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その6 「嫌なら縁を切ればいいのに」

「他には?」

「こちらへの参加者は更に増加。

 攻略組と縁を切る人も同じくらいいます」

「まだ増えてるんだ」

「それだけやらかしてきてましたから」

 そこは攻略組のおかげというべきだろう。

「でも、問題も」

「どんな?」

「攻略組がいなければ脱出出来ないってのを気にしてる人もいるんですよ」

「そりゃあね。

 いるでしょ、そういうのは」

 居て当然である。

 このデスゲームから解放されたいと思う者は大勢いる。

「そういう連中が、相変わらず和解させようとしてきてます」

「仲裁を気取ってるのかね」

「どうなんでしょ。

 何考えてるのかさっぱり分からないですよ」

 聞いてるヒロシもそうだが、会話の相手も呆れてる。



「そのくせ、攻略組への愚痴も漏らしてるんですから」

「相変わらずだな」

 辟易しながらため息を吐く。

「嫌なら縁を切ればいいのに」

 そこが不思議なところだった。



 攻略組への協力者は素直な賛同者ばかりではない。

 攻略組の態度に反発する者もいる。

 それで文句を言いながらも、協力は続ける。

 それが不可解な所だった。

 嫌なら縁を切ればいい。

 それが出来ないわけではない。

 なのに何故かやらない。

「なんでだろうね」

「さあ。

 俺にも分からないよ」

 ヒロシと通話相手は首をかしげるしかない。



 全く分からないわけではない。

 どうしても現実に帰還したい、だから不平不満を言いつつも攻略組に協力してるのだろう。

 だが、それなら愚痴や文句を言うのがおかしい。

 協力するなら、素直に援助して応援してればいい。

 どんなに虐げられても。

 それも込みで協力をしてるのだから。

 その態度のちぐはぐさがヒロシ達には不思議なものだった。



「まあ、そういうのも縁を切っておいてくれ。

 二度と協力しないように」

「もちろんやってる。

 そうしたら、どういうわけか慌ててたけど」

「なんでだろうね?」

「さあ……」

 本当に不思議な人たちだった。



 ヒロシ達は攻略組とその協力者への縁切り・排除を既に伝えている。

 それなのに、実際にブロックされると取り乱す。

 訳が分からなかった。

「実害はないだろうに。

 攻略組とつるんでるんだから」

「そうですよね」

 そう言うヒロシ達は意地の悪い笑みを浮かべていた。



 実害はしっかりとある。

 ヒロシ達との縁が切れると、素材が回ってこなくなる。

 これは、攻略組そのものには影響がない。

 あっても問題になるほど大きなものではない。

 だが、攻略組の下部に位置していた協力者達はそうではない。

 戦闘担当にしろ生産職にしろ、受ける被害は甚大なものになる。



 戦闘担当ならば、狩り場を失う事になる。

 なにせ、ヒロシ達は手広く展開している。

 それも中堅どころに。

 攻略組の下部に位置してるプレイヤー達の活動範囲とかぶる場所だ。

 そこで荒稼ぎされるのだから、彼らの実入りは悪くなる。



 必然的にそういった場所で手に入る素材なども激減する。

 それらを受け取っていた生産職達の打撃は大きい。

 何せ、最高級品ではないにしても、上位品質の素材などが手に入らなくなるのだ。

 その分だけ物品の質はどうしても落ちてしまう。

 素材の合成などで品質をあげるにしても、効率はかなり落ちてしまう。

 自然と、攻略組の下部組織の行動は低い水準で停滞する事になる。

 それが目に見えてるからこそ、攻略組への協力者達は焦っていく。



「それで、協力するという打診がきてますけど、どうします?

 事前の手はず通りでいいですか」

「もちろん。

 もう攻略組からの転向は許さん。

 そのまま連中と心中させろ」

「分かりました。

 そうしておきます」

 それも規定路線だった。

 事前に通告はしていたのだ。

 その時点で態度を変えなかった者を受け入れるわけにはいかない。

 理由はどうあれ、それを選んだのなら最後まで貫けとしか言い様がない。

 そういう根性の無い態度が気にくわなかった。

(そういう奴だから、攻略組になびいてたんだろうけど)

 その時その時で強い者に従ってるのだろう。

 だから芯が無い。

 芯と同時に心が無い。

 そういう軽い輩を信じるわけにはいかなかった。

 いつまた裏切るか分からないのだから。

 数合わせにも使えない、烏合の衆にもならない穀潰しである。

 敵に回ってくれてた方がまだマシだった。



「あと、こっちに寝返った連中だけど」

「生産職には最下級の素材だけ回しておきます。

 戦闘担当プレイヤーも、安全地帯を任せます」

 これも決めておいた通りである。

 事前に通告した段階でこちらについた元攻略組とその関係者への処遇だ。

 これまで攻略組に協力してきた実績が消えるわけではない。

 それを考えての対応である。

 生産職にまわす素材は、手に入るなかでも最下級あたり。

 それでも、外部の攻略組下部の者達よりはマシな程度のものを提供。

 戦闘担当プレイヤーには安全地帯という稼げない狩り場を。

 これももちろん、攻略組下部よりはマシな程度の場所になる。

 寝返りはしたが信用してるわけではない。

 そういう連中には相応の扱いをしていく事になる。

 そして、そこから状況が良くなる事は一切無い。



 そうして更に数ヶ月。

 変化は更に起きていく。

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