-第二章十八節 誤った通報とナンパと路地の喧嘩-
ドレッグと別れたマサツグ達はホルンズヒルを後にすると、そのままホエールビアードに戻って来ていた。町に戻るといつもの様にと言った賑わう様子が目に映り、ミニマップはまたカーナビと化す…そんな様子を目にしつつまたここに戻って来るまでの道中で溶け掛けるシロを小脇に抱え、アイスを求めて道具屋に向かう道すがらなのだが…その際町ですれ違った冒険者達から奇妙な噂話を聞く事になる。何やら良からぬ事が起きているのかその噂話をする冒険者達も変…と言った様子で表情を曇らせ、それを聞いたマサツグ自身も妙と言った様子で聞き流すのであった。
「……おい、また変なイベントでも起きているのか?…
ついこの間町の中でNPCがNPCを誘拐紛いな事を
やってたみたいだぞ!?…春野原の方でもカルト教団…
だっけか?…
大規模な討伐イベントが有ったみたいだし…」
「あぁ、その話なら俺も聞いた聞いた!!…
何でも女性NPCしか狙わない様で野郎は全くとか!!…
お陰で最近衛兵達の目がやたらと厳しくてさぁ…
鬱陶しい事敵わねぇっての!!…
…まぁその恩恵って言うのもあれだけど…
ギルドの方でも依頼が増えたとか?…
主に護衛の任務が……
しかもそこそこの金額でウマウマらしいぞ?」
{……誘拐?…それもNPC同士で?…
やっているのがプレイヤーなら未だしも…
何の目的が?…
何やら穏やかでは無いのは確かな様だな……}
__ざわざわ…ざわざわ…
そんな冒険者同士の会話を聞きつつ、マサツグは道具屋に向かい歩き続けるのだが…この時実はその監視の目が厳しくなった衛兵達に目を付けられては、静かに追われている事をマサツグは気が付いていないのであった。何故なら小脇にシロを抱え…そのシロはまるで気絶でもさせられた様にダラァ~ンと無抵抗に溶けて居たからである。普通白昼堂々人攫いをするか?とツッコみたくなるところだが、警戒をしているのは衛兵だけでなく…町の人間からも変と見られては通報され、マサツグはマサツグで暑さのせいか周りの目に対してその警戒が疎かになっているのであった。そして…
__カランカラァン…
「……ほらシロ~?…道具屋に付いたぞぉ~?…
どれが食べたい?…」
「あ…アイシュゥ~……」
__……チャリィ~ン!…
道具屋に辿り着くなりマサツグは早速シロを抱えてアイスのクーラーケース前に移動し、シロにどれが食べたいかを汗を掻きながら尋ねると、シロは溶けながらもクーラーケースに手を伸ばす。そして前に食べたナイスランバーを手に取るとマサツグに溶けたままの状態で掲げて見せ…マサツグがそのままシロを抱えてお会計の方に行くとお金を支払い、銀紙を剥いてシロの口にアイスを持って行くと、シロはアイスを咥えた瞬間復活する!
