ブルマについてのいくつかの思い出 中学編 1話 思春期がやってきた
僕が通っていたのは生徒数1000人くらいのありふれた市立の中学校だった。
それがやって来たのは確か一年生の9月中旬だったと思う。
14−5才の男子は早い奴だとアイドルに興味が出始める年頃だが僕はアイドルや彼女などには全く興味がなくて本の虫(死語)だった。本屋に行くと何時間か立ち読みして夕方に帰っていく。
ネットや携帯電話が出てくる前はTVで放送される事以外のこの世のすべての情報源で世界と繋がっているのは本屋だけだったのだ。
鉄道雑誌なんかを眺めて行ったこともない他県の路線や乗ったこともない車体に思いをはせるだけで幼少期の悠久の時間は流れて行った。
そんな僕の中学での一番の思い出の全長は体育祭の予行演習の時に始まった。
中学に入ってからは男女別々に体育の授業が行われていたがその日の体育は一年生全クラスがグランドに集合整列していた。
先生の話を聞きながらぼんやりと前を見ていた僕はあることに気がついた。
女子の列の前の方に一人だけすごく腕の白い女子が見えたのだ。
あんなに肌の白い女子が自分のクラスにいるんだ。
それは同じ小学校から進学したゆかりさんだった。
小学校の時には何回か同じクラスにになったことがあるのにまったく気がついていなかった。
ゆかりさんの腕はすごくきれいで白かったのだ。
白い半袖シャツに紺の長ジャージで背筋をピンとのばして立っているだけですが僕にはほかの女子とはまったく違う何かに見えた。
その時はすぐにラジオ体操が始まったがあとで教室にもどってからもう一度ゆかりさんを遠くから眺めた。
やっぱりすごく白くきれいな肌だった。
制服のスカートに着替えているので少しだけひざも見える。やはり他の女子より白いひざだった。
確かその日は帰って夕食を食べてからもファミコンもせずに自分の部屋にすぐ入って
クラスの名簿でゆかりさんの住所や電話番号をながめてすごしたと思う。
気持ちが盛り上がってもそれをどうしていいかもわからず電話番号を見るだけでもドキドキ出来たのだ。
ゆかりさんは細めで背は小さめで少しウェーブしたショートヘア。
すごく美人ではないけど顔はどことなく猫っぽい。
小学校に行く途中に実家があり両親は美容院を営んでいる。
僕と同じで声が小さい。
そうやって知っている情報をすべて思い出して何回も頭の中で繰り返した。
急に学校が楽しみになった。合同練習は当日まで数回行われる予定で明日になればゆかりさんの腕を後ろから眺める事が出来るのだ。
次の日、朝の連絡の時間に担任の先生がいった。「体育祭までに合同練習は後3回だけです。今日からは男子は半袖短パン、女子は半袖にブルマでグランドに集合してください」
それがブルマを初めて意識した時だったと思う。
グランドに整列すると最初は顔は動かさず目だけを使ってゆかりさんを捜した。
肌が白いのですぐわかる。初めて見るゆかりさんのブルマ姿は信じられないほどきれいだった。
白い肌と紺色のブルマのコントラストは20人ほどいる女子の中でも飛び抜けてきれいだった。
準備体操が終わってからも行進の練習があるのでゆかりさんは視界に入っている。
しばらく練習した後、僕は休憩中に友達とお喋りするゆかりさんが視界に入るように場所を移動した。
でも3秒以上の直視は出来ない。
恥ずかしくて長い時間は見れないのだ。
そのうち気がついたがちらちらとゆかりさんの方を見るだけなのですが少し変なざわざわ感がある。
アイドルすぎるのだ。
数人の女子の中で明らかにゆかりさんだけが輝きすぎて見える。
違和感の理由はブルマの色だった。
みんな暗い紺ですがゆかりさんのブルマだけが青みが強く輝いて見えるのだ。
気のせいじゃない。
一人だけ目立つブルマに真っ白な足。僕にはゆかりさんがセンターポジションのアイドルのように見えた。
どうしてだろう?
訳が分からないまま体育の練習が終わった。
しばらくして僕はゆかりさんの体操シャツについているマークが他の女子と少し違うことに気がついた。
シャツにはMのマークがついている。
これが他の子は(僕も含めて)斜めになっているのだがゆかりさんのMマークは直立している。
よくみると同じクラスの男子にもシャツにこのマークがついている子がいる。
後でその子に聞いてみると理由はを教えてくれた。
「これは兄貴のお下がりなんだよ」。
僕はゆかりさんのブルマもお姉さんのお下がりだったのだろうと推測した。
生産時期によって生地が違うのでナイロンの混紡比が変って古いブルマは青っぽく輝いてみえたのだ。
女子全員の創作ダンスと男子全員の組体操はグランド全体を使う。男子は女子が創作ダンスをしている間見学する時間になった。僕は体育祭までの何回かのダンスの練習をベストなポジションで見学できた。
ゆかりさんはいつも熱心にステージをこなしていた。
おそらく何でも熱心に挑戦するタイプなんだと思った。
おそらく5−6回の公演だったけどこれほど僕の人生を左右したステージはなかったと思う。
ともあれゆかりさんはセンターポジションにふさわしい特別コスチュームで僕の初めてのアイドル経験になった。
今でも僕の記憶に出てくるゆかりさんはキラキラとした体操服で創作ダンスを踊っている。
イラストはゼログラビティ・スタジオ様です。
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