-第二章十七節 現一番とキャンプ撤去と丘の滑走-
三日間の作業を経てマサツグはあの不純物だらけのインゴット全てをドレッグが頷いて使えると言えるレベルまでに戻し、ドレッグはあの三日間でマサツグの言う要望全てを叶え終えると、やり切った様子を見せて居た。そしてドレッグに武具を作って貰った事でマサツグとシロは改めて自身の身の周りを見回したり走り回って鎧の具合を確かめたりしていると、ドレッグはその様子を見て満足そうに笑みを浮かべつつ、自身の肩を金槌で叩きながら改めて作った防具の感想を聞き始める。
「はっはっはっはっは!!…いやぁ!!…
久々に良い仕事が出来たわい!…
こんなに清々しいのは何時振りじゃろうかのぅ?…
如何じゃ!…ワシの作った武具は!…
いい出来であろう?」
「……本当にスゲェな!…これ?…
確かに動き易さ重視で防具を作って貰ったけど…
これ本当に金属で出来ているのかって思う位に軽いし…
動きの邪魔にもならない!…
そして一番に驚いたのはこれだけの鎧をほぼたった
一日で終わらした事なんだよな!…
鍛冶自体そんな簡単に出来るもんじゃないから
もっと時間が掛かると思っていたのに!…
改めて凄いと思う!…」
__タッタッタッタッタッ!……バスッ!!…
「シロもそう思うのです!!」
ドレッグの質問に対しマサツグは体を捻りながら軽めの体操をするとその防具の凄さを口にし始め、それを聞いているドレッグは腕を組み出してはドヤ顔を決める。まるでもっと称えろ!…と言った感情を隠す事無くドヤ顔をし続けては、マサツグがただ淡々とその防具の性能を実感している様子で話し…洞窟内を駆け回っているシロもマサツグの方に走りながら戻って来ると、マサツグのお腹に飛び込むなりマサツグとドレッグの話を聞いていたのか同意する。ドレッグの作った防具は本当に重さを感じさせない!…動きの邪魔にならない仕上がりであり、その証拠にマサツグの目の前でシロが飛んだり跳ねたりするが、邪魔になっている様子は何処にも見当たらなかったのであった。そうしてマサツグとシロの意見を聞いた所でドレッグは笑みを浮かべながら頷くと、二人に拘った?…製作時に気を付けた点を語り始める。
「うんうん!……そうじゃろう!…そうじゃろう!!…
その装備に使った鋼はダマスカスとマラカイトの
ハイブリッド!…[ダマスカイト合金]で作ったんじゃ!…
コイツの良い点は軽くて頑丈!…
まさに今回お前さん達の防具を作る上で最適の鋼
なんじゃ!…お前さんの方はライトメイル風で仕上げ…
嬢ちゃんの方は胸当てにして更に動き易さを
追求してみた!…その分やはり軽めに作ってあるから
装甲面の方に不安を覚えるのじゃが?…
それをカバーする為にお前さんが倒して来た
ワイバーンの素材を贅沢に使用してある!!…
あのワイバーン如何やら中々育ちが良かった様で
鱗にしても皮にしても、普通のワイバーンより
質の良い素材で使い勝手が良くてのぅ!…
いい感じに防具に取り入れる事が出来たのじゃ!!
