〜3章〜 情熱②
国分「んー、美味い!!やっぱりここの、デミグラスハンバーグは最高ですねぇ。」
国分さんは、ガツガツとハンバーグを食べていた
俺は、とてとじゃないがご飯を食べる気分にはならなかった
消えた二人ーーー
死んだ二人ーーー
国分「なにやら難しい顔をしてますねぇ。」
ーー「そりゃぁそうでしょ。この村が大変な状況にあるのに悠長に飯なんか・・・。」
国分「でも、腹が減ってはなんとやらとも言いますしねぇ~。なっはっはっは。」
このオッサン、胡散臭い人だぜ
人を食ったような喋り方
ーー「斉木のことは分かりました。」
国分「今は斉木さんの母親に事情聴取をしているところでしてね。」
ーー「まぁ、そうでしょうね。」
国分は、ご飯を食べ終わるとタバコに火をつけた
国分「ふぅーーー。」
ーー「ゴホッゴホッ、ケホッ。」
国分「あぁ、すみませんねぇ。おっとっと、次は仙道さんのことを話しましょうかねぇ。」
聞ける!!
ようやくだ!!
つなげてやる、全てのピースを!!
国分「彼も死体がありません。けど、死んだ。では、なぜこれがわかったのか?」
ーー「・・・」
国分「あまり~、言いにくいことなんですがぁ。発見された時は彼は、グチャグチャでした。鉄パイプのようなもので何度も何度も殴られたみたいですねぇ。」
ーー「・・・殴られた。」
国分「ぇーー、残された血液型と腕にしていた腕時計で仙道さんの遺体だということが分かりました。なんでも、その時計彼のお祖父様から受け継いだものらしいんですね。発見した警察は公衆電話に行き応援の警察を呼ぶためにその場を離れたらしいんです。まぁなにせ遺体を発見したのは随分と山奥の道だそうでしてねぇ。近くに公衆電話なんてなくて随分と走ったそうです。そして、戻ってくるとーーー」
ーー「遺体が消えていた?」
国分「ご明察の通りです。大慌てですよ。」
ーー「そりゃぁそうでしょ。遺体が消えたんですからね。でも、この話も謎がありませんか?」
国分は、待っていましたと言わんばかりにおれの顔を覗き込んだ
国分「はい?どこでしょうか?」
ーー「遺体の血液型は分かります。散々殴られたんだから血痕が残っていて後から鑑定するのは可能でしょう。けど、腕時計は発見したその人しか見てないんですよね?その人、仙道の知り合いですか?知り合いでもないのにあの時計が仙道のものと断定できたのはどうしてですか?遺体が消えたんですから、後から腕時計を見ることなんてできませんよね?つまり、腕時計を見た人はその警官だけですよね。嘘をつくこともーー」
国分「ぁあ~。それですか。こちらをどうぞ。」
国分は俺の話を遮るように写真を見せてきた
その腕には、腕時計をした血まみれの腕が写っていた。
間違いない。
この時計、いつも仙道がしてたものだ!!
国分「ご納得いただけましたかな?この時計、特注だそうですね。」
ーー「はい、この時計は仙道の腕から死ぬまで離れないんですよ。だからこそ、この時計をしてる遺体が顔が判別不可能だとしても、仙道って分かります。」
国分「特注ですかぁ。確かぁ、この時計腕にはめるんじゃなくて、腕に取り付けるんですよね?」
ーー「よく調べてますね。えぇそうですよ。いつも見てたから分かります。この時計は後から溶接するんです。死ぬまで取れないように。そして、死後仙道家を継ぐ人間に再び腕に取り付ける。」
国分「なるほどぉ、そんな時計だったとは。」
ーー「・・・」
遺体は消えた。
つまり、警察は残った血液と写真で仙道の死を断定した。
もしかしたら人違いの可能性だってあるかもしれない。
だが、警官が写真に撮ったあれを見る限り、仙道は死んだ。
ちくしょう!!!
ーー「もう一つ質問があります。」
国分「はい?なんでしょうか。」
ーー「どうして、その発見して警察の人は警察車両の無線機を使用しなかったんですか?ケータイを使うことだってできたはずなのに、」
国分「なっはっはっは、お気づきになられましたかな?そうなんですよぉ〜、そこなんです。」
国分は恐い顔で話し出した
国分「発見した警官の話によると、ーーー」
国分はスゥーーーっとタバコを吸って、煙を吐き言った。
国分「繋がらなかった。そう言ったんです。」
ーー「はぁ!?なんですかそれは!!」
国分「お気持ちは分かります。落ち着いて下さい。警官の話にはケータイも無線機も繋がらなかった。だから公衆電話に向かった。」
ーー「・・・嘘くさいですね。」
国分「えぇ、それは分かります。いくらあの道が田舎道だろうとケータイはおろか無線機まで繋がらないのはおかしい。しかも、」
ーー「えーーー?」
国分はニヤニヤしながら言った。
国分「これがまた面白いんですがね、かけてきた公衆電話から遺体の位置一キロも離れてはいないんですよ。」
ーー「そんな馬鹿な!?公衆電話は繋がるのに、携帯と無線機が繋がらないなんて・・・こんなの嘘ですよ!!」
国分「嘘だと思うのは無理ありません。しかし、メリットがありません。仙道さんの遺体の発見を遅らせることのメリットが。また、その警官は新米ではあるものの勤務態度は真面目でとても礼節があり分別をわきまえた人だとか。そんな人がそんな事をしますかねぇ?」
おかしい・・・
なんなんだ、なにか引っかかる
ーー「そういえば、魔古はなんであの場所に・・・」
国分「・・・そこです。一番の謎は。」
ーー「なんでですか?」
国分は、頭をかきながらため息をもらした
国分「斉木さんの父親が殺された木の根元にいたんです。」
ーー「聞きましたよ。それは。」
国分は、俺を睨むかのように見つめてきた
国分「言いましたからね。私は。」
ーー「・・・はぁ。」
なんなんだ?
