甘えん坊な彼女
「ねえ、私のどんなところが好き?」と彼女が訊いてきた。
「どんなところ?」
「そ。私の好きな部分、言ってみて」
「うーん、いきなり現れてそんなこと言われても」
腕組みをしながら「うーん」とうなっていると、彼女はプンスカ怒りながら顔を突き出してきた。
「ないの? 私の好きなとこ」
「い、いや、なくはないよ」
「じゃあ、言って」
「えーと……頭をなでたくなるとこ」
そう言って、突き出された頭に手を置きなでなでする。
「えへへー」
気持ちよさそうに目を瞑る彼女にほっこりしながら、逆に尋ねる。
「じゃあさ、君は僕のどんなところが好き?」
「え?」
「僕の好きなとこ。僕が教えたんだから教えてよ」
「ええー。やだ」
恥ずかしそうにうつむく彼女に苦笑しつつも、その身体を抱き寄せてギュッと抱きしめる。
「わっ、なにするの?」
「へへ。教えてくれないお返し。言うまで離さないよ?」
「じゃ、言わない」
「へ?」
「言ったら離されるんでしょ? だったら言わない」
「ず、ずるっ!」
なんてことだ。
まさかそんな返しでくるとは。
彼女の方が一枚上手だった。
「僕は教えたのに!」
「私は教えるなんて言ってないもん」
「じ、じゃあ言わなかったら離しちゃうよ?」
「離されたら一生言わない」
「ひ、ひどひっ!」
一枚どころじゃなかった。彼女は二枚も三枚も上手だった。
「はあ、もう降参降参! 離さないから教えて」
彼女は僕の腕の中でクスクス笑って「しょうがないなあ」と言いながら教えてくれた。
「あなたの好きなところはねえ」
「うん」
「抱きしめられると心地いいとこ」
そう言って、僕の頬をペロリと舐める。
「あなたの両腕の中が、世界で一番好き」
恥ずかしげもなくそう言うのは、彼女が「 ね こ 」だからだろうか。
僕は両腕の中で気持ちよさそうに目を瞑るアメリカンショートヘアの彼女を抱きしめながら、ごろんとベッドに横たわったのだった。