プロローグ 中編
ちょっと時間が空いてしまいました。
「エフン、ゴホンゴホン。さて、妾はレヴィという。この世界アガルティアを治める者である。そちの世界で言えば神様という地位にあたるのじゃ。どうじゃ? 凄いじゃろう! 分かったらさっさと敬うが良いぞ!」
「……へー凄いですねー、わーありがたやありがたやー」
「うむ、よいぞ! その調子であと百年ほど敬うが良い!」
「あ、それはめんどくさいんで勘弁してください」
「な! めんどくさいじゃと!? 妾は神じゃぞ! ええい、いいから敬うのじゃ!」
「わーパ! ン! チ! ラ! の神様だ〜ありがたやーありがたやー」
「な、ななななななんじゃとぉ!? キサマ妾を虚仮にする気か!?」
「え? いやぁそんなことないっすよ?」
「ええい嘘をつけ! このぉ、こうなったら力づくで——」
「いい加減にしないか馬鹿どもが!!」
いい加減に痺れを切らした体格の良い老人から喝が入る。お陰でようやくこの無益な言葉の応酬に幕が下りた。
「全く、いつまでやっとるんじゃお主らは……」
「すみません……」
「だってジジイ、あの人間が……!」
先程までの穏やかな顔を歪め、鋭い視線をレヴィにぶつける老人。途端にレヴィは大人しくなった。
「ふぅ、やれやれぃ……。ちぃと甘やかしすぎかのう……?」
老人は独りごちるとこちらを向いた。
「燐よ、すまんな。大事な孫なのでな、あまり叱りたくなかったんですこぅし様子を見ておった」
「あ、いやいやお陰様で貴重な体験をさせてもらいました」
神様との口論なんて生涯全て含めてもこの一度きりだろうな。本当に貴重な体験だった。
「先程は手伝ってもらっておいて礼もせずに失礼をした。ありがとう、助かったよ」
柔和な笑みを浮かべて老人は頭を下げる。
「いやいや、対したことしてないですから! あ、ほらそれより本題に入りましょうよ!」
大して助けにはなっていないが俺個人としては大した経験はした。
結局俺はあの後手を貸すという名目でレヴィの身体に触れたわけだが。あの時の感触は忘れられそうにないな。
「うむ、そうじゃな。では燐よ、先ずは今のお主の状況を説明しよう」
「はい」
「とその前に一つ聞いておくかの。燐よ、お主は自らに起こっている今の状況が何なのか想像はつくかの?」
「はい、何となくですが。異世界転移、というものではないでしょうか?」
老人は頷く。
「うむ、そうじゃな。他の者等は、じゃがな」
……うん? 謎かけだろうか。他の者等は? ということは俺以外にも異世界転移をした人達がいる、ってことなのかな? いや、それだと他の者等はっていう言葉は少しおかしいか?
「あの、すみませんがイマイチ言っていることの意味がよくわからないのですが……」
老人はそんな俺を見てニコリと笑った。
「ああすまぬ、少しからかって見たくなってな、申し訳ない」
「ああそんな、神様ともあろう方がそんな簡単に頭を下げないでください!」
「…………妾との態度がおかしくないかの」
再び射抜くような視線。縮こまるレヴィ。そうやっていると可愛いんだがなぁ…。
「えーそれで、他の者等はというのはどういうことでしょうか? 私以外にも転移者が?」
「まぁ、そういうことになるじゃろう。だが、お主は違う」
「違う?」
違うって、一体何が違うんだろう? もしかして転移する場所が違うとか? ……ありそうだな、それなら一人でここにいるのも納得がいくし。
だが、老人の答えは俺の予想を悉く外していく内容だった。
「お主等は確かに転移した。したんじゃ、じゃが——」
「?」
一拍おいて老人の口が動く。
「燐よ、お主だけは転移ではなく転生なんじゃ」
おかしい……! プロローグが終わらない。ここで終わるはずだったのに……!
というわけで次回こそ終わらせてみせる!
目指せ、プロローグ完結!