-第二章三節 ホエールビアードと如何わしい看板と双子の妹-
…サマーオーシャン大陸…この大陸に有る国は三つの大きな国家が共存する形で治めており。文字通り連合国としてこの大陸に長くから安寧をもたらしていた…年がら年中常夏の様な気候・海は穏やかで滅多な事では荒れる事は無く…山や森も余程の事が無い限りスプリングフィールドみたくダンジョン化する事はあまり無い…ゲームの中でもリゾート地として有名であり、その他にここでしか育たない果物や海産物が取れるとあって他の大陸の料理人達からも人気で、それが功を奏してかこの大陸では有名なレストランが数多く存在し、冒険者達の胃袋を掴んでは離さない!…そんな魅惑的なレストラン街が出来る程、料理人達の聖地としても名高い場所であった。そしてその他にもこの大陸では鍛冶が盛んで、隠れた名器が武具屋で売られている事でも有名であり、初心者~熟練者まで幅広い層に抜群の人気がある大陸なのだが……船から降りる直前…甲板で上陸を待っている時に薄々感じてはいたのだが……
__ジリジリジリジリ!!……コッ…コッ…コッ…コッ…
「ふぃ~…あっつい!……常夏とは聞いていたが……
本当に熱いな!…この大陸!……シロ?…大丈夫か?」
そんな常夏のバカンス大陸にマサツグ達は足を踏み入れるのだが、まず船から降りてその気候から大陸の洗礼を浴び始めると、ものの数分で汗だくになり始める!…その際マサツグとシロの格好は然程厚手でも無い…スプリングフィールドのあのクラウディアの店で買ったTシャツ等を着ている訳なのだが…見事なまでに汗に塗れるとこのサマーオーシャン大陸の気候に早くも心が折れそうになる!…さすが年中常夏の大陸!…そう思いつつ降りる間際に肩車していたシロへ声を掛けるのだが、シロはと言うと…
「あ…あついのです…ごしゅじんさま…
…シロは駄目かもしれません…」
__ブラン…ブラ~ン…
「……だろうな?…見事なまでにダレきってるし…
肩車止めようか?…高い位置に居ると日が…」
__ッ!…ギュッ!…
シロもこの気候には参った様子で…降りる間際まで元気だったのが今では完全に溶けるチーズの様に…マサツグの頭にもたれ掛かると体力を消耗している様子で歩く振動に合わせてはダラ~ン…と、手をブラブラ左右に振って見せてはマサツグの問い掛けに受け答えをしていた。そして当然溶けている訳なのでワザワザ聞かなくても見たら分かるのだが…マサツグが一応と言った様子でシロに話し掛けては降ろそうか?と心配したトーンで声を掛けると、シロはその言葉に反応した様子でマサツグの頭にしがみ付き!…その反応が返って来た事にマサツグが嬉しい様な呆れた様な微妙な反応を見せていると、まずはギルドを目指して歩き出すのであった。
「……そこは譲れないのか…やれやれ…
とにかくギルドに向かうか…」
「……はいです…」
__ザッ!…ザッ!…ザッ!…ザッ!…
シロのやる気のない返事を聞きつつ…マサツグ達はまず船乗り場…港から離れると町の中へと足を踏み入れ出すのだが、そこで見た光景は活気溢れる港町そのものの光景で、それを目にしたマサツグはある種の戸惑いを覚えると同時に感動を覚える!…恐らくはこの港町のモデルは南イタリアのシチリア島…その白のコントラストが綺麗な街並みに背後の青い海とまさに観光地としてグッと来る光景で、溶けるシロを頭に乗せいざ町の中へと二歩~三歩と歩き出すと、いつもの様に町の観光案内がマサツグの目の前に表示される。
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「サマーオーシャン連合国・中央中立港町・
ホエールビアード」
サマーオーシャン大陸の湾に設置されたどの国家にも
属しない完全中立の港町。ここの他にも港町は有る
のだがその港町はそれぞれサマーオーシャン大陸に
属する国家が占有しており、色々規律が厳しく入港が
困難な場合が有るため、この港町が設けられた訳
なのだが…その結果この大陸一番の観光地となる
結果をもたらしただけでなく、レストラン街に鍛冶師街…
冒険者達の支援等を行う重要な拠点として活動する事に
なる。尚、この完全中立の港町を仕切って居るのはこの
大陸の冒険者ギルドのギルドマスターに管理されており、
迂闊に騒ぎを起こすとどの国家が絡んで居ようとも
対立する姿勢を持つ!…ある意味恐ろしい場所とも
なっている!…
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「……ギルドマスターが仕切る町!?…
それに最後のこの文章って?…
…気を付けるに越した事は無いか…
