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1章extra 「繋がる輪と永遠の絆」

【登場人物】

凛夜レイガ   主人公にして、ゲーム好き。

        "元"引きこもり。"元"高校生。


シューメル   良識ある老人。

        レイガの良き理解者。


親方      レイガが働く鍛冶屋の店主。

【これはレイガが異世界にきてからおよそ1週間が経ち、鍛冶屋でのバイトにも慣れてきた頃のお話。】


 鉄を打つ音が建物内に響き渡る。毎日繰り返している光景。聞き慣れた音と見慣れた風景を感じながら、俺も剣を打つ。


「レイガぁ!もっと腰を入れろ!」


「は、はい!」


親方は厳しい。


 ただ『叱ってくれているうちが花』、、、という言葉をよく父から聞かされていた。父は基本的に気合いさえあればどうにかなるだろう精神の根性人間だった。そのくせして、父は育児も家事もほぼ母に任せていた。父が家事をすると洗濯物はボロボロになるし、食べ物はダークマター的な物になっていたらしいから、そうなってしまったそうだ。

 父が俺に説教をしたのは片手で数えられるくらい、、、ちょうど5回だ。1回目はトイレを流し忘れたとき、2回目は風邪を父にうつしてしまったとき、3回目は間違えて風呂のお湯を父が入る前に抜いてしまったとき、4回目は母の弁当を残したとき、、、それくらい父は謎な人だった。ただ、5回目は説教ばっかの母へ文句を言ったときだ。


『いいか、、、レイガ。叱られてるうちが花だと思え。俺はな、洗濯物をボロボロにしたり、ダークマターを生み出したときは最初のほうこそは怒られていたけどな、途中から呆れられて、、、今では家事をやってくれとすら言われなくなったてしまった。』


『いや、それとこれは話が、、、』


『何も違わなくないぞ、息子よ。そのうちきっとわかるさ。』


父の言葉は時々心を突き動かしてくれる。俺の言葉は大抵が父の受け売りだ。母の優しさ、父の熱意、、、それから俺が生まれたのだろう。感慨深いものだ、、、


「ーーイガぁ!レイガぁ!てめぇー、何ぼーっと突っ立ってんだぁ!」


「ん、、、あ!ごめんなさい!ちょっと思い出に浸ってました!」


「まぁ今日の仕事はもうすぐ終わりだ。これ、シューメルのジッさんのところに届けに行ってくれ。」


「はい!わかりました!」


「それ届けたら今日は上がりでいいから。あぁ、あと今日はみんなで飯食うぞ!いいな、レイガ!」


「はい!いってきます!」


シューメルの家につくと、中から話し声が聞こえる。誰かいるのだろうか。まぁ届けに来ただけだから、届けたら帰ろう。そして、俺はドアをノックする。


「シューメル!届け物だー」


「おぉ、レイガか。いらっしゃい。」


「誰か来てたか?」


「ん?いいや。別に誰も来ておらんぞ。」


「そうか、ならいいや。」


俺はシューメルに届け物を届けて、家から出る。


「じゃあ、シューメル。また来るよ。」


「いつでもおいで。」


ふと平原の中にカバンが見える。近づいてみると、それは俺がここに来る前に持っていたカバンだった。


「へぇ、懐かしいもんばっかだな。」


カバンの中には、スマホや鏡といったものが入っていた。スマホは問題なく電源は入る、、、がやはり圏外だ。写真のフォルダーを見ると、家族と撮った写真が目に入る。


「また会いてぇな、、、」


どうしても、そう思ってしまう。そして、別のフォルダーを見ると、『はな』と撮った写真。そうだ、俺はこの世界ではなを見つけなくてはいけない。話はそれからだろう。



「ま、まじすか。」


「レイガぁ、店取れなかった。すまんな。」


親方は店を取れなかったようだ。俺は頭にふと、母の手料理が浮かぶ。そうだ、母とよく作っていたカレーを親方たちに作ってあげるのはどうだろうか。


「親方!なんか料理できる場所ある!?」


「あ、あぁ、、、一応あるにはあるぞ。」


「じゃあ、そこ行きましょう!」


異世界と言えども、食べ物はだいたい日本にあるものと同じなようだ。にんじんや玉ねぎ、じゃがいもといった重要な具材はある。ルーはないが、スパイスはある。母はカレーだけはスパイスからつくるような謎の熱意を持っていたから、わかる。名前はわからないがこれとこれを入れれば、あの味が作れるはずだ。


「レイガ、何作るんだ?」


「カレーってやつです。」


「かれー?なんだそれは?」


「俺の故郷でよく食べられている美味しい料理ですよ。まぁ待っててください。」


途中までは順調に作れていたのだが、途中から野菜切りながら、、、とやっているとだんだんと手が追いつかなくなってきた。母の偉大さがわかる。いつもこれを1人でやっていたのだ、と。


「レイガ、俺たちも手伝うぜ!」


「親方、、、それに皆さんも、」


親方たちが手伝ってくれるようになってからは余裕だった。

完全したカレーは母と作ったのは違った。けど、そこには言葉にし難い、、、また別の美味しさがあった。


「こりゃあうめぇ、!うめぇぞ、レイガ!」


「ありがとうございます!」


何やってんだ?このいい匂いはなんだ?と近所の子どもたちを筆頭にぞろぞろやってきた。


「作りすぎちゃったんで、、、食べます?」


皆で食卓を囲むということ。きっとこれは幸せなことなのだろう。脳裏に父がかつて言った言葉が浮かぶ。


『人の輪は繋がるんだ、、、思ってもいないようなことで繋がる。そして、その輪で繋がった人たちは何かあったときにきっとお前の助けになってくれる。』


全員が食べ終わり、片付けをしていると親方が近づいてきた。


「なぁ、レイガ。お礼と言っちゃなんだが、お前用の剣作るか?一緒に。」


父ちゃん。俺、、、やっと理解できたよ、あんたの言っていたことが。適当なようで適当じゃなかった。


「もちろんです!お願いします!親方!」


人の輪は繋がる。それなら、一度繋がった人は永遠だ。親方やこの街の人たちとも永遠の輪によって結ばれたのかもしれない。


父ちゃん、母ちゃん。俺、、、親孝行できなかったけどさ、頑張るよ。2人が俺のこと誇れるくらいに。


そう、俺と家族の絆も永遠なのだ。

【あとがき】

どうでしたか?

初めて書く本編外の話だったのですが、楽しんでいただけてたら嬉しいです。

感想等は励みになりますので、ぜひいただけると嬉しいです。

では、また次回お会いしましょう。

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