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その4 「だったら攻略組の首をもってこい」

 こうした事を、最初はごく少数で始めていった。

 しかし、人づてにこの集団の事がひろまり、参加者が増加。

 ついには数千人という規模にまで発展する。

 数百万というデスゲームに捕らわれた者達の中では、その一部という数ではあるだろう。

 だが、これだけの人数が一致団結してるのだ。

 無視できない勢力であるのも確かだった。



 その活動は決して派手なものではない。

 大半が生産職。

 そして、攻略組にはとても入れない能力の戦闘担当者達である。

 それらに最上位の敵地攻略など出来るわけがない。

 せいぜい中堅どころまで区域での活動がせいぜいだ。

 だが、それでも得るものは大きい。



 中堅どころとはいえ、確実に素材は手に入る。

 それをもとにより上位の素材を手に入れる事も出来るのだ。

 これは素材の合成と言われる。

 一部の生産職に可能な技術である。

 これにより、最前線でしか手に入らない素材も、中堅どころの狩り場で手に入れる事が出来るようになる。

 もっとも、入手効率は敵を倒して手に入れるよりは落ちる。

 しかし、比較的安全に確保出来るという利点は大きい。

 それも、より低レベルな場所でだ。

 このために、ヒロシの呼びかけで集まった集団の装備はそれほど悪くない。

 それどころか、攻略組に迫るくらいの品質をたたき出している。



 そうなるとまた再び攻略組が絡んでくる。

 あいつらは自分たちに協力せず、自分勝手に動いてると。

 それに対してヒロシ達は、録画録音しておいた様々な証拠を提示して対抗する。

 こいつらのこういう横柄な態度、汚いやり方。

 こういう連中とは付き合えないし協力もしないと。

 両者は一歩も譲らず、対立を深めていく事になる。

 それはゲームにとらわれていた者達をも少しずつ巻き込んでいく。

 どちらに賛同するかで。

 どちらにも加担しない中立は成立しない。

 そんなむしの良い話が許されるような状況では無い。

 協力をしないのは消極的な敵対でしかない。

 そんなものを許すほど状況は甘くなかった。



 そんな状況での会合である。

 穏便に済むわけもない。

 お歴々がヒロシのところにやってきたのも、こうした状況が背景にある。

 それでも多少の縁は大事にと思って今まで付き合ってきたが。

(ここらが限界かな)

 ヒロシはそう思いつつ話を聞いていた。



「生きて戻るためにも、攻略組はなくてはならん」

「もちっと、強情もおさめてな」

「長いものにまかれろとはいわん。

 だが、大きな目的の為に多少は……な?」

 そう言ってくる連中に、

「だったら攻略組の首をもってこい」

 にべもない態度をとる。

 実際、問題をおこしたのは攻略組であり、その責任をとらねばどうにもならない。

 なのだが、

「だが、いったいどうやって責任をとれと?」

「責任とはなんだ?」

 丸め込もうとしてくるのが攻略組の方だ。

 話にならなかった。



「聞いてないのか?」

 にらみつけながら問い返す。

「俺は首を持ってこいといった。

 それが責任だろ。

 頭ついてんのか?」

「だから、そうじゃなく────」

 なおも言いつのろうとする攻略組に加担する生産者達。

 そんな連中に、

「生きて帰るんじゃなく、利権が欲しいだけだろ」

 言葉を遮っていく。



「おいしいもんなあ、攻略組とつるんで手にするうまみは。

「最前線の最高級素材。

 それを餌にして得られる利益。

 そりゃあ、簡単には捨てられんわな。

「なんだっけ、それで女も好き放題してるんだってな。

 証拠もあるぞ。

 なんなら証言もな。

「そんで、競争相手には圧力かけて潰しにかかると。

 それで協力って戯言も大概にしろ。

「で、潰せない俺らに手を焼いてるから懐柔か。

「だいたい、協力ってんなら、お前らに与する必要もないだろ。

 お前らが俺たちの下につけばいい。

 なんでやらない?」

「わかりきった、見え透いた手を使ってくんじゃねえよ」



「だいたい、攻略を盾にするんじゃねえ」

 それが一番腹が立つ。

「それを盾にすんなら、上等だ。

 攻略なんざしなくていい。

 一生ここにいても構わねえ」

 それだけの覚悟がある。

 それだけの覚悟のある者達が揃ってる。

 そこまで思わせるくらい、攻略組への不満は高まっていた。



 そこまで言ってヒロシは、単独行動機能を用いる。

 一人一人をブロックするのではない。

 他者との接点を全て断ち切る機能だ。

 これで他の者との接触は基本的に不可能となる。

 既に登録してある者達を除いて。

 当然、この会合に参加してる他の者とも。

 黒い影として表示されるだけになった他の者達を置いて、ヒロシはその場を後にしようとした。

 しかし。



「ん?」

 会合の開かれてる建物から出ようとしたが、それが出来ない。

 何度やっても戸が開かない。

 出入り禁止措置がなされている。

「あー、やっぱり」

 予想していた事態だった。

 そういう強硬手段に出ても来るだろうとは思っていた。

 そうやって言うことを聞かせようというのだろう。

 だが、それも想定内だ。

「おーい」

 機能を表示させて、仲間に連絡を入れる。

 出入りが不可能であっても、通信まで阻害出来るわけではない。

 そして、こういう可能性があると思ってれば、それなりの対策もしている。

「やってくれたよ、あの連中」

 その声に通信先の相手も呆れていく。

「ま、それなら徹底的にやってやるだけだ」

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