__バリッ!!…スッ…パクッ!…
シャキィーン!!!…
「ふっはふはほへふ!!」
「はいはい分かったから口に物入れて喋らなぁい…」
「……アンタ…大変そうだな?…」
シロがアイスを咥えた途端、尻尾と耳がピィン!と逆立つよう天に向かって伸びると全身に力が戻った様子で復活し、マサツグに抱えられた状態で口にアイスを咥えたまま手を上げ出すと、復活した事を宣言する!そんなシロの様子にマサツグはお行儀が悪いと言った疲れた様子でシロに注意をすると、道具屋の店主もこの光景を見るのは初めてとばかりに戸惑い…マサツグに同情する様な言葉を掛けると、受け取ったお金をレジに仕舞う。この時マサツグが入った道具屋はあのギルド前の道具屋とは別の道具屋で、店主とも初対面の筈なのだがまさかの同情をされ…そんな店主の反応にマサツグは戸惑いを覚えるのだが、更にややこしい状態へと話は進み出す。
__…バァン!!…
「動くな!!!」
「うぇええ!?…」
「貴様!!…その女児を如何するつもり……ッ?…」
ややこしい状態と言うのはマサツグの後を追って来た衛兵達の事である!マサツグとシロが道具屋に入ってから数分…如何やら怪しいと思われたのか身柄確保する為に増援を呼んで来てはいざ道具屋に押し入ったのだが…そこに居たのはやはり大人しくマサツグに抱えられながらアイスを咥えるシロの姿で、シロ自身衛兵達に不思議そうな視線を向けると、その視線に衛兵達は戸惑う。何故なら攫われたと思っていた女児はその誘拐犯に懐いて居る様に見えたからである。
「……えぇ~っとこれは?…」
「…一応確認しますが…その女児との関係は?…」
突如店内に押し入って来た衛兵達に店主は驚いた様子で固まり、マサツグも戸惑った表情ながら店主の様子に気が付くと、固まって居る店主の代わりに衛兵達へ用件を尋ね出す…衛兵達は思っていた状況と違う事に困惑しながらも原因であるマサツグにシロとの関係性について尋ね出し、マサツグが突然の問い掛けに対して困惑の様子を見せると、改めてシロとの関係について思わず考えてしまう。
「え?…えぇ~っと……一応…
親子?…みたいなものですかね?…」
__……チラッ……ッ?…ショリショリ…
…恋人?…いや犯罪!…親友?…だとしたら可哀そう!…そんな事を考える中、ふとマサツグの頭の中で出て来たのは「親子」と言う言葉であり、マサツグ自身シックリ来た様子で戸惑いながらそう衛兵達に返事をすると、衛兵達は恐る恐るシロに視線を向ける。何やら間違いが有ってはいけないと言った緊張した様子で視線を向けるのだが、以前シロは不思議そうな様子で衛兵達を見詰めては首を傾げ…アイスはやはり手放せないのか今の状況を理解していない様子で黙々と食べていた。そうしてシロの様子から自分達の誤解…誤報だと言う事に気が付くと衛兵達は警戒を解き出し、一斉にマサツグに対して敬礼をすると謝り始める!
__ざわざわ…ざわざわ……スッ…
「ご迷惑をお掛けしましたぁ~!!!」
「ッ!?…うぇえええ!?………ッ!…あっ!…」
いきなり衛兵達が敬礼したかと思えば全員が謝り出す!…そんな光景を目にしたマサツグは更に状況が把握出来ずに困惑するのだが…落ち着いて色々思い返してみるとシロを小脇に抱えて居る事…ここに来るまでのシロの様子等…噂話で人攫いが現れている事等思い出し始めると、漸く理解出来たのか…声を挙げて戸惑い出すと次第に青褪め、今度は逆にマサツグが衛兵達に頭を下げて謝り始める。
「す…すんません!!!…もしかして俺のせい!?…」
「い、いえいえ!!…
こちらこそよく調べないで
押し入ってしまい申し訳ない!…」
__すんません!!…申し訳ない!!…
すんません!!…申し訳ない!!…
「…な、何なんだ今日は!?…」
突如道具屋の店内で行われる謝罪合戦…マサツグが謝れば衛兵達が謝る…そんな様子を見せられている店主は驚いて様子でその光景を見詰めては言葉を漏らし、騒ぎは外にまで広がっているのか次第に見物客達が集まり始める。その間シロはやはりアイスを黙々と食べては衛兵達を見詰めており…事の発端はある意味自分で有ると言う事を知らないままマサツグに抱えられているのであった。そうして徐々に騒ぎも落ち着き出し…漸くマサツグ達が動ける様になると二人は手を繋いで退店しては何処に行くかで話していた。
