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ホラー オカルト

2年C組のマユコ様

作者: くろたえ

ここは高校。苛めを受けた少女が中学生の時の親友と一緒に学校の怪談を試す。

コックリさんと同じようなもので、イジメを専門にする「マユコ様」というのを

噂で聞いたのである。

マユコ様の教室であった2年C組で「マユコ様」を呼ぶ。

十円玉は少女の呼び声に応えた。


マユコ様は本当にいたのである。

 とある高校の七不思議のひとつ


 この学校では、いまだにコックリさんがこっそりとではあるが、受け継がれている。

そして、いくつかのコックリさんが存在している。

普通のコックリさんはオールマイティー

恋の相談はキューピッド様

最後に学校独自のマユコ様

2年C組でやるのが決められている。

マユコ様は苛めで自殺をし、2年C組では、夜、教室の前を通ると女の泣き声がする

という噂もある。


 マユコ様はクラスで自分を誰が嫌っているか。

自分をイジメているのは誰かなど、イジメに関することに使い分けられている。


 放課後に他のクラスから紙と10円玉を持ってくる数人が何組が来ている。

教室で同時にすれば良いものを、何らかの気兼ねか、聞かれたくないかで、

一組ずつ入ることが、暗黙の了解になっていた。


 その日も4人の少女たちが、二組目に教室に入ることが出来、薄暗くなりだした

放課後に紙を囲んで座っていた。


 二人が向かい合い、鳥居の十円玉に人差し指を添えている。

あとの二人はそれを横から見守っている。

首元のリボンから一年生のようだ。

彼女たちは聞いたばかりの学校の怪談を意を決し実行しに来た。


「マユコ様、マユコ様。どうぞいらっしゃいませ」

「マユコ様、マユコ様。どうぞいらっしゃいませ」


 十円玉に触れている少女たちが声をそろえて何度も繰り返す。

 五分も経ったころだろうか


「あ。「ゔ」に来た。本当に動いたよ!」

「私、動かしてないよ。すごい。本当に来てくれた」


十円玉はゆっくりとス。ス。と動き出した。


 興奮しながら少女たちは騒いで、お互いの声に驚き、顔を見合わせ

「しーー。」っとした。

十円玉が動いた恐怖はあるが、友人4人で居る事、不思議な体験を皆で

している事に、連帯感と期待が盛り上がり、少しだけ笑顔が出る。


 マユコ様の紙は普通のコックリさんとほぼ同じだが、

「はい」と「いいえ」の間に、「ゔ」という字を最初に配さなければならない。

そしてマユコ様は来た時から、質問に答える間、帰る時まで「ゔ」に留まっている。


「じゃあ、いくね」


 一人の少女が意を決して紙に向かって尋ねた。


「私の下駄箱にごみを入れたのは誰ですか」

「だめ。最初は関わっている人数から聞かないと!」


もう一人の少女が制す。


「あ。そっか。ごめんなさい。マユコ様。間違えました。

私のイジメに関わっている人は何人ですか」


 しばらくの沈黙の後、十円玉が動き出す。


 少女たちは期待しながらも、恐怖で息をのむ。


十円玉は数字を滑っていく。


「いち、にい、さん、よん。・・・4で止まった。4人だ」


 鉛筆を持っている片方の少女がほっと息を吐いた。

思ったよりも少ない人数で安心したのだろう。クラスの大多数だったりしたら、

もう怖くて学校には来れない。


中学まで親友だった三人は別のクラスになってしまった。

その中でも、しっかり者の一人がこれを提案してきたのだ。

彼女は鉛筆を持っているもう片方の子である。


十円玉は「ゔ」に戻っていくが、もう誰もそれを不思議に思わない。

「ゔ」に戻った十円玉は添えられた2人の人差し指の意に反し、

細かく震えている。


「じゃあ、次に行くね」


「ここ3日の間、私の下駄箱にゴミを入れた首謀者は誰ですか」


 十円玉が動く。


「た」4人で声を合わせる。「に」十円玉は大きく斜めに動き「さ」。


 もう、苛めを受けた女の子はそれが誰だか判った。

「谷坂」同じクラスの女子である。

嫌な思いをさせた覚えはない。そして、私を嫌っている素振りを

見せたこともなかった。

そうなんだ。私のこと嫌いなんだ。

なら、良い。誰か分かったからいい。

あの子の周りに3人居たから、きっと、その4人でやっているんだろう。

私は、気は強くないけれど、理不尽な苛めに遭い続けるつもりはない。

明日、皆の前で言ってやる。

「マユコさんに聞いた」といえば、皆だって信じてくれる。


「あなたに、嫌な思いをさせたつもりはないんだけれど。

下駄箱にゴミを入れるような陰険なイジメはやめてくれる?」


って、ちゃんと目を見て言ってやる。

少女は静かに、でも強く決心した。



突然、教室の扉が乱暴に開く。


「こら!こんな時間に何やっているか。うん?他のクラスの生徒じゃないか。

勝手に入るんじゃない。さっさと帰りなさい!」


学年主任の怒声に少女4人は飛び上がり、慌てて荷物をもって扉から出て行った。

その初老の学年主任は、すぐに怒鳴るので、生徒から怖がられている。


机の上には紙が置いたままである。十円玉も最後の「さ」から、

どこかに行こうとしたまま止まっていた。


「おい。」


学年主任が机の上の紙の傍を人差し指でなぞる。


「おい。」


誰もいない教室に初老の男の低い声が響く。


「いるのか?マユコ」


愛おしむ様な声で紙に向かって囁いた。


男の指がそっと十円玉に触れようとした瞬間。

十円玉が、誰の指も乗せられていないのに、飛ぶように動き「ゔ」で震え続けた。


「居るんだな。マユコ。ずっと、居たんだな」


「俺と一緒に居ような。マユコ。マユコ」


 囁く声を振り切るように、十円玉は「いいえ」に飛び、

そして、書き込んである鳥居に戻った。


「帰ったのか?でも、ここからは出られはしないんだろう?なあ。マユコ」


学年主任はコックリさんならぬ、マユコ様の紙を畳んで十円玉と一緒に

胸のポケットにしまった。


「お前は出られはしないんだ・・・愛しているよ。マユコ」


胸のポケットを上から撫でながら、扉を開け、教室内を振り返っていから、

扉を閉め、去って行った。







誰も居ない夜の2年C組では、少女のすすり泣く声が時折、聞こえるという。












コックリさんをしたことがある人は、どれくらい居るのでしょうね。

私もやったことがあります。

興奮と驚きと、やっている人たちとの連帯感と、そして、少しの恐怖がありました。

本来は誰かの意志や、皆の期待により、十円玉は動かされていくのでしょうが、

もし、本当に十円玉に霊が関与していたら。

との思いで書いてみました。

高校の一室で行わなければならないのは、きっと、その霊がそこから動くことが

出来ないのでしょう。

霊と人の怖さを少しだけ味見してください。


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― 新着の感想 ―
[一言] 私が子供の頃はキューピッド様というのが流行ってました。 黒い感情の連鎖が見え隠れして恐ろしいですね。 先生、何があったんでしょう……。背筋がヒヤリとしました。
[良い点] まさかのオチ! 霊より怖いのは生きてる人間、ですねぇ…… [一言] 霊感は全く無いのに、コックリさんは、なぜか怖くてやったことがありません。
[良い点] これまたなんと…… まさかのオチでしたねぇ [気になる点] 僕の地元ではコックリさんは十円玉 キューピットさんは鉛筆(シャーペンなども可) でしたが、作中で出てくる鉛筆が気になりました 同…
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