスティーは更に戸惑っては声を裏返し動揺を露にする!その際チラッとだがミスティーの頬が赤く染まっているのを目にすると、マサツグは更に疑問を持ち…シロを抱えるなりミスティーの方に向かい歩き出すと、マサツグはある行動に出る。
「……シロ、ちょっと捕まってろ?…
どっこいしょ!……ふぅ…」
__コッ…コッ…コッ…コッ……ポンポン…
「ッ!?…ひゃ!…ひゃい!!…
な、何で!…ッ!?…」
マサツグはシロを抱えてミスティーの隣の席に移動すると徐にミスティーの肩を叩き、それに反応してミスティーもビクッと身を強張らせると逃げられないと悟ったのか、覚悟を決めた様子でマサツグの方を振り向こうとする!…この時ミスティーは必死に自身の気持ちを落ち着かせようとしてからマサツグの方を振り向くのだが、ミスティーがマサツグの方に振り向いた瞬間そこにはドUPのマサツグの顔が有り、その様子にミスティーが今にも火が出そうな勢いで更に顔を赤くすると、マサツグは徐に自身の額をミスティーの額に軽く押し当て始める。
__クルッ…コツン…
…ッ~~~~~~!?!?!?!…
「……うぅ~ん…熱は無さそうだが…
風邪か?…気分悪いとかは?…」
如何やらマサツグは一連の様子からミスティーが熱・風邪を引いたのではないか?と考えたらしく、それを確かめる為に額をくっ付けて見たのだが…ミスティーには逆効果だったのか頭から蒸気が噴き出すよう錯乱し始めるとその場で卒倒する。
__…ポオオオォォォォォォォォォ!!!!…
フラァ…バタッ!…
「ミ、ミスティー!?(ミスティーお姉ちゃん!?)…」
「え!?…ちょ!?…まっ!!…そんなヤバかったの!?…
と…とにかく、シロ!…その毛布を取ってくれ!!」
「は…はいです!!」
突如顔を真っ赤にしてはその場で倒れたミスティーにマサツグとシロは揃って戸惑い、慌ててマサツグがミスティーの看護に入り始めると自身に着せられて有った毛布を持って来るようシロに指示を出す。その指示を受けてシロも返事をするとマサツグから離れては慌てて毛布を取りに行き、ミスティーの元に持って来るなり着せ始めると、一段落と言った様子で一息吐く。そしていきなり容態が急変したミスティーをマサツグが見詰めて居ると、ふと自身が寝ている間に何か有ったのかと考えてはシロに質問をし始める。
「……シロ?…
俺が気を失っている間に何か無かったか?…
敵の気配を感じたとか?…
ミスティーの様子が可笑しくなったとか?…」
「……うぅ~ん…分からないのです…
ご主人様が寝ている間はシロ…
ミスティーお姉ちゃんに色々お話を
聞かせて貰ってたです…例えば…
この前の海の話や春の国と夏の国以外に
秋と冬の大陸が有って………ッ!…
そう言えばお姉ちゃんに宿屋でご主人様の
上に跨っていた事について聞いたら
お顔が真っ赤になりました!…」
「ッ!?…ボフェッフハ!!……」
敵の攻撃か何かなのでは?と考えてはシロにその詳細について…何か変な事は無かったかについて尋ね出すと、シロはマサツグの真似をする様に腕を組んでは悩み始める。しかし幾ら考えた所で…思い出そうとした所でこれっと言った事は何も無く…マサツグに分からないと答えるとただミスティーに色々教えて貰った事を少し悩んだ様子で話し出し、マサツグもその話を聞いて目を覚ました時の光景かと理解していると、シロは突如ハッ!と思い出した様子であの宿屋での一件の事について掘り返し始める。シロは正直に!…真剣な表情でその事についてマサツグに話すと、今度はその話を聞いたマサツグが吐血しそうな勢いで噴出し!…まさかここで再度出て来るとは思っても居なかった様子で青褪め始める。
「ッ!?…ご、ご主人様!?…」
「だ…大丈夫…ただ急に悪寒が…」
「……ッ?…そうだ!…
ご主人様なら分かるかもしれません!…
何でミスティーお姉ちゃんはご主人様の
上に跨っていたのですか?」
「ハウッ!!…」
マサツグが咳き込み青ざめ始めるとシロはマサツグの心配をし始め、その心配にマサツグは何でも無いと答えると、更にシロの#質問__追撃__#が飛んで来る!シロなりに考えた疑問なのだろうがまさかのその考えはあの宿屋での出来事で、シロはあの時の事が原因なのでは?と考えると、ほぼ瀕死のマサツグにその事について質問をする。そして恐ろしい事にそのシロの質問はある意味で的を射て居り、マサツグもミスティーが倒れた原因について…真相に薄々感付いてはそのシロの質問の返答に悩み始める!…
「ご主人様!…どうしてですか!!」
「オ…オウッ……」
「ご主人様!!…」
シロの真っ直ぐな視線!…純粋な瞳がマサツグに刺さる!…真剣な表情で見詰めるシロにマサツグは激しく動悸を覚え!…本当は知ってるんじゃ!?…と幼女相手に怯え出すと今すぐにでもログアウトして逃げたくなる!…しかし当然ながら今すぐに出来る訳もなく…マサツグの精神がゴリゴリと鬼の様に削られて行き、ただ詰め寄る様に見詰めて来るシロの視線に酷く困惑し戸惑って居ると、途端に二人はハッとある異変に気が付く!…それはゆっくりかつ少し神経を研ぎ澄まさないと分からないレベルなのだが…その異変に気付くや否やマサツグとシロは途端に警戒し始める!
「……シロ?…この話はもう終わりだ!…
如何やら面倒事が来たらしい!…
…昨日と言い今までと言い!…
本当に仕事熱心な奴らだぜ!…」
「ッ!!…やっぱり!…
ミスティーお姉ちゃんに聞いた通り!…
シロ達が寝ちゃった時に来てたのですね!?…
今度は寝ません!!…」
マサツグとシロが気付いた異変と言うのは馬車の走る速度であった!…先程まではある程度速度が出ていて小刻みに揺れ動く位に足元が揺れて居たにも関わらず、今は物凄く大人しい…外の風景も流れる様に変わって行った筈がじっくりと風景を眺める事が出来る位に遅く流れており、その様子に昨日の様な出来事を思い出すと否応無しに二人を警戒させる!…そして外に居る御者から声を掛けられるのだが、その御者の様子も可笑しく!…声の調子から外の様子を察する事が出来るレベルであった。
「だ…旦那!……そ…そろそろ、夜もお…遅いので…
き、今日はここで野…宿にしましょう…
あっしは…ま…薪!…薪を…取ってきます!!……」
__ガタンゴトン!…ヒヒィィィン!!…
…タッタッタッタッタ!…
「……さぁて、如何来ますかね?…
昨日の様には行かねぇぞ?…」
御者からの声は明らかに動揺…怯えの様子が感じられ、その様子にマサツグもシロも察した様子で馬車の扉を見詰めると身構え始める!…そして馬車が止まると馬の嘶きが聞こえた後、誰かがこの馬車から遠退いて行く足音が聞こえ、更に二人の警戒を強めさせるとマサツグは昨日のリベンジと言った様子で意気込み始めるのであった。




