一生懸命ほど美しい~感動した話~
こちらは実話をもとにしたフィクションです。
これはとある小学校でのお話。
その小学校のあるクラスでは年に一回1000m走が催されます。その1000m走は全員参加で、よほどのことがない限り休めません。けれども、たった1000mですので、みんなやる気なく参加してました。
1000m走は、1周200mのトラックを5周して終わりという簡単なものでした。
「よーいどん!」
先生の掛け声でクラスのみんなはいっせいに走り出しました。
みんな、やる気がないためダラダラと連なって走っています。
ところが、そのずっと後ろ。
一人の生徒がかなり遅れて走っていました。彼は生まれつき足腰の筋肉が弱く、みんなのようにうまく走れないのです。
それでも、その生徒は一生懸命走っていました。
ダラダラと連なっていた他の生徒たちはそんなこと気にも止めず、2周3周とトラックを回ります。当然、その生徒は周回遅れで追い越されていきました。
やがて、ダラダラと連なっていた生徒たちが1000mを走り終えました。
「あー、ダルかった」
そう言ってくつろぎはじめようとしたときです。
先生の怒った声が聞こえてきました。
「まだゴールしてないヤツがいるだろう!」
その声にクラス中の生徒が顔を向けました。そしてハッとしたのです。いまだにトラックの中をたった一人で走っているクラスメイト。
その生徒はダラダラと走っていたみんなと違い、一生懸命走っていました。
額に汗を浮かべて、一生懸命走っていました。
その姿に、みんなは気づきました。
ダラダラ走って、先にゴールしてくつろぐ自分たちがいかに恥ずかしいか。
遅いながらも、一生懸命走ってゴールを目指すその生徒がいかにカッコいいか。
そして、彼らは言うのです。
「先生、もう一度走っていいですか?」
こうして彼らは再びスタートラインに立つと、今度は本気で走り始めました。
それは1000m走とは思えないほどの全力疾走でした。
2周、3周、4周と続けていくうちに、みんなの顔がヘトヘトになっていきます。それでも、誰もやめようとしませんでした。その苦しみを、遅れて走っていた生徒はずっと続けていたからです。
クラスのみんなが5周走り終えた頃、その生徒はやっと5周めに突入した段階でした。
生徒たちは全力疾走で疲れていましたが、その生徒に駆け寄ると一緒に走り始めました。
「頑張れ!」
「もうちょっとだぞ!」
励ましの言葉を背に、遅れていた生徒は顔をくしゃくしゃにしました。
眉をへの字に曲げ、涙を流しながら一生懸命走りました。
「頑張れ! 頑張れ! 頑張れ!」
その生徒はクラスのみんなに励まされながら見事自分の足で1000mを走破したのでした。
彼がゴールした瞬間、誰もがその頑張りを讃えました。
誰もがその一生懸命さを称賛しました。
気が付けば、校舎内からも拍手が巻き起こっていました。
クラスのみんなが発した掛け声に全校生徒が気づき、授業中にも関わらず彼らの1000m走を見守っていたのです。
遅れて走っていた生徒は涙を流しながら手を振り返したのでした。