国分「そして、仙道さんの遺体を発見した警察もこう言っているんです。」
ーーーーーー!!
背中に悪寒が走る
国分「遺体の側にヒガンバナを持った女の子がいたと・・・」
ーー「まさか!?」
国分「二度目なんですよ。しかし、その女の子が赤夜魔古さんかどうかは分かりません。しかし、普通に考えてどうです?」
ーー「魔古が殺ーーーーー」
そんな、馬鹿な!?
友達を殺すか?
いや、ありえない。そもそも、一度目は魔古だったのは間違いない。しかし、二度目はその警察の証言だけだ。
それだけでは早計すぎる!!
・・・大丈夫。
嘘か真実か暴いてやる!!
国分「随分と長く話してしまって。」
ーー「いぇ、こちらこそ貴重なお話をありがとうございました。また、なにかあったらお願いします。」
国分「いぇいぇ、こちらこそ。それじゃ。」
ーー「・・・」
この村で起きていること
その真相を暴かなかいと駄目だ。
「あり?ーー君!」
「なにしてるのこんなところで。」
ーー「羽柴さん、結城さん。」
結城真美
おとなしい女の子でクラスでも本をよく読んでる女の子だ。
羽柴亜里沙
ポニーテールのスポーツ少女
学校でも活発にクラブ活動に参加している女の子だ。
二人ともクラスメイトで、たまに喋るくらいかな。
あまりクラスメイトのことを詳細には話せない。
俺は友達が少ないからなぁ。
羽柴「なーに辛気臭い顔してるの?」
結城「亜里沙、失礼でしょ。」
相変わらず失礼なやつだなぁ羽柴は。
結城さんは、気が利くいい子だ。
ーー「そりゃ、こんな顔にもなるよ。人が殺されてるんだから。」
羽柴「ぁー、そうだね。」
ーー「なんで、こんな。・・・クソッ」
結城「あたしね、前川君の様子変だと思うの。」
羽柴「ぁー、確かに。あれはあたしも引いたなぁ。」
前川か
根暗で一言多いからあまり人気はなかった。
けど、あの時の言葉。
天罰・・。
ーー「なぁ、前川の住所教えてほしい!」
羽柴「ぇ、知らないけど。」
結城「あたしは知ってる。今書くから。」
俺は結城さんから前川の住所が書かれた紙を持って田んぼ道を走った。
あたりは夕焼け色に染まっていた
村の端にあったその家は古くちょっと怖い感じがした
ーー「おーい、前川!!」
いないのかなぁ。
ガシャャャァアアアアン
ガラスの割れる音が響きわたる
ーー「な、なんだ!?」
すると、裏黒いフードを被った人が逃げるように走って行った
ーー「おぃ!!ちょっとーーー、」
なんなんだ、いったい。
割れた窓ガラスから室内を見渡す
荒らされたようなことはなかった
さっきの奴はなにをーーー、
ーー「とにかく中を確認するか。・・・あ、あと警察か。」
家屋を覗くと割れたガラスが散乱していて、ゴミ袋や敗れたカーテン家屋というより、廃屋だった。
ジャリバリ
ーー「なんなんだよ、これ。」
こんなとこに前川の奴は住んでるのかよ。
ポチャポチャと水道の蛇口から水が落ちる音が響く
ーー「ん!?なんだこれ。」
荒れたテーブルの上にはその場所には似つかわしくないものが置いてあった
ーー「ぬいぐるみ?」
それはクマのぬいぐるみだった。
五歳くらいの女の子が持ってそうな可愛らしいぬいぐるみ
そして、そのクマの手の中には一枚の紙切れがあった。
ーー「なんだこれ?」
俺は紙切れをクマからとってそれを見た。
紙にはこう書かれていた
『HからAへ
完了 07 23
人ならざる貴方を 愛します 』
意味がわかんねぇよ。なんなんだよ、これは。
ーー「・・・、とにかく警察に電話するか。」
俺はその後すぐに警察に電話した。
ーー「ふぅ。」
前川の家の事を警察に話すと家に帰ってきた
母「ちょっとーー。」
ーー「なに?」
母「もうすぐ地域の盆踊りだから行ってきたら?」
ーー「いいよ、めんどくさい。」
俺は集団行動が嫌いだし苦手だ
そもそも生まれてから中学まで他県で過ごした俺にとってこの町の盆踊りなんて一度も行った事はなかった
だから今更参加なんてする気はない
ピーんポーン
自宅の呼び鈴が鳴る
母「でてくれる?」
ーー「はいよ。」
ガチャ
ドアを開けるとそこにはーーー、
六花「やっほぉ!!次の日曜日暇かな!!」
ーー「暇だけど。」
六花「やた!!盆踊り一緒に行こうよ!!」
ーー「嫌だけど。」
六花「なんでぇ~!!行こうよ、せっかくだし!!」
ーー「あのなぁ、今この村は大変な事になってるんだぞ?それなのに悠長に盆踊りなんか行ってられるかってーの。」
母「あら、いいじゃないの!行ってらっしゃいよ、六花なら心配ないわぁ。」
六花「お母様こんにちは!」
母「はい、こんにちは。」
ーー「母さん、勝手な事言わないでよ!!」
母「若者は外で遊ぶ。これは決まりなのよ?」
六花「その通り!!」
ーー「・・・はぁー」
駄目だ、こりゃ。
女相手に理屈で話すだけ無駄なのかもなぁ。
そーいや、盆踊りなんて久しぶりだな。