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第16話 ゴルゴルの様子がおかしい

 俺はレベル80になっていた。

 ループレベルは1のままだ。

 ここまでなんと2か月しか経過していない。

 自分でも驚いている。

 まあ、駆け出しの時はどうしても経験不足、検証、準備などなど色々と時間が必要になるからな。

 ゲームと現実とは勝手が違うし。

 だが二度目となると、すでにやることは決まっているし情報もある。

 時間短縮できるのも当然だ。

 装備とか道具もあるし、スキルもあるからな。

 ちなみに【経験値効率アップ・小】の効果だが。

 途中の狩りで『10%ほど経験値が上がる』ことが判明した。

 ちょっと渋い気もするが、悪くはないな。

 そして俺が今どこにいるかというと。


「き、きききき、貴様ァッ!!

 なぜまた現れた!?」


 魔都ルーンデルの謁見の間にいた。

 そして眼前には魔の王ゴルデベルド。

 通称ゴルゴルが怒りでふるふる震えていた。

 顔は兜で見えないが、絶対にブチ切れていることだろう。


「なぜってレベル上げのためだ」

「もう来ないと!

 貴様はそう言った!

 レベルカンストしたというのは嘘だったのか!?」

「いやカンストはした。

 でもやり直してるのさ」


 正直に答えた。

 なのにゴルゴルの怒りは頂点に達する勢いだった。


「きき、貴様ァァァァァ!

 適当なことを!

 余の感情を揺さぶり、謀り、蔑み、飄々と虚言を吐きおるか!

 ここまでの侮辱を受けたのは初めてだ……ッ!

 許さん……やはり貴様は殺さなければならない……ッ!

 この世から消え失せろ、愚昧ッ!

 御覧じろ、魔の王の威風を!」

「おお、おお、怒ってんなぁ。

 永遠に戦い続けようとか言ってただろ。

 仇敵とまた戦えるんだから喜んだらどうだ?」

ちゅうを下すッッ!」


 激情のあまり、ゴルゴルの声がしゃがれていた。

 逆鱗に触れたらしい。

 なんでそんなに怒ってるのだろうか。

 いや、さすがに狩りまくられたらそりゃ怒るか。

 迫るゴルゴル。

 そして俺はパリィ。


「ぐわあああああ!」


 そして倒れるゴルゴル。

 と思った瞬間、ゴルゴルは横に転がった。


「なっ!?」


 ゴロゴロと地面を何度も転がり、そして体勢を整える。

 パリィをしたはずだ。


「くはははは! その顔が見たかったぞ!

 貴様のパリィはもう効かん!

 体勢を崩す瞬間、その流れに身を任せ受け身をとる!

 これはパリィ殺しの戦術よぉ!」

「まさか対策を練ってくるとは思わなかったぞ、ゴルゴル」

「そのゴルゴルをやめろっ!

 ふん……これで貴様になす術はない。

 今後こそ死ぬがよい!」


 ゴルゴルの巨大な斧が地を這う。

 俺はそれをパリィ。


「無駄だ!」


 ゴルゴルは体勢を崩すが、そのままゴロゴロと転がった。

 そして再び姿勢を正す。

 ふむ。


「くははははは!

 パリィなど無意味!

 仕切り直しになるだけだ」

「あのさ」

「なんだ、降参か?

 だが許さん。貴様は四肢をもぎ、激痛にもだえ苦しめ!

 この世のすべてを恨み、後悔しながら死ぬ姿を見なければ気が済まぬ!

 余を侮辱した不埒者は厳罰に処す!

 さあ、続きだ……狩り狂い!」

「いや、だからさ」

「しつこい!

 今さら命乞いなぞ」

「そうじゃなくて。

 これってどうやって決着を着けるんだ?」

「……決着?

