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第4話(仮)

「……ム! …アム!」

「う、ううん……」


 誰かの声が聞こえ、る……?


「シアム! 大丈夫っ?」

「ドゥール……? 大、丈…夫っ?」


 大丈夫だと手を上げると、ずきずき痛む。その痛みのせいで、全身が痛いことに気付かされる。

 ああ、そういえば燃えるトカゲの体当たりをモロに食らったんだっけか。

 服も鱗からの熱で、燃えてるし。


 視界もはっきりしてきたお陰で、目の前にほっとした様子のドゥールがいることに気付けた。

 エルフの少年は、胸に手を置いてため息をつく。


「もう! ホントびっくりしたよ」

「僕もだよ。で、やっぱり燃えちゃった?」

「うん、オレの矢はダメダメだね」


 身体を起こしてもらいつつ、問う。頭を振ると、世界が回る。


「眼が回るぅぅ」

「あ、やっぱ頭打った? ちょっと待ってね」


 そんな僕の様子に気付いて、ドゥールが小声で素早く詠唱。するとめまいが少し治まった。身体の痛みも大分引いた。

 泣いちゃうほどほど痛い! から、筋肉痛で痛い…位には。

 あまり回復魔法のお世話になったことがないから、ちょっぴり感動した。


「おお! ドゥールも魔法が使えるんだ」

「あのね、オレエルフだから魔法使えるのは当たり前」

「あ、そっか」


 胸を張る少年。だけどすぐに肩が落ちる。


「でも、アイツを倒す魔法は知らないんだよね」

「大丈夫大丈夫! それなら僕に任せて」

「えっ? なに? シアム、また面白いことしてくれるの?」

「いや、それとは全く関係ないから」


 ここで面白いことしたら、全滅だと思います。

 

 なにせ、ちょっと遠くを見れば、巨大な火の玉みたいなトカゲと、臆することなく戦うフリギアがいるわけで。

 どんな身体能力をしているのか、触れれば火傷ではすまない鱗を前に、汗はかいているものの大した傷もなくやりあっている。

 トカゲのほうも大分イラついているようで、吼えつつ鋭い爪を横殴りにしたり、尾っぽで地面を抉り、土の塊を放りなげてみたりと忙しい。


 フリギアなら当分持ちそう。それだけ確認して、大枚はたいて手に入れた精霊石を地面におく。

 これのお陰で初撃での即死を回避できた、けど服は焦げて風通しが良くなりました。

 ……お金ないのに、どうしよう。

 悩む僕の横に、興味を引かれたドゥールがやってくる。


「ソレをどうする気?」

「僕は鍛冶屋だよ」

「でも、道具ないじゃん」

「道具はいらないよ」


 ドゥールから視線を外して両手を結晶へ置く。ひんやりとした心地を伝えてくる精霊石に意識を集中。

 目を閉じて周囲の喧騒を遮断し、ひたすら石に沈む意識を感じ、自分の意思を伝え。


「変成せよ……変成せよ…変成せよ……」


 無音の世界。今の自分には音の一つも聞こえない。ただひたすら、自らの『願望』を結晶へ伝え続ける。

 僕の願いを受けて精霊石が少しずつ、素直に変形し、分かれていく。

 数分して作業が終わった時、そこには石はなく、透通った青の剣と、無数の矢が置かれていた。


「よし!」


 作業を追え、火トカゲのせいではない額の汗を拭う。

 そのまま水精霊の結晶で出来た無数の矢を拾い上げて、ドゥールへ渡す。


「これなら精霊の加護がついてるし、トカゲの鱗も通ると思……どうしたの?」


 驚愕で顔を固まらせたエルフの少年。その口がわなないたと思えば。


「シアム、一体何したのっ?」

「手品だよ」


 いつも言われることに、いつもの返事をして、小さな手に矢を握らせる。


「魔力の集中とかないし! 一体何の手品だよっ!」

「まあまあ。今はあのトカゲを倒さないと」

「納得いかなぁぁいっ! でも、もらうっ!」


 そこはドゥール。思考を素早く切り替え、真剣な表情で矢を番えて、狙いを定め……放つ。

 トカゲの方は、突然の衝撃にバランスを崩し、何事かと傷つけられた鱗側へ顔を向ける。

 同時にフリギアが僕らを見てきた、から、叫ぶ。


「フリギア! 剣作ったから取りに来て! その剣じゃ鱗切れないでしょ!」


 剣を振り回せしてあ、と思えばフリギアと共にトカゲもやってきた。

 今度は巨大な熱と光の塊へ向けて叫ぶ。


「キミはお呼びじゃないって! お、大人しく待ってて!」

「ふふん、矢が当たるならもう大丈夫! 任せて!」


 慌てる僕とは別に、自信を取り戻した少年が矢を無数に放つ。一体、どのような方法でその沢山の矢を番えたのでしょうか?

