005 勇者フェルナンド
味覚が一応存在することを知って喜んでいたところ。
玄関からノックが聞こえて扉が開く。
女が部屋に入ってくる。
金髪で巨乳で長いまつ毛に大きい目。
その下に涙ボクロ。
ゴージャスなドレスを着ている。
認めよう。ムチャクチャかわいい。
「クララおばさん。ごきげんよう」
美女が言う。
「こんにちは、クララさん!」
美女の後ろからは、こちらも金髪で目鼻立ちがハッキリした甘いマクスの青年。
鎧を身に纏い剣を腰に下げている。
その姿はまるで勇者だ。
ん? 勇者……?
「けっ! き、来たな。淫売」
クララが不機嫌そうにつぶやく。
「えーーー?!
おいおい、クララ。
いきなり結構な物言いじゃねぇかよ?!」
「あら?
こちらの石は喋るお人形さんかしら?」
「い、石だ」
「説明になってないだろ! クララ!」
「こんにちわ。石さん。私はローラ・キャルメオ。
勇者 フェルナンドの第一夫人よ。
そして、クララおばさんの姪よ」
「おう。よろしく」
くそ。既婚者かよ。
ん? 第一夫人?
「どうも。フェルナンドです。
これからも月一で来るからよらしくね」
爽やかな笑顔でフェルナンドは俺に微笑みかける。
「お、おう」
くそ。イケメンだわー。
「ちょっとー、早く帰るって言ったでしょ。
私、クララおばさん苦手だし」
また一人女が部屋へ入ってくる。
赤髪で勝気そうだ。
キリッとしたキツい目をしている。
ローラ程では無いにしても、こちらも胸の膨らみがすごい。
認めよう。こちらもムチャクチャかわいい。
少なくとも俺が今まで話をした事のある人間のなかでトップ1と2が同時に来た。
「こらっ、レオナ!
ちゃんと挨拶しなさい」
ローラがレオナを叱る。
「おばさん、こんにちわ。
喋る人形なんて本当珍しいわね!
まぁ、独り身のクララおばさんにはちょうど良いわね」
《ペッ》
「う、うるさい、淫売2」
……クララは床にツバ吐くって大概だぞ。
しかも、淫売2って……
思いつかなかったんだろうな……
「私はレオナ。
勇者 フェルナンドの第二夫人よ」
えっ? うそ?
またフェルナンド?
くそ。くそ。くそ。
「おぅ」
俺は素っ気なく答える。
「もー、これで良いでしょ。姉さん。
早くお金あげて帰ろう」
「まったく、レオナったら」
ローラは困った様に肩をすくめる
「クララおばさん。
はい、これ今月分ね」
ローラが封筒を出すと、それをひったくる様にクララが乱暴に受け取る。
「は、早く帰れ淫売」
《ペッ》
クララは暴言を吐いて、ツバも吐く。
本当最低な令嬢だよ……
「まったくクララさんはつれないなー。
まぁいい。今日はもう帰ろう。
ねぇ!ハニー達!」
そう言ってフェルナンドは両脇に居たローラとレオナの肩を抱いた。
そして、そのまま両手で2人の胸を《ムギュ》っとした。
「やだー、あなた」
ローラは照れる
「えへへ」
レオナはうれしそうだ。
俺はあまりの出来事に失神しそうになった……
そのまま三人は部屋から出て行った。