第七話
「グゥギィィイイイィィィィィィィ……」
ここはこの断末魔の主の居城の大広間、
その部屋に置かれたモノやその部屋の作りだけではない、
その部屋の何から何までが禍々しく通常の嗜好の持ち主であれば嫌悪感を催す作りであった、
そしてその主は先ほどダイの手によってその生を終えた所であった。
「悪くは無かったが相手が悪かったな、ふむ、後はこの城の調査でもするか。」
ダイはあれからいくつかの仕事をこなした、
子犬探しであったり、迷子探しであったり、
はたまた普通のお使いなどなど……
勇者らしい仕事と言うよりも本当に雑用と言って良い物の方が多かった、
そんなダイが今回やってきたのはその大陸の中央に聳える山の頂にある魔王城に住む【チュウオウ】の討伐であった、
「ふむ、ここは?」
久々にどこかの地下室のような場所、
足元には魔方陣が青白く光っている、
ダイの目の前には白いドレスに身を包んだ金髪碧眼の少女がいた、
「勇者様、突然の召喚お許し下さい、しかし我々にはもう勇者様に縋るしかないのです。」
少女は泣きながらダイに訴えた、
「ああ、泣くよりも前に説明して欲しいんだが、ここは何処で、あんたは何者だ? そして俺に何を望む?」
「貴様っ姫様に向かって無礼なっ!!」
周りにいた兵士のうちの何人かがダイの言葉遣いや態度に声を荒げる、
「無礼者っ!!控えなさいっ!!」
凛とした姫の声、
それはダイに向かって放たれた声ではなく兵士たちに対してであった、
「この方は私の召喚魔法に応じて来て下さった勇者様です。」
姫はコホンと一つ咳払いをすると、
ドレスを摘み優雅に会釈をし、
「私はこのダイアの東の国、東王が娘、イーストン家の王女ハルカ=イーストンです、勇者様のお名前を伺っても宜しいでしょうか?」
そう言って自己紹介をした、
比較的まともそうな人間であったことにダイは心を許す、
「ダイだ、ハルカと言ったな、俺に縋りたいとは? 俺に何を求める。」
「このダイアを救って下さいませ、そのお力でこのダイアに蔓延る悪魔共を葬り去って下さいっ!! 詳しい話は父がします、謁見の間でお話いたしましょう、こちらです。」
そう言って先導するハルカにダイは連れられ謁見間へと行く、
ハルカとダイが玉座の前まで進むと王は玉座から立ち上がりダイに近づいていく、
「陛下っ!!」
家臣達の声も聞かずに王はダイの手をとり、
「勇者殿、良くぞ姫の召喚魔法に答えてくれた、礼を言う、余はセイル=イーストン、勇者殿の名は?」
一国の王が名も知らぬ男のために玉座を降り手を取り先に名を名乗る、
普通出来ることではない、
娘ともども一般的な為政者のイメージではないとダイは思ったが好ましいとも思った、
「ダイだ、ハルカから聞いたがダイアを救って欲しいとはどう言う事か詳しく聞きたい。」
「貴様っ!!姫様を呼び捨ての上に陛下に対してなんと言う口の利き方だっ!!」
居並ぶ者の中から小柄な男が甲高い声でダイに非難の声を上げる、
「止さぬか、彼は姫の召喚魔法によってやってきた者であろう、では我が臣民ではないではないか、何故に臣下の様な態度を求めるのだ。」
そう言うとセイルはその家臣を睨み付ける、
「腰が悪いのでな、申し訳ないが座らせてもらう。」
そう言ってセイルは玉座へと座りダイに説明をする。
この大陸の形は大雑把に言えば巨大な菱形である、
大陸の中心部に大陸面積の凡そ1/4程の円を描く、
そして菱形の直線部分の真ん中で垂直に線を引き四分割する、
大陸中心部の円を除いたその東西南北の区割りを各王が統治をしていた、
即ち東王、西王、南王、北王、の四人である、
セイルはその内の一人東王との事だ、
そして中央を治めこのダイアの地全土の皇帝とも言える存在が中王であった、
この大陸の中央部の周りは断崖絶壁で中央部へ行くには唯一北部からのルートでしか入れず、
また北部へと進む道は西部からでなければ入れなかった、
東部を底辺として時計回りに標高が高くなっており、
中央部を頂点とした螺旋を描くように進まなければ東部からは行けないとの事だった、
中王からの命で各王は巨大な塔を領地の端に建てさせられたのが10年ほど前、
塔の完成と共に塔から魔物があふれ出したそうだ、
元から魔物の強かった地域の北部、は瞬く間に魔物に占領された、
これは逃げてきた人達からの人伝の情報だ、
このダイアという大陸は中央部の山の頂よりあふれる魔力により中央部の魔物が最も強く、次いで北、西、南、東の順に魔物も弱くなっていく、
当然そこに住む人達の実力もそういったレベルに落ち着くのは必然だろう、
北部が直ぐに魔物に占領され、
西部も抵抗むなしく魔物の手に落ち、
南部も先は短いだろうとの事、
逃げてきた人達の中でそれなりの実力がある人間が塔の攻略を行っているが芳しくなく何とかする方法を模索していた中で勇者召喚の魔法を見つけ現在に至るとの事。
ちなみにこの勇者召喚は被召喚者に相応の実力があること、本人に他世界に赴く意思のある者にしか効果が無い等、いくつもの条件をクリアした結果の召喚魔法であったためセイルやハルカの態度は丁寧だったのだ。
「ダイよ、異世界の者に頼むのは心苦しいが我等にはもう後が無いのだ、まずは塔を攻略してもらいたい、中王の命により最上階に設置した宝石が怪しい、その宝石を調べればこのダイアの危機を救う一助になるやも知れん、是非とも頼む。」
「ダイ殿、これが塔の設計図です、現在探索済みの階までは塔の構造に変更は無いそうですがこれから先もそうであるとも限りませんが、宜しければお持ち下さい。」
そう言って眼鏡の背の高いヒョロっとした年配の男がダイに設計図を差し出す、先ほどの説明では宰相との事だ。
その後もいろいろあったがダイはとりあえずこのダイアを救って欲しいと言うセイルやハルカの願いを聞き入れるべく旅立った。
地名や名前なんかが安直なのは仕様なので勘弁して下さい。