-第二章十五節 トカゲの臭いと目的の鉱石と職人ドレッグ-
「……ご主人様……ごめんなさいです……
ご主人様の匂いがして来たのでつい…
…大丈夫ですか?……」
「だ…大丈夫…
何とかそれなりに対応?…出来たっけか?…」
__なでなで…
シロに押し倒され負傷しながらも何とか無事?…にモジャ男の工房にまで戻って来れたマサツグ、その際色々シロとモジャ男に疑問の視線を向けられるのだが、マサツグは笑って誤魔化し…モジャ男はそれで何と無く察したのかそれ以上の事は尋ねないのだが、シロはシロでやっぱり好奇心旺盛なのか誤魔化し切れず…マサツグに何故その髪型になったのかを困惑しながら尋ね始める。その際マサツグの後頭部には漫画の様にバッテンマークの絆創膏が貼って有り、頭は今だワイバーンのブレスにやられた時のままのアフロ状態であった。
「……それと…ご主人様?…
如何してそんな髪の毛がもっさりしているのですか?…
やっぱりあの時シロも一緒に……」
「ッ!…あぁ!…大丈夫大丈夫!…何でも無いから!…
……後これは気にしないでくれるか?
俺自身如何したら良いのか分かって……」
「もさもさ……」
「皆まで言うな!!……」
__ッ!?……コクリ…
シロは余程気になっている様子でマサツグのアフロに手を伸ばすと触りながらその原因について尋ね出し、その質問にマサツグとしては流して欲しいのかただ笑顔でシロに大丈夫と答えると、自身でも悩んでいる様子で何とか話を逸らそうとする。しかしシロにとっては最重要事項なのかマサツグの思惑通りに行かず、ただアフロに興味を持った様子で触りながら心配するようモサモサと口にすると、マサツグは握り拳を握りながら涙を浮かべて聞くな!と再度答える。そのマサツグの男泣き表情を見てシロも漸く察したのか、戸惑いながらも同意するよう頷くが触る事自体は止めず…少しして今度はスッと何かに反応するようシロが鼻をヒクヒクとさせると、マサツグにある言葉を掛け始める。
__…ッ!…スンスン…ッ~~~…
「……ご主人様?…臭いのです!…」
「ッ!?…え!?…俺そんな臭う!?…」
シロは眉間にしわを寄せ出すと突如として不機嫌そうにマサツグに臭う!と言い出し、それを聞いたマサツグも途端にショックを受けると慌てて自分の体臭を確かめる!…しかし自分で嗅いだところで自身の体臭等分かる筈も無く、マサツグが困惑した表情を見せて居るとシロは慌ててマサツグに訂正の言葉を掛けると同時に、マサツグのアイテムポーチを指差してはある事を尋ね出す。
「ッ!…あぁ!…違います!そうじゃないんです!!…
…何ですかこれ?…生臭い?…
シロの嫌いな臭いがするのです!…
あのおっきいトカゲを倒した時の様な匂いが!…
…ご主人様のカバンから!…」
「おっきいトカゲ……ッ!…あぁ!…
そう言う事か!……そうだな…
確かに最深部に行ってその竜とやらを
倒して来たからな!!…お陰で…
…ほれ!…こんなに大量に!!…」
__ドザアァ!…ゴロゴロゴロゴロ…
「ぴきゃぁ!!…」
シロの訂正の言葉を受けて漸く理解したのかマサツグが安堵すると、そのシロが臭いと言っていた元凶を…最下層まで行って来た証拠を見せるよう戦果をアイテムポーチから取り出し始める。そしてマサツグのアイテムポーチから出て来たのはまさにシロが言っていたおっきいトカゲ…ワイバーンの素材で、その素材が出て来た途端にシロは自身の鼻を摘まんではあからさまに嫌そうな表情を見せ、モジャ男は逆にその素材が出て来た途端!…目を丸くさせては驚きの表情を見せる!