__……カランカラァン!…
「あぁ…酷い目に遭った…」
「ご主人様ぁ?…次は何処に行きますか?…」
「んん?…そうだな…とにかく一旦ギルドに行って…」
今度は疑われない様に!…シロと手を繋いで店を後にするとマサツグは疲れた様子で項垂れ…シロは結局先程の出来事が何なのか分からず仕舞いでアイスを食べ終えると、のほほんとした様子でマサツグに次の行き先を尋ね出す。そんなシロの様子にマサツグは更に疲れそうになるのだが、とにかくギルドに行こうと考え…シロにその事を伝えて歩き出そうとするのだが、こういう風に何か変な出来事が一つでも有ると次々連鎖的に事が起き始める!…それはマサツグの冒険の中ではもはや当たり前の様になっているのだが…例に漏れず次の事件がマサツグに襲い掛かる!…
「嫌!!…止めて下さい!!!…放して!!!…」
「……あん?」
「ッ!…ご主人様、アレ!!…」
いざシロを連れて歩き出そうとした途端!…突如路地の方から誰かの嫌がる声が聞こえて来るとマサツグは反応する。誰かが無理やりナンパしているのか?…そんな出会い厨が居るのか?と思わず悪態を吐きそうになるのだが、そんなマサツグを余所にシロが腕を軽く引っ張って呼ぶと、その路地の方を指差してはマサツグにある物を見せる。するとそこには一人の獣人…丸い耳に長い尻尾、南国育ちとばかりに褐色の肌!…白に近いクリーム色の腰位まであるお下げ髪と、まるでグラビア雑誌から出て来た様なナイスバデーの水着姿の女性が建物を背にして襲われていた!そして助けを求めている原因はやはり男か…数人のグループがその一人の獣人女性に対して輪になって群がると、その獣人女性の腕を掴んでは何処かへ連れて行こうとしていた。
「いいから来い!!…なぁ~に…
たぁっぷり可愛がってやるからよぉ~~!!……」
「いや!!…誰か!…誰か!!…」
「助けなんて誰も来ねぇよ!!
へっへっへ!!!……」
{……はあぁ~…
衛兵騒ぎの次は迷惑ナンパかよ!?…
ホント変な事ばかり!!…}
いざギルドに向かおうと思った矢先にこのナンパ騒ぎ!…オマケにその獣人女性を襲っている連中は見るからに三下!…シロは心配そうにその様子を見詰めて居るとマサツグの手をギュッと握り、マサツグは自身の顔の上に手を置いては天を仰ぎ…その置いた手の間からもう一度チラッと様子を確認すると、向こうの女性もこちらに気が付いたのか、目に涙を浮かべてはマサツグの方に視線で助けを求める!…
__……チラッ…ッ!?……ッ~~~!!!…
「ッ!…はあぁ~…仕方ない…シロ?…」
「ッ!…はいです!!…」
__トットッ!……トットッ!…
助けを求める視線を見てしまったマサツグは諦めた様子で思いっきり溜息を吐くとシロを呼び、シロも何かを悟った様子でムッとした表情を見せるとマサツグの方を振り向き返事をする!…この時まるで何か合図を待っている様な様子で脚をパタパタと動かしてはリズムを刻み、それを見たマサツグはシロにフッ…と笑って見せると、やる気満々のシロにこう指示を出す!
「…いいか?命令は二つだ!…
…相手を殺すな!…何も命を奪う必要は無い!…
ただ痛い目に合わせてやれば良い!…
そしてもう一つだが……」
「………。」
「……遠慮無くぶちのめしてやれ!…」
「はいです!!!!」
__バビュン!!!…
マサツグがシロに出した二つの命令!…それは相手の命を奪わない様に!と言う…シロの手を汚さない様にする為の命令と、もう一つは相手を遠慮なくぶっ飛ばして来いと言う!…ある意味一つ目の命令とは矛盾している内容の命令であった。その際マサツグは一つ目の命令を言い聞かせる様にシロへ話すのだが、もう一つの方はサムズアップすると親指を自身の首に当てては横に引き!…殺って来い!と言ったジェスチャーを笑顔でして見せ、それを見たシロはまるで許可が出たと言った様子で返事をすると猟犬の様に飛び出しては、一直線にそのナンパ男目掛けて飛び掛かる!