これにより重さを課す事無く防御面を向上し、更に
ワンランク上の防具に仕立て上げたのじゃ!!…
ッ!!…おぉ!イカンイカン!…
だからと言って無理は禁物じゃよ?…
何度も言うが幾ら性能が良くても扱う者が
鈍らでは意味が無い!!…重々覚えてくのじゃぞ?…」
「あぁ!…分かってる!…本当に有難う!…
最高の防具だよ!」
「ありがとうなのです!!」
あまり聞いた事の無い金属の名前が出て来て、その鋼で装備が作られた事をドレッグが語り出すと更に説明は続く!…マサツグはライトメイル風…簡単に言うと某一狩り行こうぜのゲームに出て来るレザーラ〇ト装備一式に似ており、そのレザー部分がワイバーンと…本家の方より若干豪勢な仕様に
なっていた。そしてシロは胸当てと腕輪に足環と…パッと見た限りでは紛れも無くよく見掛ける駆け出し冒険者の様な格好になっており、シロはマサツグと同じ冒険者になった気分ではしゃいでは尻尾をブンブン振ってマサツグにしがみ付き喜んでいた。そうしてそれらマサツグ達が着けている装備の細かな説明をドレッグが話すと最後に忠告の言葉を口にし、その言葉を素直に聞き入れたマサツグとシロが返事をすると、改めてお礼の言葉を口にするのだが…ドレッグはその返事を聞いて頷いた後、途端に申し訳なさそうな表情を見せるとある事でマサツグ達に謝り始める。
「うんうん!……
…でじゃ、実はお前さんに一つ謝らんと
いかん事が有るのじゃ…」
「え?……謝るって如何言う?…」
「いや実はのぅ?…
お前さんが苦労して取って来たオリハルコンは
その防具に一切使われてはおらんのじゃ…」
「ッ!…あぁ!…何だそう言う…」
突如謝罪を始めたドレッグに対しマサツグとシロは戸惑った反応を見せると、その理由を聞き始める。ドレッグはそのまま申し訳なさそうに指をモジモジとさせながら素直にその理由を話すと、マサツグは察していたのか納得してドレッグに大丈夫と返事をしようとするのだが…まさかのシロが驚いた反応を見せると、ドレッグに詰め寄るまではいかなくとも近付き出しては、その理由について更に尋ねる!
__バッ!!…
「え!?…どうしてなんですか!?」
「ッ!?…ちょっ!!…シロさん!?…」
シロが突如としてドレッグの前に立って予想外の反応を示した事にマサツグは驚き!…ドレッグもシロの様子に驚いた反応を見せると、シロはただジッとドレッグの事を凝視し続ける。別に怒っているとか…疑いを持っているとか…そう言うのではなく、ただ単純に不思議に感じた様子でドレッグを見詰め続けていると、ドレッグはシロの視線に戸惑いながらもその視線の訴えに答えるよう説明をし始める。
「ッ!?……それはじゃのぅ嬢ちゃん…
今ここにある設備じゃオリハルコンを叩くどころか…
溶かしてインゴットにする事すら出来んのじゃ……
前にも言ったと思うがこいつはあくまでも簡易の設備…
このレベルの鉱石を加工するには圧倒的に火力も道具も
足りんのじゃ……勿論設備があれば問題なく超一級品の
武具を作ってやれるんじゃが……スマンのぅ…」
「ッ!?…そんなぁ!…
折角ご主人様が頑張って取って来たのに…」
「いやぁ…まさかワシもそんな所にオリハルコンが
眠って居るとは知らなかったもんでのぅ…」
__……コクリッ…
ドレッグはオリハルコンを加工出来ない理由に設備が足りないからと語り始め、それを聞いたシロはマサツグ以上にショックを受けた様子を見せると、マサツグの苦労を考えてかガッカリした様子の言葉を口にする。そしてドレッグもそのシロの反応・言葉を聞いてか釣られて更に申し訳なさそうな表情を見せると、言い訳をする様にオリハルコンの存在を口にし始め…考えても居なかった様子で見つかった事に驚いたと話し出し、シロはシロでショボンとした様子で一人ショックを受けていると、ドレッグの言葉を渋々理解したのか小さく頷く…そうしてシロの疑問を収まった所でこの話はこれで終わりを迎える筈だったのだが…ドレッグとて職人!…オリハルコンを見つけて何もしないのは惜しい!と感じていたのか、最初から考えて居た様子で表情を戻すと途端にマサツグへある提案をし始める!
