第3話(仮)
やはり、というべきか。
山賊たちは連携も何もなく、大して手こずることも無く一人、また一人と地に伏していく。
「今までやってきたことだ、後悔しても遅い」
「くそ……ったれ!」
目の前の山賊に止めをさし、周囲の状況を確認する。
「ここまで統率が取れておらんとは、さすが田舎の山賊といったところか」
「フリギア、終わったよー」
楽しそうな声に振り返れば、ドゥールが笑顔で手を振っている。
「ああ、ご苦労だった」
「全員凍死なの」
「ミノアも助かった」
少年の後ろに立っていたのは、無表情のミノア。杖を握りしめ、軽く首を傾けている。
彼女は洞窟の雰囲気に合わせたのか、氷魔法で山賊に止めをさしていたようだ。
一通り見回し、生存者がいないことを確認して鞘に剣を戻す。
「強奪された品を運ぶぞ」
「ヘイ親分! キャハハハ、なんかオレらが盗賊みたいだね! あ、ここかなここかな?」
「呪いの品物、ある?」
目敏さには定評があるドゥールが、それだけ空間に不釣合いな箱を見つけ、掛けられていた鍵をあっさり開錠する。
すぐさま横にミノアが肩を並べ、平坦な表情で開けられた箱に小さな手を差し込み、物色している。
ため息をつき、注意する。
「まずはそれを持ち帰ってからだ。持ち主に返すのだ、抜き取ったりするなよ」
「分かってる分かってる」
「はずれ」
全く分かっていない二人。強制的に箱を閉じようと足を踏み出し。
「なにっ?」
山賊とは比にならない威圧感を感じて、引き抜いた剣を空間の出口に向ける。すぐさま二人も反応し、各々戦闘体制に入る。
最初に飛んできたのは、影。影は勢いよく、そう広いとはいえない空間に減速せず衝突し、床へ落ちる。
ほぼ同時に飛ばされてきた物体を、見切って腕で叩き落とす。
ドゥールが叩き落されたモノを確認し、眉を跳ね上げる。
「ありゃりゃ、入り口においてきた山賊さんだよ、コレ」
「首なし。焦げてる」
「最初に飛ばされたのはシアムか……無事なのか?」
「ううむ。ちょっと確認できないねえ」
最後に飛び込んできたのは、それだけで眼がくらむほどの光を帯びた、巨大なトカゲ。
剣を構えたまま、ソレへと顎をしゃくる。
「倒したかったのだろう? 遠慮することはない、行って来い」
「ヒドっ!」
言いつつ、少年は数本の矢を放つ。が狙いは正確だろうと燃え立つ鱗の前に墨と化していく。
「やはり無理か。ドゥールはシアムの救助。俺が注意をひきつける。ミノアは特大の魔法をかませ」
「熱いのは嫌」
すぐさまミノアが詠唱に入る。火トカゲは自分の巣にいる人間を不満そうに見下ろし、青白い舌を出し入れする。
「行くぞ」
「フリギア、気をつけてよ!」
「言われるまでもない」
大地を蹴り、トカゲへ突っ込む。