…面倒な人じゃなきゃ良いけど…」
__……ふわぁ~~ん……ッ!…
「良い匂いが……ッ!!…
おぉ!!…すげぇ!!…」
__ジュ~~!!…むわあぁぁ!!…
マサツグは観光案内に目を通しつつ最後の文章に疑問を持つと、嫌な予感を感じ始める!…何やら面倒な!…この先ギルドマスターと関わらないまま冒険するのは難しいだろうと考えつつ、気を付ける事を自身の胸に刻み込んで居ると、さすが観光地と言った所か至る所から美味しそうな匂いが漂い出す。その匂いに釣られてマサツグが辺りを見渡すとそこには市場の様に開けた場所が設けられて色々な物が売られており、こっちの市場はラズベルとは違って規模が大きく、また商業都市クランベルズの様に色々な屋台が立ち並んで、あっちみたく強引な客引きもしていない!…まぁ、アレはあの土地だけだと思うのだが…その屋台ではやはり海産物が押されているのか、客の目の前で海老を焼いたりしては何かの貝を酒蒸しにして売っている様子が見て取れた。そんな活気溢れる光景を目にしては驚いた様子で見詰める中、匂いに釣られてシロも起きるかと思いシロの方に視線を向けるが、やはり暑さ負けしているのかピクリとも動かない…
「シロ!!…あれ!!…
…って、やっぱそんな気分じゃなさそうだな?…」
__だらぁ~ん…
「…あんまり悠長にはしてられないか!……
シロの為にもギルドへ向かおう!…」
__コッ…コッ…コッ…コッ…
市場の様子が気になりつつもシロの事を心配すると、寄り道している暇は無いと感じては改めてギルドを目指し歩き出す。その際町の中を改めて見るとやはり観光客が多いのかラフな格好をした冒険者や旅行者の姿が多く、その姿を見てマサツグは格好を間違えたか?と歩きながら考えて居ると、その旅行者や冒険者達もマサツグの頭に注目しては疑問符を浮かべる。何故ならマサツグの頭には溶けたシロが…アレは何?…そんな視線を集めつつシロを頭に乗せたマサツグがホエールビアードのメインストリートへ出て来ると、マサツグは無事出て来れた事に若干安堵した様子を見せる。
__コッ…コッ…コッ…コッ…
「……多分ここがメインストリート…ふぅ~…
だとするとこの道なりの何処かにギルドが…
…ッ!?…え?…何あれ?…」
__エビバディマッソゥ!!…
「え?……ギルド?…そんな馬鹿な!?…いやでも…」
メインストリートに出て来れた!…後はギルドを探すだけ!…そう思いつつマサツグが辺りを見渡すと、やたら目を引く看板が掲げられている建物を見つける。その掲げられている看板に目を向けるとそこにはギルドの文字…それと同時に「愛と情熱に溢れた冒険者を待つ!!!」と大きく書かれた言葉とポージングをするスキンヘッドの男の裸体の絵が描かれてあるのを目にする!…明らかに変!!…でもギルドって書いてある!?…何か怪しい建物に困惑しつつ、そのギルドと思わしき建物に近付けば近づく程看板の異様さを目の当たりにし!…マサツグが戸惑いショックを受けて居ると、やはりその建物は看板通りギルドなのか、冒険者らしき人物達が出たり入ったりとしていた。
__バタンッ!!…ギイィィィ!…
「うおッ!?…ビックリした!?…」
「ッ!…あぁ…すいません!!………」
「あぁ!…いやいやこちこそ……
…ッ~~~~…」
「ッ!…え?…」
まるで西部劇の酒場の様な扉から冒険者達が出て来ると、扉の前に立っているマサツグに驚き、マサツグも邪魔になって居る事を感じ謝って避けると、向こうもマサツグに謝ってはクエストか観光か…何やら慌ただしく町の方へと消えて行く。その際冒険者全員が通る道なのか町へと消えて行った冒険者達がチラッとマサツグの方に一度振り返ると何やら気になる一言呟き、それ偶然聞いたマサツグが思わず振り返って冒険者達の後を確認するが、冒険者達は足早に目的地に向かったのか姿は何処にも無かった…この時、マサツグがあの冒険者達から聞いた言葉はこうであった…
{……やっぱあの看板のせいで誰もあそこが
冒険者ギルドだって気付かねぇよ!…
パッと見何か怪しいし…}
「………。」
その一言が気になるのだが先程の話を聞く限り、ここがこの大陸のギルドで間違いは無さそうだ…そう言い聞かせる様にもう一度ギルドに掛かって有る看板を確認しては目を擦るも変化は無く……安心してください。パンツ、穿いてますよ?と言いそうな男の裸体を見てはやはり如何わしい店なのでは無いか?と疑ってしまう!…一応全年齢対象なのでそう言った物は無いと思うのだが、如何にも胡散臭さが勝ってしまい!…入るのをマサツグが躊躇って居ると、マサツグの頭の上ではシロが唸り声を上げては更に溶けそうになっていた。
