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Weird1

作者: GANYMEDE

疲れてる?疲れてるね。じゃあゆっくりしていけよ。

 さて一体どこから話したものか。とても面倒な話だ。話が二も三も拗れて若干伝えにくい。正直人間が理解できる範囲ではないかもしれない。そんな支離滅裂な出来事がこの世には存在する。するんだ。確かに存在するんだ。明るみに出てないだけでもしかしたら近所のスーパーマーケットで起こってるかもしれないし、近所の美人の家で起きてるかもしれないヘンテコな出来事だ。一見すればナンセンスの塊でその辺の三文小説の方が面白く感じるかもしれない「他愛もない奇妙な出来事」なんて日常茶飯事だし多分今これを読んでる奴だってリアルタイムで感じてるはずだ。というか段々と感じてきてるかも知れない。ほら、そのタンスと壁の隙間とか半開きの風呂場のドアとかベッドの下とか。そこに目を向けないで「もしかしたら」と考えるんだ。違和感が迫って来る感じはしないだろうか?そういう事だ。「奇妙な体験」なんてのは意外と身近なものに潜んでるもので、割りと夜中、寝てる間にオモチャが動いて会話して大冒険、なんてのもあるかもしれない。起きたらフィギュアの向きがオカシイとかプラスチックモデルが変形してるとかそんな感じで。割りかしどうでもいいとかそんな風に見てるものこそ実は「異常」なのかもしれない。でもその異常を判断できるほど世の中は都合良くないし、人間てのは意外と都合良く物事を考えてしまうもので「ああ寝る前にちょっと移動させたっけな」くらいの感覚で笑い飛ばしてしまうかもしれない。その笑いが若干乾いてたり冷や汗垂らしてたりは個人差があるだろうが。 

 それはさておき、こんなイカれた話を態々聴こうと思うやつも十分イカれてるわけだが話せと言われて話さない程、俺もケチではない。

 ケチではないがちゃんと貰うものは貰う程度に強かではあるがな。とりあえず聞いてくれよ。


 ある街にちょっとボケちまってた婆さんが居たんだよ。過去形なのはその婆さんがつい最近亡くなっちまったって話を聞いたからさ。とにかく街をフラフラ歩いては若者に「コカインなんて辞めちまいな」と謂れのない事を、――まぁ一部は該当してんだけどよ――、とにかくそんな感じで若者に声掛けしてたんだとさ。それである日婆さんの家に気分を害した若者の一人が殴りこんだんだよ。「おいババア、ボケてんなら大人しく病院に行くか旦那を追って墓に入ってろ」ってな。だけど婆さんの姿はなくて、金髪の若い姉ちゃんが居ただけだった。マリリン・モンローとかハリウッド女優も裸足で逃げ出す様な美女さ。その若者は家を間違えたと思ってその姉ちゃんに尋ねたんだ。「おい此処にボケたババアが住んでたろ?」すると美女はこう答えた。「コカインのやり過ぎで頭が可笑しくなってんじゃないのか。目の前に居るだろう」っていつも聞く婆さんの声でよ。若者は混乱した。目の前には美女が居る。いつもの婆さんの面影は…ある。よく見るとあのババアを60年くらい若くしたような感じ。だとしても可笑しいだろうさ。声は聞き慣れた婆さんの声なのに姿は全然違う。「あんた魔女なのか」若者は質問しかできなかった。「そうだとしたらどうする?捕まえて火炙りにでもするかい?」と姉ちゃんは聞き慣れた婆さんの嗄れた声で笑ってんだよ。

 聞き違えることがない、酒と煙草とで焼けちまった喉からズルズル出てくる濁声。あの婆さんなのは間違いなかった。若者は怖くなって家から飛び出した。そして仲間にこの事を話した。当然仲間たちの反応は「お前酒と煙草じゃなくてクスリもヤってんのかよ」。そうやって笑い飛ばすだけだった。頭に来た若者は100ドル賭けてやると豪語して仲間たちを連れて婆さんの家に戻った。だけど居たのはいつもの猫背の皺くちゃ顔の婆さんだった。若者は言葉を失った。仲間たちはニヤニヤと婆さんと若者を眺める。

「で?そのイケてる姉ちゃんは何処だよ?」仲間のリーダー的なマッチョが嗤う。若者は必死に口を動かす。声は出ない。婆さんを指差して口をパクパクするだけの金魚みてぇな面で汗を流すだけだ。仕方ないのでマッチョが婆さんに直接訊ねる。「おい婆さん、アンタ、魔女だって?コイツがそう言ってんだけどよ?」すると婆さんは黙ったまま台所に行っちまった。マッチョは溜め息を吐いて、大げさに肩を竦める。「おいおい、婆さん機嫌損ねちまったぞ」と半笑い。残りの仲間も苦笑い。すると次の瞬間、台所から金髪のハリウッド女優も裸足で逃げ出す…とにかくそんな美女が現れる。マッチョは目を見開く。

 仲間たちも釘付けになる。「ほら!コイツだ!」若者が声を荒げる。「どうせ孫とかだろ!」マッチョはまだ半笑いだ。「お前たち、今度はマリファナでも始めたのかい」美女から聞き慣れた婆さんの声が発せられる。マッチョ達は耳を疑ったが、確かにこの眼の前の美女から婆さんの濁声が聞こえた。「なんだって?」

「だから、コカインだけじゃ飽きたらずマリファナでも吸ってんのかいって聞いたんだよ」ガラガラと喉を鳴らしながら美女は笑う。「おいおい冗談も大概にしろよ」マッチョが美女?婆さん?に掴みかかるとマッチョが燃え上がる。そう、燃えたんだよ。まるで映画だ。いきなり発火してあっという間に人間の丸焼きウェルダンの完成だ。一目散に若者たちは逃げようとしたが、外に出た奴から砂に変わっちまった。最後に残った若者は唖然とするしか無い。「やっぱ魔女だったのかよ」若者が乾いた口を無理やり動かす。「殺さなくてもいいのに」「秘密は守らないと駄目だからね。お前は多少良心があるようだ。クスリもやってない」婆さんは笑う。「だけど」婆さんが人差し指を若者に向ける。「口封じはさせてもらう」そう言うと若者は蛙になっちまったんだ。その日以来、その婆さんと若者たちを見た人は居ねぇんだとさ。

「は?じゃあ俺はどうやってこの事を知ったかって?よく見てみろよ。俺は蛙だぞ?知ってて当たり前だろう。」そう言って蛙はジャンプしてみせた。 

そうだね。俺がつかれてるね。

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