「ッ!?…ば、馬鹿な!?…
本当に倒して!?……ッ!?…」
__ポロッ……ゴインッ!…
「ッ~~~~!!!…くちゃいのです!!…
シロ!…この臭い好きじゃ無いのです!!…
とっても生臭いのです!!!…」
「そ…そんなにか?…そんなに臭うか?…
俺には全く…」
モジャ男は思わず手に持っていたハンマーを落としてしまう位に戸惑った様子を見せ、シロはマサツグに仕舞って欲しいとばかりに訴え出すと、手でパタパタと扇ぎ出し…そのシロの言葉と行動にマサツグが若干のショックと戸惑いを覚えると、思わずワイバーンの素材を手に取っては臭いを嗅ぎ出す。しかし幾ら臭いを嗅いだところでマサツグには全く分からず…ただ首を傾げていると、マサツグが困惑して居るのを余所にモジャ男もワイバーンの素材…それも逆鱗を手に取るとただ困惑した様子でマサツグに声を掛け出す。
「お…お前さん!!…
…こいつはあの竜の逆鱗じゃないか!?…
ほ…本当に倒して来たのか!?…
あの手の付けられん暴れん坊を!!」
「どうよ!!…これで文句はないだるぅおう?…
その他にも色々と取って来たんだぞぉ~?…
皮に牙に普通の鱗……」
__ゴロゴロ……ッ!?…バッ!!…
{……鉱石を掘りに行ったのでは?…
…いやしかし!…}
モジャ男自身まさか倒して来るとは思っても居なかった様子で困惑の表情を見せて居ると、マサツグはモジャ男の表情を見るなりドヤ顔を決める!そしてその他のワイバーンの素材を取り出し始めるとシロは逃げる様に距離を取り出し、モジャ男も本来の目的であった鉱石は?と心配をし始めるのだが…それよりも今はワイバーンとばかりにその他の素材も手に取っては状態を確かめ出すと、最初会った時の様な…何事にも興味を待たない枯れた様な表情はもう何処にも見られず、今はまるで突如玩具を目の前にした子供の様な無邪気な表情をマサツグ達に見せて居た。
「うん…うん!……間違いない!…どれも本物じゃ!…」
「ッ!…本物って!…偽物でも有る様な口振り…」
「実際にワシに防具を作らせようとした奴らの中に…
自分の実力を偽る為にわざわざ偽物の黒龍の皮と鱗を
持って来た奴が居ったわい…
本物の黒龍の鱗は軽く頑丈!…更に滑らかな肌触り!…
しかしそいつ等が持って来た物はただ黒曜石を磨いた
紛い物じゃった…
…当然ワシはそれを看破すると偽物を地面に叩き付けて
砕いてやったんじゃ。」
「えぇッ!?…てか本物知ってるのかよ!?…」
何度も何度もワイバーンの鱗や牙に骨…皮と言った素材を手に取っては真剣な眼差しで吟味し、使えそうな物を一人ピックアップして行くと頷きながら本物と喜び、その本物と言う言葉にマサツグが反応すると偽物な訳が無いと反論する。その際…偽物を用意するにしてもどんな偽物なんだ?と尋ねようとするのだが…その問い掛けを予想して居たかの様にモジャ男が有る例え話をし始めると、その話を聞いたマサツグは二重の意味で戸惑う。まず本当に偽物騒ぎが有った言う事と、もう一つはその例え話に出て来た本物の黒龍を知っていると言う事実…モジャ男の正体にマサツグが困惑の表情を見せて居るとアフロは時間経過で治るのか、マサツグの気付かない内に元の髪型に直ってシロが軽いショックを受けていた。
__PON!…
「あっ!…戻っちゃいました…」
「え?……ッ!?…あっ…
ホントだ戻ってる!!…よかったぁ~!…」
シロがマサツグの頭を見詰めてアフロから普通の髪型に戻った事を呟き、マサツグがその呟きを聞いてシロの方に一度視線を向けると、シロの視線を確認してその呟きの意味を確かめる。その際シロはショボ~ンとした表情でマサツグを見詰めて居るのだが、とにかくマサツグはその視線の先が自分の頭である事を理解し…恐る恐る自身の髪を確認するよう手を伸ばすと、アフロが治っている事に歓喜する!…しかし…
