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007 名づけ

 これから俺はどうなるんだろ?


 隣の布団で年増の女がむちゃくちゃイビキかいて寝てる。


 童貞の俺が初めて女性の近くで横になっている。

 けど何もドキドキしない。


 俺はもはや男性ですらない。

 石だ。性別あるのかな?


 俺は床に厚めの布切れを引いて横になっている。

 床が傷つくの気にしている。

 オブジェだ。学習机とかと同じ扱いだ



 今日は長い1日だった。


 あれから貧相な夕食の一部を少しだけ分けてもらい。

 口で味わってみた。

 どう言う仕組みかわからんがやっぱり味覚はある。


 けど少量ですぐに満腹になるし、そもそも石の俺には食事が必要ないのかもしれない。


 俺の食事が少量で済む事がわかるとセバスは露骨に喜んでいた。


 俺は、このよくわからない異世界で石として生きていく……


 改めて考えるとすげーヘビーだ。

 石だけにね。


 笑えない冗談を思いついても、もちろん笑えない。


 俺だってハーレムのフェルナンドになりたかった。

 すげー、うらやましいよ。本当……


 けど、それ以上にこいつらはフェルナンドを求めてたんだろう。


 いづれにせよ、凹んでてもしょうがない。

 石だけにね。


 冗談にすらなっていないか。

 まぁ、いいや。


 そんな風に考えてたら意識が遠のいた。




 ♢




 次の日、となりの女のイビキで起きる。


 初めての経験だ。

 少しイラッとする。


 辺りは既に明るくなっていた。

 すぐにクララも起きた。


「お、おはよう」


 初めて隣で横になっていた女性から寝起きの挨拶をされる。

 髪で顔は見えない。


 初めての経験だ。

 これは悪い気はしない。


 この家には2部屋しかない。

 ダイニング兼リビングの部屋。


 そしてお嬢様であるクララの部屋。

 つまりこの部屋。

 この部屋でも四畳半くらいしかない。


 セバスは夜の片付けものが終わるとリビングに布団を敷いて寝ている。


 本当に切り詰めた生活をしている様だ。


 リビングに行くと、既にセバスが起きていて朝食の支度をしていた。


 少し遅れて部屋から出て来たクララが、テーブルに座ると同時にコーヒーが出てくる。


 こう見てみると本当にセバスは洗練された執事なのだろう。

 悪役令嬢の方はムチャクチャなお嬢様だが……


「なぁ。セバス。お嬢様の世話はいいけどよ。

 俺にもコーヒー出してくれよ。

 少しでいいからよ!」


「はぁー」

 もはや定番となったハッキリとした溜息をつく


 そして俺の方にもオチョコみたいな小さいカップでコービーを出してくれる。


 まぁ、本当に俺は少し風味を味わうだけで十分なのでその量でいい。


 コーヒーをクチに流しこむ。


「おっ、うまい。

 さすがセバスだな」


「石のわりにはうまい事いいますね」


「別にうまい事は行ってないだろ!」

セバスは褒められたのをごまかしたのかもしれない。


「そういえばお嬢様。石の名前は決められましたか?」


「う、うん。一晩じっくり考えてみた」


 部屋入ったらすぐにイビキかいて、それからずーっと大イビキ鳴りっぱなしだったけどな。


 まぁ、それは良いだろう。

 クララなりにちゃんと考えてはいたのだろう。


「じ、じゃぁ、発表する」


「なんだよ。もったいぶるな。クララ」


 しっかり間をとった後、クララが口を開く



 ドキドキ


 ドキドキ



「ロック」


「安いよ!!安すぎるよ!!!

 俺、一秒で思いつくよ。石からすぐ連想できるもんな!!

 一晩おいた意味、絶対ないだろ!!!」


 こうして俺のロックとしての異世界生活が始まる。

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