1章5話 「絶望を救う巫女」
【登場人物】
凛夜レイガ この物語の主人公。ゲームが好き。
異世界に来る前は引きこもり。
はなを探しに異世界に来た。
陽野森はな レイガの幼馴染。異世界に転生した。
転生前は学生。現在、行方不明。
インス レイガを異世界に送った女神(?)
謎多き存在。
シューメル 集落最後の生き残り。
ヴェイル 世界のパワーバランスを崩した。
史上最強とも言われる存在。
【悪魔教:世界中で暗躍する組織。】
エスパル 大幹部の1人。サイギョクを襲う。
あれから俺は、何度も何度も何度も何度も繰り返す。どんなにやり直しても最後はエスパルに殺される。全員で避難しても、隠れても……何をしても。
8回目。俺はどれだけ考えてもこの考えにしか行き着く。俺が悪魔教に入ることだ。
「取引だ。エスパル。」
「取引でアリマスか。」
「あぁ、取引だ。俺が悪魔教に入るかわりにこの街の人たちだけでも見逃してくれ。」
「ほぉ、面白い条件でアリマスねぇ。」
流石のエスパルでも仲間の知り合いを殺そうとはしないだろう。そして、エスパルは俺に近づき、俺のことを撫で回す。
「あなた……面白いでアリマスねぇ。」
「ありがとうって言ったほうがいいやつか?」
「いえ、どちらでもいいでアリマスよ。いいでしょう。あなたを引き入れて差し上げるでアリマス。」
これで街の人たちは救われる。エスパルから差し出された紙に名前を書く。
「そこのあなた、それに名前を書いてはダメ!!」
その女の声が聞こえたときには名前は書き終わっていた。そして、エスパルがニヤリと笑う。俺は女のほうを見る。風貌から考えるに巫女的な人なのだろうか。そして、エスパルが言った。
「では、これは仲間への歓迎の印でアリマス。」
後ろから何かが飛び散る音がする。足元を見ると、赤い液体が流れている。
「は?俺が悪魔教に入ったら見逃す約束だっただろ?」
「悪魔教には悪魔教の街がアリマス。こんなところだけではないのでアリマス。そして、真の信仰とは悪魔様の異名を味わってこそなのでアリマス!私は大悪魔様を支える6人の悪魔様、その中でも私は『絶望の悪魔・ホープ』様に仕える者、悪魔教大幹部絶望派総士エスパル・ディスペアと申すでアリマス。以後お見知りおきを。」
絶望の悪魔で名前がホープだと。冗談じゃねぇ。その上、コイツ……俺と住んでる次元が違う……!俺は剣を抜き、エスパルに刺す。
「ふむ、私のことを刺しましたか……残念でアリマスねぇ。」
突然、俺が吐血した。なんでだ…………おかしい。どうして………………
「は?な、なんで……だよ。ど、うして俺に刺さってる……?」
「私の異能でアリマスよ。いえ、私と言うより、総士はそれぞれ3回まで自分と同じ派閥の信者の体へと攻撃対象を変化させられるのでアリマスよ。つまり、君は私と同じ派閥に入った時点で私に勝つことはできないのでアリマス。」
あまりにも、初見殺しすぎる。嫌だ……もう…………死にたくない。戦いたくない。
……こいつと戦うことが怖い。
「ーーーーおい!レイガ、しっかりしろ!」
「あ、あ……あァァァァァァァァァ・・・・・・!」
俺は鍛冶屋から駆け出した。無我夢中で走った末に俺は倒れた。
「ーーーーしっかり、して……」
俺が目を開くとそこにはあのとき、俺を止めようとした巫女のような子がいた……何か頭のほうが柔らかい……ん?