 身体が大きいこともあり、放たれた矢は全て命中。さらに、その内の一本がトカゲの左目に突き刺さる。


 凄まじい音で洞窟が揺れる。

 痛みと混乱で立ち止まるトカゲと、僕の元に追いついたフリギア。


「悪い、借りるぞ」

「うん! 頑張って!」


 差し出した青い柄を握り、一振り。驚くが顔をほころばせたフリギアは二刀を持ち、すぐさまトカゲに向けて走り出す。

 持ち直したトカゲへ躊躇なく青い剣を一閃。見事に真っ直ぐな線が鱗に刻まれ、緑の体液が地面へ迸る。


「ほれぼれする切れ味だ。いい持ち主に会えて良かったよ」

「シアム、何言ってんの?」

「いや、こっちの話」


 思わず呟いた声を、聞いていたドゥール。首を傾げたものの、彼はそれ以上聞くことなくフリギアのフォローに入る。

 そういえばミノアはどうしたのだろう。周囲を見回し、彼女の姿を探す。いた。


 特大の青い球を頭上に従えた彼女が。


 球の周囲には冷気なのか、白い煙が立ち上り、周囲の空気を凍らせている。

 フリギアが魔法の完成に気付き、素早く後退する。


「………」


 ミノアが小さな口を開いて何か言い、表情を変えることなくその球をトカゲへぶつける。

 フリギアに気を取られていたトカゲに防ぐ手段もなく、衝突。冷気が洞窟内を駆け巡る。

 腕を掲げて、少しでも身体に当たる冷気を防ぐ。


「でも寒いっ! 寒っ!」

「さっきまで熱かったから、なおさら寒いね!」

「ドゥールは元気そうだね……ってやっぱ寒いよっ! 服が焦げたからなおさら寒いっ!」


 膨大な白煙が収まり、そこにあったのは氷付けとなったトカゲ。その姿も一瞬で砕け散り、氷の山となる。

 凍りついた空気のせいもあるだろうけど、耳が痛いほどの静寂だ。


「お、終わった? トカゲ、倒した?」

「うん! さっすがミノア。凄いや!」


 こんだけ寒いのに元気に飛び跳ねる少年は、心なしか晴れやかな表情を浮かべた少女の下へと駆け寄る。

 やれやれ終った終った、と立ち上がる僕の前に、透通った青い柄が差し出される。

 見上げると、不敵な笑みを浮かべたフリギアの姿。


「フリギア、お疲れ様。ケガは大丈夫?」

「気にするほどではない。シアム、お前こそ大丈夫なのか?」

「まあ、ドゥールに治してもらったから」


 そうか、と頷いて彼は剣の柄を押し出す。


「この剣のお陰で助かったな」

「あ、いいよ。それ、フリギアにあげる」


 あれだけ惚れ惚れする軌跡を描かせたんだし、彼の下にいるのが一番だろう。

 だけど、当の本人は驚いたように剣を差し出す。なんで?


「何を言っているのだ。あのファイアリザードの鱗を断ち切る剣だ、町で売れば相当の金になるだろう。それに、お前は無一文だぞ」

「いいって。お金はまた別口で稼ぐから。そうそう、ドゥールの矢、あれも代金いらないから」

「……」

「遠慮なくもらって」


 ね? と柄を押し返せば、フリギアはすまない、と頭を下げて剣を貰い受ける。


「いい出会いができて、本当に良かったよ」

「ん?」

「いや、こっちの話」


 青く輝く剣が誇らしい。お金はなくなったけど、いいものを見れて、いい出会いが出来て満足。

 一仕事終えた習慣で、大きく伸びをする。

 …やっぱり寒い。


「ああ寒い…あとは平穏に町まで案内してもらえばいっか」


 自分より巨大な箱を担ぎ上げるドゥールと、その後に付くミノアが見える。どうやら、あれが山賊さんたちが強奪した金品を入れていた箱らしい。

 顔を戻すとフリギアは顔を引き締め、右腕を胸に当てていた。


「シアム。君のことは我々が責任を持って護衛しよう」

「ご、護衛? 僕はただ、フリギアたちに引っ付いていくだけ」


 あれ? 最初、フリギアたち商人とか言って……?


「これだけの一品を作る腕があるのだ、何かワケがあるのではないか?」

「ないない。僕は流れの鍛冶屋だよ。年中金欠だけど」

「本当なのか? その腕で?」

「うん」


 その腕って言われるほど、いい腕でもないし、作り方が反則だし。でも、褒められて悪い気はしない。

 寒くてクシャミがでた。


「兎に角、寒いから外に出ようよ」

「ああ、そうだな」


 流石のフリギアも寒かったようで、思い出したように腕をさすりつつ一足先に出て行った二人を追いかける。

 戦闘・魔法描写なんてこの程度です……

 期待したら負けです。惨敗です。

 


 ……描写不足で申し訳ない。

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