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知らない、懐かしい

作者: 小呂 花茂乃

知らない町が見たいと思った。

知らない人に会いたいと思った。

だから私は旅に出ることにした。


どこでもいいから、どこか遠くへ。

ここではないどこかに。

もしかしたら熱におかされていたのかもしれない。


走る電車に一人で座る。

買っておいた惣菜パンをむしゃむしゃたべる。

なかなか美味しかった。

電車のなかで一人わたしは知らない町に思いを馳せる。

広がる風景はどんな顔しているだろう。


適当なところで電車を降り、料金を払って駅から出る。

当然だけど知らない世界が広がっていた。

どちらかというと静かな町に着いたようだ。

どこへいくでもなくふらふらあるいてみる。

見知らぬ風景は私の目を楽しませた。


私は適当にぶらぶらし、満足したら次の町へ向かう。


今度は逆方向へ向かってみようと、また適当に切符を買って電車に乗る。


今度は華やかな都会の駅だった。

人がうじゃうじゃうごめいている。

私は人混みはあまり得意ではないのでどこか休むところを探してはふらふらあるいた。


しばらく人の波に呑まれるだけだった私も少しは波に乗ることができるようになり、周囲を見回す余裕ができた。

やがて人通りの少ない道を見つけ、さらに隠れ家的な喫茶店を見つけた。

結構空いており、私はすんなり椅子に座ることができた。座った瞬間に人混みでの疲れがどっとでてきた。とりあえず珈琲とサンドイッチを注文し、疲れがとれるまでここにいた。


今度は、さっき降りた駅ではない駅で、線も違う駅を見つけたので、そちらへ向かう。

どっちの方面へいこうかと思っていたら、下り方面の電車が丁度やって来たため、急いで適当に切符を買って電車に乗る。


どこへ続いているのかと思ったら、愕然とした。私が先ほど降りた駅に向かっている。

しかもさらに驚いたのは、その切符で行ける場所は私が始めに乗った駅であったのだ。


仕方なく私は自分の町の駅で降り、折角だからとぶらぶらすることに決めた。


懐かしい思い出がよみがえった。


子供のとき、この道を曲がったらどこへ続いているのかと気になっていたが、寄り道を堅く禁じられていたがために、興味も失っていたあの道。私は迷わず曲がった。それだけで私の知らない町だ。こんなところがあったのか。


歩いていくとよく遊んでいた近所の公園が見えてきた。

よく鬼ごっこや見よう見まねでやった缶けり、隠れるところが少なすぎてすぐに見つかってしまうかくれんぼ……。


私はなんとなくブランコをこぐ。キイキイと耳に残る音と重なる。たちこぎはしちゃいけないことになっていたけどみんなやっていたなぁ、そういえば一回転しそうなほど高く高くこいでいた子もいたなぁ。私も頑張っていたけどあそこまでは無理だった。


川が近くにあったから、そこを歩く。

ここは傾斜が急で、意外と深いから立ち入り、禁止になっていたけど時々入っては珍しい植物をむしっていた。それでよく怒られた。今でもここは雑草が伸び放題だ。小さい子はそれだけで興奮してた。女の子だって、ここの草をむしっていた。それでお料理屋さんとか、野宿ごっことか、していた。


突然音楽が空でなり始めた。午後五時のチャイムだ。

私が小学校高学年の頃からだろうか、五時になると鳴って、じゃあ帰ろうかって、流れになる。

少し寂しい気もしたが、ないといくらでも遊んで、帰りが遅くなって怒られる。私は時計なんて持っていないから。


音楽も、私が聞いていたものと変わらない。

野ばらと、故郷と、鴉と一緒に帰るやつと、あとよく分からないやつ。

今日この時期は野ばらだ。


やがて音楽のこだまもなりやんだ。


さて。


今日はもう帰ろうか。

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