第五話
男はその国の三代目の王であった、
大陸の東端に位置するその半島にその国はあった、
長い歴史でその国は常に西の大国の属国以下の扱いを受けていた、
長い歴史といったがそれは今の国ではない、
その前王朝のことだ、
いや前王朝ばかりではない、
この半島に国を構えたものはいつの世も、
西の大国に属国以下の扱いを受けていた、
西の大国の王朝が変わってさえもその扱いは変わらなかった、
今から100年以上前に西の大国が大きな戦争で負けた、
それは小さな島国との戦争だった、
世界中の国々が小さな島国の敗北を予想していた中、
その島国は電撃的な作戦と戦力でもって大国を蹂躙すると、
王朝を滅ぼし大国を解体した、
小さな島国では大国すべてを管理できず、
大国をそのままにしておくには驚異が残る、
それ故に大国を解体したのだ、
大国の中の数十の部族がそれぞれの出身地を収めることとなり、
大国はそれだけ領地が狭くなった、
それでもそれなりの領地が残ったのだが、
その残った領地の多くは人が録に住めるような土地ではなかった、
その地の大半は不毛な砂漠であったり、
常に氷の融けないような土地であった、
かつて大国を蹂躙した島国は一時期分割して出来た小国の盟主として君臨したが、
東の海を超えた大国との戦争に敗れた、
そんな中で男の実の父であり祖父は半島の北部で国を起こした、
半島の南部でも国が起こりその国とは争いが続いている、
東の海を超えた大国は世界に覇を唱えんと欲しているが、
周りを海に囲まれた大陸であり、
世界を統べるには地理的に不利であった、
かつて西にあった大国は今では見る影もなく、
かつて大国であったその名残でもって大国たらんとしていたが求心力も低く、
見る影はなかった、
男は思う、
今であれば自分が大陸に覇を唱えることも出来るのではないかと、
まずは目障りな南の国を攻め落とす、
後顧の憂いが無くなればその後は西進、
その後徐々に領地を切り取っていけば良いだけの話である、
その為にどうするか考えていた矢先、
部下が過去の文献から無敵の戦士の召喚術を見つけ出す、
異世界の人間を呼び出すことで自国の兵士の損耗を抑えられ、
死んだとしても代わりはいくらでも呼べば良いだけの話である、
ただ呼び出せるのは一回につき一人、
その一人が死ぬまでは次は呼び出せない、
あまり効率が良いとは言えないが、
力がなければ始末すればいいだけの話、
それに別の部下が見つけた隷属契約と組み合わせることでこの戦士を自由に扱える、
出来るだけ大物がかかることを願って何度か召喚してみるものの大したモノは引っ駆らなかった、
それでも南の国の領地を少しづつ削って行っていることに違いはない、
今度こそ大物がかかるといいが、
「よく来た勇者よ。」
男は召喚されてきたモノに手を広げる、
「さぁ、勇者よ私に力を貸して欲しい。」