__しょぼ~ん…
「え?…何でショックを受ける?…
アフロの方が良かった?…」
シロはアフロのマサツグを気に入っていたのか…マサツグの頭に向けて手を伸ばしては以前残念そうな表情を見せ、マサツグはマサツグでそんなシロの様子を戸惑いの表情を向けると、困惑の言葉を口にする。そして二人の間で何とも言えない微妙な空気が流れ出そうとしている中、モジャ男は徐に何かを考えたのかマサツグの方に振り向くと、ジッとマサツグの事を見詰めた後疑問の言葉を投げ掛ける。
「……ッ!?……うぅ~む…
お前さんは一体何者なんじゃ?…
ここに来た時は明らかにまだまだ
練度が足りんかったと言うのに!…
帰ってくればワイバーンを討伐する程の
練度になっておる!…
一体何を如何すれば急にそんな成長を…」
「え?…いや…特に何もしてない…と、思うけど…
うぅ~ん…強いて言えばゴブリンと殴り合ったり…
相手の行動を物陰から見ていたお陰かな?…」
「ッ!?…ゴ!…ゴブリンと殴り合う!?…
お前さん!…本当に何を!?…」
「えぇ!?…」
如何やらモジャ男はマサツグ達と初めて出会った時と同じ様に自身の目を使いマサツグの練度を図ったらしく、最初の時より格段に成長している事に驚きを感じたのかその事を尋ねるようマサツグに話し掛けると、マサツグはその問い掛けに如何答えたものかと困惑する。一応本人からすればいつも通りの事で特にこれと言った物は無く、戸惑いつつも有った出来事を素直にモジャ男へ話し出すと、その話を聞いたモジャ男は戸惑いを露にする。そんなモジャ男の反応にマサツグも驚いた様子を見せて居ると、何故かシロが反応し…モジャ男の前に走って来るなり仁王立ちで胸を張り出すとドヤ顔をして見せる。
__ッ!…トテテテ…ザッ!…
「えっへんなのです!…」
「……何でそこでシロが威張る?…
…可愛いから良いけど…」
「おぉ!…
…お前さんは本当にご主人様が好きなんじゃな…
よしよし……して鉱石は?…
それが無い事には幾ら何でも武具は作れんぞ?…」
突如二人の間に割って入るようシロが威張り出すと、マサツグは思わずシロにツッコミを入れるのだが…モジャ男に対し手を腰に当て尻尾を振り、一生懸命に胸を張るシロの姿を見ると、そんなツッコミも如何でも良くなる。そしてそんなシロの様子にマサツグは微笑ましいと言った様子で笑みを見せて居ると、モジャ男はシロの様子に戸惑いつつもマサツグに本題の鉱石の話を切り出し!…マサツグもその話を振られて漸く思い出した表情を見せると、自分のアイテムポーチから掘ってきた功績を取り出し始める。
「ッ!?…あぁ、そうだったそうだった!!…
ちょっと待っててくれ?…えぇ~っと…
鉄鉱石が60個…マラカイト鉱石50個…
ダマスカス鉱石35個…オリハルコン鉱石20個…」
__ゴロゴロゴロゴロ…
「ッ!?……」
モジャ男に言われてマサツグがアイテムポーチから今まで掘って来た鉱石を取り出すと、モジャ男の目の前に置き始める。鉄鉱石60個・マラカイト鉱石50個・ダマスカス鉱石35個・その他宝石多数…と、ただ素材の名前と個数を口にし続けていると、某中華料理チェーン店のCMを思い出しそうになるのだが…所狭しと置かれる鉱石の量にモジャ男が驚いた表情を見せると、次の瞬間目を見開いては更に驚いた表情を見せる!それは最後にオリハルコン鉱石20個をモジャ男の目の前に置いて見せた時に見れた表情であった。
「ま!…まさか!?…これは!?…」
__コッ……ゴトッ…キンキン!……
「ほら!…これで良いんだろ?…
アンタが言っていた最下層で取って来たこの!…
<オリハルコン>!!…お目当ての物はこれだろ?…
いやぁ…正直ワイバーンを倒すより骨が折れた…
…本当に掘るのに苦労し…」
「……いや…これでは無い!…」
