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ホラー オカルト

2年C組のマユコ様

作者: くろたえ
掲載日:2019/09/14

ここは高校。苛めを受けた少女が中学生の時の親友と一緒に学校の怪談を試す。

コックリさんと同じようなもので、イジメを専門にする「マユコ様」というのを噂で聞いたのである。

マユコ様の教室であった2年C組で「マユコ様」を呼ぶ。

十円玉は少女の呼び声に応えた。


マユコ様は本当にいたのである。

 とある高校の七不思議のひとつ


 この学校では、いまだにコックリさんがひっそりとではあるが、受け継がれている。

普通のコックリさんはオールマイティー。

恋の相談はキューピッド様。

最後に学校独自のマユコ様。

2年C組でやるのが決められている。

マユコ様は苛めで自殺をし、2年C組では、夜、教室の前を通ると女の泣き声がするという噂もある。


 マユコ様はクラスで自分を誰が嫌っているか。

自分をイジメているのは誰かなど、イジメに関することに使い分けられている。


 放課後に他のクラスから紙と10円玉を持ってくる数人が何組が来ている。

教室で同時にすれば良いものを、何らかの気兼ねか、聞かれたくないかで、一組ずつ入ることが、暗黙の了解になっていた。


 その日も4人の少女たちが、二組目に教室に入ることが出来、薄暗くなりだした放課後に紙を囲んで座っていた。


 二人が向かい合い、鳥居の十円玉に人差し指を添えている。

あとの二人はそれを横から見守っている。

首元のリボンから一年生のようだ。

彼女たちは聞いたばかりの学校の怪談を意を決し実行しに来た。


「マユコ様、マユコ様。どうぞいらっしゃいませ」

「マユコ様、マユコ様。どうぞいらっしゃいませ」


 十円玉に触れている少女たちが声をそろえて何度も繰り返す。

 五分も経ったころだろうか


「あ。「ゔ」に来た。本当に動いたよ!」

「私、動かしてないよ。すごい。本当に来てくれた」


十円玉はゆっくりとス。ス。と動き出した。


 興奮しながら少女たちは思わず騒いで、お互いの声に驚き、顔を見合わせ「しーー。」っとした。

十円玉が動いた恐怖はあるが、友人4人で居る事、不思議な体験を皆でしている事に、連帯感と期待が盛り上がり、少しだけ笑顔が出る。


 マユコ様の紙は普通のコックリさんとほぼ同じだが、

「はい」と「いいえ」の間に、「ゔ」という字を最初に配さなければならない。

そしてマユコ様は来た時から、質問に答える間、帰る時まで「ゔ」に留まっている。


「じゃあ、いくね」


 一人の少女が意を決して紙に向かって尋ねた。


「私の下駄箱にごみを入れたのは誰ですか」

「だめ。最初は関わっている人数から聞かないと!」


もう一人の少女が制す。


「あ。そっか。ごめんなさい。マユコ様。間違えました。私のイジメに関わっている人は何人ですか」


 しばらくの沈黙の後、十円玉が動き出す。

少女たちは期待しながらも、恐怖で息をのむ。

十円玉は数字を滑っていく。


「いち、にい、さん、よん。・・・4で止まった。4人だ」


 鉛筆を持っている片方の少女がほっと息を吐いた。

思ったよりも少ない人数で安心したのだろう。クラスの大多数だったりしたら、もう怖くて学校には来れない。


中学まで親友だった三人は別のクラスになってしまった。

その中でも、しっかり者の一人がこれを提案してきたのだ。

彼女は鉛筆を持っているもう片方の子である。


十円玉は「ゔ」に戻っていくが、もう誰もそれを不思議に思わない。

「ゔ」に戻った十円玉は添えられた2人の人差し指の意に反し、細かく震えている。


「じゃあ、次に行くね」


「ここ3日の間、私の下駄箱にゴミを入れた首謀者は誰ですか」


 十円玉が動く。


「た」4人で声を合わせる。「に」十円玉は大きく斜めに動き「さ」。