「……そこで物は相談なんじゃがな?…
これをワシに預けてはくれんか?…」
「ッ!…え?…」×2
「ワシとてオリハルコンは希少!!…
こんな貴重な鉱石を前にして[待て]が
出来る程出来ては居らんでな!!…
今でも加工したくてウズウズして居る!!…
…今一度!!…我が故郷「ドワーフファミリア」
に持って帰りそこにあるワシの工房で!!…
コイツを立派な一級武具に加工してやりたいと
考えて居る!!…
あそこなら間違い無く設備も揃っておるし
ここ以上に良い物を作れる自信が有る!!!…
…如何じゃ!?…
先行投資と言う事でこれをワシに預けてみんか!?…」
「えぇ!?…いや…別にそれは構わないけど……ッ!…
何なら今の俺が持ってても使い道無いし…
それが今回の装備の修復と制作の代金と言う事で…」
ドレッグがマサツグへ提案したのは…オリハルコンを一旦ドレッグに預け、それを設備の整った場所へ持って帰り加工すると言った…委託制作の話であった。いきなりそんな話を持ち出されたマサツグは戸惑い、シロも釣られて戸惑った反応を見せて居ると、この時ドレッグはかなりやる気に満ち溢れており!…マサツグがオリハルコン鉱脈を見つけて帰って来た時の様なテンションの上がりようを見せて居た!そしてマサツグもその迫力に押され更に戸惑った様子を見せては、ドレッグの申し出を困惑しながらも受け…その際閃いた様子でそのオリハルコン鉱石を代金代わりに出来ないかと話し掛け始めるのだが、ドレッグは更にマサツグに詰め寄るとこう返し始める!
「ッ!?…いやそう言う話じゃない!!
今は代金の話等しておらん!!!」
「えぇ~!?…」
ドレッグはマサツグに詰め寄ると真っ向からマサツグの話を否定し、代金として受け取る気は無い!と興奮した様子で話してはマサツグを困惑させる!…マサツグ自身それが通ればお金が浮いて助かると言った甘い考えで言ったのだが、ドレッグにとっては真剣な話しらしく!…更にマサツグへ先程の代金の話も交えてボルテージ上がりっぱなしの状態で話し続ける!
「それに代金など最初から求める気など
サラサラない!!…
アレはワシがお前さん達の事を
気に入ったから作ったんじゃ!!!
別に気にして居らん!!!…
それよりも今はオリハルコンじゃ!!!
例えその代金の話でオリハルコンを
貰ったとしてもワシには納得出来ん!!!…
ワシのプライドが許さんのじゃ!!!!…
…これはただ単なるワシの職人魂としての話で!!…」
ドレッグの職人魂がメルトダウンを起こしそうな位に発熱してはマサツグに怒涛の畳み掛けをして見せ、マサツグはマサツグで一切の反論を許されないまま押され続けていると、シロはドレッグの後ろに回ってはマサツグから引き離そうと服の裾を引っ張っていた。
{んしょ!!…んしょ!!…うぅ~~~ん!!!}
「例え作ったとしても誰も扱わんのじゃ
それはただの置物じゃ!!!
道具と言うのは使ってこそ輝く!!!…
…確かにワシが作りたいと言っているのは
ハッキリ言って良くない物じゃが!…
人殺しに使われるやも知れん!!!…
じゃが!!…それも使い手さえ間違わなければ
それは人を守る武器にもなる!!…
ワシはそんな人の世に!!…
後世に伝説として語り縋れる物を
作りたいんじゃ!!!!…
…そしてお前さんにはその素質が有る!!」
「うぇええ!?…そんな何を!?…」
「このオリハルコンは必ず形にして
お前さんに渡す!!!…
これはちゃんとワシの手で立派な
武具にしてお前さんに手渡す!!!…
だからドワーフファミリアに来た時に
ワシの工房を訪ねてくれ!!