モジャ男は恐る恐るその目の前に置かれたオリハルコンを手に取っては地面に落とした金槌を回収し、マジマジ見詰めた後回収した金槌で軽く小突き出すと、その手応えを確かめる。まるで本物であるかどうかを確かめる様に!…そして自身の中で本物と言う判断が下されたのかオリハルコンを見詰めたままマサツグの強運に呆れ出すと、マサツグはモジャ男の様子など御構い無しに苦労話を続け…マサツグが最後に苦労したと言って話を締め括ろうとすると、モジャ男はただ目的の鉱石はこれじゃ無いとばかりにマサツグに話し、それを聞いたマサツグが途端にピタッと止まって困惑の表情をモジャ男に向け出すと、モジャ男はただマサツグにこう尋ね出す。
「……お前さん……コイツを何処で?…
如何やって掘ったんだ?…
ワシが見た限りじゃそれらしき鉱脈は
何処にも無かった筈じゃ!…」
「わわわ!…むぎゅ!…」
モジャ男はマサツグにオリハルコンを何処で手に入れたか?と聞き出すと徐々に興奮し始め、目の前にシロが居ると言うのにマサツグに詰め寄り出すと、金槌を突き付け始める!…その際モジャ男の様子にシロが敵対したと言って臨戦態勢に入りそうなモノなのだが、モジャ男とマサツグの間に挟まれては身動きが取れない様になってしまい…モジャ男が迫って来ている事にマサツグも戸惑い、落ち着くよう声を掛けるがモジャ男は一向に聞く耳を持たない!
「ちょ!!…ちょっとタンマ!!…」
「それにコイツは生半可な物では傷一つ付ける!!…
…ッ!…その大剣!…」
「うぅ~ん!…苦しいのですぅ~!!…」
この時モジャ男は怒っているとか…オリハルコンに目が眩んでいるとかそう言う邪な状態で興奮して居るのではなく、ただ単純に…遊び場を見つけた友達にその場所を教えて貰おうと言った好奇心の様子を見せて居た。そしてオリハルコンを採掘した方法についてマサツグに尋ねる際…マサツグが背負っている大剣に目を向けると何故か途端に落ち着いた様子を見せ、モジャ男が落ち着いた事で漸くシロが呻き声を上げると、モジャ男は慌ててマサツグから離れる。
「ッ!?…い、イカンイカン!…
悪い癖が出てしまった!…」
__バッ!!…
「ぷはあぁ!!…うぅ~…」
「だ、大丈夫か嬢ちゃん?…本当にすまなかった!…」
モジャ男がマサツグから離れた事でシロが解放されるとシロは若干フラ付きながらも息を大きく吐き出し、頭を左右に振って意識をハッキリさせているのかプルプルと軽くやって見せると、その様子にシロを押し潰して怪我をさせていないかとモジャ男が慌てて心配をする。シロに謝りながら顔を覗き込み怪我が無いかを確認し、自身の髭や体に付いていた煤がシロの体に付いたのを見ると軽くはたいて煤を落とす。そうして自身の目でも怪我をしていない事を確認していると、シロもモジャ男の問い掛けに対して大丈夫と答える。
「うぅ~ん…大丈夫なのです!…」
「ふぅ~…いやいや!…スマンスマン!…」
「いや…まぁ…とにかく何でそんなに?…
だってこれを取って来いって…」
シロから返事を聞いてモジャ男が一安心した様子で息を吐くと改めてマサツグにも謝り出し、マサツグはマサツグで先程の様子を尋ねる様にオリハルコン鉱石を手にすると、モジャ男に見せながらある質問をする。それは先程のモジャ男の興奮具合だとまるで最深部にオリハルコン鉱石が有る事を知らなかったと言っている様に感じたからであり、だとすると何故武具を作る条件にあんな条件を出して来たのか?と更に疑問を感じたからである。確かに最深部に行くと言ったのはマサツグ自身であり、モジャ男自身はただ行くなと言っていただけなのだが…だとしても知っていれば最初の説明時点で少なからず話しているんじゃ?と短い時間ながらモジャ男の性格上で考えると、モジャ男が言っていた目的の鉱石とは何かが気になり出し…それを確認するようマサツグはモジャ男に質問をしたのだが、モジャ男はマサツグの疑問に答えるよう首を左右に振ると、別の鉱石を手に取る。
