一章 14話
いやぁ執筆が進む進むぅ!
しかし出来栄えは? ときかれるとはぐらかすしかない私に腹が立つ。
読み応えなかったらごめんなさい。
ガクガクと震えていうことの聞かない両足を両手で支えて立ち上がる。当然涙の滲む両目でしっかりと三匹を牽制しながら。
ようやっとのことで立ち上がれた俺はチラリと少女を見た。
野生的と言えるような、植物で作り上げられたのであろう様な衣服を身に纏ったその少女は、血だらけのまさしくボロ雑巾のような出で立ちとなって地面に横たわっていた。
そしてその傍を見ると、その少女から数メートル近く離れているが少女が振り回していた巨大な斧が大地に突き立てられるようにあった。
俺はその斧を武器にしようと考えたが一瞬の思考の後に諦めた。どう考えても俺が振り回せるとは思えない。武器として扱うことはおろか、持ち上げることすら困難だろう。
俺は一度、大きく息を吐いた。
間違いなく今この状況で俺ができることは少ないだろう。しかし一度少女を守ると決めた今、どんなに困難であろうと俺の中に逃げるという選択肢は既にない。であればもう、戦い、この三匹を倒すしかない。万が一倒せなくても、少なくとも撃退はしなくてはならない。
痛む身体に鞭を打ち、まずは武器を探すことにする。
だがしかし。
「ガアァァァァァァ!!!」
敵はそんなに都合よく待ってくれる訳もなく、狼がこちらに疾風の如く飛びかかってきた!
「うっ!? くそっ!」
痛む身体を地面に転がすようにして間一髪避けることができた。しかし、痛む身体のせいで身体を起こすのに時間が掛かってしまう。
するとモタモタしている俺に向かって今度は猪が鼻息荒く突進を繰り出す!
動いたと思ったその次の瞬間には、まるで瞬間移動をしたかのように耳元で大きな足音がなる。
奇跡はそんなに続かない。悲鳴をあげる俺の身体は為すすべなく猪の突進をもろに受けた。
「ゴッ、ガッ、ア゛ッ!?」
再びゴムボールのように身体のあちこちを打ちつけながら、飛んでいく俺の身体。自らの身体から地面や木に強打される毎に聞こえる鈍い音は死を身近に感じさせるのには十分だった。
そしてその度に霧のように霧散しようとする意識を逃すまいと必死に耐えた。
摩擦のおかげでようやく動きを止める俺の身体はもはや少女の姿と見比べて見ても遜色などはどこにも感じられなくなっていることだろう。
だが俺は立ち上がる。否、立ち上がらなくてはならない。
自らに課した約束、『少女を守る』を為すためにはそうしなければならないのだ。
「くっ、あっ……! うぅぅ……!」
痛い。痛い。痛い! そんな感情しかもう生まれない。リラを助けた時よりも遥かに強い痛みには思考すらも停止させられた。
でも、俺は立ち上がることに成功した。身体中を倦怠感が支配する。心なしか視界が赤い。手で触れて見ると温い液体に手が触れた。それを確認する。
そこに映ったものは、ひたすら赤い色だった。俺の顔は自分の血で覆われていた。痛みに夢中で出血に気がつかなかった。
そして気づいた瞬間、俺の身体から力が抜けた。まるで糸の切れた人形のように。
「あ……、た、立たなきゃ……。あの子を守らなきゃ……」
身体に力を入れようとするが、俺の身体が起き上がることはなかった。
「守らなきゃ……、守らなきゃ……、俺が、俺が……、やらない、と……」
霞む視界に少女の姿が映る。見ると少女は起き上がろうとしていた。俺と同じ、もしくはそれ以上の怪我なのに、血だらけの足で、腕で、大地を掴み必死に立ち上がろうしていた。
「ちがう……、俺が…、俺が、やるんだ……。君は、寝てなきゃ、ダメだよ……」
必死に声を振り絞って言葉をかけるが、少女の耳には届かなかった。
そして。
「ゴァ?」
ゴリラに気付かれた。少女が立ち上がろうとしているのを見たゴリラはあろうことか、再びその剛拳を少女に振るったのだ!
少女はそれに気付く、だが避けない。避けられる訳がない。そして少女は——
「あ、あ……ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ピンポン球のように重さを感じさせない軌道で、地面を跳ねて、跳ねて、跳ねて。
俺の目の前で完全に静止した。そしてその身体は、さっきまで脈を打っていた胸は——動かない。
目を背けることなく俺は少女を見ていた。細い身体には無数の青痣、数え切れない切り傷、ボロボロの服。どれもこれもが全てが痛ましい有様だった。数十メートル先にはドラミングをするゴリラと、毛繕いをする狼、いまにもこちらに飛びかからんとしている猪。
そいつらはもはや完全にこちらを下に見ているのだろう。思い思いに好き勝手な行動をとっている。身体が動けば間違いなく今の状況なら一矢ぐらいは報いることができるのに。俺の身体は言うことを聞かず、地面に倒れ伏したままだ。
(畜生、畜生、畜生!!)
不甲斐ない自分に腹が立つ。目の前にはいまだに動かない少女がいる。
(俺に力があれば守れたのに……!)
俺は、芋虫のように這わせるようにして徐々に徐々に自分の手を近付ける。これ以上傷つけさせないように、自分を犠牲にしてでも守るために。
コツン
その時不意に手を伸ばし続けた俺の指に固い感触が伝わる。
今の俺にはこの障害物が例え木の枝であってももう持ち上げることが出来ないだろう。
忌々しい親の仇を見るような気持ちで俺の指に触れた物の正体を確認しようと視線を向けた。
しかしそれは木の枝でもないものだった。
「剣……か? 錆びてる……な……」
恐らく血で濡れたままの剣がその状態で放置されていたのだろう。もはや持ち主がいたことなど思わせない風体の剣がそこに転がっていた。無論鞘などない剥き出しのまま。
「そんな……なんで……!」
あまりの出来事に愕然とする。木の枝すら排除できそうにないと言うのにそれよりも重い剣などどかせることが出来るわけがない。
「なんで…こんな……酷すぎる……!」
悔しくて涙が出る。こんなものすら退けられない……、そんな自分に腹が立つ。
「ちくしょ…、こんなもの……!」
憎しみに身を任せ、悔しさに歯を食いしばり持ち上がらないことなど承知で、錆びた鉄製の柄に持ち上げようと手をかける。
すると、次の瞬間声が聞こえた。
『スキルの使用条件を達成しました。以下の内容が任意で適用されます。〔剣技LV4〕、〔スキルの種〕
〔強制進化〕の条件が満たされたため自動で適用を開始します。』
そんな言葉が聞こえた刹那、俺の剣に手をかけた腕が黒く輝きだした。
如何でしたか? なるべく毎日執筆をするようにしてるのですが1日で出来上がるときもあれば一週間かけても執筆が進まない時があるんです。
遅々として遅れていて申し訳ないのですが、応援してくださる方、どんどん感想をください!
全て真摯に受け止めさせていただきます!