〜4章〜 情熱③
ドンドン チャララーーー
盆踊りの太鼓の音が会場内に響く
提灯や屋台の店が所狭しと並んでいて人も多い
田舎だからあんまり人が住んでないのかと思ってたけど、こんなにいるんだな。
六花「ーー!!ほら、行くよ!!」
強引に俺の手を引っ張るのはピンクの浴衣を着て髪を結っている六花。
ーー「ぉい。」
往来が激しい人波を俺たちは進んでいた
ーー「なぁ、別に手を取らなくたって迷子なんてならねーよ。」
六花「ふーん、じゃあさ、」
そう言うと六花は俺の手を握ってきた
六花「なんか、カップルみたいだね!」
その頬は少しばかり赤くなっていた
提灯の明かりでそうなったのかどうかなんて俺にはわからないがその顔が今までに見たことない六花の顔だった。
ーー「お前ってさ、こんなに女の子らしかったか?」
六花「ん?そっかなぁ、いつもこんなんだけど。」
そんな事を言いながら金魚すくいで遊んでる六花。俺はその姿を後ろから見ていた。
六花「ぁ~ん、破れたぁ!」
ーー「・・、下手くそだな。」
六花「じゃあーーやってみてよ!!」
頬を膨らませながら新しい金魚すくいの網を俺に渡してくる
ーー「へーへー、」
ボチャ
六花「あはははは!!ーーも下手くそじゃーん!!」
俺の後ろでケラケラと笑う六花
ーー「よーし、見せてやらぁ!!俺の本気をなぁぁあああ!!」
ーー「よっしゃああああ!!一匹ゲットぉおお!!!」
六花「そりゃ、こんだけやればねぇ。」
六花は、下に落ちてある何十枚もの金魚すくいの網を見ながら言った。
ーー「ほら、やるよ。」
六花「え、でも。」
ーー「いいんだよ、俺はこんなの持ってても仕方ねぇからよ。」
六花「うん、ありがとう!」
なんだよ、こいつ笑うと可愛いんだな。
今まで女として見たことなかったけど・・・
ドーーーン
ーー「ぁ、花火だ。」
六花「綺麗だね。」
ーー「あぁ、そうだな。」
・・・ヤバイ、なんかめちゃくちゃ意識してしまう。
六花「ね、もっと前で見よ!!」
タタッと六花がかけようとした
その瞬間六花がつまづく
ーー「あぶねぇ!!」
ドサッ
ーー「痛ってて。」
六花「痛い~、あ!ごめんね!」
六花をかばい六花の下じきになる俺
ーー「いゃ、いいよ・・・。それより、早くどいてくれねーかな。」
六花「あ、ごめんね!重いよね。」
ーー「いや、重くはないけど・・その・・」
俺が言いにくそうな顔になっていたので六花はキョトンとした顔で俺を見る
ーー「・・・胸がはだけてる。」
俺がかばった拍子に浴衣がはだけてしまい六花の下着が見えていた。
六花「・・・え?・・・ぃ、イヤぁぁああああああ!!!」
バッチーーーーーーン
顔を真っ赤にさせながら俺の頬に本気のビンタをおみまいする六花
ーー「痛ってええ!?なんでだよ!!」
六花「あ、ごめんなさい。つい、反射で。」
申し訳なさと恥ずかしさとで身悶える六花
やべぇ、ガチで可愛いな。
・・・て、俺は変態か!!
ーー「まぁ、でもさ。」
六花「・・・?」
ーー「来て良かったよ。ありがとな、六花。」
六花「うん!!」
花火を見上げながら俺は忘れていた。
自分の今の状況を。
幸せな時間で曇らせてしまった現実
それを俺は後悔することになる
花火が終わり盆踊りも踊り帰ろうとした時だった。
ーー「・・・ん?」
見ると囃子の中には国分という刑事の姿が見えた
しかもなんだか焦っていた
ーー「六花、先に帰っててくれ!」
六花「え、ちょっとーー!?」
ーー「ハァハァハァハァ国分さーーーん!」
国分「ーーさん?どうしてここに。」
ーー「国分さんの姿が見えたもので。あの・・・、なにかあったんでーーーーー!?」
俺の視界に映るソレは異様な匂いを放っていた
ーー「うぁぁぁぁぁぁああああ!!なんなんですかぁああああこれぇえええ!!」
国分「落ち着いて!!おい、山下!!落ち着かせろ!!」
山下「はい!!」
二人の刑事に取り押さえられながら俺が見たもの
それは、人間の身体を半分にちぎられて無理矢理くっつけられた半分ずつの人間
真ん中を強引にワイヤーのようなもので縫われている。
常軌を逸してあるこの光景に俺はパニックをおこした
山下「落ち着きましたか?」
ーー「はい、ありがとうございます。」
俺は礼を言いながらソレに目をやる。
今は上からシートが被されていて見えないからよかった。
ーー「あれって・・・」
山下「・・・。」
国分「連続猟奇殺人です。」
山下「ちょっと国分さん!!一般人にそれを・・・」
国分「大丈夫だ山下。この人はもう知ってる。」
ーー「名前は知りませんでしたが。」
国分「なっはっはっ、さぁて仏さんの素性分かったかい?」
山下「えぇ、ですが・・・」
山下は、俺の前では言いにくそうにしていた
まぁ、一般人がいるのにそんな事をペラペラ喋れるわけもねーか。
なんて、思うかよ!!
ーー「お願いします!教えて下さい!」
山下「・・・。」
国分「山下、早くしろ。」
山下「分かりました。被害者は、片方は川西尚人24歳、職業はフリーターです。もう片方は、前田裕子29歳繁華街で水商売をやってるみたいですね。」
国分「そして、今回も・・・。」
山下「はい、殺された人間全員に共通点がありません。」
ーー「共通点・・・」
確かに、共通点なんてない。
今までは俺のクラスメイトばかり狙われていたから俺はてっきりクラスの中に犯人がいるものだと思ってた。だけど、その推測は間違いだろう。今殺された二人を俺は知らない。
まったく知らない。
国分「困りましたねぇ。また分からない事が増えました。」
山下「とにかく、君は今日は帰りなさい。」
ーー「・・・はい。」
国分「おぃ、これなんだ?」
国分の手の指す方には赤いモノがあった
山下「あぁ、彼岸花ですよ。珍しいですね、こんな所に咲いてるなんて。」
国分「ヘェ〜、綺麗な花ですなぁ。」
ーー「彼岸花・・・。」
赤く燃えるような色
俺はどうもこの色が好きにはなれなかった
しかし、この事件を後に語るにはこの花はなくてはならない存在となるのだった