その5 「いいねえ」
対応は早かった。
もともとこういう事態を想定していたというのが大きい。
それだけヒロシの賛同者達は様々な事をされてきていた。
なので、
「ここまではしないだろう」
という甘い考えは一切しない。
「ここまでは思いついたが、更にこれ以上に何をしてくるだろう」
という最悪の更に上の想定ばかりをし続けてきた。
そこに平和ボケは一切存在しない。
手始めに、賛同する全ての者達が単独行動機能を設定していく。
これにより、既に連絡先登録してある者達以外との接触が不可能になる。
続いて、所有してる店舗や施設の閉鎖。
正確には入場制限を施していく。
これで店舗や施設などの所有者が認めた者以外の出入りが不可能になる。
更に地道に集めた情報から、攻略組との接点がある者をブロックしていく。
これにより、ヒロシとその仲間達は攻略組を完全に排除していった。
この影響は地味に大きい。
まず、ヒロシ側の生産者達から物品の調達が出来なくなる。
これが結構な影響をもたらしていく。
ヒロシ達は最高級品を作る事は出来ない。
しかし、汎用品からそこそこの物品までを手広く扱っている。
そして、そのくらいの物品で丁度良いという者達は多い。
攻略組でなければ、そこまで高品質でなくてもいいからだ。
そして、数だけならばこちらの方の需要の方が多い。
それらに物品を供給してる最大手がヒロシ達の集団だった。
それらを求めて、様々な戦闘担当のプレイヤー達がヒロシ達との接点を求めた。
攻略組でなければ、ヒロシ達はその要望に応じた。
条件付きで。
もちろんそれは、攻略組と関わらない事である。
それには攻略組と接点のある全てが含まれる。
多くのプレイヤーはこれを受け入れていく。
利点はあっても問題は無いからだ。
そして、そうなると生産職プレイヤーも意思表示せざるえなくなる。
素材を持ってくる、そして購買層である戦闘担当プレイヤーがヒロシの側についたのだから。
それを失わない為に、ヒロシへの協力を宣言して実行するしかない。
幸い、ヒロシ達は攻略組ほど横暴でも横柄でもない。
それだけでも参加する利点はあった。
かくて一気に市場占有率を上げたヒロシ達は、展開規模において攻略組を大きく上回っていく。
どんなに多く見積もっても、総勢数万なのが攻略組である。
今回の件で規模を拡張したヒロシ側は総勢数十万。
数において10倍の開きがある。
これは更に開く事はあっても縮まる事は無い。
「いいねえ」
捕らえられてから数ヶ月。
ヒロシは状況の変化に満足していた。
それらは通信によって常に伝えられていた。
「攻略組の連中は?」
「少し慌ててるようだけど、まだそんなに問題だとは思ってないみたいだね」
「そりゃそうだろうな」
勢力図に変化はあっても、優位性がなくなったわけではない。
いまだに最前線は攻略組が握ってる。
最大能力値も、最高級素材も攻略組が頂点だ。
それらがもたらす利点や利益は健在なのだ。
驚きはしても慌てはしまい。