「へっへっへ!!!…
おうおう!…いい加減無駄な抵抗は…」
「シロキィック!!!!」
__ドゴオオォォォ!!!!……スチャッ!…
「ハブシャッ!?!?!?…」
その獣人女性が無理やり連れて行かれようとした次の瞬間!…一直線に飛んで行ったシロが獣人女性の腕を掴んでいたナンパ男に対して飛び蹴りを敢行すると、見事にその横っ面を蹴り飛ばし!…取り巻きの数人を巻き込む様にして吹き飛ばすと、その獣人女性の前へ華麗に一回転着地を決めて見せる!…そして吹き飛ばされた方は情けない悲鳴を上げてはそのまま建物の壁に激突し、目を回しながらピクピクと痙攣するとその場に倒れ…シロの突然の登場と仲間がやられた事に、他の取り巻き達は戸惑った反応を見せるのであった。
「な!?…何なんだこのガキぃ!?…」
「ムッ!…ガキじゃないです!!…シロです!!!」
「なっ!?…」
まだ年端も行っていない幼女に大の大人が吹き飛ばされ!…やられたと言った様子でナンパ集団は慌て出すと、シロに威嚇するよう声を掛け始める!…しかしシロはそんなナンパ集団に対して全然物怖じせず!…寧ろ文句を言う様にナンパ集団に向かって行くと、ただ突然の事にナンパ集団は戸惑い続け!…後からマサツグがそのナンパ集団の背後を取る様に姿を現すと、呆れた様子で声を掛ける。
「…おいおいそこの兄さん達?…」
「ッ!?…誰だコラァ!!…」
「大人数で一人の女性を囲むとか…
情けなさ過ぎて涙が出て来るぞ?…ホント…」
「ッ!?…テメェ!!…」
ナンパ集団の背後を取ったマサツグが呆れた様子で声を掛けると、更にナンパ集団は慌て出し!…今度は突如現れたマサツグに対し食って掛かろうとするが、マサツグは全く眼中に無いと言った様子でナンパ集団を煽り出す。その間シロはその獣人女性の前に仁王立ちしては向かって来たらぶっ飛ばすと言った覇気を放ち続けるのだが、マサツグの煽りの方がヘイトを集めたのか…ナンパ集団はキレた様子を見せるとチンピラの様にマサツグの方へ群がって行く。
「急に出て来てなんだコラァ!!…あぁ!?…
邪魔すんじゃねぇぞコラァ!」
「ンだコラァ!?…やっちまうぞオラァ!!」
「おうおうテメェ!…
何だってんだコラァ!」
{うわ~…見事なまでの三下臭…
…鑑定を使う程でも無いな…
シロも居るし…
そこのお姉さんを護りながら余裕で戦えるか…
……それにしても…こいつらコラ以外言えんのか?…}
数はザッとシロが吹き飛ばしたのも合わせて10人と言った所か?…まるで其処ら辺に居るチンピラの様に群がって来たナンパ集団は下から見上げるようマサツグにメンチを切り、馬鹿の一つ覚えみたいにコラ!と語尾を付けては威嚇する!…しかしどのナンパ野郎も所詮はチンピラ…マサツグに向かって行くチンピラに対してシロはいつもの様に反応せず、寧ろ後ろに居る獣人女性に対してだけ注意を向けては、全く動く気配を見せないでいた。まるで相手にならない…既に力量は分かって居ると言った様子で仁王立ちし、その様子にマサツグも完全に見下した表情をまま冷静に周りの状況判断をすると、もはや何も言う事は無いと言った様子でゆっくり身構え始める。
__……スッ…ッ!?…
「…どうせこの様子だと言っても無駄だろ?……
さっさと始めようぜ?…」
「ッ!?…こんの!!…ナメやがって!!!
