001 俺は石になる
35歳
キモデブ
超社畜
独身
彼女なし
高専出てプログラマーになってそれから1つの会社で飽きずに15年間。
残業、休日出勤あたりまえの超社畜。
会社と上司にはいい顔して、後輩には会社と上司の愚痴をパワハラで聞かせてる。
もともと高専で女っ気のなかった俺はそのまま女っ気のないプログラマーになり遂に35歳で童貞になった。
まぁ、女っ気あったとしてもキモデブだからもてなかったろうけどさ。
俺の周りの奴なんてそんな奴ばっかだしそんなに気にならん。
いつもの駅から家までの帰り道。
イチャイチャしたカップルを見つけて思う。
リア充爆発しろ!
爆発しろ!
ばくは……
あれ? クラクラする。
辺りが真っ暗になって。。
意識が遠のく
♢
目を開けると、鏡? がある。
「お嬢様、失敗です。
石が出て来ております」
鏡の右隣に立っている、執事の恰好をしたじいさんが言う
「い、石は嫌いじゃない」
鏡の左隣の黒髪の女。
前髪が長すぎて良く顔が見えない。
すごく痩せている。
貞子みたいだ。
じいさんも女もこっちを見てる。
「おれ? 俺のこと?」
「お嬢様、石が喋っております」
「し、喋る石は嫌いじゃない」
なんとなく察するに、鏡に映ってる石で出来たAmazonのダンボーみたいなのが俺なんだろう。
小さい。1メートルくらいだと思う。
下を見ると、俺の足元にはなんかの模様?
儀式に使うような円陣が書かれている。
貧相な作りの木の家に、それに不釣り合いな金縁のデカイ鏡がある。
よくわからない。
「お嬢様、どうされますか?
続けますか?」
「つ、続けて欲しい」
ん、うん
咳払いをして爺さんがいう。
「勇者よ。
さぁ、この鏡に手をかざし、己の力を見せてくれ」
「え? 何? 勇者?
俺、ダンボー君みたいだけど勇者なの?」
わかったぞ。これ異世界の勇者召喚なんだ。
知ってるぞこの設定。
「まじか?!
やったぞ!
物語で言えば主人公だよな、俺!」
「勇者よ。
さぁ、この鏡に手をかざし、己の力を見せてくれ!」
じいさんは無機質に続ける。
「なんだよ、つれねえな。
じいさん。
まぁいいや」
言われた通り手をかざすと鏡が光った。
そして文字が浮かび上がる。
レベル: 2
HP: 9
MP: 4
ギフト: 軽くなる、重くなる
「お嬢様、失敗です」
「い、石は嫌いじゃない」
「もういいよ!!その下りさっきもやったろ!」
俺は失敗なのか?
まぁステータスみたら弱そうだ。
けど、最初はこんなもんなんじゃないのか。