 もう、苛めを受けた女の子はそれが誰だか判った。

「谷坂」同じクラスの女子である。

嫌な思いをさせた覚えはない。そして、私を嫌っている素振りを見せたこともなかった。

そうなんだ。私のこと嫌いなんだ。

なら、良い。誰か分かったからいい。

あの子の周りに3人居たから、きっと、その4人でやっているんだろう。

私は、気は強くないけれど、理不尽な苛めに遭い続けるつもりはない。

明日、皆の前で言ってやる。

「マユコさんに聞いた」といえば、皆だって信じてくれる。


「あなたに、嫌な思いをさせたつもりはないんだけれど。下駄箱にゴミを入れるような陰険なイジメはやめてくれる?」


って、ちゃんと目を見て言ってやる。

少女は静かに、でも強く決心した。



突然、教室の扉が乱暴に開く。


「こら!こんな時間に何やっているか。うん?他のクラスの生徒じゃないか。勝手に入るんじゃない。さっさと帰りなさい!」


学年主任の怒声に少女4人は飛び上がり、慌てて荷物をもって扉から出て行った。

その初老の学年主任は、すぐに怒鳴るので、生徒から怖がられている。

しかも、夕暮れの校舎をいつも見回っているので、マユコさまは、いつもこの教諭に邪魔されることが多かった。


机の上には紙が置いたままである。十円玉も最後の「き」から、どこかに行こうとしたまま止まっていた。


「おい。」


学年主任が机の上の紙の傍を人差し指でなぞる。


「おい。」


誰もいない教室に初老の男の低い声が響く。


「いるのか?マユコ」


愛おしむ様な声で紙に向かって囁いた。


男の指がそっと十円玉に触れようとした瞬間。

十円玉が、誰の指も乗せられていないのに、飛ぶように動き「ゔ」で震え続けた。


「居るんだな。マユコ。ずっと、居たんだな」


「俺と一緒に居ような。マユコ。マユコ」


 囁く声を振り切るように、十円玉は「いいえ」に飛び、そして、書き込んである鳥居に戻った。


「帰ったのか?でも、ここからは出られはしないんだろう?なあ。マユコ」


学年主任はコックリさんならぬ、マユコ様の紙を畳んで十円玉と一緒に胸のポケットにしまった。


「お前は出られはしないんだ・・・愛しているよ。マユコ」


十円玉の入った胸のポケットを上から撫でながら、扉を開け、教室内を振り返っていから、扉を閉め去って行った。



誰も居ない夜の2年C組では、少女のすすり泣く声が時折、聞こえるという。



コックリさんをしたことがある人は、どれくらい居るのでしょうね。

私もやったことがあります。

興奮と驚きと、やっている人たちとの連帯感と、そして、少しの恐怖がありました。

本来は誰かの意志や、皆の期待により、十円玉は動かされていくのでしょうが、もし、本当に十円玉に霊が関与していたら。

との思いで書いてみました。

高校の一室で行わなければならないのは、きっと、その霊がそこから動くことが出来ないのでしょう。

霊と人の怖さを少しだけ味見してください。


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― 新着の感想 ―
[一言] 私が子供の頃はキューピッド様というのが流行ってました。 黒い感情の連鎖が見え隠れして恐ろしいですね。 先生、何があったんでしょう……。背筋がヒヤリとしました。
[良い点] まさかのオチ! 霊より怖いのは生きてる人間、ですねぇ…… [一言] 霊感は全く無いのに、コックリさんは、なぜか怖くてやったことがありません。
[良い点] これまたなんと…… まさかのオチでしたねぇ [気になる点] 僕の地元ではコックリさんは十円玉 キューピットさんは鉛筆(シャーペンなども可) でしたが、作中で出てくる鉛筆が気になりました 同…
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