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拳の剣聖  作者: 心戒
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一章 16話

お待たせしましたです。ではどうぞ。

「いや、え!? チュートリアル!?」


困惑する俺を蔑ろにするが如く、声は問答無用で言葉を続ける。


『一、〔部位破壊Lv1〕の説明を開始。構えてください。』


何が何だか分からないが取り敢えず言う通りにしておこうか。


「え…と、こ、こうか?」


ぎこちなく身体を動かし、一応構えになっていそうなポーズをとる。


『姿勢の修正を開始。』


そんな声が聞こえた途端、身体の感覚が一瞬失われる。


「!?」


驚く俺を他所に、感覚の無い俺の身体が1人でに動き出した!

その場で半身に構え出す俺の身体、それはあちらの世界で【空手】と呼ばれる武術の構えに似ていた。


『修正完了、戦闘を開始。』


そう言葉が聞こえて瞬間俺の身体に感覚が戻ってきた。

不思議な体験に息つく暇もなく、今度は感覚の残る身体が勝手に前に走り出す!


当然俺の行動を見ている目の前の三匹は反撃に動き出した!


『〔部位破壊Lv1〕、〝目〟を自動発動。』


声がまた聞こえ、終わると同時に今度は口が勝手に音を発した。


「〔解析〕」


瞬間俺の視界に映る三匹のいろんな箇所に数字が浮かんできた!



エーラエイプ


耐久値 頭 2000

首 1500

胴体 4000

腕 2500

拳 1800

腰 3500

足 2000

尻尾 700


エーラウルフェン


耐久値 頭 1200

首 800

胴体 1800

右前足 650

左前足 650

後ろ右足 760

後ろ左足 760

尻尾 500


エーラボア


耐久値 頭(牙) 3000

胴体 5000

右前足 930

左前足 930

後ろ右足 1050

後ろ左足 1050

尻尾(命中率-30%) 450



「なんだ……これ……」


これは、恐らく部位ごとの体力なのだと言うことは分かる。《耐久値》と出ていることもあり、きっとそうだろう。

一つ一つ噛み締めて理解するようにしていると、三匹のうちの一体にマーカーのような印がつき更に《耐久値》の中の拳の数字にも印がついた。


『マーカーのついた魔物の部位を攻撃してください。なお、チュートリアル中のこの戦闘中は魔物が一時的に弱体化します。』

「弱体化? どこが!?」


そんな疑問を抱いた俺を責めないでほしい。だってそうだろう? みてくれなど一切変わらず《耐久値》にも変化はない。いや、印がついた分多少の変化はあったか。

どうしようかと迷っているそんな俺の体を動かしたのは。


『オラとっとと動けってんだよクソもやしがッ!!』

「ええ!?」


突如として凶暴化した声が俺の脳内に大きく響いたと同時に再び勝手に身体が動き出す!


俺の身体は俺が止まろうとしても、操り人形の如くなすすべも無く猛然とゴリラ、エーラエイプへと駆け出した。


『対象に攻撃を開始だオラァ!!』

「いや、ちょっと!? う、うわああぁぁぁぁ!!」


今のこの光景を第三者が見たら狐につままれたような顔をするに違いない。

怯えの浮かんだ顔でゴリラに必殺の攻撃を繰り出す人を見たら誰だって、「はっ?」と呆けることだろう。え? 何故そう言えるのかって? それは——。


「はっ?」


自らの拳で易々とゴリラの腕を粉砕した俺が同じリアクションを現在進行形でとっているからだ。

俺はその時 [拳]の《耐久値》が掘削機か何かで削られるように数字を減らしていくのを視界の端に捉えていた。そしてその数値が数秒も経たないうちにゼロに到達する。すると——


シュンッ!


[拳]を支えるエーラエイプの手首が一瞬光ったかと思った瞬間、付け根から()()されたのだ!


「グウゥオオオォォォォォ!!!」


森に大きく轟く叫び声をあげるエーラエイプの手首からは血が流れている……、と思いきや流れていないだと!?

いや、流れているのはいるのだがその量は少し大きめの切り傷、といったところか。


「一体どういうことだ……!?」


思わず俺の口からそんな疑問が漏れた。それに答えるものは当然いな——


『ッチ! そんなこともわかんねぇのかこのクソもやし! 簡潔に言うとだな、耐久値をゼロにしたことにより〝部位破壊〟したんだよ。』

「〝部位破壊〟? というか口調変わってない?」

『……本体の情報を認識中。貴方の世界に存在している狩猟ゲーム、【狩ゲー】と呼ばれるものとシステムが類似しています。』

「いや、今更口調直してもムダだよ? それにしても狩ゲーか、なるほど」


つまりあちらの世界で大人気を博している魔物狩人や神の名を冠するモンスターを延々と狩り続けるゲームと同じということだ。

上に述べたそれらのゲームは部位ごとに一定のダメージを与えると腕やら尻尾やらが綺麗にスパッと切断されたり、ボロボロになったりする。

つまり今俺の目の前ではそれとほぼ同じ現象が起きているということだ。


俺が漸く理解をしたのを察したのか声がまた頭で響く。


『チュートリアルを再開。尚、魔物の一時的な弱体化に加えこの戦闘では本体が死ぬことはありません。』

「えっ、ちょっと待ってもう一回言ってくれる?」

『好きです』

「ごめん、そんな言葉聞いてないと思う。さっき言ったこともう一回言ってくれない?」

『す、好きっ! ……です』

「うん、感情入れても変わんないし、言ってほしいのそこじゃないから」

『チッ、つまんね〜な! チュートリアルを再開、そんで魔物がワンパンで全ての部位がワンパンで部位破壊可能で、この戦闘ではお前は完全無敵で死ぬことはねぇ。わかったらとっとと行ってこいヤァ!!』

「おわっ!? また身体が、と言うかお前また口調変わってない!?」

『んなこといいからさっさと行けやぁ!!』

「分かったからナチュラルに人の身体のっとるんじゃなぁぁぁぁ……!」


引き摺られる人形のように俺の意思とは関係なく再び特攻する俺(の身体)。

だが、さっきの声が本当ならば今限定だが負ける要素は一切ない。

ならやることは一つしかない!


「コイツらを倒す!」




ねぇ、私今寝てないの。オールしたんだ、この話を書くために。

だからもう寝ます!おやすみ!

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