「い~や?…
ワシが取って来いと言ったのはこっちじゃよ…」
「え?…それって?……ダマスカス鉱石?…」
__カンカンッ!………コクリッ…
モジャ男が手に取ったのはオリハルコン鉱石の下に隠れるよう置かれたダマスカス鉱石であった。当然まさかの答えにマサツグが若干驚いた表情を見せて居ると、モジャ男はその手に取ったダマスカス鉱石を金槌でカンカンと軽く叩いて見せ、その質を確かめるよう手応えと耳だけで判断すると満足行く質だったのか頷き、先程興奮した理由を説明するよう…マサツグに返事をしては色々と話し出すのであった。
「そうじゃ?…
なのにワシが取って来いと言った物より更に格上の!…
それも選りによってオリハルコンを持って来た
のじゃから驚いたんじゃよ!…
…これを取って来たと言う事は薄々気づいて居る
じゃろうが…お前さんが掘って来たこのオリハルコンは
まず普通には掘ろうと思っても掘れん代物なんじゃ!…
コイツを掘るにしても誰もその鉱脈を見つける事が
まず出来ん!…もし本当に探し出そうと思うのなら
熟練の採掘師!…それもかなり腕の立つ者で無いと
その鉱脈の場所に察しが付かん程…鉱脈を見つけるのが
難しいとされておる!…」
「ッ!?…え?…」
モジャ男は本来の目的の物とは違った…まさかの物を持って来た事に驚いたと笑いながら話し出すと、まずはそのオリハルコン鉱脈を見つける難しさについて語り始める。見つけるにはかなり腕の良い採掘師が要る事、それも確実に見つけられると言う訳では無く、目安を立てれると言っただけで保証が無い事を話し出すと、マサツグを驚かせ…その話を聞いたマサツグがモジャ男が迫って来た理由の一つと理解すると、思わず別の事も考え出す。しかし…
「ッ!…じゃあ俺に迫ったのは!…」
「勘違いするでないぞ!?…
別に金になるとかそう言った理由ではない!…
単に希少鉱石が有ると分かると一度見てみたくなる!…
掘ってみたくなると言う!…
ドワーフの性に駆られただけじゃ!…
金など如何でも良い!…
単にそれを使って良い物を作りたいと言う探求心が
そうさせる!…それだけなんじゃが……はあぁ~…
そして掘る方法なんじゃが…掘って来ている
お前さんも苦労したと言って居ったな?…
それもそうじゃろうて…オリハルコンにはかなり
特殊な性質が有る!…それは「反射」じゃ!…
この反射が厄介でのう…
まず其処ら辺に有る鶴嘴では全くと言って良いほど
刃が立たんじゃろうて…寧ろその鶴嘴で掘ろうとした
力はそのまま掘ろうとした者に返り!…
最悪死んでしまうじゃろうな?…
じゃからコイツを掘る際は同じオリハルコンか
それ以上の物!…そうでは無いと掘れんのじゃが……」
マサツグが思わず迫って来た理由を私欲と誤解するのだがすかさずモジャ男は違うと否定し、迫って来た理由を自身の生まれの性と話しては若干不服そうな表情をして見せる。一応本人もその性で苦労しているのか若干自身でも疲れた様子を見せ、溜息を一つ吐いて見せると続けて掘るのが難しい理由について話し出すのだが、その内容はまさに!…マサツグが体験した通りの内容であった。主に「反射」の説明はまさにマサツグが体験した通りの内容であり、その話を聞いたマサツグは自身の手を見詰める。そしてその時の感覚を思い出す様なフラッシュバックを感じるのだが、突如としてその説明が終わるとモジャ男の口から驚く名前が飛び出て来る。
「お前さん…ライモンドの小僧に会ったか…
墓に行ったじゃろ?…」
「ッ!?…如何してそれを!?…」
「やはりな…
…あの小僧なら今でも生きて居そうなもんじゃが…
とにかく!…その大剣なら間違い無くオリハルコンを
掘る事が出来る!…何故ならその大剣は…
…いや、今は別に答えんでも良いか…」
「うぇえ!?…ちょっと!?…
