一章 4話
やーやーなんとか書けました。誰か私を褒めて!
「なんで、こんな……、マジかよ……」
言いようのない奇妙な感覚が俺を襲う。なぜ? どうして? 次々と浮かぶ疑問が俺の頭を埋め尽くす。
『汝、我ニ深山燐ノ肉体ヲ捧ゲヨ』
「…………あっ!?」
そうか、もしかしたら……!
「なぁ、もしかして深山燐の肉体ってことはあそこにいた深山燐の肉体ってことか!?」
『肯定。 手段ハ問ワナイ。肉体ヲ捧ゲヨ』
漸く明確に帰ってきた解答を聞いて心の底から安堵した。やはり俺ではなく、あの城にいた深山燐、正しくはその肉体を捧げればいいらしい。
「白面、でよかったか? 捧げるってことはどこかに持って来いってことか?」
『肯定。幻神ノ神殿ニ我ハ待ツ。捧ゲヨ』
「幻神の神殿か、思いっきりファンタジーだな……」
『期限ハ、汝ノ同胞ガ全滅スルマデ』
「はっ?」
『与エラレシ力ヲ存分ニ使イ、果タセ』
「おいおいおいおい待てよ! なんだ同胞って!? おい! どこに行くんだよ! 待てよ、答えろよッ!!」
そう言葉をぶつけている間にも白面は役目を終えたとばかりに、朧げだったその姿を霧へと変えて行く。もどかしい思いでそれを苦々しく眺めていると、突然頭に激痛が走る。
「あいっ!?」
[力が行使されたため条件を満たしました。次のスキル使用を解除します]
【突然変異LV1】
「な、なんだ? スキル? スキルってあのスキルか?」
激痛と同時に脳内に感情の無いアナウンスのような声が響いた。白面の言葉の意味を理解する暇もなく、更にまた理解の追いつかない事態が起きている。
「一体どうなってんだ、突然変異って一体なんなんだ!?」
音すらも聞こえない、何も動かないこの場所で叫んだところで俺の疑問は誰にも届かない。そんなのは分かっている、だけど叫びたい。俺が死ぬだの同胞が死ぬだの、知ったこっちゃない! 最早何もかも投げ出したかった。
しかし俺のこの現実は甘くなかった。
今の俺が周りの変化に気付いたのは偶然だった。
「あれ……? 草が、動いてる?」
完全に停止していたはずの世界の針がゆっくりと動き出している。
「!? う、うお……! なんだ、これ……!」
それを認識したと同時に俺の身体がいうことを聞かなくなる。勝手に手足が動きゆっくりと、しかし確実にある地点へと進んで行く。
「俺を、元の場所に戻しているのか?」
そう、俺の身体は時間が停止した時の場所に戻ろうとしていた。
「こういう展開でこんなことなかっただろ!」
あちらの世界で愛読していた小説の話を思い出しながら、抗議する。まぁ、誰にも聞こえないことは分かっているが、どうしても言いたかった。
「って待てよ……? 元の場所に戻るってことは……! あの女の子が危ねぇ!」
徐々に俺の身体は元の位置へと戻って行く。そしてゆっくりと俺の右手が女の子へと伸びた形を作っていく。ということはつまり。
「時間が動く……!」
そう口にした瞬間に左肩と左腕に激痛が走る。だが、そんなことは気にしていられない事態だ。気合いで我慢するしかない!
「きゃああああぁぁぁぁ!!!」
女の子の悲鳴も再開する。既に狼の鋭い牙が女の子の細い身体に咬みつこうとしている。
ここからではもう間に合わない! だがこのまま何もしないで襲われる様をただ見ているだけなのも御免だ!
「うおおおおあぁぁあああぁぁぁっ!!!」
叫び、地を蹴る足に力を込めた。すると不思議なことに俺の足は大地を踏み抜いた。その反動で前方に弾ける様に移動した俺の目と鼻の先には大口を開けて飛び掛かる狼がいた。
拳に力を込める。握った手の皮が収縮しギュギュッとゴムを滑らせた様な音が鳴った。
そして俺は握った拳を狼に向かって繰り出した。
「ギャッ!」
短い悲鳴を上げて、草の地面を弾みながら転がって行く。草の摩擦を受けながらボテボテと転がった狼はやがて停止し、絶命したのかピクリとも動かなかった。
「…………」
そして俺はといえば。
「…………」
ワナワナと自分の身体を見つめていた。狼を殴った手は青黒く変色し、鋭い爪を持っていた。
大地を踏み抜いた足は、赤く染まり、鳥の足の様な形に変形していた。
「な、なんだこれ……?」
思わず溢れた言葉は誰に伝わることもなく、風に巻かれて消えた。
疲れた……。
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