流石のワシでもコイツは一筋縄では
行かんからな!?…
お前さんが来る頃には立派な武具に
仕立て上げて見せる!!!!」
今度は挟まれず回避したのか必死にドレッグを引っ張るが勢いは止まらず、ドレッグはそんな職人魂の武器をマサツグに受け取って欲しいと言い出すと、既に英雄に見えているのかマサツグを担ぐ様に声を掛ける。その際ドレッグの目には闘志に似た炎が!…何処かのスポ根漫画の様に燃えており、そんな事を言われてもはや混乱状態のマサツグはただただ戸惑いの声を挙げるだけで…ドレッグの中では話は更に進んだのか有無を言わさず受け取る様に話しを進め、マサツグも考える事を放棄したのかただその話を聞くと、ドレッグに対して無気力にツッコミを入れる。
「……何かもう勝手に話が進んで居るのだが?…
決定事項みたいになってる?…」
そうしてマサツグはドレッグの怒涛の迫力に押されっぱなしのまま!…何も出来ずに押し切られてはただ戸惑いの言葉しか出て来ず…これ以上何を言ってもこの熱は冷めないと感じては渋々了承し、ドレッグに返事をしようとするのだが…ある疑問が湧いて来るとその事が気になり出し、了承の言葉と一緒にドレッグに質問をしていた。
「…はあぁ~…分かったよ!…
ドワーフファミリア…だっけか?…
了解した!…って、そう言えばここは如何するんだ?…
戻るって事はここを離れるって事で…
ダンジョン手前の看板にも確か工房が有るって
書いてあったと思うが?…」
「んん?…あぁ…別に問題は有りはせん…
ただ出て行くだけで看板から文字が
消える様になっておる…
それに片付けも元は簡易的な物じゃからな?…
ほれ?…この様に…」
マサツグが持った疑問とはここの設備の片付けや看板に書いてあるドレッグの工房の有無についてであった。当然看板に工房が有ると書いて有れば信じて入って来る者が居るそうだし、何より書かれてある事でその誤表記は消せないのでは?と考え…更にこの大荷物が有る事を考えると、如何やって片付けるのかと悩んだ様子でドレッグに尋ねるのだが、ドレッグは慣れている様子でマサツグに返事をするとまさにその片付けをしようと実演し始める。
__ガチャガチャッ!!…ガッチャン!!…
「ッ!?…折り畳み式!?…」
「殆どここに在る物はワシが元の工房より
持って来た遠征用の道具ばかり…
当然軽量化や省スペースで納まる様に…
かつ頑丈に作られてある物ばかりじゃ…
…まぁ…ここまで広げるとさすがに
大荷物になるし、ちと時間を食うがのぅ?…
そこは慣れじゃよ…
とまあ、ちょっと待っとってくれ…
直ぐに片付けるからの?」
ドレッグがマサツグに返事をすると先程まで広げていたキャンプテントを直ぐに片付けて見せる。掛かった時間は約十分…まるで軍が使って居そうな大型のキャンプを速いスピードで畳み終えると、そのあっと言う間の片付けにマサツグは驚き!…何より折り畳み式で有った事に若干の驚きを覚えていると、ドレッグはさも当然と言った様子でマサツグに返事をする。その際ドレッグは持って来た遠征用の道具も勿論自分が作ったと言った様子で話しては、次々にその持って来た道具を瞬く間に片付けて行き…一緒にここを出る気で居るのか待つよう声を掛けると、その他の設備も骨組みからバラバラにしては縄で縛って一括りにし…屋根に使っていた帆も折り畳んでコンパクトに…椅子や机もチャッチャと畳んでは収納と…その様子はまるで本当にキャンプから帰ろうとしている旅行客の様にも見え、それら道具の片付け方を一々説明するドレッグの様子に、深夜番組の通販を見ている気分のそれになる。
「この机もこうして脚を外して内側にある
金具に固定するじゃろ?…
更に強度を高める為のこの支柱部分は
実はこれも内側に畳める様になっておって…
そのまま机の真ん中から二つに折るとほれ?…
最後に金具で固定して取っ手を持てば
ただの板になる…」
「……あぁ~…なるほど?…」
「この椅子とてそうじゃ…
このまま内側に畳むようシュっと押し込めば
ただの棒の様になり…
簡易ベッドもさっきの机の様に…」
「……何かこの調子で話を聞いていると
某有名社長が出て来そうだな?…
仕舞に掃除機とか出て来そう…」
ドレッグの怒涛の説明に何故かマサツグの頭の中では某声の高い通販番組の社長の顔がチラつき、その流れで電化製品とか出て来そうだな…と考えていると、残りは精錬窯だけなる。だがさすがの精錬窯はドレッグが持って来た便利道具では無いのか…仕舞えない様子で一つ一つ丁寧にレンガを崩して行くと、洞窟の片隅に山のよう積んで解体し終える。そうして片付けた道具類を自分の身よりかなり大きいリュックに仕舞い込んで行くと、思わず何と言う事でしょう!…と言いたくなる位に綺麗に道具全部を仕舞い…何の抵抗も無く持ち上げそのリュックを背負うと手をパンパンと叩き、その様子を見せられているマサツグとシロは驚いた表情をドレッグに向けていた。