「うぅ~~…」
「ッ!?…イカン!!このままだと本当にシロが!!…
……悩んでいる暇は無いか!!…最悪の事態に備えて!…
シロだけでも逃げられる様に!!……よし!!…」
__ガタンッ!…ぎいいぃぃぃ……ッ?
シロが溶ける様子にマサツグが不味いと感じると、いよいよ覚悟を決めてはそのギルドと思わしき建物の中へと足を踏み入れようとする!…ただギルドに入るだけでこの緊張感!…最悪の事態に備えてマサツグがいつでも武器を抜ける様にすると、恐る恐る扉を押して中へと入って行くのだが…次にマサツグの目に映ったのは警戒する必要の無い…南国風のカフェの内装と、冷房が付いているのかギルド内で涼んで居る冒険者達の様子であった。
__ヒュオォォ…
「……あれ?…涼しい?…」
__…ッ!……コッ…コッ…コッ…
シャキィーン!!…伸び~~!!…
「ご主人様!!…ここは涼しいですね!!…
お外の熱いのが嘘みたい!!!」
まるで冷房が効いている様なギルド内にマサツグが戸惑うと改めてあの看板の異様さに疑問を持ち、ただ困惑した様子で身構え固まって居ると、そのマサツグの様子を見た冒険者達はまるで気持ちを理解するよう静かに頷き始める。やはり皆あの異様な看板に騙されたくちなのか同情する様にマサツグを見詰め、シロも涼しい部屋に入った事で徐々に固形に戻ると、元の元気なシロに戻ってマサツグに肩車されたまま両手を上げて大きく伸びをする。そしてマサツグに涼しいと言ってしがみ付いて来るのだが、肝心のマサツグはまだ混乱しているのかその場に固まり…シロはマサツグの気など気にしていない様子で耳をピコピコと動かして居ると、辺りをキョロキョロと見回しては徐にマサツグの耳に顔を近づけて話し掛け始める。
「……ご主人様?…」
「ッ!?…どわあぁ!?…」
「ッ!?…ご、ごめんなさい!!!…」
「え!?…え?……えぇ?…
あれ?…いや……何かゴメンな?……
…とにかく挨拶に行くか…」
シロが困惑気味にマサツグの事を呼ぶとマサツグは跳ねて驚き!…その反応にシロも驚いた様子で若干の仰け反るが、落ちる事無く耐えるとマサツグにしがみ付いて謝り出す…驚かせてしまった事に反省している表情でシュンとしていた。マサツグはまだ混乱している様子で、シロに謝られた事に対しても混乱するのだが少なくともシロは悪くないと理解すると、マサツグが逆にシロへ謝り…二人揃ってシュンとしつつ驚いた表情をすると、とりあえずギルドに挨拶しに行こうと受付カウンターの方へと歩き出す。
__コッ…コッ…コッ…コッ……ッ!?…どよ!?…
{…な!…何だあの可愛い生き物は!?…
…あんなの今まで居たっけか!?…}
{ッ!?…聞いた事が有る!!…
確かどっかのチャットに掲示されてあった
ペットだったんじゃないか!?…}
{ッ!?…ちょっと待て!?…
今のペットってあんな可愛いのが
ペットに出来るのか!?…
後で探しに行こうぜ!!!…}
そんな一連の様子はギルド職員だけならず、冒険者達の目にも止まるのだが…何よりこの時!…注目を集めたのは間違い無くシロで有り、冒険者達は可愛い生物が居る!?と言った様子でシロの事をガン見していた。そしてマサツグがシロを肩車しながら受付カウンターの前に立つと一人の受付嬢がマサツグの相手をし始めるのだが…マサツグの前に立った受付嬢は何処か見覚えの有る…そんな不思議な容姿をしていた。
「ッ!…いらっしゃいませ~!!
