008 うらの畑
俺はロック。
ジュベール家に召喚された石(勇者)だ。
今は貧相な朝食を少しだけ味わっている。
異様に野菜が多いんだよな。
ここの食事は。
少しだけ口で吸収するとそれで十分満たされる。
セバスじゃないがこれはこれで便利だな。
悪くない。
「なぁ、今日は一日何するんだ?」
「ゆ、ゆっくりする」
「そうだろうな!
働いてないんだもんな」
「セバスはいつもは何してるんだよ?」
「午前中は主に屋敷の掃除をしております」
「クララは?」
「し、しりとり」
「はい、スベったー。
もう1回な。クララは?」
「じ、柔道」
「やってないなー、絶対!!おい!
何キロ級だよ?
てかっ、やっぱりしりとりの段階でボケてたんだな!
俺はテッキリ本当に1人でやってるんだと思ったよ。
普通に聞いてる時は普通に返してくれよな!!
話進まないから」
「む、無差別級」
「その話、もういいよ!
それツッコミの一部だから!!質問じゃないからな!!!
本気で聞いてないからな!!」
「お嬢様は畑を耕していらっしゃいます」
「え?そうなの?
なんだよ?家庭菜園かよ!
いいじゃねぇかよ!
ボケないで普通にそれ言ってくれればいいのによ!
クララ!」
「ロックはまだ外に出たことがありませんでしたね」
「まぁ、窓から大体の景色は見えてるけどな」
そう。ここは中世ヨーロッパの田舎ってところか。
ベタなラノベ設定のベタな田舎ってとこだろう。
隣の家は小さく見えるが、数百メートルは離れている。
「は、畑みてみる?」
「おぁ、そうだな。
せっかくだから見せてくれよ!」
玄関を開けると思った通りの景色。
外は快晴。気持ちが良い。
窓からは見えなかったが遠くに風車も見える。
「雰囲気あるじゃねぇか?」
「ろ、ロック!
は、畑は裏側」
「おぉ、そか!」
俺は振り返って驚愕した
「ヘクタールだな!北海道か?
専業農家だよな!
この家の敷地の百倍はあるよな?」
とんでもない広さの畑が広がっていた。
「お嬢様がこの5年かけて耕しました」
「すげーよ!すげーけどさ
数百メートルは離れてる裏の家の近くまでいっちゃってるぞ?!
いいの? あれ?
土地の権利とかそういうの問題じゃねぇの?
許可とってんの?」
「お嬢様は雨の日でもクワを持ち大地を耕しました」
「スルーってことは許可とってねぇな!!
把握してるぞ!そのパターンは!」
まあいい。
俺が是正させる問題でもないだろう。
「だからこの家では野菜料理が多いんだな。
てか、食べきれねぇだろ!
こんな広さの畑から獲れる野菜!」
「野菜は街から買って来ております」
「え? なんで?
この畑で獲れたのはどうしてんの?」
「お嬢様は畑を耕すのを好まれます。
畑には何も植えておりません」
「植えろーーー!!
何してたんだよ。五年間!!
じゃあ、なんなんだよ?! この空間?
なんの意味があるんだよ?」
「ロック。あなたはまだ若い。
意味ばかり気にしては見えるものも見えてきませんぞ」
「なに年の功のアドバイスみたいにしてんだよ?!
見えるよ!そして聞こえるよ!
使命を全う出来ない大地の悲痛な叫び声がよ!」
「す、スベった」
「ボケてねーよーーー!!」
本当しんどい。
畑どうしよ……