「…どっこいしょ!!…
ふぅ~…これで良し!…待たせたの!…
…ん?……如何したんじゃ?…
何をそんなに驚いておるんじゃ?…」
「……いや、ドワーフって本当に力持ちだなって?…」
「おじちゃん凄いのです!!……」
「……ッ?…あ、ありがとう……
まぁこれでも一応ワシは流浪人じゃからの?…
これ位は……まぁとにかく…ここを出るとしよう…」
圧倒的パワーを見せるドレッグにマサツグは唖然とした様子で驚き!…シロもドレッグへ子供ながらに驚いた表情を見せると、まるでヒーローを見るかの様な視線でドレッグを褒める!しかしドワーフにはこれ位朝飯前なのか、褒められた所で不思議そうにキョトンとしては戸惑いながらもお礼を言い…軽く自身が流浪人であるからこれ位と言った様子で話すと、マサツグに出口へ向かうよう声を掛け始める。その言葉にマサツグもハッ!とした様子で意識を取り戻すと慌てて返事をし、言われるままに出口へ向かい出そうとすると、ある疑問を思い出す…
「……ッ!…え?…あっ…あぁ…分かった……
…ッ!…そう言えば…」
「ん?…何じゃ?…忘れ物か?…」
「あぁいやいや!……ちょっと気になったと言うか……
ジッチャンが自己紹介した時の台詞が気になってさ?…
ほら?…[現一番]って奴…
何であんな言い方をするんだろうと思ってさ?…
まるで他にその一番が居る様に思えて…」
「ッ!…あぁ…その事か…」
マサツグが思い出した疑問…それは何の事は無いドレッグが自己紹介時に言った「現一番」という言い回しについてであった。それを突如思い出したマサツグが足を止めるとドレッグはマサツグの様子に気付くなり何か有ったのかを尋ね出し、シロもマサツグの顔を覗き込み戸惑いの表情を見せて居ると、マサツグは戸惑った反応を見せてはその今思い出した疑問について歩きながら語り始める。その際マサツグが歩き出したと同時に今度はドレッグがその言葉に引っ掛かりを覚えたのか足を止め…シロは後ろからの足音が聞こえない事に気が付き振り返ると、若干心配気味にドレッグへ声を掛ける。
「……ッ!…おじちゃん?…」
「ん?……ッ!…ス、スマン!!…
ただの独り言だ!!…気にしないでくれ!…」
「ッ!…あいや何の…
ただ少し昔の事を思い出してな?……そうじゃのう?…
確かに奇妙な言い回しじゃよな?…
「現一番」と言うのは…」
シロのドレッグを呼ぶ声に反応してマサツグも振り返ると、そこには若干俯き暗い表情を見せるドレッグの姿が…明らかに気分を害した様に見えるドレッグの姿にマサツグはしまった!…と言った表情を見せ、慌てて謝り出すのだがドレッグはハッ!と顔を上げるとマサツグに大丈夫と答え始める。しかしやはり思う所は有るのか改めて自分が言った「現一番」と言う言葉に引っ掛かりを覚え、マサツグに説明するよう若干暗い表情をしつつ…語り始めるのはその「現一番」と名乗った理由についてであった。
「……ワシが現一番と名乗ったのはなぁ…
ワシ自身がドワーフ界一番と思っていないからじゃ…」
「え?…」
「ワシの中ではドワーフ界一番の腕の立つ職人は
未来永劫…ワシの[師匠]ただ一人だけなんじゃ…
今でもワシはあの人を超えたとは思えん!…
しかしいつかは超えたいと思って居る!…
…その日はいつ来るか…或いは来ないか…
何方にせよ…ワシはまだまだと考えておるからこそ!…
[現一番]と名乗って居るんじゃよ!…」
ドレッグはシミジミと考えた様子でその理由をマサツグに話すと、その一言にマサツグは戸惑い…如何反応したものかと更に困惑した様子を見せて居ると、ドレッグは自分の中で誰が一番なのかを口にし始める。しかしその人は恐らくもういないのか…洞窟の天井を見詰めるよう遠い目をしては悲しい様子を滲ませており、まだその人の事を超えていないと自身でも感じているのか未熟と言うと、自身の手を見詰める。しかし本人はまだ超える事を諦めていないのか見詰めていた手をギュッと握ると、徐々に吹っ切れた様子で表情に活力を取り戻し、改めて自身がそう名乗っている理由について話すと洞窟の出口に向かい歩き出す。
__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
「ッ!……」
「さぁ、お前さん達!!…ここを出るとするか!…
コイツを立派な武具にする為にもな!!