「ッ!ごめんなさい!」
「い、いえ。あなたが行き倒れになっていたから……」
「ほんとうに申し訳ないです!」
「ふふふ、あなた面白い人ね。ところであなた……目の隈が多いけども大丈夫?」
なんだろう。この子と話しているとなんだか落ち着く。少し気が楽になる……そんな気がする。膝枕されていたのは、ちょっとあれだが、どこか懐かしい感じがした。
「心配してくれて、ありがとう!でも、もう行かなくっちゃ!」
「あなたを1人では行かせられない…」
「え?」
「あなたを1人では絶対に。」
「なんで?」
「死地に向かう人の姿をしている。教えて、何がしたいの?」
「俺は悪魔教絶望派総士・エスパルを倒さなくちゃいけない。」
「…なるほど。具体的な対策はしてるの?」
「いいや、してない。」
「そう。あなたの力じゃ、十中八九無理でしょうね。」
何も言い返せない。
「戦いを避けて、勝つ方法がある…と言ったら?」
「エスパルを倒せるのか?」
「いいえ、エスパルとは戦わない。今回は戦いを避けて、悪魔教関係者を討つ。悪魔教に襲撃された場所はもれなく1人残らず殺される…って聞いたことある?」
「ま、まさか…」
「あなたがこの世界に来てから1番信頼している人。彼にしか非戦闘要員を集落に避難させる話をしていない。」
「シューメルが悪魔教の関係者……」
妙に納得がいく。いや、すでにシューメルが悪魔教関係者なのではないかと考えていたのかもしれない。ただ、そう思いたくなかっただけなのかもしれない。シューメルが内通者なら全ての辻褄が合う。
「シューメルを倒さなきゃいけない。協力してくれ。」
「もちろん。私はあなたを待っていた気がする……あなたの力になってみせよう!」
「え?」
「ん?何も言ってない……」
彼女はレンゲと名乗った。彼女は目が覚めたらこの街にいたらしい、それ以前の記憶は覚えていないようだ。ただ来たときには、すでに巫女のような姿だったらしい。ただ、彼女はレンゲという言葉が頭の中に根強く残っていたからレンゲと名乗っているそうだ。この世界の基本知識を得るために生き物などの図鑑を読んだが蓮華はこの世界になかった。この人も転生してきたのかもしれない。ただ、俺と違う点がある。彼女は魔法のようなものが使えるのだ。お祓い棒のようなものを出して、氷柱のようなモノか火の玉を選んだ飛ばせるようだ。ただ魔力のようなものが切れやすいらしく、連発しすぎると倒れるらしい。
そして、雑談しているうちにシューメルが住む集落についた。
「シューメル?今いる?」
「入りな。」
「シューメル。嘘なく頼む。単刀直入に聞くが……」
その瞬間、シューメルの目が光った。
「レンゲ!しゃがめ!!」
俺の後ろにあった絵が切れた。
レンゲはどうなった!?
「ありがとう、レイガ。心配してくれて……でも大丈夫」
どうやら、放たれた斬撃と体の間に氷柱を挟んで防いだようだ。
「レイガ。わしの正体に気づいたことには褒めてやる。ただ……生きて帰れるとは思うなよ。たとえ、君でも手加減はせんぞ。」
斬撃の勢いが先程よりも増した。レンゲは防ぐので手一杯なようだ。俺は家の中に飾ってある剣をなんとか手に取る。
「レンゲ!!」
「……っ!わかったわ!」
レンゲが魔法の出力を上げる。
「小賢しいものよ!」
少しでも隙ができれば、、、!
レンゲの魔法がシューメルに命中した。
「レイガ!」
「わかってる!」
俺はシューメルに剣を突き刺した。
「や……やったよ、レイガ!これで街を救えるよ!」
「あ、あぁ…やった……ついに」
こんなにもあっさりと終わるものなのか。もっと早くにシューメルの暗躍に気づいたり、レンゲと知り合っていれば…………
「素晴らしい!備えあれば憂いなしとはこのことだ……!」
その瞬間、地下から数え切れない量の斬撃が飛んでくる。
「まさか!」
「その通りだ、レイガ!今のは偽物じゃ。」
そして、地下からシューメルの本体であろう者が出てくる。
「嘘でしょ……」
今の攻撃を防ぐのに、魔力を多く使ったのだろう。レンゲはもうフラフラだ。
「レンゲ!ここは撤退だ!」
「ごめん……レイガ……私、魔力が…………」
「レンゲ!」
くそ!ここでレンゲの魔力切れがきたか!レンゲを抱えて逃げれるか……いや、やるしかない。
俺はレンゲを抱えて逃げ出した。しかし、人を抱えて逃げるのは簡単じゃない。そして、容赦なく斬撃は飛んでくる。俺は足に斬撃が掠ってしまった。
「ぐぁっ!」
俺は倒れ込んだ。そして、次の斬撃が飛んでくる。くそ……躱わせない。しかし、その攻撃は俺には当たらなかった。
「レンゲ!!!」
レンゲが俺のことを庇っていたのだ。
「レンゲ……今すぐ止血を」
「レイガ。私……もうダメみたい。生きてね……レイガくん。」
無力では何も守ることができない。それがこの世界の現実。それでも……
「チカラが欲しい。誰かを守れるくらい強い。そんな力が。」
「レイガ!君は誰も守れない……ただ守られるだけの圧倒的弱者だ!」
「あぁ、そうだな…そんなのずっと前に知っている。」
この世界に来る前から知っている。俺が無力で役に立たない弱い奴だってことくらいとっくに知ってるんだ。体が熱い。奥底から燃え上がるような……俺は剣を持った…剣に力を込める。剣が燃えているように見える。
「シューメル!!!!」
しかし、この斬撃は届かなかった。掠った傷のせいだろう。足が動かない…いや、これでいい。俺の魔力は掴んだ。次こそはレンゲを死なせない…
俺は斬撃で斬られて死んだ。
今回だけは希望に満ちた『死に戻り』だ!
全員救って……この街の人たち全員揃って…………ハッピーエンドを迎えるのだ。
そして、俺は今回は親方のところではなく、レンゲの膝枕で目覚めるのだった。
レンゲ 巫女のような人。レイガと同い年くらい。
魔法が使えるが魔力切れが起きやすい。
【あとがき】
まさかのシューメルが1章の黒幕!ということでした。
レンゲのことが気になると思います。これは乞うご期待をお願いします!としか言えないです。笑
また次回お会いしましょう。さよなら!




