一章 5話
文句は後で聞く。だからまず読んでくださいお願いします!
私は、 突然訪れた出来事に驚きを隠せませんでした。
(もう終わりだ……!)
そう思い、顔を伏せた直後の私に突然突風が吹きました。そして、
「ギャッ!」
そんな声が聞こえてまた突風が吹きました。あまりにも突然の出来事で私は顔をすぐにあげることができませんでした。
突風が止んだ後、私は狼が襲ってこないことに気付きます。それを不思議に思って顔を上げると。
「……っ」
声が出ませんでした。すぐ側には神様がいました。でも、神様の腕と足が、人じゃないおばけのような形になっていたのです。私はそれが怖くて声一つあげることができません。
怖くて何が起こるかわからないので、神様の姿を目から話さないようにしていると神様よりもっと遠くに狼がいるのに気付きました。その狼は横になったままぐったりとして動きませんでした。
そこでようやくハッ、と気が付きました。
(もしかして助けてくれたのかな……?)
それならお礼を言わなきゃ、そう思った私はおそるおそる声をかけようとしました。神様はさっきからずっと自分のおばけになった腕を見つめています。そこから一歩も動くことなくただただずっと自分の腕を見ていました。
(やっぱり、こわいです……。でも……!)
勇気を出して、ありがとうって言おうとした私はあることに気が付きました。そのため、私の口から出る言葉は知らないうちに違う言葉に変わっていました。
「あの……、大丈夫ですか?」
神様は、泣いていました。
「その……、神様が泣いてたので……」
「え……? 泣いてた?」
そう言って神様はおばけじゃない方の手で涙を拭います。
「あ、ホントだ。俺いつのまに泣いてたんだろう?」
「どこか、痛いんですか……?」
所々から流れる血を見て私は聞きました。
「え、いや、うーん痛いといえば痛いかな! ハハハッ! あ……、いったぃ……」
私を心配させまいとして神様は笑ったのでしょうか、そのせいで痛みが大きくなったみたいです。
「ごめんなさいっ! 私のせいで……!」
「え、いやいやそんなことないよ! 君のせいじゃないよ、俺が勝手に傷を負っただけなんだから! 分かった?」
「で、でも……!」
「いい、いい、いいよ、そんなに気にしちゃダメだよ。ホラッ! 見て見てこの動き! 全然痛くないからこんなに動けるんだよっ! ……あっ、やっぱ痛いわコレ……」
「あっ、ははっ、ウフフッ」
ダメです、我慢できませんでした。何とか私を心配させまいとしているのにも関わらず、何回も何回も最後に痛いと言われれば流石に私も気付きます。
「私の傷は大丈夫です。神様が守ってくれていたのでもうあんまり痛みはありません」
「え? あ、そ、そう?」
「それに、私を笑わせようとしてくれたんですよね?」
「えぇ? い、いやぁ別にそんなことはぁ、ないんじゃないかなぁ!?」
こちらにそっぽを向いて明後日の方向に神様は言い訳をしています。
少しだけ様子を見ていると少しだけチラッとこちらを確認し、目が合うと途端にそっぽを向く神様。それを見て私は思いました。
(やっぱりいい人なんだ)
「神様、助けてくれてありがとうございます」
「え!? あ、ああうん、ど、どういたましてっ! ああっ噛んだ!」
「ふふっ」
「え、えへっへへへ……」
少しの間神様と私はお互いの顔を見ながら笑いあいました。
すると、神様は急に真面目な顔をして私に質問をしてきました。
「ね、あのさ……、この手と足を見ても怖くないの……?」
よっぽど心配していたんだと思います。その時の神様の顔は本当に不安そうで、もう少し見てみたいと思ってしまったほどでした。そんな神様に私は言いました。
「いいえっ、全然怖くないですよ!」
「そ、そっか、ありがとうっ!」
すると神様のお顔は、みるみるうちに元気のなかった下を向いて萎んでいたお花が上を見て花開いたような、そんな顔になりました。そして神様は言います。
「そ、それとさ、神様ってもしかしなくても俺のことだよね? できればそれ、やめてくれない?」
「ふぇ?」
(どうしよう、神様に嫌われたのかな……)
そう思った私の両目には少しずつ涙が溜まっていきました。
「神様は、私のこといやッ、なんです、か?」
「えええイヤイヤイヤ、そんなことないよ、好きだよ、大好きだよ!? 俺のこの腕と足見て怖がらない人を嫌いになるわけないでしょっ!?」
「じゃあ……、どうしてですか?」
「えっと、それはね……」
私はついに我慢できなくなって、
「う…、ううぇぇぇぇん!!」
泣いてしまいました。神様はあからさまに驚いた顔をしてアタフタしていました。
「あああ違う、違うの! 神様って呼ばないでっていうのは俺は神様なんてものじゃないからで! あああお願い泣かないでぇぇぇぇ!!」
「はい」
「って、ええっ!?」
神様は訳がわからないと言った様子で目を白黒させています。
「? どうかしましたか?」
「え? あ、いや……ええ?」
「それよりも、神様って呼んじゃいけないんでしたらなんて呼べばいいんですか?」
「え、そうだな……、俺の名前は深山燐だから……」
「ミヤマリン……、ミヤ、マリン……」
その時、私の頭に一つの閃きが舞ってきました。何でかは分かりませんがこうした方がいいと思ったのです。
「マリンさんですね! 分かりました!」
「あああそれはやめて! お願いだからやめてお願いします勘弁してくださいっ!!」
「あははははははははっ!!」
「笑うのもやめて!」
思った通り神様は面白い反応をしてくれました。
ひとしきり笑った後、私は聞きます。
「じゃあ、なんて呼べばいいんですか?」
「燐でお願いします!」
泣きそうな顔でそう言った燐さんの顔を見て私は言いました。
「分かりました、燐さんっ!」
そう呼んだ時の燐さんの顔は少しだけ赤くて、ちょっと可愛かったです。
ど、どうだ……、これが今の私の実力だっ!
おいやめろ、カッコつけてるのにそうやっていじるのはマジやめろぉ!