ガッハッハッハッハッハッハ!!!!」
「………。」
そんなドレッグの様子を見たマサツグが若干驚いた様子を見せて居ると、ドレッグは徐にマサツグを追い越すと先へと進み出し!…オリハルコンを加工するのが楽しみと言った様子で出口に向かい歩き続けるのだが、マサツグはマサツグでそのドレッグの後ろ姿に目を向けると、ドレッグの背中から何処と無く寂しさが滲み出ている様に感じるのであった。そうしてドレッグが先頭に立ち…マサツグとシロはその後ろを付いて行くよう洞窟の出口を目指して歩くのだが…さすがはドワーフと言った所なのか、あの重い荷物を背負っているにも関わらず足を滑らせる事無く出口に向かい、その足腰にマサツグが驚いた表情を見せて居ると、マサツグ達は三日振り(ゲーム内時間)に…見覚えの有る扉の前へと辿り着いていた。
__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
「…ふぅ!……さて…漸く出口に付いたわい…」
「はぁ!…はぁ!…行きの道もキツかったけど!…
か、帰りもキツイとは!!…」
「ご主人様?…大丈夫ですか?…」
あの洞窟の扉の前までマサツグ達が戻って来ると、ドレッグは少し疲れたと言った様子で息を吐き…マサツグは完全に疲れたと言った様子で膝に手を着いては息を切らし…シロは全く大丈夫と言った様子で逆にマサツグの心配をすると、顔を覗き込んでは声を掛けていた。決してマサツグがシロを肩車して居たとかでは無く、シロはちゃんと自身の足で歩いて居たのだが…やはりあの滑る岩場がTPを消費させたのか、ここに辿り着くまでに何度もマサツグは転けそうになり、シロはその間余裕とばかりに飛んで跳ねては先行していたのであった。そうしてマサツグが息を切らしながらも息を整えていると、ドレッグはまず目の前の扉を当てるとそのまま前に進み…今度は更にあの奇妙な一軒家の方の扉を開けると、先に外の空気を吸い始める。
__ガチャッ!…キイィ…ガチャッ!…キイィ…
「……すうぅ~~~…はあぁ~~~~…
あぁ!…久々の外じゃわい!…」
「……はぁ!…はぁ!……ふぅ……
ありがとシロ…行こうか……ッ!…」
__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
一人先に出て行ったドレッグは深呼吸をすると久々の日の光が気持ち良いとばかりに伸びをし、それを追い駆けるようマサツグも何とか息を整えると外に向かい歩き出し…シロを連れて表に出る際ふと看板の方を振り返ると、そこにはドレッグの言う通りその扉の看板からはドレッグの工房に関する表記が消されていた。そんな事を目にして少し驚きつつもシロと共に洞窟を後にし、三日振り(ゲーム内時間)の日の光を浴びるとまたもやあの茹だる様な気候に襲われ始める!
