002 勇者じゃないの?
突然、貧相な家で石として召喚された俺は説明を求める。
「おい、とりえあず事情を説明してくれ。
俺は勇者なんだろ?」
「はぁーーー」
爺さんが嫌な顔しながら深いため息をつく。
「あなたは勇者じゃありません」
「えっ? なんでだよ?
勇者召喚したんだろ?
じゃあ、俺はなんなんだよ?」
「あなたは石です」
「だろうね!!見りゃわかるわ!
けど、なんかそういう世界なんだろ?
俺、世界救うんだろ?」
「石に世界は救えません」
「ディスってるよね?
なんか悪意感じるわー。
じゃあ、本当はどんなのが出てくるはずなんだよ?」
「金髪で青い目をした美形の青年が伝説の剣を持って召喚されることを期待しておりました」
「そりゃあ、だいぶちがうな!
人ですらないしな!!」
「魔王を倒した後は、クララお嬢様を娶って頂き、我がシューベルト家をーー」
あの女はクララと言うらしい。
「あーもう、わかったよ。
帰るよ。帰らせてくれよ。
また次、金髪の勇者が出るといいな」
「それは叶いません」
「なんでだよ?」
「勇者召喚を出来るのは限られた血筋の巫女が一生に一度だけ。
クララお嬢様はその一回をたった今使われたのです」
「俺、帰れないの?」
「はい」
「俺、この世界に居て何かの役に立つの?」
「いいえ。石ですので」
「はっきり言うな、おい!
前の世界じゃそこそこ役たったよ、俺」
まぁいい。別に未練はない。
「じゃあ、どうするんだこれから?」
「鏡を運ぶのを手伝って頂けますか?」
「お、おう、そうか。
具体的なやる事ちゃんとあるんだな。
まぁ、そのくらい。やるわ。
どこに運ぶんだ?」
「質屋です」
「売るのかよ?!
なんかすごい鏡なんじゃないの?」
「もう必要ありません」
「えっ?なんでだよ?
さっきステータスとか見てただろ?
これから俺が成長とかして、おもしろくなるんじゃないのかよ?」
「石にステータスはありません」
「嘘つくなよ!!俺見たぞ!
さっきレベル2って出てたろ!」
「この鏡は勇者のステータスを見るものです。
それに召喚が失敗した今、私たちは少しでもお金が必要です」
そんなん言われてもな……