 何を言って……」


 そこでゴルゴルがはっとした顔をする。

 そうなのだ。

 俺はゴルゴルのあらゆる攻撃をパリィできる。

 ゴルゴルは俺のパリィをすべていなすことができる。

 俺の基本戦術はパリィだ。

 つまり。

 決め手がない。


「な、ならば長期戦と行こうか!」

「いや、長期戦になったら俺はここから逃げるぞ。

 あんた、確かこの謁見の間から出られないだろ。

 強力な魔物は一か所に封印されているって設定だったし」


 ボスは基本的にボス部屋から基本的に出られない。

 少なくともゲームではそうだった。

 だが新ダンジョンでは赤い水晶人が部屋から出てきた。

 あれは新ダンジョンの新ボスだからこそできた芸当だろう。

 だけどこいつは違う。

 ゴルゴルはいわゆる旧ボス。

 ボス部屋からは出られないだろう。


「ぐぬ」


 ゴルゴルが小さく唸った。

 言い返す言葉はないらしい。

 さてどうするか。

 俺はこいつを倒して経験値が欲しい。

 ゴルゴルは俺を殺したい。

 しかし互いを殺す手がない。

 とすると。

 仕方ないがやるしかない。

 俺は魔剣イースを装備した。

 今までは片手斧か長剣との二刀流をしていた。

 今は右手に魔剣イースを持っているだけだ。


「……何を」

「戦術を変える。

 これからはパリィはしない。

 つまり泥仕合ってわけだ」

「ほう? パリィという強力な武器を捨てる覚悟を決めたと、そういうわけか。

 よいだろう。ならば卑怯な手はなしだ。

 ここからは全力で……ぐわああああ!」


 ゴルゴルの口上を無視して俺はゴルゴルに切りかかった。

 ザン。

 直撃。


「ぐっ! 喋ってる途中で攻撃とは……!

 貴様……許さんぞッッ!!」

「ボスとの会話イベントなんて攻撃でキャンセルするのが当然だろ。

 よっ!」


 ザンザンザン。

 連撃を放つ。


「くっ! 鋭い……ッ!

 いい加減にせぬか!」


 ブン。

 ゴルゴルの剛腕が唸る。

 俺は奴の攻撃を身を低くして避ける。

 一、二、三、四。

 攻撃を回避して即座に攻撃へと転じる。


「ぐわああああ!

 なぜ軽々と避ける!

 鬱陶しい!」


 ブンブンブンブン。

 サッサッサッサッ。

 敵の攻撃が止んだ。

 俺は剣を身構える。


「かかったな!」


 ゴルゴルが僅かに遅れて再度、巨大な斧を振るう。

 ディレイ攻撃だ。

 ぶぉん。

 強風が俺の頭上を通る。

 俺は軽々と回避した。


「な!?」


 ゴルゴルが目を見開く中、俺の攻撃は続く。


「ぐわああああああ!」


 ゴルゴルは防御をすることさえ叶わない。

 そりゃそうだ。

 パリィ戦術を実践レベルにするまでは、ずっとこの戦い方をしてたからな。

 相手の攻撃を完璧に読んで回避。

 そして小さな隙を狙って攻撃。

 敵の攻撃パターンはすべて覚えている。

 当然、避け方も、隙をついた攻撃も。

 そして。

 魔の王ゴルゴルは膝をついた。

 

「ぐ……き、貴様……ッ!

 余の会心の攻撃さえ、避けるとは……ッ!

 パリィなぞせずとも戦えるではないか……ッ!」

「パリィは今の俺の基本戦術なだけだ。

 効率がいいからな。

 ただ、このやり方でも普通に敵は倒せる」

「く、くくく……やはり貴様は異常だ……。

 我ら魔の者相手に効率を求めるか。

 狂気の沙汰……だが……おも……しろい。

 また、戦うぞ……次は負けぬ……!

 次は一時間後……待っておるぞ、狩り狂い……!」


 ゴルゴルは光となって消えていく。

 なんだかちょっと満足そうな笑顔を残して。


「……なんだったんだ?」


 俺は首を傾げ、ゴルゴルの心情をまったく理解できずにいた。

 まあ、いいか。

 どうせ、また狩るし。

 経験値は12万くらいもらえるし。

 と。

 剣の刀身が欠けていた。


「あ、やべ、久しぶりにブンブン振ったからか?

 力加減ミスったか。

 ってかしばらく修理してなかったしな。

 よし、一旦近くの村に戻って、久しぶりにあいつに会いに行くか」


 俺はこの世界における、数少ない知り合いの顔を思い出す。

 まあ、レベル上げはいつでもできるしな。

 と。

 なぜか突然、背中から視線を感じた気がした。

 不思議と誰かが俺を非難しているような感覚に陥る。

 気のせいか?

 ずっと狩りづくめだったし、疲労が溜まっているのかもしれない。

 少しだけ身体を休めてもいいかもな。


「じゃ、帰るか!」


 俺はさっさと謁見の間から出る。

 後ろからは、何か妙な威圧感を感じていた。

 それは魔都ルーンデルを出るまで続いた。


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