中途半端に話を切らないでくれよ!?…
物凄く気になるんだが!?…」
「ふふふふふ!……懐かしいなぁ…」
モジャ男の口から飛び出て来たのはまさかのライモンドの名前で、大剣の元の持ち主がちゃんとライモンドである事を理解している様子で話し出すと、その話の振り方にマサツグは驚きを隠せないでいた。当然シロは会った事が無いので置いてけぼりと言った様子で首を傾げては不思議そうにするのだが、モジャ男はまるで何かを知っている様子で話してはその大剣ならオリハルコンを掘る事が出来るとだけ話し…中途半端で話を止めると、マサツグを戸惑わせてはモヤモヤとさせる。そうして話の続きが気になるマサツグはモジャ男に如何言う事かを詳しく尋ねようとするのだが、モジャ男は意地悪そうに笑うだけで…マサツグに一度背を見せたと思えば直ぐに振り返り、その手に鍋の様な物を持って来ると、マサツグが取って来た鉱石をその鍋に中に入れ始める。
__ガコンッ!…ガコッ!…ガコッ!…
「ッ!?…
中途半端で話を切ったと思えば今度は何!?…
何をする気で!?…」
「んん~?…何をとは可笑しな事を…
お前さんは約束を守った!…
だから今度はワシが約束を守る番と
思って動いて居るのだが?…」
「……え?…」
一人黙々と作業をし始めた事にマサツグが戸惑い続けていると、その行動の真意をモジャ男に尋ねるのだが…モジャ男は逆にその質問をされた事に不思議そうな表情を見せると、マサツグとの約束を守る為に作業をしていると答えては作業を続ける。その返答を聞いてマサツグは更に戸惑った表情を見せて居ると、モジャ男はその鍋に必要分の鉱石を入れ終えたのかスッと立ち上がり、マサツグに対し一段落と言った様子で一つ息を漏らすと改めて自分の名前を名乗り出す!
「…ふぅ……では改めて!…ワシの名はドレッグ!!…
[ドレッグ・ノーマインズホルマン]と言う!!…
お前さん達の事が気に入った!!…
だから仕事を受けさせて貰おうと思う!!…
お前さん達の武具はこのワシが!…
このドワーフ界現一番のドレッグが引き受けた!!…
軽装に重装!…
お前さんが望むものは全部!…
ワシが作って形にして見せよう!!」
「………。」
「……ご主人様?…」
「ッ!?…え!?…あぁ!…あっ…
よ…ヨロシクオネガイシマス…」
改めて自己紹介をされるとマサツグが突然の事に驚いた様子で固まり、モジャ男…もといドレッグをジィ~っと無言で見詰めて居ると、シロがマサツグのシャツの裾を掴んでは引っ張り声を掛ける。その際シロは若干心配そうな表情でマサツグの顔を見上げるのだが、マサツグはシロに声を掛けられた事でハッと意識を取り戻すと、戸惑いながらも片言でドレッグにお願いをする。こうしてマサツグは遂に自身の武具とシロの武具を作って貰う事になるのだが、結局の処でオリハルコンは使うのか?…取り越し苦労になりそうな展開にまたもやマサツグの中で何かが抜けそうになると、またハッと思い出した様子でドレッグにあるお願いをする。
「……ッ!?…あっ…そうだ!!…
そうだった!!…ドレッグさん!!…」
「うぅ~ん?…呼び捨てで構わんぞ?…
お前さんはもうお客さんなんじゃから!…」
「え?…あぁ~…じゃあ!…
ドレッグのオッチャン!!…
こいつ等、直せないかな!?…
片っ方は俺が大事に使ってた奴で…
もう片っ方はそのオリハルコンの
鉱脈から出て来た奴なんだけどぁ~!…」
マサツグがドレッグの名前を呼ぶと余程気に入られたのかドレッグから呼び捨てで呼んで良いと言われ、その事に若干戸惑った様子を見せるも直ぐに呼び直すと、ドレッグにある事をお願いし始める。マサツグがドレッグにお願いをしたのは刀の修復・復元であり、ドレッグに預けようと春風刀を装備から外し…錆びた刀をアイテムポーチから取り出すと、ドレッグを呼んでは状態を確かめて貰う。