お仕事をお探しですか?…それとも調べ事…」
「ッ!…え?…」
「……ッ?…如何か為さいましたか?…」
「……リン?…」
マサツグの前に立った受付嬢…その様子にマサツグは驚いた表情を見せるとまたもや固まり、マジマジ観察するようその受付嬢を見詰めると、マサツグの様子に受付嬢が困惑する。受付嬢は固まったマサツグに若干戸惑った表情で見詰めては如何した?と尋ね出し、マサツグはマサツグで驚いた表情のままリンの名前を口にすると、改めて目の前に立っている受付嬢がこちらのギルド仕様に変わったリンの様に見える事に戸惑いを覚える。ヒューマンの女性…茶髪の短いツインテールで服はスプリングフィールドの方とは違い、南国のバカンス仕様の制服を着ている。まるでサラシの様に胸を隠す帯状の白い服に、軽く風通しの良さそうな短めのノースリーブジャケットを身に着け、下はパレオスカート…その姿は何故かふしぎの海的な何かを連想させる…体型もリンに良く似ており、リンの事は艦○れの飛龍に似て居ると言ったがこっちの受付嬢は蒼龍に似ている…そんなリンに良く似た受付嬢にマサツグが困惑の視線を向けて居ると、その受付嬢もマサツグの「リン」の名前に引っ掛かりを覚えたのか…若干戸惑った反応を見せた後、納得した様子でマサツグに答え出す。
「え?……あっ!…もしかして…
貴方がマサツグさんですか?」
「え?…」
「えぇ~っと…
私の名前は[ルン・ヒリュース]と言います!
マサツグさんが仰られるリンと言うのは
恐らく双子の姉で…その姉さんからは……っと!…」
__カサッ!…ッ!?…
受付嬢がハッと気付いた反応を見せると恐る恐るマサツグの事を尋ね出し、その問い掛けにまだ自己紹介をしていない…とマサツグが戸惑った反応を見せると、その反応を肯定と受け取ったのか受付嬢は自己紹介をし始める。そしてリンと似ている理由を答える様に自分が双子である事・リンが姉である事を口にすると、リンから手紙を貰っていた事も話し出し…その際ルンはスカートの内側に手を入れると一通の手紙を取り出してマサツグに差し出し、その手紙がリンからの物である事を更に話すと、手紙からリンがマサツグに迷惑を掛けていたと言うのが分かるのか…ルンはマサツグに対して頭を下げると申し訳なさそうに謝り出す。
「…この手紙からマサツグさんの事を
伺っております!……
何でも王都の御前試合で騎士団長を倒したり…
カルト教団を壊滅させたり…
後ラッキースケベを良く起こすとか…
あの文面を見る限り姉がご迷惑を掛けたみたいで…
申し訳ありませんでした…」
「……ッ!?…あ…あぁ!…
べ!…べべべ別に良いから!!…
頭を上げてくれ!!…
頭を下げられるの慣れてないから!!…」
「ッ!…あっ!…そうなんですか?…ごめんなさい!…
…コホンッ!…では改めて…
このギルドでの冒険者登録ですね?」
「ッ!…え?…またやるの?…
一応スプリングフィールドの方で
冒険者登録をしたんだけど……」
今一体何処から手紙を取り出した!?…そんな違和感を覚えるのだがそれよりも…ルンの様子にマサツグがハッと我に返って慌てると、ルンに頭を上げるよう声を掛ける。更に手紙の内容についてもルンから語られた際…色々とツッコミどころが有り気になる事間違い無いのだが…今は全てをスルーして話を元に戻すとルンは頭を上げてマサツグにもう一度謝り、元のギルド業務に戻り出す。そして気を取り直すよう軽く咳払いをするとまるでマサツグがここに来た目的を知っている様に話し出し、その内容にマサツグが戸惑った表情を見せルンに質問をすると、ルンはマサツグの問い掛けに答えるようギルドの仕組みについて補足説明をし始める。…因みにこの間シロはと言うと…マサツグの頭にしがみ付きながら視線を感じ…振り返って正体を確認するとその正体に対して手を振り…愛嬌を振り撒いて見せると前のギルド同様…冒険者達による茶番劇が行われてはキャッキャと楽しそうに眺めていた。
「あっはい!…そうです!…えぇ~…
ギルドの組織自体は世界に一つだけなんですけど、
やっぱり各大陸毎によってギルドマスターが違って
管轄も変わり…
一つ一つ登録をしないといけない決まりになって
いるのです!…
やっぱりその土地ごとに決まり事とかも有りまして、
その土地を冒険するに当たって約束事を護らないと
いけない!…
それらを一括で管理するには情報量が多すぎまして…
ですからこうして各大陸のギルドごとに登録・管理を!…
これも安全かつサポートする為!…
その土地に生きる人達から信頼を勝ち取る為の
必要な事なので何卒ご協力ください!!…
…あっ!…後、登録後のギルドの機能は何処も
一緒なのでご安心ください!」
「……なるほど…
要は管轄ごとに登録しないと駄目って事か…」
「その通りです!
