表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

結婚式に元カレが現れて愛してるって言ってきたので…


神父様の声だけが響く、静かな教会。

ステンドグラスから差し込む光が、床や椅子に美しい彩りを添えている。今日のために仕立てたドレスにもその光は落ちて、純白の生地を様々な色に染め上げ、うっとりするほど美しい。


私の隣には精悍な顔立ちの男性。

出会った時から誠実な態度に安心感を覚え、いつしか注がれる穏やかな愛情から、離れられなくなっていた。


神父様の声を聞きながら、彼とそっと視線を交わす。それだけで満ち足りた気持ちになる。


「汝、これを愛し守ることをーー」


ガァン!


いよいよ誓いの言葉を、そんな時だった。教会のドアが勢いよく開いたのは。

そこから一人の男が足早に入って来た。


信じられなかった。


知っている、顔だった。

知っている、どころではない。

かつて一緒に暮らし、結婚も考えた昔の彼がそこにいた。


「ミサ!」


聞き慣れた声。

その声で名前を呼ばれるのが好きだった。抱きしめられ、笑い合うのが好きだった。

彼を目にした途端に溢れ出した古い記憶に胸が詰まる。

目頭が熱くなった。


「おまえを愛してるんだ!」


かつて何度も聞いた言葉に、心臓が揺さぶられる。

向けられた真っ直ぐな視線。

気がつけば、彼に向かって走り出していた。夫となる男性が私を呼ぶ声が聞こえるけれど、止まれない。


だって、もし彼にもう一度会えたなら…心のどこかでそうずっと思っていたのだもの。

彼にもう一度会えたなら、その時はーー。


体を突き動かす衝動そのままに、私は彼の元へと走る。


満面の笑みで両手を広げるその男に、走りながらぐっと拳を握りしめる。

そして射程距離に入ったところで思いきり振り抜いた!



クリーンヒットォーーー!!!



拳にガツンといい衝撃がきた。

顎を撃ち抜かれたその男は、大きな音を立てて床に倒れる。

男が入って来たことでざわついていた会場内が、シンと静まり返った。



あー、スッキリした。



パンパンと手を打ち払いながら床に仰向けに倒れ気を失っている男をひと睨みして、静々と神父様の元へと戻る。

そして夫となる男性へとにっこり微笑みかけ、腕を絡めた。


「えーっと、奥さん?」


これから生涯を共に生きていく彼が、恐る恐る問いかけてきたので頷く。


「はい。あなたの奥さんです」


それに対して彼はほっとしたような、少し困ったような顔で笑った。

そして口を開く。


「はい、誓います」


その言葉で我に返ったのか、ぽかんと口を開けていた神父様が式の進行を再開する。


「汝、妻としてこれを愛し支えることを誓いますか?」



もちろん、答えは決まっている。


「はい、誓います」


そして、愛しい彼と見つめ合い、そっと誓いの口づけを交わしました。





めでたし、めでたし!

お読みいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >「汝、妻としてこれを愛し支えることを誓いますか?」 男をグーで殴り倒してしまうのを見た後だと「少し考えさせてください」でも許されるのではないかなw
[一言] これはスカッと○ャパン以上のキレ味ですわw
[一言] いや、ホント面白かったです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