ハッピーハロウィン
ハロウィンの時に活動報告で書いたSSです。
『トリックオアトリート!』
朝、庭にある郵便ポストにこんな奇妙な手紙が入っていた。
差出人は不明。
どこから投函されたかも不明。
なんだこれは、と思いながら手紙を眺めているとポストの影から一匹の小鬼がこちらをジーッと見つめているのに気がついた。
僕の膝丈くらいしかない、小さな小さな小鬼。
それでも郵便ポストよりは大きくて、とても隠れ切れていない。
そうか、この手紙はこの小鬼のものか。
よく見れば覚え立てなのだろう、「トリック・オア・トリート」が「トリック・アー・トリート」となっている。
僕はクスクス笑いながらそれを懐にしまった。
まさか日本の妖怪にまでハロウィンが浸透してるなんて。妖怪の世界もグローバル化が進んでいるんだな、と思いつつ家の中からお菓子を持ってくる。
小鬼はそれを見て顔を輝かせた。
どこからどう見てもバレバレなのに、隠れ切れていると思っているところが可愛らしい。
僕は気づかないフリをして郵便ポストに持ってきたお菓子を入れた。
「どこの誰かはわからないけど、持っていきな」
そう言ってその場から離れると、小鬼はすぐさま嬉しそうにお菓子の袋を持って走り去って行った。
ハッピーハロウィン。
ちょっと少なかったかな?
来年は、もっとたくさんのお菓子を用意しよう。
すでに見えなくなった小鬼の姿を思い浮かべて、僕はそう誓った。