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第十四話 急報

「びっくりですね! まさかノリスさんに付与魔法の才能まであったなんて!」

「そうね。あれだけの付与魔法、さすが先生だわ!」


 工房からの帰り道。

 すっかりご機嫌なスージーとフォルトナが、弾むような足取りでスキップを踏む。

 その手には買ったばかりの武器が誇らしげに握られていた。

 ノーランドさんの好意で大幅に割引してもらえたので、いずれもかなりの業物である。


 無事に魔法を付与した俺は、あのあとノーランドさんと契約をすることとなった。

 俺がこの町を離れた後も、作品を送るというのだからすごい気合の入れようである。

 だから向こうとしても、こちらと引き続き仲良くしていきたいのだろう。


 ちなみに俺の前任の付与魔法使いさんは、簡単なコツを聞くと修行の旅に出てしまった。

 俺はまだ、あなた様の話を理解できる段階にすらいないようです、とか言っていたけれど……。

 そんなに難しいことは、言ったつもりないのだけどなぁ。


「先生、あとで俺の武器にも付与を頼めますか!」


 剣の柄を擦りながら、俺に向かって頭を下げるレイドルフ。

 俺はもちろんと笑みを浮かべて頷く。

 そもそも付与魔法の技術は、ポーターとしてみんなの武具を管理するために覚えたもの。

 言われなくても、必要に応じてかけるつもりだった。


「よっしゃ!! これで俺の剣も……!」

「気を付けてくださいね。武器が強くなると、気が大きくなってケガする人は良くいますから」

「わ、わかってるって!」


 そう言って、レイドルフはゴホゴホッとせき込んでしまった。

 どうやら意図せずして痛いとこをついてしまったようである。

 別にそこまで強く言うつもりはなかったのだけど……まあ痛い目に合われるよりはいいか。

 

「付与が終わったら、ギルドで軽い依頼を受けましょう! 試し切りがしたいです!」

「スージーさん、ずいぶん積極的ですね」

「えへへ。やっぱり、いいものを手に入れたからには使ってみたいのでしゅ!」

「なるほど。手に馴染むか確認するのは大事ですしね」


 良い武器を買ったはいいが、いまいち合わなかったなんてことはよくある話である。

 武器というものはやはり、一度使ってみてしっくりくるか確認することが必要だ。

 『空色の剣』に在籍していた頃は、武器の調整も任されていたのでその大切さはよくわかっている。


「じゃあ、明日の朝一番でギルドへ行きましょう。今日中に作業は終えておきますから」

「え? そんなに早いの?」

「ええ。時間のかかる作業でもないですし」


 俺がそう言うと、なぜかフォルトナは驚いたように目をパチクリとさせた。

 そしてこちらを覗き込みながら、不思議そうな顔をして尋ねる。


「そりゃ、魔法自体はそうでしょうけど……魔力は? あれだけの付与魔法、消費が激しいわよね?」

「そうですか? 付与魔法ですし、百回かけてもたかが知れてますよ」

「百回なんて、普通じゃどう考えても無理よ!!」


 青い顔をしてぶるぶると首を横に振るフォルトナ。

 その程度、魔法使いなら普通はできると思うんだけども。

 ……ああ、そうか! あくまで荷物持ちとしてはってことか。

 そりゃそうだ、魔法の才能があるなら魔導士になっているだろうしね。


「とにかく、明日までに間に合わせておきますから。安心してください!」

「そ、そう……わかったわ」

「お願いします、先生!」

「頼みます!!」


 こうしてみんなから武器を預かった俺は、その日のうちに付与魔法をかけた。

 迎えた翌日、俺はいつもより少し遅い時間に武器を抱えてギルドを訪れた。

 すると――。


「大変です!!」

「ど、どうしたんですか?」


 ギルドの建物に入ると、すぐにスージーさんがすっ飛んできた。

 何だろう、もしかして武器の到着が待ちきれなかったとか?

 それにしては、何だか深刻な様子がするけど……。

 俺が戸惑っていると、今度はミリアさんが駆け寄ってくる。


「山に向かった調査隊が、今朝……」

「何か起きたんですか?」

「ええ……」


 ミリアさんはそっと、酒場兼エントランスの奥へと視線を投げた。

 すると奥のテーブルに、全身を包帯で巻かれた状態の男が寝転がっている。

 これは……ひどいな……!

 まだかろうじて息はある状態だが、相当な重症だ。


「いま神官様を呼びにやっています。命は助かるでしょうが、傷は残るでしょうね」

「どうしてこんなことに。魔物ですか?」

「たぶん。本人が満足に話せる状態ではなかったので詳細はわかりません」


 恐れていた自体が実際に起きてしまったらしい。

 十中八九、「主」の仕業とみて間違いないだろう。

 ケガの様子からすると……炎属性の魔物であろうか。

 包帯の隙間から、無残に焼けてしまった肌が見える。


「先ほど、Bランク以上の方に緊急招集を掛けました。すぐに他の支部から、Aランク冒険者の方も派遣してもらって……」

「ああ……うう……」

「バーナードさん!!」


 状況を聞いているうちに、倒れていた男の眼がゆっくりと開かれた。

 彼はゆっくりと身を起こすと、掠れた声で語りだす。


「あれは……人だ。リリーナ……が……あぶな……い……!」

「え!? リリーナさんがどうかしたんですか!?」

「逃げる途中で……偶然…………合流した。俺を庇って……あいつは……」


 おいおい、それってまさか……!!

 リリーナさんが、この人を庇って「主」に立ち向かったってことか!!

 知り合いの思わぬ窮状を知った俺は、その場で凍り付くのだった――。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ストーリー 主人公の性格 [気になる点] 勘違い系ってどうしても無理がある部分が目立っちゃうかな [一言] 勘違い系は、どうしても無理矢理感が出てしまうので好き嫌いは出やすい感じはします…
[一言] 続きが読みたいです。更新をよろしくお願い致します。
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