それでは、お手数ですが冒険者カードを
ご提示お願いします!」
ルンから聞かされる各大陸毎による冒険者登録の必要性…その重要性を淡々と説明されてはマサツグの中で簡略化されて行き、とにかく今後このサマーオーシャン大陸を冒険するにはこの土地のギルドの登録が必要と分かると、マサツグはルンに納得した様子で頷いて見せる。そして同意するよう自身の冒険者カードをアイテムポーチから取り出し始めると、ルンもマサツグが納得したと感じたのか…マサツグが呟いた言葉に返事をしてカードを渡す様にお願いし、マサツグがカードを提示するとルンはカードを受け取って自身の手前に裏面向けて置き、徐にハンコを握る。
__カタンッ…グッ!…ふぅ~…
キラキラキラキラ!…ポンッ!…
「ッ!…え?…」
ルンがハンコを手に取ったかと思えば徐にハンコの印面に息を吹き掛け、それに反応するようハンコの印面がキラキラと輝き出すと、ルンはそのまま朱肉等を付ける事無く冒険者カードの裏面に押し付けて見せる。そして思いっきり押し付ける等の動作も無いままハンコを離すとそこにはそのハンコの印影がクッキリと付いており、それを見たマサツグがハンコに仕組みに戸惑った反応を見せて居ると、ルンはマサツグの冒険者カードを取るなり驚き興奮した様子でマサツグに話し掛け始める!
「…はい!これでOKです!…にしても凄いですね!!
Lv20オーバーでシルバーランク…出世も出世…
大出世ですよ!!」
「え?……冒険者ランク?……シルバーランク?……
ッ!…あぁ!!…はいはい、あれね!!…
…ってそんなに凄いの?」
登録はアレで終わりなのかマサツグが戸惑いながらもルンから自身のカードを受け取り、その際ルンはマサツグの冒険者ランクを見て頬を赤く染め!…興奮した表情で話し掛け出すと、そのルンの様子はまるで珍しいアイテムを目の前にしたリンに酷似していた!久々に聞いた冒険者ランクと言う言葉と初めて聞いた自身の階級…その両方とルンの様子に戸惑いつつも、にわか反応で躱そうとするが躱せる筈も無く…やはりここでもピーカブースタイルで迫って来るルンの様子にマサツグが戸惑い、思わず如何凄いのかを聞き返してしまうと、ルンは興奮そのままそのシルバーランクに到達するのに掛かる時間の凡そを説明し始める。
「えぇ、それはもう!!…
…最初はストーンランクからのスタートなんですが…
もしストーンランクからシルバーランクに
上がろうとするなら?…
大体10年間町の外の低級モンスターを倒し続けるって
言った所でしょうか?…
何にしてもこの短期間でシルバーランクは
凄いですよ!!」
「そ…そうなのか?…」
「はい!!!……って、あっ!!…
ご、ごめんなさい!!…つい…」
「あははは…いやいや、もう慣れたから…
大丈夫だよ?…」
ルンが言うには相当らしく…時間の単位が「年」とかなり時間が掛かる事を言い出すと、ルンもお約束とばかりにピーカブーでマサツグに迫り始める!…あの姉にしてこの妹有り!…間違いの無い血の繋がりを感じる事にマサツグが戸惑いの表情を見せながらルンの説明に相槌を打っていると、ルンの方はまだ冷めやすいのか…マサツグの相槌に力を込めて返事をした後、直ぐにハッとした表情を見せると慌ててマサツグから離れて謝り始める。何度も頭を下げて謝るルンの様子にマサツグが苦笑いし…慣れていると言ってルンを落ち着かせ始めると、改めて仕切り直す様に軽く咳払いをして挨拶をする。
「……ああぁぁ……コホンッ!…
じゃあ改めまして…これから宜しく!…ルン!」
「ッ!…は、はい!…こちらこそお願いします!!」
__………ひょこッ!…
「ご主人様!!…次は何処に行きますか?」
互いに苦笑いをしながら挨拶を交わすと漸く周りの雰囲気に順応したのかマサツグが落ち着き、ここまで来て漸くこの大陸のスタートラインに立てた訳なのだが…話しが終わるや否やシロが待ち草臥れた様子でマサツグの顔を覗き込むと、次の行き場所について質問を始める。その突然のシロの顔面ドアップにマサツグは若干驚いた反応を見せるも、改めて聞かれた事に悩んだ表情を見せ…とにかく今必要と思った事を挙げ出すと、目的が決まったのかシロの質問に答え出す。
「うおっ!!…びっくった!……そうだな?…
……とりあえずシロと俺の防具を買いにかな?