「んん~?…どれどれ?…」
__チャキッ…スラァ…
「ッ!?…んん!?…うぅむ…」
__……ギュッ!……ッ!……なでなで…
呼ばれたドレッグがマサツグから二本の刀を受け取ると鞘から抜いて損傷状態を確認するのだが、その表情は先程まで大笑いをしていた人物とは思えない程!…真剣な眼差しに険しい表情!…と泣く子も黙る形相に変わっており、その表情に思わずシロがマサツグの後ろに隠れると、それに気が付いたマサツグがシロの頭を撫でて安心させる。そしてドレッグの方もその損傷状態を見るなり驚いた表情を見せると、マサツグに質問の答えを告げ始める。
「……うぅ~む…
この風を纏った刀の方は余裕で直せる筈じゃ!…
確かお前さんが見つけて来た素材の中に…
…うむ!…風翡翠が有る!…
これと元々の刀身を…合わせれば…後玉鋼と鉄は…
有るか…うむ出来る!…
…しかし何と戦ったらここまでボロボロに
出来るんじゃ?…まるで巨大な圧力の塊を真正面から
受け止めたようじゃな…」
「す…すみません……」
ドレッグは春風刀の方は余裕で直せると答えると、マサツグが素材をばら撒いていた方を見ては必要材料が有る事を改めて確認し、その素材を自身の手元に集めては更に指差し確認と…何重にも確認して出来る事を確信すると漸く安堵する。そして素材を集めた所で改めて刀の損傷状態について疑問を持った様子で言葉を漏らし、その言葉を聞いたマサツグが申し訳なさそうに呟くと、小さくなってドレッグの的確過ぎる診断に内心驚く。本当に腕の良い鍛冶師は壊れた剣や鎧の損傷具合を見ただけで何が有ったか分かると言うが…この刀に関してはかなり特殊な損傷状態で、それを見ただけで何が有ったかを特定したドレッグの目と腕の良さに!…マサツグは期待を寄せ始める!そうして損傷の激しい春風刀を一旦机の上に置くと今度は風化し更に錆びた刀を手に取り、ジッと見詰めた後ドレッグの表情が一気に曇り出すと、マサツグにこう答える。
「……あぁ~ん…
しかしこっちの錆びた方はここでは直せんなぁ…
此処にあるのはワシ等ドワーフ族が良く現地で
道具を作る為の鍛冶場……
簡単に言うなら簡易鍛冶場なんじゃ…
こいつを直すとなるとそれなりの設備が居る!…
すまんが無理じゃな……」
__ガコンッ!…
「そうか…」
如何やら設備が足りないらしくさすがに錆びた方は直せないと言うと、マサツグにその錆びた刀を返す。ドレッグ自身設備さえ有れば直せるのにと悔しそうな表情を見せており、その表情を見たマサツグは誠意だけでも有難いと言った気持ちで刀を返して貰い…そのままアイテムポーチに仕舞おうとしていると、ふとまだ気になる事が有るのかドレッグはマサツグにある事を話し始める。
「……しかしよくそんな物を見つけて来たのう?…」
「ッ!…え?…」
「いや…良く有るんじゃよ…
壊れた装備を見つけたとかで
直してくれと頼む者達をな?…
そう言うのは直しても旧世代剣や
鎧で余り大した物は無いんじゃが?……
その刀はそう言った他の物とは違う様な?…
妙な気を感じる……まるで生きている様な……」
「え?…」
__カンカンッ!……ゴトッ…
「あっ…いや…
何でも無い只のジジィの戯言じゃ…忘れてくれ…」
錆びた刀を見せて来た事にドレッグが珍しいと言うとその言葉にマサツグは戸惑い、如何言う事かとドレッグの言葉に耳を傾けていると何やら意味深な言葉を口にし始める。ドレッグ自身その感覚は初めてなのか不思議に感じた様子で戸惑って見せ、鍛冶場に戻り椅子に座ると金床をカンカンと軽く叩き…最後に気のせいかもしれないと無理やり話を終わらせると、更にマサツグを戸惑わせる。そう言われるとかえって気になって仕方が無いマサツグなのだが、直せない以上今は仕方が無いと我慢をすると、ドレッグに改めて防具の製作と春風刀の修理を依頼するのであった。