おい!…お前ら!!!」
__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
完全に相手を下に見た様子でマサツグが拳を握って構えるとナンパ集団は戸惑い出し、多勢に無勢と言った様子も無く…ただ烏合の衆とばかりにマサツグが挑発すると、ナンパ集団もその言葉にキレた様子で構え始める!…その際まだ陰に隠していたのか他のチンピラ達を呼ぶようナンパ集団が声を掛けると、路地裏からゾロゾロと集まり出し!…その様子を見てマサツグがあのホルンズヒルのゴブリン達の様に感じていると、その様子にシロもピクっと反応してはマサツグに声を掛け出す。
「ご主人様ぁ~?…
いっそシロがやっちゃいましょうかぁ~?」
__……チラッ……ピクッ!…ピクピクッ!…パラァ…
「……シロが動くと大変な事になるからステイ!…
ステ~イ!!
そのお姉さんを護って上げて!!」
「ッ!…はぁい…」
シロがちょっと不安そうな表情でマサツグに参戦しようか?と手を振って声を掛けるのだが、マサツグはチラッとシロが最初に蹴り飛ばしたナンパ集団の様子を確認すると、若干戸惑いながらシロに大人しくするよう返事をする。何故なら…今だシロが蹴り飛ばしたナンパ集団は目を回して気絶し、痙攣しているからであり…更にその激突したであろう後ろの壁に目を向けると、余程の威力で蹴り飛ばされたのか?…壁が減り込んでいる様子が目に映ったからである。確かに気絶程度で済ませて有るがそのナンパ集団のダメージは相当な物!…まだ子供だから手加減が出来ないのかと思いつつ…マサツグがそう返事をすると、シロは残念そうに少し項垂れて返事をする。そうしてナンパ集団VSマサツグの喧嘩が一触即発の状態に変化し始めるのだが、ここである事件が起きる!…
「………ごめんなさい!!…」
__バッ!!!…
「ッ!…あっ!…お姉さん!?」
それは突然の事であった!…いざ喧嘩が始まろうとして居た瞬間、その空間に耐え切れなくなったのかシロに守られていた獣人女性が後退りをし始め、突如謝罪の言葉を口にするとその場から逃走し始めたのである!…そしてさすがは獣人族と言った所かその足は速く!…普通の者では追い付けずそのまま獣人女性がメインストリートに飛び出して行くと、シロも突然の事で反応が出来ず…ただ戸惑った様子で獣人女性の背中を見詰めては手を伸ばしていた。そしてナンパ集団の方も獲物を逃がした事に気が付くと慌て出し、後を追い掛けようとするのだが…
「ッ!?…あっ!…おい!!…クソッ!!…逃がす…」
__ッ!!…ヒョンッ!…バキイィィ!!!…ドゴオォ!!!…
「がはああぁぁ!!…」
__ズルッ!…ズルッ!…ガクッ……どよ!?…
その逃げた獣人女性に対してナンパ集団は慌てて追い駆けようとするのだが、シロがそれに反応するよう動き出すとまずは向かって来る野郎に対し!…その場で飛んで見せるとナンパ野郎の顎に向かいハイキックを繰り出す!するとその一撃は見事に野郎の顎を捕らえるとそのまま後ろに蹴り飛ばし、またもや壁に減り込む勢いで叩き付けると顎が砕けたのか、下顎がプラプラと重力に負けるよう揺れ動き…そのままズルズルと崩れる様に落ちるとその場に気絶し倒れる…そしてその様子を見た他の連中が慌ててシロの前で急ブレーキを掛けると慌て出し、シロもシロでそのナンパ集団に対して威嚇するよう眉間にしわを寄せると、一言言い放つ!
「逃がさないのです!!!」
「ッ!?…お、おい如何する!?…」
「如何するも何も!!…
追い掛けるに決まってるだろ!?…
このまま逃がしたら不味い!!…
こっちのチビッ子はヤベェ!!…
あの男を黙らせるぞ!!!」
「「「お、おう!!」」」
シロに足止めされるとナンパ集団は更に慌て出し、仲間内同士で戸惑いながら相談し始める!…余程気に入ったのか?…それとも何か有るのか?…とにかく先程の獣人女性を逃がしてはいけないと言った様子で話しては追い掛ける事で結論を出すと、シロの先程からの様子を見てか敬遠するよう後退りし…警戒した様子でマサツグの方に振り向くと強行突破を図ろうとし始める!…全員で掛かれば突破出来る!…そう考えてナンパ集団は掛け声を挙げて襲い掛かろうとするのだが、マサツグは一歩も退く事無く構え始めるとまずは最初に向かって来た野郎に対して間合いを図り始める!
