あの時、一緒にバスを待っていた君へ
寒そうな冬の空を見上げていたら、ふと昔の事を思い出しました。
あれは高校三年の冬。
雪の激しい地域に住んでいた僕は、冬の間、自転車が使えなくてバス通学をしていました。
その時、決まって同じ時間帯の同じバスに乗る１学年下の女の子がいました。
ものすごい田舎だったので、バスの本数も少なく必然的にそうならざるを得なかったのですが、僕はその子といつも一緒にバスを待っていました。
と言っても、会話はありません。
学年も違うし、性別も違う。
何を話せばいいかわからないし、話しかける度胸もありません。
ケータイなんてまだ高校生では持たせてもらえない時代。
することがありませんでした。
僕はただひたすら黙ってバスを待っていました。
その子も、黙ってずっとバスを待っていました。
けれども僕にはその時間がとっても幸せでした。
そうなんです。
僕はその子の事が好きだったんです。
豪雪地帯だったので、激しく雪が降る日もあれば、凍てつくような寒さの日もありました。
澄んだ青空がきれいな日もあれば、どんよりとした灰色の空の日もありました。
バス停の真後ろには、今はつぶれてしまったたい焼き屋さんがありました。
僕は時折、そこでたい焼きを買っては一人で食べてました。
今思えば、二つ買って一つあげればよかったなって思います。
話しかけるチャンスだったのに。
半分に割って、頭の方をあげるっていう手もありましたね。
あんこが嫌いでなかったらですが。
ちなみに、その子がたい焼きを買って食べる姿は一度も見たことがありませんでした。
嫌いだったのかも（笑）
その後、僕はそのまま関東の大学に進学しました。
彼女がどうなったかは知りません。
冬の季節の、ちょっぴり切ない思い出でした。
今、これを読んで「あの時の！」と気づいてくれてたらと嬉しいなと思い、メッセージを送らせていただきます。
「あの時、一緒にバスを待っていた君へ」
冬は雪かきや雪下ろしが面倒くさくて大嫌いでしたが、君と一緒にバスを待つ時間だけは大好きでした。
黒いコートを着て、ちょこんと隣に立つ君の横顔に僕はいつもドキドキしてました。
たい焼き、いつもひとりで食べてごめん。
半分に割って「はい」って言えなくてごめん。
勉強どう？ って話しかけられなくてごめん。
寒くない？ って気にしてあげられなくてごめん。
あれからだいぶ時間が経っちゃいましたが、今でも君の事を思い出します。
まだあのバスに乗っているのでしょうか？
あのつぶれてしまったたい焼き屋の前のバス停で待っているのでしょうか？
今度、実家に帰ったらあのバス停の前に立って君との思い出に浸りたいと思います。
いまさらですが。
もう十何年も前のことですが。
当時の僕の気持ちを伝えたいと思います。
いつも隣にいてくれてありがとう。
君のことが……好きでした。
活動報告より抜粋しました。