リーナに貰った鎧もこの通りだし……」
__ガサガサ…ゴトッ……どよッ!?…
「ッ!?…マ、マサツグさん!?…これは!!…」
マサツグが話し出した次の目的は武具の調達で有った。その際シロの分も今後必要になって来ると考え…やはり良い物が欲しいと言い出すと、徐にアイテムポーチを開いては中から前に着けていたバルデウス戦で壊れた防具を取り出して見せる。その損傷具合は酷く有らぬ形状になってはルンやシロを驚かせ、シロに夢中だった冒険者達の目にもそのボロボロの防具が映り出すと、その奇妙な防具を見るなりギルド内がどよめく!…一体何と戦えばあそこまでボロボロに!?…そんな声が辺りからチラホラと聞こえる中、周りの声を代弁するようルンが困惑気味にマサツグへ質問を始めると、マサツグは如何答えたものかと悩みながらルンに答える。
「一応前に着けてたヤツなんだけど…この通り…ね?…」
「………ッ!!……
ここまで激しい戦闘をされるなら
確かに良い物で無いと!…
うぅ~ん…今案内出来るとするなら
シェルクエルの防具屋ですかねぇ?…」
「…ッ?……シェルクエル?」
「はい!…今この大陸一番の防具屋です!
ここ最近またメキメキと腕と名を上げ始めてて…
既存の防具なら性能はピカイチです!…
ただその分お値段が張ってしまいますが…
如何ですかね?…そこが一番人気の防具店です!」
駆け出しの冒険者がいきなり魔王と戦ってこうなった!と言って!…一体誰が信じるだろうか?…まず魔王自体余程の事が無い限り出て来る筈が無いのに、更に出て来たとしても今のマサツグでは勝てる見込みは万に一つとして有りはしない!…アレは奇跡!!…その事は自分でも理解して居る為、ただルンの質問に如何答えたものかと悩んで居ると、ルンはマサツグの様子を見て察したのかそれ以上の事は聞かず、ただこんな戦闘をする人!…と身を案じた様子で心配すると一軒の防具屋を紹介し始める。その防具屋の話を話し出したルンにマサツグも興味を持った様子で反応すると、ルンはその防具屋の詳しい話を続けて口にし、そこへ行くようマサツグを勧め出すのだが……ここでマサツグがルンのある言葉に引っ掛かりを覚えると、その事を尋ねる様に声を掛ける。
「……んん?…ちょっと良いか?…
既存って如何言う意味?…」
「え?…」
「……ッ!…あぁ!!…
意味が分からないじゃなくて!…
何で既存って言葉を使ったのかが疑問に思えて…
さっきの話だとまるで…普通に作った物なら
そのシェルクエルが一番!…
でもオーダーメイドなら別の所がある!って、
言ってる様に聞こえたから…
何でそんな風な言い方をしたんだろうって?…」
「ッ!?……」
マサツグが疑問を感じた点…それはルンの言い回しで有った。ルンはマサツグにその防具屋を紹介する際、確かに既存なら…と紹介したのである。それではまるでオーダーメイドで作るならそこじゃなくて別の所が良い!と言う風に聞こえ、その点を疑問に感じたマサツグがルンにツッコミを入れたのだが、最初の質問ではそう言う風に伝わらなかったのかルンが困惑し…その様子にマサツグも釣られて困惑するとハッと気が付いた様子で改めて如何言う事かを説明し、再度説明を求め出すとルンはマサツグのツッコミを受けては驚いた表情を見せ…目を見開きマサツグの事を数秒見詰めて居ると、次には意味有り気な表情でフフッと笑って見せるのであった。