__ダダダダダダダダ!!!……スッ…
「さっさと退きやがれ!!!この野郎ぉぉぉ!!!」
「ッ!…フン!!…」
__フォンッ!!…ゴシャアァ!!!…
まず最初に向かって来た三下は掛け声に似た罵倒を口にしてはマサツグに殴り掛かろうとするのだが、マサツグは避けると言った動作は一切する事無く…ただその飛んで来た拳に合わせて頭突きを繰り出すと、その三下の拳を頭で受け止める!…その際辺りに鈍い音が響くと途端にナンパ集団は戸惑いの表情を見せ、その殴り掛かって行った男の様子を確かめるのだが、そこにあったのは悲痛な表情を浮かべる!…殴った拳がグシャグシャになって悲鳴を上げている姿であった。
「ッ!?!?!?…ッ~~~!!!!…
ぎ…げやああああああぁぁぁぁぁ!!!!!…」
「ッ!…おぉおぉ!…
見事にクシャンクシャンだな?…」
「ッ!?…お、おい!?…このやろ!!…」
マサツグの頭を殴った三下の手は見事に有らぬ方向に指が曲がっていたり、手首に力が入らない様子でダランと垂れ下がっては血を流し…皮膚は徐々に青紫色へと変色していた…変色するにしてもかなりペースが速い様な?…そんな疑問をマサツグは覚えるのだが直ぐに身構え直し呟いていると、目の前ではその三下が折れた手を庇う様に握ってはその場で痛みに耐えかねて叫び出し、そんな光景を目の前にした他の連中が戸惑いを覚える中、構わずマサツグに殴り掛かりに行こうとすると、それを良しとしない幼女が大暴れする!
「させません!!!」
__ドゴオォ!!…バキイィィ!!!…
「グハアァ!!!…」
「ゲハアァァ!!!…」
ナンパ集団の後ろの道からは妙に強い幼女が迫り!…前の道には頭突きで拳を砕く若造が!…まさにナンパ集団からすると前門のタイガー…後門のバッファローならぬベビーウルフと言った所か!…シロは後ろから迫るとただただ回し蹴りやハイキック!…飛び蹴り等蹴り技を主体に相手を蹴散らし、次々メコォ!…と始末してはその身に風を纏い出す!…徐々に本気になり始めているのかその様子にマサツグが心配の視線を向けていると、シロが派手に暴れているせいか人が集まり始める。
__ドガアアァァ!!…バキャアァ!!…
ガンガラガッシャアアァァン!!!!…
「ッ!?…おいおい!…何だ何だ!?…」
「喧嘩か?」
「誰か衛兵呼んで来い!!」
{ッ!…まっず!!}
シロがナンパ集団を一人一人始末して行く中…近くにあったゴミ等もまとめて薙ぎ払う様に吹き飛ばすと、大きな騒音を立ててしまい…その騒音に釣られて人が集まり出すと、現場に居るマサツグ達が怪しまれては遂に詰め所の方に通報をされてしまう!その様子にマサツグだけでなくナンパ集団の方も面倒事は不味い!と言った様子で表情を歪めると、慌ててその場を後にしようとし始めるのだが!…その逃げる間際に拳を砕かれたナンパ野郎がマサツグの居る方に振り返ると、ある気になる捨て台詞を吐き出す。
「チッ!!…クソったれが!!…覚えてやがれ!!…
お前はあのアスモマウデル様に楯突いたんだ!!…」
「ッ!…アスモマウデル?…」
「ッ!?…おい馬鹿!!…余計な事を言うな!!!…
消されたいのか!!!…」
「ッ!?…けど!!!…」
そのナンパ野郎は愚かにも自身の身分を明かすよう誰かの配下である事を暴露し始め、その突然の暴露にマサツグが引っ掛かりを覚えると、ナンパ野郎の方に視線を向ける。するとそのナンパ野郎は砕かれた手を大事そうに抱えては青褪めた様子でマサツグを睨み付け、そのナンパ野郎の仲間が余計な事を言うな!と慌てた様子で注意し逃げようとすると、まだナンパ野郎は食い下がろうとする。そんな訳の分からないやり取りをするナンパ集団にマサツグが戸惑いを覚えていると、シロはその野郎が気に食わないのか追撃の石礫を投げ始める!