__カッ!!!……だるぅ~ん…
「ッ!?…またこの暑さか!!…
洞窟に居た時はちょっと肌寒い程度だったけど…
表に出たら出たでこれかよ!…」
「あう~…」
「ッ!!…イカン、シロが溶けて来た!!…
早いとこ町に!!……ッ!?…」
マサツグとシロが揃って太陽の下に出ると空は恨めしい程の快晴!…いきなりの暑さにマサツグは洞窟内との気温差を比べては手で日差しを遮り、空を見上げて雲一つ無い快晴に戸惑って居ると、シロはシロでやはり暑さに弱いのかまたマサツグの隣で溶け始める。そんな暑さにやられるシロが呻き声を上げるとマサツグは途端に慌て出し、急いで町に戻ろうと考えるのだがある事に気が付く!それは!…
「しまった!!…如何やってこの丘を下る!?…
またあの道を戻ると大音量を耳にせにゃならん
のだろ!?…かと言って斜面を下るにしても!!…」
__キラァン!!…
「……今日も今日とて斜面は赤い!…ってか!?…
んな事言ってる場合じゃねぇ!!…」
マサツグが気が付いた事とはこのホルンズヒルの帰り道についてであり、その帰る道にも結構ヤバい危険が有ると言う事であった!普通に来た道を引き返そうとすると、あの衝撃波の様な大音量と突風に吹き飛ばされ…斜面を転がっては血塗れに!…今日も被害者が大勢出たのか赤い斜面には鋭い刃の様な草が今だ生えており、被害者の血を浴びて日の光で赤く輝いている!…それを見て戻るのも下る事も出来ないと言った様子でマサツグが一人慌てて居ると、ドレッグが徐にマサツグに近付いてはある物を差し出し始める。
「……お前さん…これを使うんじゃ。」
「ッ!…え?…これって?…」
「なぁに!…
ただのちぃとばかし頑丈に作られた麻袋じゃよ?…
ほれ?…こうして下に敷いて…」
「え?…大丈夫なの!?…」
ドレッグが手渡して来た物は見るからに何の変哲も無いただの麻袋で、突如それを手渡された事にマサツグが戸惑って居ると、ドレッグは麻袋の説明をしてはマサツグに実演し始める。そんなドレッグにマサツグは心配の眼差しを向けるのだが、斜面ギリギリに麻袋を敷いてはその上にドレッグが座り…ジリジリと尻を擦りながら進み出すと一気にあの赤い斜面を下り始める!
__ジリジリ……ジャッ!!!…
「ッ!?…ジッチャン!!……ッ!?…」
__シャアアアァァァァ!!!!…
バイン!!…バイン!!…
「いぃやっほおぉぉぉぉぉ!!!!」
ドレッグがマサツグの目の前から姿を消すよう斜面を滑り始めると、マサツグは慌ててドレッグの姿を確かめる為に斜面の方へと駆けて行くのだが、眼下に映った光景はまさかのドレッグがあの赤い斜面を軽快に滑って行く姿で、何度も自身の背負っているリュックを地面にぶつけて弾ませてはバランスを取る!…何なら童心に帰った様子で楽しそうな様子を見せるドレッグの無邪気な姿であった。そうして何事も無く無事に一番下まで滑り終えると、ドレッグは何事も無かったか様にその場で立ち上り!…マサツグに対して手を振ると降りて来いと言っている様なジェスチャーをし始める。
__……パタパタッ!…パタパタッ!!…
「……マジかよ!?…
…でも他に悩んで居られる余裕は無いし!…
ドレッグが身を持って教えてくれた!!…
多分…イケる!!…」
__ガシッ!…タッタッタッ!…スッ…
「ッ!…ご主人様?…」
下で手を振っているドレッグの姿を見つつ、マサツグが戸惑って居るとその間にもシロは溶けて行く!…当然悩んでいる暇は無いとマサツグが速攻で覚悟を決めると、ドレッグの事を信じた様子で同じ様に…シロを抱えて斜面の端に移動し麻袋を敷いて抱えたまま上に座ると、シロはマサツグに困惑の表情を向ける。見上げるよう顔を覗き込んで来るシロに対しマサツグは笑顔でシロに答えると、ドレッグ同様斜面を滑り始めるのであった。
「大丈夫だ!!…問題無い!!…行くぞ!!」
__ガッ!…シャアアアアァァ!!…
「いいぃやっほおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「ッ!?…きゃあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
マサツグがシロに笑顔で答えると途端に斜面を滑り出し、そのまま勢い良く赤い斜面を滑走して行くと、マサツグの童心に帰った様子で叫び出す!そしてシロもこの状況が如何言うモノなのかは分かっていないものの楽しいのか、大喜びで両手を広げてはマサツグと一緒に歓喜の声を挙げ!…勢いそのまま無事丘の下まで下り終えると、丘の下ではドレッグがマサツグ達の到着を待っていた。
__ズザアアァァァ!!!…
「…ほいご苦労さん!…あっと言う間じゃったろ?…」
丘の下に到着するとそこにはまるで孫の喜ぶ姿を見る様な…優しい眼差しをしたドレッグが立っており、マサツグが到着するなり頷いて見せると滑走した感想を聞き始める。そうしてマサツグに手を伸ばすと体を起こす手伝いをしようとするのだが、マサツグの懐からシロが飛び出すと先程の暑さも忘れた様子で…尻尾をブンブンと振っては完全復活した様にマサツグの手を握ると、キラキラとした目でマサツグに訴え始める!
