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第二話

城下町の冒険者ギルドで元大魔王は困っていた、


ギルドに登録するのに生年月日や名前を書かねばならないのだが何しろ数千歳、

本名は世界中の誰もが知っていてもおかしくない、



根が真面目ゆえに躊躇したが、




適当に書いて出すことにした、

登録に少々時間がかかるとのことなので依頼ボードを見ていた、

依頼ボードとはその名の通り冒険者ギルドへの仕事の依頼である、

薬草採取やお使いなどのような簡単なものから、

旅の護衛や賊退治、

迷宮探索やレアアイテムの収集といったものまであった、

期限付きのものから無期限のもの、

個数制限があるものもあったりと様々である、


依頼を受けるには、

ギルドの受付で依頼を受け付けてもらう方法と、

依頼によっては斡旋手数料を払いギルドの紹介状を貰い雇い主のところへと赴く方法とがある、



ギルドの信用にも関わるから新人のペーペーがでかい仕事を貰えるというような事はまず無い、



「ダイさーん、登録終わりましたよー。」

受付の女性から声をかけられる、


元大魔王は誰かに声をかけられたとしても【大】で止めさせればいいだろうと考え偽名を【ダイ】とした、


「ああ。」


「はい、これがダイさんのギルドカードです、ギルドとの契約違反が重なると取り上げられますから注意してください、今日は何か依頼を受けていきますか?」


「このゴブリン討伐を。」

そう言いながらダイは依頼書を受付の女に手渡す、


「うーん、いいですけど死んじゃっても責任取れませんからね。」


そう、この依頼大分受け手がいないようで、随分日が経っていた、


「解った。」


「では、ギルドカードを預かります。」

そう言って受付の女がダイのギルドカードとゴブリン討伐の依頼書を重ねて契約魔術を行使する、

これでギルドカードに倒したゴブリンの残留魔素が吸収されその魔素に応じて報酬が支払われる、


ギルドカードには魔素を吸収する水晶が数個埋め込まれており通常では魔素の種類関係無しに魔素を吸収する、

受付の女はその内の一つの水晶に種族限定で魔素を吸うように契約させたのだ。


「はい、契約終わりました、ギルドカードをお受け取り下さい。」

そう言って受付の女はダイにギルドカードを返す、


この世界の魔物は通常の生命体としての魔物と、

魔素溜りと呼ばれる魔力の湧き出る場所から湧き出てくる魔力を元にした生命体であるモンスターとに分けられる、


通常の生命体としての魔物は倒した後にほとんどの部位が食料であったり何かを作るための素材として使用される、

魔素溜りから出てくるモンスターは魔力でできた存在であり、

倒れた後にはドロップアイテムと残りの魔力が魔素として残る、

その魔素を集めMPの回復薬の素材とするために買取される、

と言うのもあるが、

回収されなかった魔素はモンスターが吸い取ることでモンスターのレベルが上がることから、

魔素の回収は冒険者にとって必須だった、



そして魔素溜りからモンスターが湧き出ているということはそこが迷宮として完成しつつあるということでもあった、

魔素は地下深くから湧き出てくる、

その最中に迷宮を構築しながら地表へと進む、

何故迷宮が出来るのかは研究しても一向に成果が出なかった、

とにかく出来るとしか解っていなかった、

出来るまでその存在を知る手立てもなかった為でもあった、

そして魔素の濃度が高くなる迷宮の深部に向かえば向かうほどドロップアイテムの質も、

魔素の質も高くなっていった。


ゴブリンはモンスターでこの世界に魔物として存在する生物ではない、

つまりそこが近いうちに迷宮となることの前触れでもあった、

近いうちとは言っても明日か明後日か、

それとも1年先か5年先なのかまでは誰にも解らなかった。



「では。」


「はい、お気を付けて。」



ダイは道具屋で何か買っていくか考えたが特に必要になりそうなものも思いつかないためにそのままゴブリン討伐へと向かった、


怪我をした時などのHP回復にはHP自動回復のスキルがあるので回復薬の必要はなかった、

魔法を使いすぎてMPが減ったとしてもMP自動回復のスキルもあったし、

飛翔魔法があるのでどんなに高い所にでも行くことが出来た、

状態異常無効化のスキルがあるために麻痺や毒にも恐ることはなかった、

一部のモンスターによる首切り(クリティカルヒット)でさえもスキルで無効化出来るので驚異ではなかった、


ダイはこの世界のスキルを全て習得していると言っても過言ではなかったので、

ある意味無双するために旅に出たと言っても過言ではなかった、



「おー、おー、居る居る。」

上空から眺めたダイはその光景に目を疑った、


この依頼が放置されていたのにはゴブリンのドロップアイテムがほぼ無価値であること、

ゴブリンの魔素は大したことがないということ、

そして場所が休火山の火口というのが最大の理由だろう、


既に数百では収まらないほどの数のゴブリンがいる、

よくよく見ればゴブリンソルジャー、ゴブリンメイジ、ゴブリンプリースト、ゴブリンビショップ、ゴブリンジェネラル、ゴブリンロード、ゴブリンクイーン、ゴブリンキングまで居る、


既に一つの国のような状態にまでなっていた、


このゴブリンが火口を超えたらどうなるであろうか?

人里を襲い小さな町はすぐに消えてなくなるのは目に見えていた、


「お前らに恨みはないが、これでも元為政者なんでね。」


そう呟くとダイはゴブリンの王国に降り立った、


そしてゴブリンキングの前に降り立つと剣を一閃させる、

一瞬のうちにゴブリンキングの首を刈り取ると、


「一匹残らず狩り尽くしてやるよっ!!」


こうして元大魔王ダイによる無双が始まった、

休火山の為に火属性の魔法は何が起こるか解らない為に使えない、

剣を振るうたびにゴブリンの首が飛ぶ、



この世界の東方に忍者と呼ばれる暗殺集団がいる、

その忍者を百人連続で首切り(クリティカルヒット)で倒すと手に入るスキルで、


スキル:百忍一首(ひゃくにんいっしゅ)

首を切られることで絶命する生物への首切り(クリティカルヒット)命中率がアップするスキルである。


ゴブリンからの攻撃が一切当たらない、


万を超える攻撃を一回も当たらずに一回の戦闘を終えると手に入るスキル、


スキル:万武不当(ばんぶふとう)

武器攻撃による命中判定が首切り(クリティカルヒット)以外無効化されるスキルである。



つまり武器攻撃は一切無効化されているのだ、

ゴブリンキングが、ゴブリンクイーンが、ゴブリンロードが、ゴブリンジェネラルが、

ダイが剣を振るうたびにその命が刈り取られていく、

魔法攻撃をしてくるゴブリンメイジやゴブリンビショップの魔法もスキルによって無効化されていた、


スキル:一捨残入(いっしゃざんにゅう)

自身の最大HP10%未満の魔法ダメージは無効化される、

10%を超えた場合ダメージの軽減はない。


HPが65535を誇るダイである、

つまりはダイに魔法ダメージを与えたければ6554以上のダメージを叩き出す以外にはダメージが通らないということである。



この頃になると恐怖で逃げ出すゴブリンもいたが全て回り込まれて露と消えていった。

数分後そこに立っていたのはただ一人…



ダイだけだった。


「……知らなかったようだな、元とは言え、大魔王からは逃げられないということをっ!!」

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