「一昨日…来やがれです!!」
__ビュッ!!…ビシィッ!!…
「グアッ!!…」
…一体何処でそんな言葉を覚えたのか?…シロが近くに落ちていた石を拾うとその気に食わない野郎に向かい投擲をし始める!この時シロの投球フォームはまるで某球団の星の漫画に出て来る主人公張りの脚の揚げ方をして見せ!…大きく踏み込み投擲すると、見事にその気に食わない野郎の頭をヘッショする!そして喰らった方は悲鳴を上げると大きく怯んではそのまま倒れそうになり、シロは続けて石を拾うと余程そいつが嫌いなのか集中砲火を掛けようとする!…しかし!…
「ご主人様にはこのシロが指一本……」
__ガッシ!!…
「あう!!…」
「シロやり過ぎ!!…とにかく逃げるぞ!!!」
シロが第二球目を投げようとするのだがマサツグに抱えられると強制的に中断させられ、シロは突如抱えられた事に困惑し声を挙げていると、マサツグがシロにやり過ぎ!と注意をしては小脇に抱えたままその現場を後にする!…其処からのマサツグはただ我武者羅にシロ抱えては逃げ回り!…何とかやり過ごす事に成功すると、一旦シロを降ろしてはお説教タイムに入り始める!
「…ぜぇ!…ぜぇ!……はあぁ~……シロ?…
気持ちは嬉しいけどアレはやり過ぎ!!…
相手の戦意を削ぐだけで良いって言っただろ?…」
「ッ!……はいです…
でもあの人まだご主人様に!!…」
「ッ!…はい、ぎゅ~!……口答えは許しません!…
…心配してくれるのは有り難いけど…
もう少し信用してくれ?…
確かに頼りないかもしれんが?…」
シロを降ろすなり改めて手加減についてお説教を始めると、シロはショボンとした様子でマサツグの話を聞くのだが…シロにも言い分は有るとばかりに先程の事について表情そのまま反論をしようとすると、マサツグは咄嗟に思い付いたようシロを抱き締めてはその反論を許そうとはしない!…恐らくシロが言いたい事はこうであろう…あのナンパ野郎はまだマサツグに対して敵意を向けていた!…それが許せなかった!…と…しかし幾ら敵意を持って居ても限度がある!…オマケに相手は既に深手を負って居てあれ以上の戦闘は無意味と分かって居た!…度が過ぎると相手を殺す事になる!…それを分からせるようマサツグは自身の心音を聞かせ、後シロの興奮を抑える為…シロを抱えながら自分が頼りない事を挙げて言い聞かせると、シロにはそちらの方が効いたのか…素直に返事をするとマサツグを抱き締め返すのであった。
「…ッ!……はいです……あったかいです♪…」
__…ギュッ!……
シロは尻尾を振っては嬉しそうに安らぎの笑みを浮かべ、落ち着きを取り戻すと徐々に体の風を落ち着かせる…そうして漸く本当の意味で落ち着きを取り戻すと、改めてギルドに向かい歩き出そうとするのだが…あの道具屋で消費したアイテム分の補充を忘れた!…と言った具合に思い出すと、今度はギルド近くの道具屋に向かい…そこで消費したアイテム類と麻袋を購入すると、その購入した麻袋をシロに手渡す。この時シロは麻袋を買って貰えた事に喜んで尻尾をブンブンと振っては目をキラキラと輝かせ、大事そうに抱えてはマサツグと一緒にギルドに向かいそのまま中へ入ると、その様子がとても珍しいのかギルド内の冒険者達の視線を独り占めするのであった。