__バッ!!!…ブンブンブンブン!!!…
「ご主人様!!!…もっかい!!…
もっかいやりましょう!!!」
「ッ!?…いやいやシロ?…
確かに楽しかったのは分かるけど今度な?…
もう一回登る時またあの大音量を聞く事になるぞ?…
後これは借り物だからな?」
__ブンブン…しゅ~ん…
シロは上機嫌でマサツグにお願いするもマサツグは慌てながらも駄目と言い…色々有った事を思い出させるようシロを言い聞かせ始めると、シロは理解したのか途端に尻尾と表情をションボリさせる。マサツグ自身シロのお願いを叶えてやりたいのは山々なんだが、デメリットの方が多く!…また違う所なら出来るかもしれないとマサツグがシロの表情を見て考えていると、シロは諦めたのか尻尾をダラァ~ンと落ち込ませてマサツグに返事をする。
「うぅ…諦めます…」
「……ったく、そんなに落ち込まんでも!…
今度はこんな物騒な所じゃなくて、
もっと平穏な場所でな?…
…後、道具屋で麻袋を買わないとな!…」
「ッ!?…本当ですか!!…絶対ですよご主人様!!」
シロの落ち込む姿を見てマサツグが苦笑いをすると、先程考えていた約束を口にする…と言っても他愛のない…別の場所で先程の様に満足が行くまで斜面を滑走すると言った約束と、道具屋で麻袋を買うと言った…何とも奇妙な約束で、マサツグ自身こんな約束を今までにした事が無いと思いつつシロにその事を話すと、シロは目を輝かせては再度尻尾をブンブンと振り出す!絶対に約束!!…とマサツグの手を握っては確約し、シロの様子にマサツグは戸惑うのだがとにかく体を起こし、ドレッグに麻袋を返すとドレッグは笑いながらマサツグに話し掛ける。
「……どっこいしょ!…とにかくこれ…
ありがと!…助かったよ!…」
「はっはっはっはっは!!!…
そんなに気に入ったのなら麻袋位やるのに?…
別にワシは構わんぞ?…」
「いや…今持っていると無駄に期待させそうだし…
ちゃんと安全な所でやらないと不測の事態に
落ちたら面倒だし…」
「……ッ!…なるほどのぅ?…
…ちゃんと親をして居ると言う訳か…」
麻袋を返す際マサツグがお礼を言うと、ドレッグはマサツグに麻袋を譲ろうとするのだが…マサツグはそれを苦笑いしながら拒否をすると、シロの視線が現在進行形で刺さっている事を口にする。その際シロも先程からドレッグの言葉を聞いてウズウズした様子でその麻袋を見詰め、とても気に入った様子を見せるシロにドレッグも戸惑った表情を見せると、マサツグの考えに納得したのか麻袋を返して貰う。するとシロは途端に残念そうな表情を見せるのだが、ドレッグは見て見ぬ振りをし…そうして返して貰った事を確認しつつドレッグは最後に別れの言葉を口にする。
「では確かに…
…じゃあ、ここで別れる事になるなぁ……
今度会う時はドワーフファミリアで!!…
達者で過ごすのだぞ!」
「あぁ!…必ず向かわせて貰う事にする!!…
そっちもオタッシャデー!!」
「ばいばぁ~い!!」
丘を下り終えて互いの無事を祈りつつ別れを告げると改めて約束を確認し、ドレッグはマサツグ達に背を向けると町とは逆の方に向かい歩き出す。この時ドワーフファミリアが何処に在るのか分からないマサツグではあるのだが、徒歩で行けるのかと心配しつつ…シロはシロでドレッグに向かい手を振って別れを告げると、マサツグとシロはドレッグの姿が見えなくなるまで見送り…ドレッグを見送り終えた所で二人は一度町に向かい歩き出し始めるのであった。




